2大カメラ誌 アサヒカメラ編集長×日本カメラ編集長の夢の対談 本音で語る、一眼カメラの“今”と“未来

連載企画「“α”が切り拓く一眼カメラ新時代」の2回目は、「アサヒカメラ」編集長の佐々木広人氏と、「日本カメラ」編集長の佐々木秀人氏が登場! 2大カメラ誌の編集長による“夢の対談”が実現しました。

毎年、日本で最もすぐれたカメラを選出する「カメラグランプリ2018」で、お2人が最高得点を投じ、結果的に大賞を受賞したフルサイズミラーレス「α9」について、本音の投票理由や、ミラーレスの新しいカメラの可能性と写真文化にもたらす未来、そして「α9」の最新技術を存分に盛り込み、一般の写真ファン層が手に取りやすい “規格外のベーシックモデル”「α7 III」のポテンシャルを語り合いました。

α7 III

プロフィール

日本カメラ編集長 佐々木秀人氏

日本カメラ編集長 佐々木秀人氏

1972年長野県生まれ。飯田高校、専修大学経済学部卒業後、1994年株式会社日本カメラ社入社。広告部を経て、月刊日本カメラ編集部へ。本誌では主にメカニズム記事、特集記事を中心に編集に携わる。2017年1月号から編集長に就任。

アサヒカメラ編集長 佐々木広人氏

アサヒカメラ編集長 佐々木広人氏

1971年、秋田県生まれ。リクルートの海外旅行情報誌「エイビーロード」編集部を経て、1999年に朝日新聞社に入社。「週刊朝日」編集部、同誌副編集長、販売部を経て、2013年9月から「アサヒカメラ」副編集長。2014年4月編集長に就任。

今だから語れるカメラグランプリ投票理由の本音「α9の進化は“空を飛んで山を越えてしまった”ような感じ」アサヒカメラ 佐々木広人氏

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「カメラグランプリ2018」の大賞選定では、お2人とも「α9」に最高得点で投票されています(※アサヒカメラ 佐々木広人氏は10ポイント中7ポイント、日本カメラ 佐々木秀人氏は6ポイントを投票)。
α9
アサヒカメラ
佐々木編集長
「α9」への投票に悩むことはありませんでした。「α9」の発売直後から今年のカメラグランプリは「α9」で決まりだと思っていましたし、編集部内では、早い段階で「今年のカメラグランプリはα9に投票する」と公言していました。
日本カメラ
佐々木編集長
私も「α9」に最高得点で投票すると決めていました。「α9」の発売後に強力なライバル機種がいくつか登場しましたが、それでもやっぱり「α9」はインパクトが強く最終的には票を集めましたね。
アサヒカメラ
佐々木編集長
一般的にプロダクトの賞レースだと、年度末に飛び込むように発売されたもののほうが印象に残りやすく、上位にくる傾向があります。その点、2017年5月発売の「α9」は、投票の約1年前の発売ということで後発と比べて不利なわけです。にもかかわらずグランプリを獲得したのは、それだけこのカメラのインパクトが強かったことの証。ここ数年のデジタルカメラは従来機種から一歩一歩山を登るイメージで性能を積み上げてきたところがあります。ところが、「α9」はいきなり空を飛んで山を越えてしまったような感じで急激に進化してしまいました。
α9

「α9の進化は“空を飛んで山を越えてしまった”ような感じ」と「α9」製品発表時の印象を語る、アサヒカメラ編集長の佐々木広人氏

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具体的に「α9」のどういったところを評価したんですか?
日本カメラ
佐々木編集長
やはりブラックアウトフリーで最高20コマ/秒の超高速連写が際立っていましたね。一眼レフのフラッグシップをスペックで大幅に超えてきました。
アサヒカメラ
佐々木編集長
最初は誇大広告かと思っちゃったほどですよ(笑)。最高20コマ/秒の連写って、そんなこと本当にできるの? と。
日本カメラ
佐々木編集長
カメラ雑誌は半信半疑だったかもですね。このスペックを具体的にどう紹介したら伝わりやすいのかわからないところもあって困りました(笑)。
アサヒカメラ
佐々木編集長
撮影中にブラックアウトしないのは、使ってみてとても便利だと感じました。撮影中は、つい撮りたい被写体だけに意識しがちですが、画面がブラックアウトすると被写体が一瞬見えなくなってあわてることがあります。写真は撮りたい被写体だけをしっかりと撮れていればいいというものではありません。構図や色などトータルで勝負しなければいけないんです。画面がブラックアウトしなければ、被写体を追いかける以外のところにも意識を向けられるので、写真がとても撮りやすくなります。
日本カメラ
佐々木編集長
あと、「α9」は「瞳AF」も強力ですよね。被写体の向きによらず、瞳に自動的にピントを合わせ続けてくれます。
アサヒカメラ
佐々木編集長
「瞳AF」はすごいですよね。撮影者がピント合わせを行う必要がありません。「こんな機能があったらプロカメラマンが仕事を失うんじゃないか」と言ったポートレート写真家がいたほどですよ。
α9

