連載記事

野村ケンジの「カー&AV道楽」

第8回 邪道を極める!? カーオーディオを家で活用する方法
2007年12月11日掲載


余ってしまったカーAVのゆくえ

一般的には「壊れたから新しいものを買う」というのが市販カーAV購入の典型的パターンとなっているようだが、まだ使えるのに買い換えるというケースも結構ある。

たとえばクルマを買い換えた場合。クルマが新しくなるのだから、オーディオも新しいものに換えてしまおうという気持ちになるのが普通だろう。逆に新しいクルマはカーインフォメーション一体のカーAVシステムが付いていて、以前のクルマで愛用していたシステムを取り付ける余地がない、という切ないケースもある。

オーディオルーム 我が家では不要となったカーAV製品をホームオーディオとして再構築。キャスター付のラックを活用し、普段は机のある部屋でBGMとして、最新カーAVの試聴テストなどを行う場合は極小ホームシアターに運び込んで活用している

次に、まだまだ動作しているけれども、機材そのものがあまりに古くなってしまった場合も同様の事態が発生する。特にカーナビなど日々の進化が激しいものはその典型で、5年も経てばもうすっかり遺跡扱い。友人の持っている最新モデルに比べると、機能的な遜色ははっきり目立ってしまい、そろそろ買い換えようか、という気持ちになってしまうのは仕方のないことだ。

それはプレーヤーにもいえる。カーナビほど進化の度合いは激しくないものの、いまやカセットはおろか、MDですら過去のメディア扱いされているのが現状。すでに多くの人がディスク系メディアのプレーヤーに交換を済ませているはずだし、CDからDVDに換えた人、iPod対応のヘッドユニットにした人もいるだろう。

さらに熱烈なカーAVファンのパターンとして、ある日偶然、音のよい自分好みの製品に出会ってしまったために、無駄な出費と思いつつも買い換えてしまうことがある。それがプレーヤーやスピーカーなど、どれか1アイテムだったらまだ救いがあるのだが、アナログシステムからデジタルマルチウェイシステムへ変更する場合などは、アンプのチャンネル数が足りなくなったりして、結局、全製品を交換することになってしまう、なんてこともあり得る。

こうしたさまざまな事態のために、思わず余ってしまったカーAV機器。そんな製品はネットオークションなどでとっとと売りさばき、第2の人生を送ってもらうのがオーナーにとってもその機器にとってもベストなのだが、あまりの愛着に「いつかはまた使おう」と物置にしまい込んでいるパターンも少なからずあるはず(一度しまい込んでしまった製品は再び日の目を見ることはまずないのだが)。しかし、こうした二度と日の目を見ない製品を、上手に使い続ける方法がある。それは、カーAVをホームオーディオ機器として家の中で活用し、「カーAVホームオーディオ」(とここでは呼ぶことにする)を構築することだ。

カーAVを家で使うメリット

これは世間、なかでもホームオーディオファンからは「邪道」と言われかねないやり方なので、すべてのユーザーに対して大手をふって勧めることはできない。また本来の用途以外での使用となるので、もちろんメーカーのサポートや保証は得られない。その点をふまえ、個人の責任で行ってほしいということをまずは強調しておこう。けれども、きちんと動作する、しかもその音が結構気に入っている機器が手元にあるのだったら、それを余らせておくのはあまりにももったいない。特に自宅に本格的なホームオーディオを持っていない人には、ぜひともトライしてほしい活用方法だ。もちろんプレーヤーからスピーカーまで、全ての機器がそろっている必要はない。いまあるものだけを活用し、それ以外はホームオーディオ用の機器で補えばいいのだ。

カーオーディオを自宅で使うメリットは3つある。まずは、先に述べた、使われていないものを使うこと。音を出さないカーAV製品は無用の長物でしかない。比較的小さいとはいえ、邪魔者になってしまうのは確かだ。それをしまい込まずきちんと活用してあげることで、わざわざ家庭用のコンポを購入するなどの、無駄な出費を押さえることもできる。

2つめは、自分好みの音が自宅でも容易に作り上げられること。クルマと家ではかなり環境が違うため、全く同じ音を再現することはできないが、使っている機材は同じなのだから、傾向は自分の好みに近いものとなる。スペース的に家のほうが余裕があるため、クルマよりもかえっていい音で聴くことができた、というケースもあり得る。

VR209 単体パワーアンプはオーディソンの名機「VR209」をいまだに手放せず持ち続けている。もう1台、ステッグの「QMOS120.2」(のファーストモデル)もかなりのお気に入り。この2台をメインで活用しているが、その他にもマッキントッシュなど数台を所有しているため、そろそろ整理しなければと思案中

そして最後は、カーAVならではのメリットがあること。ホーム用機器は交流100V、カーAV機器は直流12Vで動作しているが、なにを隠そう、この直流電源がオーディオにとって優位に働くのだ。交流電源は+/−が常に入れ替わっていることから、どうしてもノイズや歪みが発生しがち。それが音に悪い影響を与える。高級ホームオーディオの世界ではそれらのデメリットを回避するため電源部に相当の物量を投入して問題を解決しているが、僕らが普段購入するような価格帯のものにはそういった配慮はあまりなされてはいない。その点カーAV機器は直流電源を採用するため、そういったデメリットはほとんどない。同じような金額のものでも、カーAV機器の方が音質的に優位な場合が多いのだ。

このように、カーAV機器を家庭で使うのは決して王道とは言えないものの、それなりのメリットがあるのも確かなのだ。

MX406S CDプレーヤーはマッキントッシュの「MX406S」をメイン機に活用。アンプ内蔵CDレシーバーを使うテスト用としては、ケンウッドの「K-CD01」を用意している。このように我が家では潤沢な数のCDプレーヤーがストックされている(笑)が、逆に壊れやすい製品でもあるので、余っていない人はホーム用プレーヤーやiPod(ドック)などを活用するのも手だ

