2007年も盛況のうちに幕を閉じた東京モーターショー。その会場の様子やさまざまなニューカーの姿は、価格.comマガジンの「東京モーターショー特集」をはじめとする各Web記事や、自動車雑誌などの紹介ページなどでご覧いただいたことだろう。けれども、あまりにもトピックスが多かったためか、カーAV、カーナビに関する情報はあまり紹介されていないのが実情。しかし実際には、カーAV的にも相当に充実したイベントだったのだ。
その証拠に、僕などはプレスデーだけでは取材が終わらず、結局計4日間も会場に通うことになってしまったほど。それほどまでに充実していた情報をお知らせせずにいるのはもったいない、ということで、今回のコラムでは「カーAVから見た東京モーターショー」として、大注目だったトピックスを遅ればせながら紹介しよう。
ただ、ニュース速報ではないので、ただ単に横並びで製品やクルマを並べても芸がない。そこで、「今日」「明日」そして「未来」というカテゴリーに分け、それぞれの製品/クルマの一体どこが注目すべきポイントとなっていたのか、その意義(というとちょっとオーバーかもしれない?)も含めて紹介したい。
「今日」のカーAVはiPodの独壇場
今日のカーAVという視点で注目だったのは、市販車の純正カーAVの多くに、iPod接続機能が用意されていたことだ。「マツダデミオ」などの今年発売されたばかりの新車はもちろん、「日産キューブ」のような既存モデルにもiPodが接続可能なシステムが用意されており、その対応の早さは驚くべきもの。一昔前だったら、モデルチェンジするまでカーナビやカーAVはそのまま、なんてことはざらにあったのだが、イマドキはそうもいってられなくなってきたのだろう。いい時代になったものだ。ちなみにiPod対応カーAVの装着率は(会場に展示されていたクルマの全てをチェックしたわけではないのであくまでもイメージだが)、展示市販車両の半数近くといったところだ。
「マツダデミオ」の純正ナビ
特に輸入車のiPod装着率がかなり高かった。「プジョー207SW」をはじめとする今年発売されたクルマはほぼ全てがiPodに対応。その普及度たるや、全盛時のMDプレーヤーを超える勢いといえる。いまやiPodは、CD、DVDに続く次世代メディアの代表となりつつあるのだ
プジョー207SWの純正ナビ
「明日」の純正カーAVは話題が豊富
来年以降の発売を予定している「明日」のクルマや製品たちに至っては、もうiPodは当たり前。アウディの「B&Oシステム」やボルボの「ディナウディオ製カーAVシステム」などのプレミアムオーディオには、iPodアダプターが必ずといっていいほど用意されている。音質と手軽さ、イマドキの純正カーAVにはこの2つの両立が不可欠となっている。
「明日」という視点では、さらに注目すべきポイントがある。それは、新たなオーディオメーカーの純正カーAV参入と、純正カーAV全体のレベルアップだ。なかでも「ジャガーXF」シリーズで新規参入を果たした「B&W」は、クルマ好きだけではなく、オーディオ好きの注目も集めている。高級スピーカーを有する「B&W」がクルマではどんな音を聴かせてくれるのか、発売となる来年春がいまから楽しみだ。
「B&Oシステム」搭載のアウディ車内
純正カーAV全体のレベルアップ、という点で注目なのはずばり「スバル」と「三菱」だろう。「スバル」は「レガシィ」での「マッキントッシュ」のような、プレミアムブランドでの展開を他の車種では行っていないものの、「インプレッサWRX STI」の音を聴いて驚いた。骨格のしっかり感ときめ細やかさを併せ持ち、音楽をリアルに、臨場感たっぷりに奏でてくれる。純正カーAVとは思えない、市販カーAVに迫るサウンドクオリティーを持ち合わせていたのだ。
何を隠そう、このクルマに搭載されるカーナビシステムは、「ケンウッド」しかも「トリオモデル」を手がけた音質マイスター大熊氏が陣頭指揮をとって開発したもの。それだけに、これまでの純正イメージからは大きくかけ離れた上質さを獲得することができたようだ。インプレッサを購入する際は、このサウンドが存分に楽しめるメーカーオプション「オーディオ一体型HDDナビ」が必須だと断言しよう。
ケンウッドの音質マイスター大熊氏が陣頭指揮をとって開発した高品質オーディオを搭載したスバル「インプレッサWRX STI」
