連載記事

ポートレート写真館 フォトグラファー上原辰也の「A woman glitters more」

第13回「桜」のポートレート−昼の桜と夜の桜−
2008年4月30日掲載


日中に撮る桜のポートレート

Canon EOS-1D Mark III タムロン SP AF28-75mm F2.8 XR Di
(撮影データ)絞り優先AE F3.2 露出補正:±0 ISO感度:400 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:太陽光 Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「枝ぶりの低い桜を使い撮影。モデルには枝と枝の間に入ってもらい、桜に囲まれているように演出しています。さらに、適度に花がボケて、かつ、桜以外のものの写り込みが少なくなるよう、標準域の画角を選択しています」

数年前から桜をテーマにした撮影を行っており、今年も数回撮影を行った。連載第1回のテーマとして「夜桜」 を取り上げたように、これまでは夜の桜をテーマにすることが多く、「日中の桜」を配したポートレートはあまり撮影したことがなかったのだが、今年は日中の桜で撮ってみることにした。

Canon EOS-1D Mark III EF16-35mm F2.8L II USM
(撮影データ)絞り優先AE F3.5 露出補正:+1/3 ISO感度:400 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:色温度指定5500K Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「枝が頭上に覆い被さり、桜のトンネルのようになっている歩道橋での撮影。何度かこの下を通ったことがあり、目星を付けていました。枝の広がり具合がわかるよう、引き気味に撮影しています」

撮影のポイントとしては、やはり、日中・夜間に関わらず、「いかにモデルと桜のバランスを自然に見せることができるか」だと思う。その手段として、「枝ぶりの低い桜」や「川沿いで川面に覆いかぶさるように咲いている桜」などを使い、花の位置がモデルと同じ高さにくるようにするとよいだろう。桜を背景に撮影しようとすると、モデルの顔より高い位置に桜の花があり、そのバランスをうまく処理できず不自然さが出てしまうことが多いからである。さらに、モデルと花の距離を適度に変えることのできる場所であれば、表現の幅が広がるだろう。レンズ(焦点距離)を変えることで花だけに囲まれている雰囲気を出す、モデルと花の距離を変えることで花のボケ方を調整する、などの工夫ができるからである。

Canon EOS-1D Mark III EF16-35mm F2.8L II USM
(撮影データ)絞り優先AE F3.2 露出補正:+1 ISO感度:400 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:色温度指定5500K Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「春、桜、新学期のスタートというイメージで、川沿いの桜並木を背に撮影しました。頭上の桜と地面の花びらの両方が写り込むように意識して、モデルと桜の距離をとり、桜の木を大きく取り込んでいます」

いっぽう、身近にある桜を背景に撮影しようとすると、モデルの顔より高い位置に桜の花があるケースの方が多いだろう。このようなときは、モデルと桜の距離をとり、桜の木を大きく取り込むようにするとバランスがよいと思う。また、ちょっと変化をつけ、カメラマンが下から見上げるアングルにしても面白い。この場合、当日の天気や撮影場所の状況にもよるが、顔に露出をあわせることで、背景(空)が白く飛び、そこに桜の色が溶け込んでしまう可能性が高いため、日中シンクロする、なるべくピンク色の桜を選ぶ、などの工夫をするとよいだろう。

Canon EOS-1D Mark III EF16-35mm F2.8L II USM
(撮影データ)絞り優先AE F3.5 露出補正:+1 1/3 ISO感度:800 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:オート Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「桜の木のほぼ真下から撮影。顔に露出をあわせることで、背景が白く飛んでしまっていますが、花の色がピンク色のため救われました。また、服は桜のイメージにあわせて用意してもらったもので、この設定にぴったりでした」


ライトアップされた夜桜を背に

今年は、これまで行ったことのない設定でも撮影してみようと考えた。それは、ライトアップされた桜を背景にするというもの。“ライトアップされた桜=かなりの人出で撮影どころではない”というイメージがあったため敬遠していたのだが、やはり予想通り。平日の夜でも結構花見客が多く、場所の選択に苦労した。結果的に、今回は人出の少ない場所に行き着くことができたが、可能ならば下見に行くなどして撮影ポイントの目星をつけておいたほうがよいだろう。
この撮影においても、モデルの顔より高い位置に桜の花が咲いていたので、前述のように、モデルと桜の距離をとり、桜の木を大きく取り込むようにしてバランスを取った。ライトアップの雰囲気もよく出ていると思う。

Canon EOS-1D Mark III EF16-35mm F2.8L II USM
(撮影データ)絞り優先AE F3.2 露出補正:±0 ISO感度:1600 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:白色蛍光灯 Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「桜がライトアップされている場所を何か所か回って、ようやく見つけた撮影ポイント。時間も遅めだったためか、人通りも少ない状況でした。なお、ポートレート撮影で手の処理がうまくまとまらないような場合は、このようにコートを持ってもらうなどすると自然な感じに演出できますよ」

撮影機材について

撮影機材 EOS-1D Mark II撮影には、ここ数年、おもに「EOS-1D Mark II」や「EOS-1D Mark III」と広角系のズームレンズEF16-35mm F2.8L USMEF16-35mm F2.8L II USMなどとの組み合わせを使用している。
その理由としては、広角側で使用すると背景を大きく取り込むことができ、標準側で使用するとその場の雰囲気を残しつつ、ほどよく背景をぼかせるからだ。
フォトグラファー/上原辰也
フォトグラファー/上原辰也
千葉大学卒。大学病院、製薬会社に勤務し、その間人物及びモータースポーツ撮影で各写真誌コンテストに入選。主な入選暦は、日本カメラコンテスト カラースライド部門金賞、アサヒカメラコンテスト カラープリント部門1位等。現在、フリーフォトグラファーとして人物写真分野で活動中。
運営ブログは、「Tatsuya Uehara Photo Blog 」(外部サイト)。