IWCの魅力はデザインの質実剛健さに限らない。そのムーブメントの完成度にこそ、良さがあると言える。 スイス製の機械式時計は、基本的にETA社製のエボーシュ(半完成のムーブメント)を使っている。同じ機械で値段が違うのは、各メーカーによる手の入れ方が違うからだ。なかでもIWCの改良は群を抜いている。歯車だけでなく、テンプ(注2)やゼンマイなど、かなりの部品を変えることで、より高精度で長寿命のムーブメントに仕立てている。
値段は高いのに、一切エボーシュに手を加えないメーカーが多い中、IWCの姿勢は立派としか言いようがない。値段は高いが、それなりのことをやっているわけだ。ちなみにETAの「2892」は、汎用自動巻エボーシュとしてオメガやカルティエ、IWCなどが採用している。自動巻の巻き上げ効率に疑問を持ったIWCの技術者は、ETAに改良を勧め、「2892」が「A2」に進化したというエピソードもある。時計メーカーは数多いが、ムーブメントメーカーに改良を勧めるほどの会社は数えるほどしかない。
注2.時計の心臓部。ひげぜんまいの等時性により一定周期で振動する金属の輪。テン輪ともいう。 |