解像感で評価が高い、「Ultimate Ears TripleFi 10」
■あのUltimate Earsがロジクールに
ロジクール(欧米ではLogitech)と言えば、マウスやキーボードなどPC関連のペリフェラルでよく知られた会社だが、昨年8月の米Ultimate Ears社買収のニュースには少なからず驚かされた。いや、もちろんロジクール自体もiPod用スピーカーやBluetoothスピーカーなども出しているので、オーディオ製品がないわけではないのだが、まさかプロモニターで知られるUltimate Ears(以下UE)を傘下に入れるとは思っても見なかった。
以前からのUEファンからは落胆の声も聞かれたが、筆者はそれほど悪くない話なのではないかと思っている。というのも、UEの技術を導入した廉価なイヤホンがロジクールからリリースされれば、イヤホン市場全体のレベルアップが図れることは間違いないからである。
買収からしばらく音沙汰がなかったが、今年3月からUltimate Earsの製品が次々とリリースされてきた。基本的には以前から発売されていたモデルがそのままリリースされただけではあるが、一部のモデルでは新たにiPhone用コントローラが付いたモデルとしてリニューアルされている。
これまでUEのイヤホンは視聴する機会に恵まれなかったが、今回はロジクールからハイエンドモデルの「TripleFi 10」をお借りすることができた。名称が多少変わっているが、スペックからすると以前から発売されていた「Triple.fi 10 Pro」と同等品のようである。
TripleFi 10は、バランスド・アーマチュア型ドライバで2ウェイ3スピーカー構成となっている。バランスド・アーマチュアは、SHUREのEシリーズで一躍脚光を浴び、いつのまにかインナーイヤーの中心を占めるようになった。新しいイヤホン市場を開拓したユニットと言えるだろう。
バランスド・アーマチュアという方式は、そんなに新しい技術ではない。基本原理は1900年初期に、電話機と一緒に発明されたものだ。当初は出力が十分ではなかったために電話機には使われなかったが、人の声付近の特性が良かったこと、超小型化が可能だったことから、長らく補聴器用のドライバとして広く使われていた。
■低音重視で独特のサウンド
バランスド・アーマチュア型イヤホンは、中域の豊かさと高域の抜けの良さが魅力だが、低域は期待できないのが普通である。そのため各社とも、シングルドライバの場合はなるべく耳奥に突っ込めるような工夫をして、低域を稼いでいる。
実際にTripleFi 10を聴いてみると、これまでのバランスド・アーマチュア型イヤホンとは全然違う特性にびっくりする。大型の2ユニットを低域用に使っているだけあって、低域が非常にしっかりしていて、まるでダイナミック型のようである。しかしよく聴くと高域の抜けの良さ、そして分解能の良さという、バランスド・アーマチュアの特性も上手く使って、音をまとめている。
一般にモニター用を名乗る製品は、派手な特徴のある音ではないので、ちょっと聴くとつまらなく感じてしまうものだ。しかしTripleFi 10は、低域の出の良さで個人的に面白く聴くことができた。音楽ソースはロック向きと言われてはいるが、クラシックもなかなか気持ちいい。ただ従来のクラシック的嗜好からすると、低域が出過ぎと言われるかもしれない。
こういったカナル型の場合、電車などで利用されるケースが多いと思うが、無理のない高域表現と分解能の良さは、電車の中ではあまりわからない。CDなどの非圧縮音源を、ヘッドホンアンプを通して静かな部屋で聴くと、その良さがじわじわとわかる。そういう音である。
イヤーチップは、シリコン製が3サイズ、フォームチップが1サイズ付属している。フォームチップは以前SHUREでなかなか良かったので期待したのだが、残念ながら筆者には径が少し小さくて、フィットしなかった。
付属のイヤーチップ 丈夫なカンケース付きUEのこのシリーズの特徴は、ケーブルがイヤホン部の根元から外れて、交換ができることである。以前は別売でケーブルのみが売られており、断線時には自分で交換できるというメリットがあったのだが、ロジクールではケーブルの別売は行なわないそうである。断線したら、通常の修理扱いになるということだろう。
ケーブルが交換できるようになっているしかしケーブルが交換できるということから、サードパーティで高級ケーブルを売るところも出てきている。こういう点でも、マニアが手放せない製品と言えそうだ。
AV機器評論家/コラムニスト。デジタル機器、放送、ITといったメディアを独自の視点で分析するコラムで人気を博す。主な連載は、AV Watch「小寺信良の週刊Electric Zooma!」、ITmedia +D LifeStyleなど。