日本カメラ編集長の佐々木秀人氏は、「α9」に投票した理由として「ブラックアウトフリーで最高20コマ/秒の超高速連写が際立っていた」と話した

ミラーレスのメリットと今後の可能性「ミラーレスは実は『カメラの王道』を進んでいる」日本カメラ 佐々木秀人氏

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「α9」に代表されるようにミラーレスは急速に性能が向上しています。ミラーレスを使うメリットはどういったところにあると考えていますか?
アサヒカメラ
佐々木編集長
まず小型・軽量で持ち運びやすいのがミラーレスのいいところですよね。複数のレンズを組み合わせたシステムで見れば、一眼レフを持ち運ぶ場合と比べてワイン瓶を1本余計に持っていくことができます(笑)。
日本カメラ
佐々木編集長
私もサイズが小さくなることを押します。ミラーレスは小さくて軽いシステムにできるのが一番いいところです。
アサヒカメラ
佐々木編集長
動物写真を撮影しているプロカメラマンで「ミラーレスは動物撮影の救世主だ」とおっしゃっている方もいます。野生動物の撮影はとても大変です。大きなレンズを持って自然の中を1日中歩かなければならないので、システムが小型・軽量だととてもありがたいんです。
日本カメラ
佐々木編集長
カメラの進化の歴史は、小型・軽量になって使いやすくなることです。その意味では、ミラーレスは実は「カメラの王道」を進んでるんですよね。
アサヒカメラ
佐々木編集長
使いやすさの点では、撮影時にファインダーで仕上がりのイメージがわかるのがミラーレスの便利なところですね。「写真をどう仕上げるか」という最終的なイメージを持ってシャッターを切れるのは大きいです。撮影後の画像編集時に「どういう仕上がりにしようとしていたのか」をイメージしやすいんですよ。私はミラーレスを使うようになって、狙いとか考えがより明確な状態で撮れるので無駄にシャッターを切ることが減りました。
日本カメラ
佐々木編集長
「α9」など最新のミラーレスは特に暗所でのAFに強いのも使いやすいところですよね。かなり低輝度な状況でもオートフォーカス(AF)がちゃんと働くのは驚きです。
アサヒカメラ
佐々木編集長
そうなんですよ。「α9」を最初に使ったのは、街の中にある寺の境内でした。猫がいる寺なんですが、「追いかけるのは難しいだろう……」と思いながら暗いところで動いている猫にAFを合わせてみたところ、びっくりするくらいAFが追尾してくれました。
α9

両編集長とも小型・軽量で持ち運びやすい点をミラーレスのメリットとして挙げた

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そうしたミラーレスのメリットを聞くと、これからのレンズ交換式カメラはミラーレスが主流になるように思います。レンズ交換式カメラは今後どうなると考えていますか?
アサヒカメラ
佐々木編集長
中長期的に見ればミラーレスが多数派になるでしょう。でも、しばらくは一眼レフとミラーレスの棲み分けが続くと思います。
日本カメラ
佐々木編集長
私は比較的早い段階でミラーレスにシフトする可能性も十分あると思っています。最近は、一眼レフを使っているプロカメラマンの中でも、ミラーレスを使ってみたら便利だったのでミラーレスをメインにするという方が増えてきています。ただ、報道カメラマンやスポーツカメラマンの世界ではまだまだ一眼レフが優勢です。ミラーレスがこの牙城を切り崩せたら、一気にミラーレスに流れるのではないかと思っています。
アサヒカメラ
佐々木編集長
確かに、報道カメラマンやスポーツカメラマンは、現状では使い慣れているカメラを選んでいるようです。ただ、最近のスポーツイベントでは、ソニーのカメラを使うカメラマンを見かけるようになってきました。報道カメラマンの中にはプライベートではミラーレスを使っている方もいるようなので、時間はかかるかもしれませんが、仕事でもやがてミラーレスが選択されるようになると思います。

