連載記事

野村ケンジの「カー&AV道楽」

第5回 純正カーオーディオは、本当に音がよくなった!?
2007年9月6日掲載


純正カーオーディオにまつわるウワサ

「純正カーオーディオは音がよくなった」という話を、この頃よく耳にするようになった。しかしそう言っている人に「市販の高級カーオーディオを自分のクルマに取り付けたことがあるか?」と尋ねてみると、答えは必ず「NO」。ほとんどの人がこれまで市販製品を購入したことがないか、純正が壊れたから安いCDプレーヤーやスピーカーに交換したことがある、といった感じなのだ。


カーオーディオを突き詰めた人からそんな話が出てくれば信憑性も高まるが、普段からカーオーディオには興味なさそうな人たちがどんなに声を上げても、単なる言い訳にしか聞こえないのも事実。個人的にも、一部を除く大半の純正品は、決して褒められた音質ではないと感じている。ではなぜ、近頃になって急に「純正カーオーディオは音がよくなった」と言われるようになったのだろうか。

これはあくまでも僕の想像なのだが、

1.近頃はカーナビを標準装備しているクルマが多く、カーオーディオとカーナビが同一視されている。
2.最新のカーナビはHDDやマルチメディア機能など市販品に迫る高機能を誇る。
3.性能がよくなれば音もよいに違いない(カタログにもそう書いてあるし)。

という三段論法により、誤った認識を植え付けられてしまったのではないかと考えている。

ナビとの一体化で犠牲になったカーオーディオの音質

確かに純正カーナビの“機能”は、ここ1〜2年で著しく向上している。HDD搭載によって検索速度や掲載情報量などが格段にスペックアップし、DVDビデオ再生やHDDミュージックボックス、iPod接続などのマルチメディア機能も充実しつつある。なかには簡単ながらもデジタル音場調整機能を持つモデルすらある。そういった機能面から「純正で十分」という意見が出るのはよく分かる。しかし機能と音質は、全くといっていいほどリンクしていない。機能がよくなったからといって、イコール音がよくなったとは限らないのだ。それどころか、カーナビ一体型となることで、かえって音質が悪くなっているケースのほうが多い。

その理由は単純。カーナビは、フタを開ければ小型のコンピュータだからだ。電子回路やHDDの電磁波ノイズがオーディオのアナログ回路に悪影響を及ぼすことは、パソコンを使う皆さんにはよくおわかりの話だろう。そう、内蔵サウンドカードよりも外付けサウンドユニットのほうが音質的に有利というアレだ。しかも純正カーナビは、パソコンで言えば5インチベイ2つ強ほどの狭いスペースに、ナビユニットやHDD、DVDドライブ、パワーアンプまで(車種によってはモニターまで)押し込められている状態。いくら技術が進歩したからって、CDドライブとパワーアンプのみのシンプルな構造だった昔に比べて、音がよくなったとは考えにくいのが現実だ。

さらに純正カーオーディオには、致命的な弱点がある。それは、スピーカーに対するコスト配分だ。カーオーディオは保安部品でないため、自動車メーカーとしてはコストダウンの対象にしやすい。カーナビが高性能化とともにどんどん高額化しているなか、スピーカーだけがいまだ数百円の世界に留まっているのだ。クルマの性能がこれほどまで向上しているのに、純正カーオーディオの音が相変わらずなのは、こういったメーカーの思想に由来していると僕は考えている。

オーディオメーカーとのタイアップによる純正オーディオの実力

ただし、まれに例外もある。それは限られた車種にオプションで用意されている、オーディオメーカー謹製の純正システムだ。音質に関するノウハウのあるメーカーがクルマのデビュー前から専用オーディオを作り上げているため、そのクオリティはかなり高い。コストの制限があるため最上とはいえないが、少なくともオプションの差額で市販品を買い、同じレベルのカーオーディオを構築するのはまず不可能である。そういったコストパフォーマンスの面では、十分に魅力のあるシステムといえるだろう。なかでも以下の3モデルについては、僕も太鼓判を押せる上質なものだ。

●三菱アウトランダーパジェロデリカD5 ROCKFORD FOSGATE プレミアムサウンドシステム
ドアのサービスホールをふさいでボックス化したり、ボディ各所に音質向上のための制振処理を施すなど、自動車メーカーの範疇を超える細やかな取り付けによって、望外のサウンドを楽しませてくれる。各車種で音の傾向が多少異なるが、個人的にはアウトランダーのCDモデル(ナビなし)が好み。

日産スカイライン BOSEプレミアムサウンドシステム
ドアに取り付けられた25cmウーファーも驚きだが、ヘッドユニットは96kHzハイサンプリング回路やバーブラウンDAコンバータ/オペアンプ、エルナ製電解コンデンサなど、まるで市販の高級CDプレーヤーのよう。それらによって上質かつ迫力のあるサウンドが満喫できる。Bluetooth接続やCFカードで音楽再生できる点もうれしい。

レンジローバー harman/kardon LOGIC7オーディオシステム
レンジローバーやランドローバー・ディスカバリー3などの上級グレードに搭載されるシステム。14ものアルミ振動板スピーカーを駆使して極上のサウンドを提供してくれる1台。一般的にスピーカー数が増えれば増えるほどコントロールが難しくなり、良好な結果が得にくいのだか、こちらは稀少な例外といえる。

このように一部の例外はあるものの、総じて純正カーオーディオの音は楽観視できないのが現状だ。純正は「安い」とだけ考えておくのが無難だろう。もしよい音のカーオーディオを求めるのだったら、少なくとも市販スピーカーと外付けパワーアンプの購入は必須となる。まずは自分のクルマの音をじっくり聴き、そして量販店やプロショップで市販製品の音を聴いて、いまの自分にとってのベストを探し出してほしい。

ケンウッド「HDV-990」 もちろんカーナビだって音質を問われる時代だから、市販製品にはさまざまな工夫が施されている。このケンウッド「HDV-990」では、ナビパートをオーディオとは別筐体としセパレート化したほか、独自のD/Aコンバータシステムを採用して音質を向上させている
「ROCKFORD FOSGATE」システム アウトランダーデリカD5などに搭載される「ROCKFORD FOSGATE」(ロックフォードフォズゲート)のシステムは、ドアのサービスホールをふさぐなど音質向上の工夫が随所に見られることに加え、スピーカーも純正としては望外のコストがかけられている
スカイラインのBOSEシステム スカイラインのBOSEシステムに採用されているユニット群。フロントドアは25cmウーファーを含む3ウェイシステムが取り付けられている。もう1つの25cmユニットは、リアトレイに配置されるサブウーファー

ライター/野村ケンジ
ライター/野村ケンジ
カーオーディオ専門誌「AUTO SOUND」、4駆自動車雑誌「4X4MAGAZINE」などでカーAV系を中心に活躍するフリーライター。常に数台のクルマを所有せずにはいられないクルマ狂であり、同時にラジオすら付いていなかった1970年式のフィアット・チンクエチェントに本格カーオーディオを取り付けてしまった音楽狂でもある。