PC寄りのガラパゴス・ケータイ? SoftBank 922SH
■黒船襲来、だが…
SoftBankと言えば、今や白い犬のおとうさんとiPhoneである。黒船襲来と言われたiPhoneは、久しぶりに行列のできるデバイスとして大きな注目を集めた。これまで行列ができる携帯と言えば、Wilcom端末が多かったように思う。したがって3大キャリアの製品としては、かなり特異な存在である。
しかし考えてみれば、Wilcom時代から行列ができるのは、全部スマートフォンかそれに準じる製品だったのではないだろうか。やはり一部の層には、携帯はお仕着せのものではなく、自分でいじれる要素があるものが強く望まれているということだろう。
かく言う筆者も、実を言えばこれまで自分で所有した携帯は、黎明期の電話機能しかない時代を除けば、すべてスマートフォンであった。Windows MobileやSymbian OSのお世話になり続けて、気がつけば日本独自の「普通のケータイ」を一度も触ったことがなかったのである。
そもそもケータイサイトや着うたなどには、全く興味が持てなかった。それよりも直接WEBが見られた方がはるかに効率的だし、音楽をダウンロードするならiTunesやNapsterのほうが音質がいい。しかしそうも言ってられなくなった。
今年の4月に巻き起こった「青少年ネット規制法案」の騒動は、今子供たちが今どうやってネットに接続しているかということを考えるきっかけとなった。実態をいろいろヒアリングしてみると、そのほとんどはパソコンではなく、ケータイで接続しているという事がわかってきた。パソコンとネットの事なら詳しいが、ケータイサイトなど一度も見たことがない。
これはまずいと思って早々に機種変したのが、922SHというわけなのだった。SoftBankなのは、Vodafone時代からNokia製端末を好んで使っていたからである。
ガラパゴスケータイの進化形? 922SH■独自進化だから便利
世界情勢から孤立して、日本独自の進化を遂げたケータイ。その閉鎖的進化から、俗に「ガラパゴスケータイ」と揶揄される。しかしガラパゴスに住む動物たちは、環境に適応した自分たちの体を不便だと思うだろうか。
事実上初めて「日本のケータイ」というものを使ってみたわけだが、これは日本国内で使うことを考えたら、とてつもなく便利にできている。ワンセグ、辞書、カメラ、フルブラウザを装備しながらも、アクセスに待たされることもない軽快さ。バッテリがなくなれば、コンビニやキオスクで充電器が買える。
カチッと気持ちよく閉まるヒンジが良くできているさらに実用面だけでなく、待ち受け画面や着信音、アラーム音の変更など、大人にはどうでもいいと思える細部の細部まで手を入れられるようになっている。機能拡張したければ、「アプリ」をダウンロードすればいい。かつてパソコンがそうであったように、それは子供たちが夢中になるはずだ。拡張性云々を言う前に、まず標準で搭載している機能が全部使い切れない。
LEDビデオライト搭載。いざというときは懐中電灯にも?922SHの弱点と言えば、10キーが横並びということだ。文字入力は普通のキーボードが使えるので、PCユーザーには有利だが、ケータイサイトやゲームなどは、10キーをショートカットに使うものも多い。そこでは数字が重要なのではなく、10キーの並び位置が重要なのだ。こういったインターフェースのものは、922SHの苦手とするところである。
しかし、メールやメモ書きなどの効率は、PCユーザーには破格に便利だ。さすがにキーが小さいので、PCほどは高速に入力できないが、予測変換を上手く使えば、全文を入力することなく書き上げることができる。ど真ん中に日本のケータイでありながら、入力スタイルだけはPCから借りてきたというのが適当な表現だろう。
スマートフォン市場は、小型の通信機の可能性をどこまで広げることができるのか、その興味によって成り立っている。それはあるところで実用からは離れてしまうのは、仕方のないことだ。
一方で日本のケータイは、「想像したこともない経験をする」というPC的な拡張性を捨てて、限られた実用性を追求する情報家電である。多分に商業主義ではあるものの、多くの人にとっては、そして日本で暮らす分には、そのアクセス性と高速・安定性は、不可欠な要素なのだ。
AV機器評論家/コラムニスト。デジタル機器、放送、ITといったメディアを独自の視点で分析するコラムで人気を博す。主な連載は、AV Watch「小寺信良の週刊Electric Zooma!」、ITmedia +D LifeStyleなど。




