今、ハイブリッド車をはじめとするエコカーがブームだ。でも、自動車の楽しみって燃費だけじゃない。そう思っている人も多いだろう。そこで提案したいのが、自動車を操る楽しみが満載された、いわゆる「グランド・ツーリングカー」(GTカー)だ。すぐれた高速走行性と、長距離を走っても疲れないインテリアを持ったGTカーなら、「高速休日1,000円乗り放題」を利用した遠距離ドライビングでも疲れ知らず。もちろんエコ性能だって進化しているし、走りの楽しさはハイブリッド車とは比べものにならない。そんな魅力的なGTカー3車種をさまざまな確度から比較・検証してみた。

- ライター:松下 宏(Hiroshi Matshusita)
- 1951年生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経て独立。 クルマ雑誌やインターネットメディアなどに精力的に執筆中。また『松下宏の見たクルマ、乗ったクルマ、会った人』と題するブログを平日連日更新中。クルマそのものに限らず、税金や保険から諸費用、値引き、中古車まで、クルマに関係する経済的な話題に詳しい自動車評論家として知られている。 1991年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
最近のクルマは電気による環境性能が話題として取り上げられている。ハイブリッド車の新型「プリウス」が大量の注文を集めたり、スバル「プラグインステラ」、三菱「アイミーブ」などの電気自動車が発表・発売されたからだ。クルマの売れ行きが鈍る中で、これらの新しい傾向が話題を集めるのも無理はないが、クルマ全部が一気に電気系に進んでいくわけではない。 ハイブリッド車がよく売れているといっても、クルマの売れ行き全体から見れば1割にも満たない台数だし、電気自動車はまだ試験的な販売が始まった段階だ。クルマはまだまだガソリン車が圧倒的な主流を占めている。
これまで幅広く普及してきたガソリン車にはいろいろなよさがあり、これは今後も変わらない。特に走りの爽快感はガソリン車ならではの魅力のひとつだ。 走りの爽快感が端的に具現化されるのがグランド・ツーリング(GT=大旅行)で、GTを標榜する車種はいくつもある。今年フルモデルチェンジを受けたばかりのスバル「レガシィ」はそのひとつだし、日産の「スカイライン」は古くからGTを標榜してきた。また、トヨタの「マークX」も「マークU」の時代にはグレード名にGTを使っていた。今回はこれらのGTカーから、グレード・価格帯を同じくする代表的な3車種を取り上げ、その走りを比較してみた。
今回取り上げた車種にはいずれも2.5Lエンジンが搭載されているが、それぞれに個性的な特徴を備えている。とりわけ個性的なのが新型「レガシィB4」で、エンジンはスバル独自の水平対向4気筒を搭載し、駆動方式も4輪駆動のAWDを採用する。スカイラインとマークXに搭載されるのはV型6気筒の2.5Lエンジンで、駆動方式は後輪駆動のFRだ。ほかにトランスミッションもレガシィB4が無段変速のCVT、スカイラインが5速AT、マークXが6速ATと、この点でも違いがある。これらの違いを踏まえて3車種の走りを比較してみたい。
スカイラインはスポーツ性の高さで一番といえるモデルだった。アクセルの踏み込みに応じてエンジンが吹き上がっていくときのレスポンスのよさと、そのレスポンスに合わせて力強い加速が得られる点で、きわめてスポーティーなクルマに仕上がっていた。 だから、スポーツ性を重視するならスカイラインがイチ推しのクルマなのだが、徹底してスポーツ性を追求するならスカイラインには3.7Lエンジンの搭載車があって、そちらのほうが格段にスポーティだったりする。もちろん3.7L車は価格も高いので、本企画の趣旨からはそれてしまうのだが、スポーツ性を重視して2.5Lのスカイラインを選ぶかどうかは難しいところだ。 なお、スカイラインは大きめのボディに長いホイールベースを確保している割には後席の居住空間はそれほど広くない。レガシィB4が十分な広さを確保しているのに比べると、後席の居住性にはやや不満が残る。ただし、そうしたことを除いて、スポーティーさを求めるならスカイラインは群を抜いている。
最初に断っておくが、マークXはここで単純に比較してはかわいそうな面がある。現在ちょうどモデル末期にあり、デビューしたばかりのレガシィなどほかの2車種に対して劣っている面があるのは当然だからだ。 とはいえ動力性能ではレガシィを上回るものがあり、6速ATの変速フィールはスカイラインの5速ATに対して優位に立つのは当然のことだ。 足回りはいかにもラグジュアリーカーらしい柔らかめの味付けとされていて、個人的には必ずしも好みではないが、日本にはこうした乗り心地を好むユーザーが多いことも確か。トヨタらしい味付けであり、安定した走り心地がある。 室内空間の広さは、レガシィB4には及ばないものの、後席に座ると膝元などにはスカイラインよりもやや大きな余裕がある。インテリアのデザインがラグジュアリー志向でまとめられていることと合わせ、こうしたニーズもありだろう。クルマに快適さ、ラグジュアリーさを求めるユーザーなら、マークXもよい選択だ。
3車種を乗り比べてみて、いろいろな面で好感が持てたのはレガシィB4だ。今年フルモデルチェンジを受けたばかりの新しいモデルである点が有利に働いた部分もあるが、トータルで魅力的なクルマに仕上がっていた。特に新搭載の2.5Lエンジンはトルク感のある走りが可能で、これに組み合わされるリニアトロニックのなめらかな変速フィールが特に好感が持てる部分だった。 実はレガシィのCVTは縦置きに搭載する水平対向エンジン用に開発された専用のもので、ほかの多くのメーカーのものと異なる金属チェーン式を採用している。これは騒音につながりかねない部分があるが、レガシィB4を走らせていても、CVTの余分な騒音を感じることはなかった。 なめらかでトルク感のあるパワートレーンに加え、バランスの取れた足回りを持つことが今回のレガシィの特徴だ。これらの性能が総合的に走りの質感につながっている。 モデルの新鮮さから静かでなめらかな走り、乗り心地と操縦安定性のバランスなど、相互的に判断して、レガシィB4はかなり高いレベルにある。今回試乗したドライのオンロードでは体感することができなかったが、AWDの安定性は雪道など滑りやすい路面で生きてくるだろう。