カーAVを活用するために用意すべきもの

さて、それでは具体的に「カーAVホームオーディオ」のために必要な機器やノウハウなどを紹介しよう。プレーヤーやパワーアンプなどのカーAV機器を家の中で使う場合、まず必須となるのが安定化電源装置(パワーサプライとも呼ばれる)とバッテリーだ。

安定化電源装置は家庭用の交流100Vからクルマ用の直流12Vを作り出すための機器で、これがないとカーAV機器は動作できない。アマチュア無線などでもよく使われており、出力の大きさや変換方式の違いなど様々な種類がラインアップされているが、お勧めは、出力電圧(V)が可変できる、出力電流(A)が大容量なタイプ。カーAV機器は電圧12Vが基本となっているが、実際は13V以上、14V前後で最良のパフォーマンスを示すものが多い。このため、12V固定タイプよりも可変タイプのほうが音も使い勝手も良いため、10V〜15Vあたりで出力電圧を調整できるタイプは押さえておきたい。

ラックシステム 手前に見えるのが安定化電源装置。これがないとカーオーディオは動かない。電圧可変タイプのものはさまざまな機器や用途に使えるので1つは持っておきたい

出力電流(A)に関しては、最低でも連続10Aはほしい。特に単体パワーアンプを使うときなどは、連続15A以上のキャパシティーは確保したい。パワーアンプの消費電力は種類によっても異なるが、平均的には連続2〜3A、瞬間的には最大でも5A程度だが、電源に余裕があれば音も悪くならずに済むので、できるだけ大容量のモデルを確保してほしい。変換方式としては、トランス式とスイッチング式がある。前者は重いが耐久性が高く、後者はコンパクトで軽いがノイズが発生しやすいという一長一短がある。そのため、カーAV用としてはトランス式が定番となっている。

いっぽうのバッテリーは、安定化電源から供給された電力を一時的に蓄え、それを機器に渡す架け橋的な存在。そのため容量の大きいものではなくても、安価なもので機能的には十分なのだが、そのクオリティーが結構音に影響を与えることがある。傾向としては大容量であるほど低音や大きな音が力強く、高価なもののほうが解像度が高くなるイメージだ。また、ドライバッテリーは高音がきれいで伸びがよい傾向にあるが、中域の厚みや低域のしっかり感では一般的なウエットバッテリーのほうが好ましいという、形式による違いもある。個人的には大容量のウエットタイプ、サイズ型式でいえば「D23」や「D26」(L、RはどちらでもOK)などがお勧めだが、自分のクルマと同じものを使い、クルマのほうが駄目になったらこちらを搭載するという方法もある。銘柄的には「GSユアサ」や「パナソニック」、「ボッシュ」、欧州車用なら、「バナー」や「ACデルコ」などのミドルハイクラス(最上級のひとつ下)あたりに上質かつコストパフォーマンスの高いバッテリーが並んでいるように感じる。なおバッテリーは能力維持のためにもこまめに満充電することをお勧めする。

スピーカー スピーカーは現在ディナウディオの16cmウーファーとクレイドルのホーン型ツイーターを組み合わせたシステムを構築中。ディナウディオ付属のネットワークではクロスオーバーが芳しくなく、最良の方法を検討中だ。ちなみに現在使っているスピーカーボックスは、コイズミ無線(http://dp00000116.shop-pro.jp)で購入したヒカリ工芸製の「K-20-16-1」。容量20Lのバスレフ式で、穴のサイズは16cm/20cmの2タイプを用意。コイズミ無線では13cm用の小さい穴や、ツイーター用の穴を追加でオーダーすることも可能だ

次にカーAV用のスピーカーを活用したい場合は、スピーカーボックスが必要となる。汎用のスピーカーボックスは秋葉原などにあるスピーカー関連パーツショップで売っているので、これらを活用しよう。16cmまたは13cm用のスピーカーボックスを購入し、その店でツイーター用の穴を加工してもらうのがもっとも手っ取り早いが、自分で別体式のツイーター立て(ツイーター用の穴を開けた板と無加工の板をL字型に組み合わせ自立できるようにしたもの)を作るのもいい。ちなみにボックス容量のお勧めは20L以上。バスレフ形式であればもう少し小容量でも何とかなるが、スピーカーが実力を最大限発揮できるよう、スペースの許すかぎり大きな箱を用意してほしいところだ。

ツイーター用スタンド 自作ツイーター用スタンドの参考例。工作に自信のない人は東急ハンズなどで穴開け加工をしてもらおう。僕もあまり器用ではないので、知り合いのカーオーディオプロショップに作ってもらった

ちなみに僕も、先の特集で紹介した極小ホームシアターのほかに、カーAVホームオーディオシステムを持っている。僕の場合は、クルマにデジタルシステムを導入したことで余ってしまったアナログシステム用プレーヤーや2chアンプを活用したものである。ちなみに、プレーヤー、アンプともに3台以上が転がっているというベタなオタクっぷりに、自分でも辟易するくらいなのだが(汗)。ぜひ皆さんも、せっかくのカーAV機器を余らせることなく、こういった活用方法にチャレンジしてほしい。

ライター/野村ケンジ
ライター/野村ケンジ
カーオーディオ専門誌「AUTO SOUND」、4駆自動車雑誌「4X4MAGAZINE」などでカーAV系を中心に活躍するフリーライター。常に数台のクルマを所有せずにはいられないクルマ狂であり、同時にラジオすら付いていなかった1970年式のフィアット・チンクエチェントに本格カーオーディオを取り付けてしまった音楽狂でもある。