名越稔洋氏
――「龍が如く」シリーズもついに3作目になるわけですが、本シリーズを作るにおいてどういった点が難しかったですか? また、気を使いましたか?
「龍が如く」シリーズは今までの前例にない世界観をもったゲームです。そのため、ゲームを完成させる上でイメージ作りが難しかったですね。またこういった世界観を重視した作品だからこそ、完成に向けてのスタッフの作業における意思の統一をはかるのもも重要であり大変でした。
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――1作目、2作目と舞台は神室町でしたね。かなりリアルな新宿の街並みを再現していると思うのですがなぜ新宿を舞台にしたのですか?
新宿自体、よく遊びにいっていましたからね。若い頃はアルバイトなんかでもお世話になった街です。新宿はゲームにはなりにくい場所であると思っていましたが、逆に今回はそれが商品として花開いた結果でもありますよね。
やっぱり、新宿で遊び、笑うことや泣くことを経験した人間だからこういう作品が作れたんだと思います。
――今までさまざまなキャラクターが登場しましたが、どのキャラクターが名越さんが好きなキャラですか?
どのキャラクターもすべてに思い入れはありますが、誰かと言えば、やっぱり桐生一馬でしょうね。主人公のイメージはきっちり作っていましたし、自分が好きな人物像でもあります。桐生一馬は私の理想でもあるんです。自分が「こうありたい」とか「こういう人物に憧れる」といった考えを元に桐生一馬は生まれました。
――「龍が如く」シリーズを生み出してみて、驚いたユーザーの反応とかありますか?
このゲームソフトは大人の男のゲームとして出したんです。どちらかというと、女性のターゲットは切り捨てたというか、本当の男の世界を描いた作品でした。しかし、発売してから驚いたのは女性のユーザーの方が予想以上に多かったという点ですね。今では女性の割合も2割くらいはいます。桐生一馬の魅力に女性も共感し、心が動かされるようです。
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――今までのシリーズと時代背景が違うのはなぜでしょうか?
1・2のヒットをうけて、「当然次回作も」という話になり、桐生一馬の魅力をまた出せる作品を作ろうということになりました。新作においては「日本人の魂」というものを表現したかったのですが、現代の日本が舞台だと、表現するにはちょっと違った。そこで、桐生一馬の魅力をだせる時代背景を考えて今回の時代劇となりました。
――今回の「龍が如く 見参!」ですが、たとえば「宮本武蔵 見参!」とか違うタイトルでつくることは考えませんでしたか?
社内でもそういう意見はありました。しかし、このゲームは桐生一馬があってこそ実現した「龍が如く 見参!」です。やはり桐生ありきの「龍が如く」シリーズであるということは間違いないですね。これから先も、「龍が如く」のシリーズは桐生一馬という人物を中心に考えて作っていこうと考えています。
――「龍が如く」シリーズに次回作はあるのでしょうか?
ゲームって、そのメッセージなり届けたいターゲットなりがきちっとしたものじゃないと売れないと思うんです。ハードにしてもソフトにしても存在意義のはっきりしていないものは売れない。ファミリー向けであったり、大人向けであったりと、輪郭をはっきりさせた商品でないと売れないと思います。わかりやすく、コンセプトをしっかりもった商品をプロデュースしていくのが、私の役目だと思っていますし、そういった意味でも、次回作において自信をもったものが作れると思えたら作りたいとは思いますね。
――名越さんがオンラインゲームをプロデュースすることはあるのでしょうか?
今は考えていないですね。やっぱりやるからには慎重にやらなきゃならない分野だと思うんです。ネットにつないだら、それで嬉しいという時代はすでに終わった。ちょっと違う魅力が出れば、自分がやりたいと思う価値も出てくるとは思うんですけど、今の自分の方向性には合っていないと思います。すぐれた人間ドラマを描いたゲーム作品を作る方が今の自分にとっては重要ですね。
――名越さんの「男の生きざま」とは?
どんな場面でも自分を後回しにして、人を支えることのできる男はかっこいいですよね。恋愛でも、仕事でも、家族でもいい、「俺が俺が」と前に出るのもいいが、それ以上に自分を後回しにすることのできる男は本当に強いと思うんです。まさしく、桐生一馬はそういう男なんです。自分は裏に回り、人を支えることのたくましさをもった人物です。
男ってのは必ずそういう部分があると思うんですけど、こうした親近感がわくのは桐生一馬の魅力なんでしょうね。
――名越さんの「仕事のスタンス」とは?
メリハリが重要だと思いますね。たとえば、さまざまなことをやっていて嫌なことがあると、そのイメージが頭に残る。でもそれをいつまでも、悪く考えているだけじゃだめだと思います。失敗したことを何で駄目だったかとか、じっくり考えることが必要だと思う。これはいいことが起きても同じで、いつまでもいいことがあったからといって喜んでいるだけじゃだめだと思います。何かあったときには、いろんなことをじっくり感じ、考えることが次へのステップへ繋がることだと思いますね。一歩先をみて仕事をやっているつもりですが、そういう経験や考えが今の自分の仕事に生きているんだと思います。
――名越さんにとって「ゲーム」とは?
エンターテイメントには、アナログとデジタルの世界があると思うんですが、
人は子供の頃の楽しかった記憶なんかもあって、大人になってもそういう記憶が生きていると思うんです。みんなで一緒に遊んで笑ったり楽しいとかいう感覚、そういうアナログな体験がゲームにも必要なんですよね。ゲームはプレイしてくれる人の時間を使いますけど、その時間は笑ったり楽しいとかがあるからこそ、自分の時間を使ってくれるんだと思います。ゲームはほかのエンターテイメントとは違って莫大な時間を使って遊んでもらうわけですが、だからこそ、生み出す側も責任をも持った作品を出していかなければならないと思っています。
スタンスとしてはやっぱり、ゲームの限界を感じさせてしまうのは良くないと思うし、私自身、そういう世界にはなってほしくないなって思っていますが、自分にとっても、ゲームはこういうものだと決めつけることによってそれに縛られてしまうので、そういうスタンスは持たないでプロデュースしていきたいとは思いますね。

――まだ「龍が如く」シリーズを体験していないユーザーへコメントをいただけますか?
今回の「龍が如く見参!」は時代劇のスタイルをとっていますが、男のドラマとして「日本人の魂」としてのメッセージを込めました。だからこそ、気分が疲れていたり、弱っていたりする時にこそ、このゲームをやって、感動や楽しさをを感じてほしいです。そういう意味でもこのゲームは元気が出る作品であると思います。このゲームをやることで、自分の明日が楽しくなってくれたら、クリエイター冥利に尽きますね。
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