カメラがさらに進化すると写真撮影はどうなる?「撮影技術よりも、撮影者の発想やセンスが重要になる」アサヒカメラ 佐々木広人氏

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ここ数年、ミラーレスは急速に進化してきています。ミラーレスの進化によってカメラの性能が向上することで写真撮影はどのように変化すると考えていますか?
アサヒカメラ
佐々木編集長
2014年のドイツ写真工業会の調査によると、今世界中で1秒間に25万回ものシャッターが切られているそうです。ものすごい数の写真が撮られているわけで、写真を撮ることは、食事をしたり、お風呂に入るといった日常の行為となんら変わらなくなったと思っています。こんなにプレーヤーが多い芸術・趣味はほかにはないと言っていいでしょう。誰でも写真家になれる時代になっています。
日本カメラ
佐々木編集長
「1億総写真家」の時代ということですね。
アサヒカメラ
佐々木編集長
そうです。そんな誰もが写真を撮る時代に、カメラが新しい技術を実現していくことで、最終的には撮影技術が重視される時代は終わると思っています。難しい設定や使い方はカメラが全部やってくれるようになり、誰もがシャッターを押すだけで美しい写真が撮れるようになる。究極的にはAIがディープラーニングで個人の撮り方を学んでクセさえも再現できるようになるかもしれません。
日本カメラ
佐々木編集長
技術が進化していくと撮影での失敗がなくなっていくと思います。常にピントが合っていて、露出も構図もしっかり取れている写真が面白いのかどうかという問題はありますが、失敗写真が生まれない世界になりますよね。
アサヒカメラ
佐々木編集長
そうなってくると、カメラの使い方がうまいことは意味がなくなり、どんなイメージを持って撮影するか、どんな表現をしたいか、ユニークな視点を持っているかなどが重要になってくる。個人の資質の勝負になるわけです。たとえば、「α9」で「瞳AF」を使えば、撮影者は難しいピント合わせから解放されますよね。その分、いいローケーションを選んだり、ポージングにこだわったり、被写体とコミュニケーションをとっていい表情を引き出したりと、撮影周りで写真のクオリティを上げてイメージに近づけるアプローチが大事になるわけです。カメラを扱う技術ではなく、これまで以上に発想やセンスが求められるようになるのではないでしょうか。
α9

「カメラの進化によって撮影技術よりも撮影者の発想やセンスが重要になる」と語るアサヒカメラ編集長の佐々木広人氏

ソニーのカメラ開発は“柔軟さ”と“スピード”が魅力「プロが実際に使い始めている」日本カメラ 佐々木秀人氏

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お2人はソニーのカメラ作りにはどういう印象を持っていますか?
日本カメラ
佐々木編集長
ソニーのいいところは、ユーザーの声を素直に聞いてくれるところだと思います。プロカメラマンやユーザーからの指摘や、雑誌の製品レビューに書いたことも次の機種でちゃんと対応してくれるんです。そういう「打てば響く」感じがすごくいいと思いますね。
アサヒカメラ
佐々木編集長
「α9」について言えば、「α9はミノルタ時代からのαファンにインタビューして開発を進めた」という話を聞いたことがあります。ユーザーの声を聞くのはとても大事なことですが、あまりその声を拾いすぎると汎用性が失われかねません。マーケティングと開発のバランスがうまくいったんだと思いますが、ユーザーの話を聞いたうえで、「α9」のような高性能で汎用性のカメラを開発したのはすごいと思います。
日本カメラ
佐々木編集長
フィードバックを含めて柔軟な開発をするメーカーだと思いますね。
アサヒカメラ
佐々木編集長
開発のスピード感が速いのもソニーらしいところです。2013年に「α7」の初代モデルが発売になりましたが、そのとき、「ミラーレスでフルサイズとはすごい時代になったな」という印象を持ちました。ただ、「レスポンスは一眼レフにはまだ追い付いていない」という印象もありましたが、「α9」で一気に追い抜いた。「α7」の初代モデルの発売からたった4年でこのスピード感はすごいですよ。
日本カメラ
佐々木編集長
フルサイズミラーレス用レンズのラインアップの拡充の速さもすごいですよね。高性能なレンズが次々と登場しています。これが決め手になっているかもしれないのですが、最近はプロカメラマンが「α7シリーズ」を選ぶようになってきました。編集部への写真の持ち込みを見ると、5〜6年前までは一眼レフを使って撮ったものが多かったんです。でも今は「α7シリーズ」で撮ったものが増えてきました。プロが実際に使い始めているんですね。今後、プロが使うカメラの主流になる可能性もあります。
アサヒカメラ
佐々木編集長
WebやSNSで活躍している写真家でも「α7シリーズ」ユーザーは多いですよね。
日本カメラ
佐々木編集長
こだわりという点では、「α」は、ミノルタ時代からファインダーの見え方にこだわって作られています。それはソニーになっても変わりなく、透過ミラーを採用した「トランスルーセントミラー・テクノロジー」など独自の技術を開発してきました。写真の基本は「見ること」ですから、それを大事にしているのは好感が持てますね。「α9」ではブラックアウトフリーを実現しましたし、ソニーのカメラは、技術が「見ること」にすべてつながっている印象があります。
あと、ソニーは、機種によって絵作りが微妙に違っているのもいいですね。機種ごとに個性がちゃんとある。古い機種でも長く現行ラインアップに入れていて、古いものから最新のものまで選べるのも、ユーザーにとってはうれしいですよね。自分に合ったものを選びやすいです。
アサヒカメラ
佐々木編集長
機種によって性格分けしているのはいいですよね。長く愛用したいと思えますし。
α9