かたや「三菱」は「新型ランサーエボリューションX」にも、いまやお得意となった「ロックフォードフォズゲート製サウンドシステム」を搭載。上質なサウンドを存分に堪能することができる。しかもモーターショーの会場で、このシステムの開発担当者・五味氏が自ら説明に立つという力の入れようには正直驚いた。会場で彼としばらく話をする時間がもてたが、「化学調味料による若者の味覚障害が問題になっているように、純正カーAVの質もいまや大問題。そのクオリティーを向上させるのはメーカーとしての重要な義務」とその意気込みを語ってくれた。そういった熱い思いを反映した「三菱」の純正カーAVは、今後も要注目だ。
いっぽう、話題のクルマ「日産GT-R」も負けてはいない。昨年の「スカイライン」でユーザーを驚かせたドアの「25cm(!!)ウーファー」を特徴とする「BOSEシステム」をベースに、リアトレイ用のオリジナルのサブウーファーボックスを新開発。トータルチューニングを見直して、スポーツカーであってもそのハイクオリティーサウンドを存分に楽しめる1台に仕上げてきた。純正プレミアムカーAVの老舗であるBOSEの、面目躍如となる渾身の1台といえる完成度だった。
いっぽう「明日」の市販カーAVも見どころがたくさん
今年、市販オーディオメーカー各社は「タイヤ・オーディオ館」というスペースに集められて出展。これが功を奏したようで、こちらへの来場者もひっきりなしとなっていた。
なかでも人気を集めていた「パナソニック」のブースでは、「車載ブルーレイドライブ」のサンプルを展示。実際にデジタルハイビジョン映像のデモンストレーションを行い、その映像の圧倒的な美しさをアピールしていた。市販はもう少し先になるようだが、できれば来年中には発売してほしい製品だ。
「パナソニック」製「車載ブルーレイドライブ」の展示
なにせこの冬は、ホームシアター系ですでに本格的に次世代ディスクの普及が始まっている。「クルマでも見たいからDVDを買わないと」という足かせになってしまわないよう、早い時期の製品化を望みたい。
いっぽう「アルパイン」のブースでは、純正カーAVにiPodを接続できるiPodインターフェイスキット「ex-10」を展示。こちらは11月にアメリカ発売をスタートしたようで、FMトランスミッターによる手軽な再生とブルートゥース対応によるハンズフリーフォン/音楽再生の便利さが話題となっている。日本発売も予定されているようだから、楽しみに待ちたい。
純正カーAVにiPodを接続できるiPodインターフェイスキット「ex-10」(アルパイン)
そして「未来」のカーAVは!?
カーAVの未来については、市販カーAV各社からさまざまな提案がなされていた。
「パイオニア」は、CEATECのコラムでも紹介した、手を動かして画面を操作できる新世代インターフェイスのデモンストレーションのほか、IEEE1394を活用したケーブルシステムの新技術を提案。現在10数本に分かれているケーブルを1本にまとめることができるメリットを活用し、クオリティーの向上と取り付けの簡単さを両立させるプランを提案していた。
未来に向けた提案として面白かったのが「クラリオン」。同じ日立グループとなった「ザナヴィ」との技術的な連携によって、会場ではさまざまなプランを提案。なかでも4台のカメラを活用した「俯瞰ビュー」や、日産車に純正採用される「プローブ型ナビ技術」は要注目。来年以降のナビにどこまで技術が投入されるか、いまから楽しみだ。
パイオニア「IEEE1394を活用したケーブルシステム」の展示
「ケンウッド」のブースも、未来に希望を託した展示品がズラリ。「TRIO」ロゴが刻まれたアンプレスカーナビや「DLNA」を活用した無線システムは、ニーズさえあればすぐにでも実現しそう。その傍らで、紙の地図でなぞった目的地やルートなどの情報がPDAに自動的に取り込まれるシステムもプレゼンテーションされていた。こちらはあまりの便利さに、すぐにでも実現してほしいと切に思った。これだけ直感的な操作が可能であれば、ハイテク機器が苦手な高齢者や女性であっても簡単に使いこなすことがてきるだろう。
地図上でなぞった目的地やルートなどの情報がPDAに自動的に取り込まれるシステム(ケンウッド)
このように、カーAV的な見地からも話題に豊富だった東京モーターショー。なかでも未来に関する展示には、本当に夢があった。ぜひともその多くを実現してほしいものだ。いちカーAVファンとして、製品化を大いに心待ちにしたい。
カーオーディオ専門誌「AUTO SOUND」、4駆自動車雑誌「4X4MAGAZINE」などでカーAV系を中心に活躍するフリーライター。常に数台のクルマを所有せずにはいられないクルマ狂であり、同時にラジオすら付いていなかった1970年式のフィアット・チンクエチェントに本格カーオーディオを取り付けてしまった音楽狂でもある。


