連載記事

ポートレート写真館 フォトグラファー上原辰也の「A woman glitters more」

第15回 「雨」のポートレート−雨粒がなくとも−
2008年7月3日掲載


雨の日に撮る

Canon EOS-1D Mark II EF16-35mm F2.8L USM
(撮影データ) 絞り優先AE F4 露出補正:+1/3 ISO感度:200 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:オート Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「川辺で撮影を行っていたところ、夕立で雨が降り始めました。雨粒も若干写っていますが、地面(コンクリートの部分)を広めに写し込むことで雨の様子を出しています」

この時期、撮影を予定していた日に雨が降るということが結構あるだろう。雨の中の撮影は、モデルや撮影者、何よりも機材が濡れる心配があるため、室内など雨の影響の出ない場所に変更するか、他の日に延期することが多いいのではないだろうか。
とはいえ、普段とは違った雰囲気の写真が得られることも考慮すると、小雨程度であれば撮影を行ってみるのも面白いと思う。
降っている雨の量でも違ってくるが、「雨粒」は、第11回で取り上げた「雪」よりもさらに写りにくい。つまり、雨の降っている様子そのものは見せにくいので、いかに雨の雰囲気を伝えられるかがポイントになる。
雨の雰囲気を生かすには、「地面の濡れている様子を写し込む」、「傘をさしている様子に加え、傘(透明のビニール傘)に付いた水滴を生かす」などの工夫をするとよいだろう。夕方以降の時間帯なら、車のヘッドライトなどの光が濡れた路面に反射している場面はぜひ試していただきたい演出手段。昼間にはない雨の日の雰囲気が得られるので利用してみては。

Canon EOS-1D Mark II EF16-35mm F2.8L USM
(撮影データ) 絞り優先AE F4 露出補正:+2/3 ISO感度:800 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:太陽光 Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「かなり激しい雨の日。加えて、風もあったので立体交差下に逃げ込んだところで撮影(それでも多少雨が吹き込んで来ましたが)。車のヘッドライトからの光が、濡れた路面に反射する位置を狙いました」

雨を演出する

冒頭でも書いたように、撮影を予定していた日に雨が降ることはそこそこあるのだが、逆に、雨を生かした撮影を行おうと思っても、都合よく雨の降ることはそうそうない。ならば、雨を演出して撮影してみよう、と考えた。
前述のように雨の日でも雨粒はほとんど写らず、雨の雰囲気は地面の濡れた様子や傘に付いた水滴で現すことになる。地面をはっきり写さず、傘に付いた水滴を生かすことで、雨粒がなくとも雨の日に見せることができる(モデルや撮影者・機材も濡れる心配のない点でもこの演出によるメリットは大きいと思う)。
それ以外にも、雨の日に水滴がガラスに付いている様子から演出を思いついたのが4枚目の写真。窓ガラスの外側を濡らすことで、雨の日を演出した。この撮影では、背景の色や明るさで水滴の写り具合が違ってくる。水滴が背景に溶け込まないよう、背景にハイライトがこない場所を選ぶなど工夫をした。モニターで水滴の写りを確認しながら撮影を進めるとよいだろう。

Canon EOS-1D Mark III EF16-35mm F2.8L II USM
(撮影データ) 絞り優先AE F3.2 露出補正:+2/3 ISO感度:1600 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:オート Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「以前、雨の日の夜にこれと同じ設定で撮影した際、傘に付いた水滴ははっきりと写っていたのですが雨は写っていませんでした。そこで、傘に付いた水滴を取り入れることで、雨が降っていなくとも雨の日に見せられるだろうと考えました。透明のビニール傘を用意し、霧吹きで適度に水滴を付けています」

Canon EOS-1D Mark III EF16-35mm F2.8L II USM
(撮影データ) 絞り優先AE F3.2 露出補正:+1 ISO感度:1600 記録形式:RAW 現像時ホワイトバランス:オート Adobe Photoshop 5.0LE にて画像処理
「外(背景)に日差しがあると、不自然なだけでなく、明るすぎて水滴がわかりにくいので、日差しが弱くなるのを待って撮影しました。画面が引き締まるよう、アクセントとしてガラスに手を添えてもらっています」

撮影機材について

撮影機材 EOS-1D Mark II撮影には、ここ数年、おもに「EOS-1D Mark II」や「EOS-1D Mark III」と広角系のズームレンズEF16-35mm F2.8L USMEF16-35mm F2.8L II USMなどとの組み合わせを使用している。
その理由としては、広角側で使用すると背景を大きく取り込むことができ、標準側で使用するとその場の雰囲気を残しつつ、ほどよく背景をぼかせるからだ。
フォトグラファー/上原辰也
フォトグラファー/上原辰也
千葉大学卒。大学病院、製薬会社に勤務し、その間人物及びモータースポーツ撮影で各写真誌コンテストに入選。主な入選暦は、日本カメラコンテスト カラースライド部門金賞、アサヒカメラコンテスト カラープリント部門1位等。現在、フリーフォトグラファーとして人物写真分野で活動中。
運営ブログは、「Tatsuya Uehara Photo Blog 」(外部サイト)。