連載記事

ポートレート写真館 フォトグラファー上原辰也の「A woman glitters more」

第1回「桜の木の下で」−夜桜の下で女性を美しく撮る−
2007年4月16日掲載


私にとっての「ポートレート」とは

Canon EOS-1D Mark II EF16-35mm F2.8L USM
(撮影データ)絞り優先AE F3.2 露出補正:±0 ISO感度:800 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:オート Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「昨年、土手の下にある1本の桜が目に留まり、“桜の時期にここで撮りたい”と思いました。土手の上にモデルを配するとバランスのよい作品になると感じたからです。そして今年、暮れ時を狙い、街灯に照らされたほぼ満開の桜を背景に撮影することが出来ました。予想以上に街灯の色がきつかったのですが、結果、空の色との対比が面白く表現できたと思います」

連載第1回目なので、私の考える「ポートレート」について少々話そうと思う。
1990年に結婚式の二次会での撮影を頼まれたことがきっかけとなり、それ以降本格的に「ポートレート」撮影を始めた。
今となってはなぜポートレートをと思ったのかは思い出せないのだが、知人にモデルをお願いしてのいわゆる個人撮影である。撮影に関わることすべてを自分で行わなければならないが、自分なりにいろいろな設定を試せることが面白く、次第にハマっていった。当時は、ポートレートといえば望遠レンズを使って「表情中心」「背景を大きくぼかす」 という撮り方が主流であった。私も200mmや300mmのレンズを使い、"いかにきれいに背景をぼかすか" などの工夫をしていた。
だが、1998年頃から私の作風は変わり始めた。そのきっかけとなったのは、魚住誠一カメラマンの作品の中にある「モデルとの距離感の近さ」 である。それ以降、徐々にモデルの表情を中心とした撮影から「撮影場所の雰囲気や背景を生かす」 という独自の設定にこだわった撮影にシフトし、現在に至っている。

Canon EOS-1D Mark II EF16-35mm F2.8L USM
(撮影データ)絞り優先AE F3.2 露出補正:−2/3 ISO感度:800 記録形式:RAW現像時ホワイトバランス:オート Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「普通、桜を背景に撮影しようとすると、モデルの顔より高い位置に桜の花があるため、そのバランスをうまく処理できず不自然さが出てしまうことが多いと思います。そこで、この写真では、モデルの顔と花の位置が同じ高さになるよう、枝ぶりの低い桜を使い撮影しました。また、この際、前ボケを効果的に取り入れられるよう、モデルの立ち位置にも工夫をしています」

今回のテーマ"桜"について −シチュエーション作りにこだわる−

花など、いわゆる "季節物" を背景とした写真には興味がなかったのだが、2年前、急に夜桜を背景とした撮影を行いたくなり、それ以降毎年、桜を配した撮影を行っている。
この時期の桜のポートレート撮影は、開花時期だけでなく、当日の天候や花見客の有無など不確定な要素が非常に多く、ベストな状況を作るのがなかなか難しい。例えば、開花時期ひとつとっても、今年は、暖冬の影響から開花の予想時期は例年より早めであったが、実際は寒の戻りもあり昨年とほぼ同時期に満開を迎えたといった具合である。しかし、この撮影には、その苦労を補って余りある結果が期待できると感じている。ポイントとしては、「いかにモデルと桜のバランスを自然に見せるか」だと思う。しだれ桜や枝ぶりの低い桜を探し、顔と桜の距離を縮める。あるいは、モデルと桜の距離をとり引き気味に撮影するなどの工夫をしてみてはいかがだろうか。

Canon EOS-1D Mark II EF16-35mm F2.8L USM
(撮影データ)絞り優先AE  F3.2 露出補正:+1 ISO感度:800 ストロボ使用 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:オート Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「川沿いの土手の桜。対岸には街灯があるのですが、桜の木を照らす街灯や照明はなかったので、長時間露光で撮影しています。桜のせりだしている感じを出すため、レンズの広角側を使い桜の枝を大きく取り込んでいます。また、奥行き感が残るように意識して撮影しています」
Canon EOS-1D Mark II EF16-35mm F2.8L USM
(撮影データ)絞り優先AE F3.2 露出補正:+2 ISO感度:400 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:太陽光 Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「この作品はある工夫をして撮影しているのですが、皆さんおわかりになりますか? じつは、100円ショップで販売されていた八重桜の造花を使用しています。普段は造花が目に留まることはないのですが、ふっと目に入り“これは使える!”と思い購入したもの。大きな前ボケと、そして、造花とわからない程度に花全体をボカして撮影しました」

撮影機材について

撮影機材 EOS-1D Mark II ポートレート撮影には、ここ数年は、おもにEOS-1D Mark IIとEF16-35mm F2.8L USM (EOS-1D Mark IIとの組み合わで使用することから、画角は21-46mm相当)を使用している。
この画角のレンズを選んでいる理由としては、16mm側で使用すると背景を大きく取り込むことができ、35mm側で使用するとその場の雰囲気を残しつつ、ほどよく背景をぼかせるからだ。
フォトグラファー/上原辰也
フォトグラファー/上原辰也
千葉大学卒。大学病院、製薬会社に勤務し、その間人物及びモータースポーツ撮影で各写真誌コンテストに入選。主な入選暦は、日本カメラコンテスト カラースライド部門金賞、アサヒカメラコンテスト カラープリント部門1位等。現在、フリーフォトグラファーとして人物やモータースポーツ写真分野で活動中。