
2009年9月2日
今回は、この不景気の中でも調子がいいと言われている「炊飯器」についてのトレンドを見てみた。図1は、価格.comの炊飯器カテゴリのアクセス数の推移を示したもの。これを見ると、今からちょうど1年前くらいとなる2008年9月より、アクセス数がワンレベル上に上がっていることがわかるだろう。その後、今年1月くらいをピークとして、アクセス数はやや下落しているが、それでも月間100万PVのラインを下限として、アクセス数自体は安定していることが見て取れる。2008年9月といえば、アメリカでいわゆる「リーマン・ショック」が起こった月であるが、その後も炊飯器カテゴリの人気は衰えず、むしろそこから伸びていったという点が興味深い。
以上のことからもわかるように、今、家電業界では、ちょっとした炊飯器のプチブームが起こっている。そのブームを牽引しているのは、いわゆる「高級炊飯器」と呼ばれるような比較的高価格の炊飯器製品だ。図2は、価格.comの炊飯器カテゴリにおける、売れ筋製品の価格帯の推移を示したものだが、ちょうど2008年9月くらいから、30,000円を超えるような高額製品のシェアが増してきていることがわかる。この傾向は炊飯器カテゴリのアクセス数が最高を記録したちょうど2009年1月くらいまで続き、その後はやや縮小に向かっているが、それでも30,000円を超えるような高額製品のシェアは4割前後で安定しており、一定の人気が持続していることがわかる結果となっている。
なかでも、5万円を超えるような高級モデルのシェアが、2009年2月以降ずっと20%程度を維持していることに注目してほしい。不景気だと言われつつも、炊飯器の世界では、5万円を超えるような高級モデルが売れているということがわかる。
図3は、価格.comの炊飯器カテゴリにおける、メーカー別アクセス数の推移である。これを見ると、2008年前半と今とでは、人気の上位を占めるメーカーに大きな変化が起こっていることがわかる。2008年1月時点でもっとも人気のあったメーカーは「象印」、次いで「パナソニック(ナショナル)」である。特に「象印」の「極め炊き」シリーズは、2008年1月当時では、価格.comの炊飯器カテゴリにおいて圧倒的な人気があり、人気ランキングでは常に上位の常連だった。
しかし、この流れが2008年夏を境に一気に変わっていく。この時期から急激に人気を集めていったのが、三洋電機の「おどり炊き」シリーズである。「おどり炊き」シリーズは、象印の「極め炊き」シリーズと同様、「圧力」と「IH」を組み合わせた「圧力IHジャー炊飯器」であるが、「極め炊き」シリーズが比較的低価格な製品(実売価格で2万円台中心)を中心に展開していたのに対し、「おどり炊き」は、最高級モデルである「匠純銅おどり炊き」をはじめとして、こだわりの機能を満載したやや高級な製品としてのシリーズ展開を行った。価格帯的には、3万円台が中心の「おどり炊き」シリーズだったが、その炊きあがりのおいしさがクチコミなどで評判となり、瞬く間に人気製品となる。これに対して、それまで「低価格の割においしい」とされていた「極め炊き」の人気がやや下落していった。多くの消費者が、「価格」よりも炊きあがりの「味」(質)を選んだ、ひとつの大きな転換点といえるかもしれない。
この三洋電機の躍進と並んでもう1つ象徴的なのが「三菱電機」の急上昇だ。図3を見ると、やはり2008年の夏以降、じわじわと人気のシェアを上げていっており、三洋電機の「おどり炊き」ほどの爆発的な人気ではないものの、今やそれに匹敵するほどの人気製品となっている。三菱電機といえば、2年ほど前に本格的な炭釜を採用した高級炊飯器「本炭釜」で一躍話題を集めたが、その後この「本炭釜」シリーズの価格が安くなり、5〜6万円台くらいの価格になった頃から人気が上昇してきた。さらに、今年2月には、蒸気の出ない「蒸気レス炊飯器」として登場した「NJ-XS10J」が一躍話題となり、人気ランキング上位の常連となった。このように、最近の三菱電機の炊飯器は一貫して5万円を超えるような高級志向で展開してきているが、それらがことごとく当たった形だ。
図4は、価格.comでの人気製品の価格推移だ。これを見ると、「高級機」とされている三洋電機の「匠純銅おどり炊き ECJ-XP1000」も、三菱電機「NJ-XS10J」も、初登場時に比べ、大幅に値段が下がっていることが見て取れる。「匠純銅おどり炊き ECJ-XP1000」は10万円台だったものが約6万円まで下落。「NJ-XS10J」も8万円台だったものが4万円台にまで下落している。このように、高級炊飯器の価格がかなり下落して買いやすくなってきたことが、最近の高級炊飯器の人気に火をつけた大きな要素と考えられる。
これに対して、「おどり炊き」に見られるような中位モデルの製品は、それほど大きな価格の下落はなく、2万円台、3万円台というところで安定している。ただし、「おどり炊き ECJ-JG10」のような下位モデルになってくると、2万円を割り込み1万円台に下落している。こうした中位モデルの価格下落が、図2で見られるような2万円未満の製品シェアの増加につながっていると見ることができるだろう。つまり、低価格製品のシェア拡大は、消費者が求める炊飯器の製品のランクが下がったということではなく、同じ製品の価格が下がったためであると見たほうがいい。
【図5 価格.comにおける「NJ-XS10J」詳細情報ページ】
以上見てきたように、炊飯器市場は今、三洋電機の「おどり炊き」に代表されるような、2〜3万円台で購入できる、やや高級な「圧力IHジャー炊飯器」を中心に人気を博しているが、たとえば三菱電機の「NJ-XS10J」のような「超高級モデル」も、その人気を増しているという状況である。不況でモノが売れなくなったとはいうが、家庭での「食」を支える調理器具の代表格ともいえる炊飯器に関していえば、消費者の高級志向は依然衰えていないようだ。
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