「ソニーの技術が“見ること”につながっている」とソニーのカメラ開発を評価する、日本カメラ編集長の佐々木秀人氏

「α9」の技術を生かした規格外のベーシック フルサイズミラーレス「α7 III」「このスペックでベーシックモデル?」アサヒカメラ 佐々木広人氏

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「α」シリーズの人気の理由の1つは、コンパクトなボディにも関わらず、誰もが憧れるフルサイズセンサーを積んでることだと思います。2018年3月には「α7シリーズ」のベーシックモデル「α7 III」が発売になりました。この機種についてどういう印象をお持ちですか?
α9

“規格外のベーシックモデル”として注目の「α7 III」

アサヒカメラ
佐々木編集長
製品発表時は「このスペックでベーシックモデル?」という驚きが強かったですね。
日本カメラ
佐々木編集長
同じように、「α7 III」のスペックがフルサイズミラーレスの基準というのは驚きでしたね。新しい時代の幕開けを感じました。
アサヒカメラ
佐々木編集長
連写はメカ/電子シャッターの両方で最高10コマ/秒を達成していて、連写を得意にしている高性能な一眼レフとスペックで並んでいるわけですからね。そのうえで、「α9」の「瞳AF」も搭載していますし、裏面照射型のイメージセンサーも採用している。「α9」の進化点をきっちりと搭載してきているのはすごいですよ。
日本カメラ
佐々木編集長
「α9」の性能を継承していて非常にバランスのよいミラーレスですね。価格もお買い得なので、今購入すると幸せになれるカメラだと思います。
アサヒカメラ
佐々木編集長
カメラ選びが難しいのは、自分の撮影スタイルに合ったものを見つけること。自分が撮る写真に必要なスペックを見極めて最適なカメラを選ぶのは意外に難しいんです。よく、カメラ選びでは、最初はエントリー機種から入って徐々に高性能な機種に買い替えていくことを「ステップアップ」と言いますよね。確かに、エントリーのほうが安くて選びやすいのでそこからスタートしてもいいと思いますが、予算が許すなら、思い切って最初にいいものを手に入れて使い倒したほうが愛着がわくし、長く使えると思うんですよね。その点で、「α7 III」はいい選択になるのではないでしょうか。スナップ、ポートレート、風景、動きものなどオールマイティーに使える性能を持っているので、撮りたいものが定まっていなくても幅広く撮影を楽しめると思います。
日本カメラ
佐々木編集長
確かに、「α7 III」はバランスのよいカメラなので、「これから撮りたいものを本気で探す」という方にも向いているかもしれませんね。本気で写真に取り組みたいという人なら、これからはフルサイズだと思うので、「α7 III」でスタートしてみて、自分にとって必要なカメラのスペックを追求するのもいいと思います。
α9

「α7 III」が発表された際、両編集長ともベーシックモデルに位置付けられていることに驚いたという

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最後に、今後ソニーにどのようなカメラの開発を期待しますか?
アサヒカメラ
佐々木編集長
趣味でダイビングを楽しんでいるので、個人的には、「α7シリーズ」で使える純正の防水ハウジングが登場するとうれしいですね。水中では光が届くかどうかの厳しい条件で撮ることが多いので、イメージセンサーのサイズが大きいほどありがたいんです。
日本カメラ
佐々木編集長
フルサイズより大きなサイズのイメージセンサーを採用したカメラを作ってほしいですね。大判デジタルカメラとかで、ユーザーに夢を与えてほしい。
アサヒカメラ
佐々木編集長
カメラについては、ソニーらしい尖った製品の登場に期待します。「α9」のような“やんちゃなカメラ”をもっと見たいですね。あと、広い視点で写真の鑑賞を広げるアプローチを積極的に行ってほしいです。具体的にはテレビと組み合わせての写真鑑賞を追求してほしい。写真は撮影したものをその場ですぐに見ると感動するんです。スマートフォンでシェアするのもいいですが、テレビの大きな画面で見たら迫力があって感動が違う。テレビで写真を鑑賞するシステム作りは、テレビもカメラも作っているソニーだからこそ提案できる部分ではないでしょうか。
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今回は、カメラや写真の未来について貴重なお話ありがとうございました。
α9

対談を終えての1枚。日本カメラ編集長の佐々木秀人氏が手にしているのは、自身が所有する「α7」の初代モデル(縦位置グリップ付き)