高速・高精度なトラッキングAFや約40コマ/秒の超高速連写を実現 静止画も動画も大きく進化! 高性能フルサイズミラーレスカメラ キヤノン「EOS R6 Mark II」徹底解剖

高性能なモデルが数多くラインアップする、群雄割拠のフルサイズミラーレスカメラ。その中でも、この冬、目の肥えたハイアマチュアユーザーから注目を集めているのが、キヤノンの新しいスタンダードモデル「EOS R6 Mark II」だ。新開発の撮像素子を採用し、静止画撮影と動画撮影の両面で、従来モデル「EOS R6」から大幅な性能向上を実現している。本特集では、そんな「EOS R6 Mark II」の「AF&連写」「画質」「動画撮影」をレビュー。カメラとしての魅力を詳しく解説しよう。

AF&連写進化したトラッキングAFと約40コマ/秒連写が
“一瞬の動き”を確実にとらえる

キヤノン「EOS R6 Mark II」

従来モデルを上回るハイスペックを実現した「EOS R6 Mark II」。キットレンズとして用意される標準ズームレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」を装着したイメージ

「EOS R6 Mark II」は、“Mark II”という製品名からもわかるように、フルサイズミラーレスカメラのスタンダードモデルとして人気を博した「EOS R6」の後継機種だ。「シンプルな操作性で使い勝手がよく、本格的な動体撮影に活用できるフルサイズカメラ」という従来モデルの特徴を継承しつつ、撮像素子に、新開発となる有効約2420万画素のフルサイズCMOSセンサーを採用することで、静止画撮影と動画撮影の両方でさらなる高性能を実現している。

キヤノン「EOS R6 Mark II」

「EOS R6 Mark II」のハードウェア面では、有効約2420万画素のフルサイズCMOSセンサーを新たに採用したのがトピック。この新センサーに、最新の映像エンジン「DIGIC X」を組み合わせることで、AFや連写、画質、動画撮影など全方位で飛躍的な性能向上を実現している

「EOS R6 Mark II」の数多くの進化点の中で特に注目したいのが、AF性能と超高速連写性能だ。

AFでは、上位モデル「EOS R3」譲りとなる、ディープラーニング技術を活用したアルゴリズム「EOS iTR AF X」を搭載することで、従来モデルを超える高速かつ高精度な被写体検出とトラッキングを実現している。従来モデルでもAFの速度・精度は十分に満足できるものだったが、「EOS R6 Mark II」はその性能がワンランク上がり、予測しにくい動きの被写体に対しても、スピーディーにピントを合わせ、粘り強く追尾することが可能だ。

たとえば、人物に対するAFは、瞳/顔に加えて頭部や胴体にも対応し、顔が見えない状態でも検出が可能に。さらに、瞳の検出性能も大きく向上しており、横顔やマスク装着時などでも、より正確に瞳を捕捉できる。機能面では、瞳の「右目優先」と「左目優先」の設定が追加されたのがポイントで、撮影したい顔の向きに合わせて優先設定を切り替え、狙ったほうの瞳に素早くピントを合わせられるようになった。

キヤノン「EOS R6 Mark II」

「EOS R6 Mark II」の瞳検出は、ユーザーが右目と左目のどちらを優先するか選択することが可能。カメラが自動的に左右の瞳を選択する自動設定も用意されている

進化した瞳検出の精度を動画でチェック!

「EOS R6 Mark II」の瞳検出の動作を記録した動画。この動画を見れば、顔が横を向いた状態でも瞳をとらえて離さないことがわかるはずだ。また、この動画では、瞳検出の「右目優先」と「左目優先」をボタン操作で切り替えている(※ボタンカスタマイズでボタンに機能を割り当てることで、撮影を続けながら設定を切り替えられるようになる)。撮影者の狙いや、人物の顔の向きに合わせて、スムーズに切り替えられるのが便利だ。

高精度な瞳検出を使って撮影した作例をチェック

キヤノン「EOS R6 Mark II」

EOS R6 Mark II、RF85mm F1.2 L USM、F1.2、1/500秒、ISO200、ピクチャースタイル:忠実設定、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、高輝度側・階調優先:強

被写体に自由にポージングしてもらいながら撮影したポートレート作例。顔の向きに合わせて瞳検出の優先設定を変えながら撮影している。「EOS R6 Mark II」の瞳検出は非常に性能が高く、瞳を高速かつ正確にとらえ続けてくれる。そのおかげで、被写体が一瞬見せた、リラックスした表情を収めることができた。

