連載記事

ポートレート写真館 フォトグラファー上原辰也の「A woman glitters more」

第8回「スポーツ」をテーマにしたポートレート−スポーツの雰囲気を生かす−
2007年11月30日掲載


スポーツを「背景」に利用する

Canon EOS-1D Mark II EF16-35mm F2.8L USM
(撮影データ)絞り優先AE F4 露出補正:+2/3 ISO感度:100 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:オートAdobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「ほぼ満席でしたが、若干の空席があったバックスクリーン脇後方の席を選択。他の観客の顔が写らないように、モデルに振り向いてもらい撮影。曇りの日ですが光がよく回っていたので、どの位置で撮影しても光線状態に問題はありませんでした」

知人に依頼され、バスケットボールの試合を撮影したことをきっかけに、今回はスポーツをテーマにしようと考えた。 もちろん、この時の試合はスポーツ写真として撮影したものであるが、スポーツをいくつかの切り口から撮影することでポートレートに生かせるのではないかと考えた次第である。
1つ目は、試合や練習の様子を背景に取り込んだ設定である。 1枚目の写真は実際に野球を観戦している際に撮影したもの。スポーツ観戦の機会は結構あっても、観戦そのものをポートレート撮影に利用することはあまりないのではないだろうか。

Canon EOS-1D Mark II EF16-35mm F2.8L USM
(撮影データ)絞り優先AE F3.2 露出補正:+1 ISO感度:800 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:色温度指定4500K Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「野球の練習をしている様子を背景に、「憧れの選手を遠くから見ている」と言うイメージで撮りました。夜間の雰囲気を強調するため、ナイター照明が写るようにフレーミングしています」

2枚目の写真は夜間練習している様子を背景に撮影したものである。いずれの写真も、場の臨場感を生かそうと、“引き”(広角)で撮影したものであるが、肝心の選手の存在が小さくてわかり難い点は工夫の余地があると思う。席が自由に選べない、他の観客がいるなどベストな状況を作るのは難しいとしても、観客の少ない場所を探す、選手との距離が近い競技を選ぶ、身近で行われている練習で撮影するなどの工夫をしてみたい。

「スタッフ」を撮影する

2つ目は競技に携わるスタッフの様子を画にできないかと考えた。 そこで、知人の紹介により「SUPER GT」のレーシングチームガレージ内で撮影させていただく機会を得た。以下の2枚の写真は、SUPER GT公式合同テストの際のものである。
モデルは、そのチームのアシスタントマネージャーの方にご協力いただいた。休憩中あるいは作業の合間に、ガレージやトランスポーター内で作業の様子を“再現”していただいたのが左下の写真。“再現”となった理由は、実際の作業中の様子を撮影したもの(写真右下)はスナップに近い印象の写真になってしまうことと、ピットレーン上で撮影するわけにはいかなかったためである。

Canon EOS-1D Mark III EF16-35mm F2.8L II USM
(撮影データ)絞り優先AE  F3.2 露出補正:+2 2/3 ISO感度:400 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:オート Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「マシンがピットインした際、アシスタントマネージャーがドリンクをドライバーに渡す様子をガレージ内で再現してもらったカット。明るいピットレーン側から撮影するとフラットな印象になってしまうため、ピットレーンを背に撮影しています」
撮影協力:KONDO RACING(外部サイト)
Canon EOS-1D Mark III EF16-35mm F2.8L USM
(撮影データ)絞り優先AE F3.5 露出補正:+1 2/3 ISO感度:400 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:太陽光 Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「マシンがピットインした際の様子です。ピットレーンには出られないので、ガレージ内ギリギリの位置から撮影。マシン付近で作業している際は小さめにしか写らないため、マシンから離れた時を狙った1枚です」

スポーツの雰囲気をそのまま生かす

3つ目は、実際にモデル本人がスポーツしている様子を捕らえることにした。ただし、実際に競技をしている様子はスポーツ写真になってしまうので、場や用具をうまく生かせればと考えた。また、球技のほうがモデルひとりでも雰囲気や動感を出せると思い、今回はテニスを選択した。知人が以前テニスのコーチをしていたことから使わせていただけることとなったテニスコートでの撮影である。
最後に、今回のテーマのきっかけとなったバスケットボールの試合の写真を掲載しておく。

Canon EOS-1D Mark III EF16-35mm F2.8L II USM
(撮影データ)マニュアル F3.2 1/10秒 ISO感度:1600 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:色温度指定5500K Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「空いているテニスコート内で撮影。実際にテニスをしている様子はスポーツ写真になってしまうので、ラケットとボールを使い遊んでもらいました。隣のコートで練習を行っていたので、その様子を背景に取り込んでいます」
撮影協力:タウンテニス大泉学園(外部サイト)

Canon EOS-1D Mark II EF200mm F1.8L USM
(撮影データ)マニュアル F2 1/500秒 ISO感度:1600 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:白色蛍光灯 Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「バスケットボールの撮影は経験がなく、「室内」「動きが早い」「動きが読めない」と言うことで、想像以上に難しい撮影でした。とにかくボールの動きを追うことに集中して撮影しました」

撮影機材について

撮影機材 EOS-1D Mark II撮影には、ここ数年、おもに「EOS-1D Mark II」や「EOS-1D Mark III」と広角系のズームレンズEF16-35mm F2.8L USMEF16-35mm F2.8L II USMなどとの組み合わせを使用している。
その理由としては、広角側で使用すると背景を大きく取り込むことができ、標準側で使用するとその場の雰囲気を残しつつ、ほどよく背景をぼかせるからだ。
フォトグラファー/上原辰也
フォトグラファー/上原辰也
千葉大学卒。大学病院、製薬会社に勤務し、その間人物及びモータースポーツ撮影で各写真誌コンテストに入選。主な入選暦は、日本カメラコンテスト カラースライド部門金賞、アサヒカメラコンテスト カラープリント部門1位等。現在、フリーフォトグラファーとして人物写真分野で活動中。
運営ブログは、「Tatsuya Uehara Photo Blog 」(外部サイト)。