約30年ぶりにニコン純正標準レンズが全面リニューアル
ファン待望の50mm単焦点レンズ「AF-S NIKKOR 50mm F1.4G」
2008年12月に登場した「AF-S NIKKOR 50mm F1.4G」は、ニコンユーザーが待ちに待った35mmフルサイズ用の新型標準レンズ。従来モデル(Ai AF NIKKOR 50mm F1.4D)から設計を見直し、デジタル一眼レフで高い描写力を発揮する話題の製品です。
注目度が高まっている標準レンズ
カメラ通の方であればご存知の通り、“50mm F1.4”といえば、35mmフィルムカメラの「標準レンズ」と呼ばれる、単焦点レンズの基本となるスペックを意味する。人間の視野角に近い画角(焦点距離50mm)を採用し、コンパクトなボディながらも明るい設計(F1.4)なのが特徴だ。また、明るさの割には低価格なのも大きな魅力で、自然な画角・遠近感でボケ味を生かしながら撮影できる標準レンズは、フィルム一眼レフ時代からカメラ通の方に愛用され続けてきたレンズなのである。
標準レンズは、古くは、フィルム一眼レフの付属レンズとしての意味もあったが、ズームレンズが付属レンズとして標準化することで、次第にその役割を失っていった。だが、2008年に35mmフルサイズ対応のデジタル一眼レフが続々と登場したことで、ズームレンズ全盛の今、カメラ通の方を中心に脚光を浴びるようになってきたのだ。実際、2009年2月16日現在、価格.com「レンズ」カテゴリでの注目ランキングの20位以内に4本の標準レンズがランクインしている状況となっている。
あらゆる点が刷新されたデジタル時代の新設計レンズ
ニコン一眼レフ用の純正標準レンズとしては、長年、「Ai AF NIKKOR 50mm F1.4D」(以下、50mm F1.4D)が主力製品としてラインアップされてきた。ロングセラー製品であり、大きな不満があるわけではないものの、フィルム一眼レフ用として1995年に発売されたレンズであるため、35mmフルサイズ(FXフォーマット)対応のデジタル一眼レフ「D3」「D700」などで使用すると、細かい描写力でやや力不足の感があった。諸収差や周辺光量なども、他メーカーの最新標準レンズと比べると見劣りする部分があり、ニコンユーザーからは「50mm F1.4」のリニューアルが強く望まれていた。
そんな中、価格.comプロダクトアワード2008プロダクト大賞を受賞した「D700」の人気に後押しされるようにして、2008年12月、新しい標準レンズ「AF-S NIKKOR 50mm F1.4G」(以下、50mm F1.4G)が登場した。完全にデジタル向けに再設計された製品で、50mm F1.4Dから設計を一新。7群8枚のレンズ構成で、デジタル一眼レフでもすぐれた描写力を発揮するだけでなく、諸収差も大幅に低減するようになったという。また、絞り羽根が、50mm F1.4Dの7枚から9枚に増え、円形絞りになった点も見逃せない。より自然なボケ味を楽しめるようになったわけだ。
さらに、静寂でスムーズなAFを実現する超音波モーター(SWM)を採用したのも重要なポイントだ。モーター内蔵であるため、「D60」「D40」などでAFが動作するのも、ユーザーにはうれしい点だろう。なお、APS-Cデジタル一眼レフでは焦点距離75mm相当となり、中望遠レンズとして使用できる。
■50mm F1.4Gと50mm F1.4Dの基本スペック
| 製品 | 50mm F1.4G | 50mm F1.4D |
|---|---|---|
| 最大絞り | F1.4 | |
| 最小絞り | F16 | |
| レンズ構成 | 7群8枚 | 6群7枚 |
| 最短撮影距離 | 0.45m | |
| 絞りの羽根枚数 | 9枚(円形絞り) | 7枚 |
| フィルターサイズ | 58mm | 52mm |
| 最大径×長さ | 73.5×54mm | 64.5×42.5mm |
| 重量 | 約280g | 約230g |
繊細な描写と自然なボケ味を楽しめる
今回、主に「D700」に装着して撮影を行ってみたが、他メーカーの標準レンズと比べて、やわらかい描写をするレンズだと感じた。特に、開放付近では、かなりやわらかい描写となる。このあたりの傾向は、正直なところ、50mm F1.4Dと似ていると感じた。ただ、ピント面がしっかりと解像するのが50mm F1.4Gのポイント。開放時(F1.4)でも、周辺部がやや甘いと感じるものの、ピント面はしっかりと解像してくれる。また、線の描写が細かく、無理にシャープ感を出さないのも好印象。非常に繊細な描写をするレンズに仕上がっている。
実際のところ、デジタル向けに設計し直されたこともあって、50mm F1.4Gの描写については、硬くてシャープなものをイメージしていた。そのため、やわらかくて繊細な描写傾向を発揮することに、少々驚かされた。F5.6〜F8程度にまで絞ればクッキリとシャープな解像となるが、このレンズの描写力を最大限に生かすには、F2〜F4程度で使用するのがベストではないだろうか。
ボケ味については、開放付近ではややうるさい感じになる場合もあるが、50mm F1.4Dに比べて、より自然な感じに仕上げてくれる印象。9枚羽根を採用しており、絞った状態でも円形ボケを保ってくれるのがポイントで、ほぼ全ての絞り値で、うるさくない自然なボケ味を楽しむことができる。また、諸収差と周辺光量落ちについては、50mm F1.4Dから大きく進歩している。特に、周辺光量落ちについては、かなり抑制されるようになっており、開放時でもそれほど気になることなく使用できる。
使い勝手の面では、「M/Aモード」に対応し、フルタイムマニュアルフォーカスが使用できるのがポイント。AFを使いながら手動でピントを微調整できるようになった。フォーカスリングは、50mm 1.4Dに比べるとやや重めで、適度なトルク感があり、扱いやすかった。
なお、描写力とは関係のないところであるが、このレンズで気になったのは、AFの合焦速度だ。超音波モーター(SWM)採用で動作音が静かになったのはよいのだが、D700で使用してみた限りでは、50mm F1.4Dと比べて、それほどAFが速くなっているとは感じなかった。ただ、AF精度についてはまったく問題はないので、その点は安心してほしい。
自由作例
※サムネイルをクリックすると撮影時の画像(JPEG)が別ウィンドウで表示されます
レポートまとめ
「50mm F1.4G」は、30年ぶりに光学系のリニューアルを果たしたニコン純正の標準レンズ。その登場を心待ちにしていたコアなニコンユーザーの中には、期待値が高かった分、独自のレンズコーティング技術「ナノクリスタルコート」を採用しないなど、スペック面でややもの足りないと感じる方もいるかもしれない。だが、仕上がり具合は、こうしたデメリットを十二分に補っている。特に、流行のカリカリとしたシャープな描写で解像感を高めるのではなく、ニコンの標準レンズらしく、やわらかな描写力を継承しているのが高ポイント。はじめての標準レンズとしてだけでなく、フィルム一眼レフ時代からの長年のニコンユーザーの方にも、ぜひ使用していただきたい1本だ。
