さらに、「EOS R6 Mark II」のAFは、検出可能な被写体として、「動物優先」に「馬」が、「乗り物優先」に「鉄道/飛行機」が新たに追加された。これによって、「動物優先」は「犬」「猫」「鳥」「馬」の4種類に、「乗り物優先」は「車(モータスポーツ)」「バイク(モータースポーツ)」「鉄道」「飛行機」の4種類に対応。より幅広い被写体を自動で検出して撮影できるようになった。

キヤノン「EOS R6 Mark II」
キヤノン「EOS R6 Mark II」

「動物優先」では「馬」の検出が可能に。騎手が乗っている状態でも馬の顔や瞳を検出できる。「乗り物優先」には「鉄道/飛行機」が追加された

動く被写体を撮影するうえでは、AFの性能と合わせて連写速度も重要だ。その点でも、「EOS R6 Mark II」の性能向上には目を見張るものがある。電子シャッター時に、AF/AE追従で最高約40コマ/秒という、スタンダードモデルのフルサイズミラーレスカメラとしてはクラス最速(※価格.com調べ)となる超高速連写を実現しているのだ。加えて、キヤノンのミラーレスカメラ「EOS Rシリーズ」のフルサイズ機として初めて、プリ撮影対応のRAW連続撮影機能「RAWバーストモード」も搭載している。

超高速40コマ/秒連写で撮影した作例をチェック

キヤノン「EOS R6 Mark II」

EOS R6 Mark II、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM、500mm、F6.7、1/3000秒、ISO1250、ピクチャースタイル:忠実設定、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、高輝度側・階調優先:強

この作例は、AF/AE追従で最高約40コマ/秒の高速連写を使って、着陸する飛行機を撮影した1枚。約40コマ/秒という超高速連写によって、タイヤが滑走路に接地して煙が上がる瞬間を簡単にとらえることができた。また、この作例は、被写体検出を「乗り物優先」に設定して撮っているが、コックピットにしっかりとピントを合わせ続けてくれたことも付け加えておきたい。高精度な被写体の検出・トラッキングが可能なAFと、充実した連写性能・機能を搭載した「EOS R6 Mark II」なら、こうした一瞬の動きをより確実に記録することが可能だ。

キヤノン「EOS R6 Mark II」

約30コマ/秒でのAF追従連写が可能な「RAWバーストモード」を新搭載。シャッターボタンを押す直前(約0.5秒前)から記録を開始するプリ撮影にも対応している

キヤノン「EOS R6 Mark II」

背面の操作系は、従来モデル「EOS R6」を継承しつつ、操作のしやすさを向上させるアップデートが施されている。AFの測距点の移動・選択で使用するマルチコントローラーは、中央が押しやすいような形状に変更された

画質解像性能が大幅に向上。
野鳥撮影に便利な「デジタルテレコン」を新搭載

続いて、「EOS R6 Mark II」の画質の仕上がりをレポートしよう。

画質面のポイントは、従来モデル「EOS R6」から画素数が約410万画素増えた、新開発となる有効約2420万画素のフルサイズCMOSセンサーを搭載していること。この新開発センサーに最新の映像エンジン「DIGIC X」を組み合わせることで、非常に高い解像感と、ノイズを抑えた高感度画質を両立。低感度でも高感度でも色再現性が高く、バランスのよい画質で撮ることが可能だ。解像力については、新しいシャープネス処理を採用することで、有効約3040万画素センサー搭載のデジタル一眼レフ「EOS 5D Mark IV」を超える性能を実現しているのだから驚かされる。 ※ ISO12233準拠のCIPA解像度チャートでの評価、ピクチャースタイルの初期条件にて。

「EOS R6 Mark II」の解像感の高さを作例でチェック

キヤノン「EOS R6 Mark II」

EOS R6 Mark II、RF24-105mm F4 L IS USM、24mm、F8、1/90秒、ISO100、ピクチャースタイル:オート、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)

切り出し画像

キヤノン「EOS R6 Mark II」

「EOS R6 Mark II」の解像性能を見るために撮影した作例。キットレンズとして用意される標準ズームレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」の広角端(焦点距離24mm)で撮っているが、草木や建物の細かいところまでしっかりと描写できているのがわかる。デジタル一眼レフ「EOS 5D Mark IV」をしのぐ解像性能というのも納得できる画質だ。

キヤノン「EOS R6 Mark II」

EOS R6 Mark II、RF85mm F1.2 L USM、F1.2、1/180秒、ISO200、ピクチャースタイル:オート、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、高輝度側・階調優先:強

切り出し画像

キヤノン「EOS R6 Mark II」

「こちらは大口径・中望遠レンズ「RF85mm F1.2 L USM」の開放絞り値F1.2で撮影したもの。瞳検出を使って左の瞳にフォーカスを合わせているが、ピント位置では非常に高い解像感が得られている。

撮影機能では、シャドーからハイライトまで拡張性の高い写真が撮れる「HDRモード」に、1枚撮影で広いダイナミックレンジが得られる「動体優先」が追加されたのが大きなトピック。この「動体優先」を使用すれば、人物や動物など動く被写体に対してもHDR効果を用いた写真が撮影できる。表現の幅を広げる機能強化だ。

キヤノン「EOS R6 Mark II」

「HDRモード」に、1枚撮影でダイナミックレンジの広い画像を記録できる「動体優先」が追加された。3枚連続で撮影して合成する「Dレンジ優先」も選択できる

「動体優先」の効果をチェック

EOS R6 Mark II、RF85mm F1.2 L USM、F1.2、1/2000秒、ISO800、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)

窓から強い光が入る屋内で、「HDRモード」の「動体優先」の効果をテストしてみた。自由にポージングする人物を被写体に、「動体優先」のオン・オフで撮り比べているが、違いは歴然としており、「動体優先」のほうは、シャドーの黒潰れとハイライトの白飛びが抑えられて、階調性の高い画質に仕上がっている。感度の下限がISO800になるなど制限はあるものの、人物など動く被写体を撮る場合に、積極的に活用したい機能だ。

さらに、ユニークな撮影機能として注目したいのが、撮影倍率を2倍/4倍に拡大して約2420万画素で記録する「デジタルテレコン」だ。この新機能は、デジタルズーム処理を行うことによって記録画素数はそのままに撮影倍率を上げるというもの。クロップと併用すれば、約3.2倍/6.4倍にまで撮影倍率が拡大する。野鳥や動物など遠くの被写体を大きく撮るのに活用できる便利機能だ。

キヤノン「EOS R6 Mark II」

「デジタルテレコン」の設定画面。2倍と4倍の拡大を選択できる。画素数がAPS-C領域相当に下がるトリミングとは違い、約2420万画素をキープするのがポイント

「デジタルテレコン」を使って撮影した作例をチェック

キヤノン「EOS R6 Mark II」

EOS R6 Mark II、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM、500mm(デジタルテレコン4.0xを使用)、F6.7、1/1500秒、ISO3200、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、高輝度側・階調優先:強

超望遠ズームレンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」と4倍の「デジタルテレコン」を使って、遠くにいる野鳥をとらえた写真。焦点距離2000mm相当での超望遠撮影となり、被写体を大きく写すことができた。約40コマ/秒の超高速連写と組み合わせることで、鳥が羽ばたいた瞬間を記録できている。

このほか、「EOS R6 Mark II」の画質関連では、キヤノン純正のRAW現像ソフト「Digital Photo Professional 4」に、有償オプションの高画質処理ツール「Neural network Image Processing Tool」(Windows用)が追加されたことも報告しておきたい。このツールは、「EOS R6 Mark II」のなどの対応カメラならびに対応レンズを使って撮影したRAWデータに対して、ディープラーニング技術を活用した高度な画像処理(ジャギー/モアレ/偽色抑制、ノイズ低減、光学補正の3種類)を施すというもの。月額550円(税込)もしくは年額5,500円のサブスクリプション課金で利用できる。

「Neural network Image Processing Tool」の効果をチェック

Beforeキヤノン「EOS R6 Mark II」
Afterキヤノン「EOS R6 Mark II」

「Neural network Image Processing Tool」の効果を比較した画像。「Neural network Image Processing Tool」を使って現像を行うことで、ノイズを抑え、より解像感の高い写真に仕上げることができる 画像の出典元:キヤノン「ディープラーニング技術を用いた高度な画像処理ツール」

動画撮影高画質4K UHD/60p記録など多彩な動画撮影に対応。
最大6時間の長時間記録も実現

「EOS R6 Mark II」は、静止画撮影機能だけでなく、動画撮影機能も非常に充実している。

4K動画の撮影は、上位モデル「EOS R3」と同様に、6Kオーバーサンプリングによる高画質な4K UHD/60p記録に対応するのが魅力。RGBそれぞれを6Kデータで生成してから4Kにリサイズする処理によって、低感度から高感度まで、解像感と色再現性にすぐれた4K画質で記録できる。加えて、もう少し望遠で撮りたい場合に便利な、クロップでの4K UHD/60p記録に対応する点も見逃せない。高画質に撮りたい場合でも、より望遠で撮りたい場合でも4K UHD/60pを選択できるのは非常にありがたい。

「EOS R6 Mark II」で撮影した4K UHD/60p動画

キヤノン「EOS R6 Mark II」

「EOS R6 Mark II」を使って撮影した4K UHD/60p 動画。6Kオーバーサンプリングによって精細感が高く、立体的な映像に仕上がっている。再現するのが難しい赤色の再現性にすぐれるのもポイントだ。

キヤノン「EOS R6 Mark II」

「EOS R6 Mark II」は、ボディ上面の左手側に静止画撮影/動画撮影の切り替えレバーが新設された。静止画撮影と動画撮影をよりスピーディーに切り替えながら撮影することができる

キヤノン「EOS R6 Mark II」

4K UHD/60pの動画撮影に対応。6Kオーバーサンプリングによって高画質に記録できる

撮影機能も充実しており、高彩度の被写体でも見た目に近い色やコントラストで再現できるHDR PQ動画(10bit)の記録が可能。コントラストの高いシーンもハイライト側の階調を豊かに表現できるCanon Log 3(10bit)にも対応しており、撮影後のグレーディングを前提とした高度な動画撮影が可能だ。さらに、HDMI出力では、ProRes RAW形式での6K/60p 10bit RAW動画や、3.7K/60p 12bit RAW動画の記録に対応。より本格的な撮影に対応できるのも、「EOS R6 Mark II」の動画撮影の見逃せないポイントだ。

キヤノン「EOS R6 Mark II」

本格的なグレーディングを行う場合に活用したい、Canon Log 3(10bit)でのログ撮影に対応している

さらに、「EOS R6 Mark II」の動画撮影機能で見逃せないのが、1回あたりの動画記録時間が、従来モデル「EOS R6」の最大29分59秒から最大6時間へと大幅に向上したこと。長回し動画の撮影にも対応できるようになったのは、使い方の幅を広げる意味で注目したい進化だ。

このほか、動画撮影関連では、「CINEMA EOS」カメラに搭載されているいくつかの機能を、「EOSシリーズ」のミラーレスカメラとして初めて採用するのも特徴だ。具体的には、記録開始前の5秒/3秒から映像を記録するプレ記録機能と、動画記録中に画面の外周に赤枠を点滅表示する強調表示機能を利用できるようになった。また、動画サーボAFでは、画面内に被写体を検出できないときにフォーカシングを待機する「検出限定」を追加。フォーカシングによる画角の変化をカメラが自動的に補正するフォーカスブリージング補正機能などの便利機能も備わっている。

動画サーボAFの「検出限定」を使って撮影した動画

動画サーボAFに追加された新設定「検出限定」は、画面内に被写体を検出すると自動的にフォーカシングとトラッキングを行い、検出しないとフォーカシングを待機するというもの。「検出限定」を使えば、この動画のように、被写体(人物)が画面から外れていくシーンでも、フォーカスが後ろに抜けることなく自然な動きの映像で記録できる。

まとめ静止画も動画もハイレベルにこなせる、
買い替えの本命モデル

本特集で見てきたように、「EOS R6 Mark II」は、AFや連写、画質、動画撮影、操作性など全方位にわたって、大幅な進化を遂げたフルサイズミラーレスカメラだ。

AFは、人物の瞳検出の精度が大幅に向上したうえ、新たに「馬」と「鉄道/飛行機」の検出にも対応し、より多彩な撮影が可能になった。最高約40コマ/秒の超高速連写を実現したのも見逃せないポイントで、AF性能の向上と相まって、さらに動体撮影に強いカメラに進化している。加えて、6Kオーバーサンプリングでの高画質な4K UHD/60p記録に対応するなど動画撮影もハイレベル。細かい機能性も向上しており、静止画撮影での「デジタルテレコン」や、動画撮影でのプレ記録といった便利な新機能も搭載している。

こうした「EOS R6 Mark II」の特徴をまとめると、「静止画撮影にも動画撮影にも妥協のない、ハイブリッドな使い方ができるスタンダードモデル」と言えるだろう。何でもこなせる高性能なミラーレスカメラを探している人にとって、まさにピッタリのモデルだ。これまでミラーレスへの移行を躊躇していた一眼レフカメラユーザーにとっても、買い替えの本命モデルが登場したと言ってよいだろう。

この記事は2022年12月15日の情報を基にしております。