高速処理が可能な裏面照射積層型センサーを搭載!富士フイルム渾身のハイスペックミラーレス「X-H2S」ファームウェアVer.3.00の進化に迫る!

「X-H2S」は、高速読み出しに対応する裏面照射積層型センサー「X-Trans CMOS 5 HS」などの最先端技術を惜しげもなく詰め込んだ、富士フイルムのフラッグシップミラーレスカメラ。本特集で主に注目するのは、2023年1月12日に公開された最新のファームウェア(2023年2月15日時点)Ver.3.00へのアップデートによってAF性能が飛躍的に向上した点だ。進化したAFと充実した動画撮影機能を掘り下げながら、「X-H2S」の魅力に迫っていく。
基本特徴
裏面照射積層型センサーを搭載し、超高速連写や
高性能AFを実現!

高速読み出しが可能な裏面照射積層型センサー「X-Trans CMOS 5HS」を搭載する、富士フイルム「Xシリーズ」のフラッグシップモデル「X-H2S」(装着しているレンズは標準ズームレンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」)
「X-H2S」は、APS-Cサイズの撮像素子を採用する、小型・軽量で高画質なミラーレスカメラ「Xシリーズ」のフラッグシップモデル。プロやハイアマチュアの高い要求にも応えられるハイスペックなカメラだ。
スペック面での最大の特徴は、有効約2616万画素の裏面照射積層型センサー「X-Trans CMOS 5HS」を搭載していること。「Xシリーズ」として唯一となる積層型構造(露光面の背面に、信号処理や読み出しをするチップを配置する構造)を採用する高性能センサーで、前世代と比べてデータの読み出し速度が約4倍に向上。このセンサーと第5世代の画像処理エンジン「X-Processor 5※1」を組み合わせることによって、「X-H2S」は、最速40コマ/秒のブラックアウトフリー高速連写や、高速・高精度に被写体を検出・追尾するAF、4K/120p記録に対応する動画撮影など、歴代「Xシリーズ」の中でも最高レベルとなる高性能を実現している。

前世代と比べて読み出し速度が約4倍に高速化した裏面照射積層型センサー「X-Trans CMOS 5HS」。このセンサーと第5世代の画像処理エンジン「X-Processor 5※1」を搭載することで、連写やAF、動画撮影などにおいて非常に高い性能を実現している
※1 現行機比約2倍の高速処理を実現する、新開発プロセッサー。
高速読み出しに対応する裏面照射積層型センサーは、連写やAFなどの基本性能だけでなく、カメラとしての使い勝手のよさを向上させることにも大きく寄与している。その中でも特に注目したいのが、一般的なイメージセンサーを搭載するカメラと比べて、電子シャッター時に発生するローリングシャッター歪みが大幅に抑えられていること。スポーツや野鳥など、被写体が素早く動くシーンを撮影する場合でも、メカシャッターと同じ感覚で、被写体が歪むことを気にせずに使用できるのだ。
さらに、フラッグシップモデルらしく操作性にもこだわっている。カメラの使い勝手を大きく左右する電子ビューファインダーは、倍率0.80倍※2、画素数約576万ドットのハイスペックを実現。「Xシリーズ」史上最高性能を誇る、視認性にすぐれたファインダーに仕上がっている。そのほか、より深く握れる形状のグリップを採用するなど、細かいところで撮影のしやすさを追求しているのも見逃せないポイント。ストレスフリーで撮影に集中することが可能だ。
※2 35mm判換算50mmレンズ、無限遠、視度-1.0m-1 のとき。
連写、AF、動画撮影、操作性のほかにも、「X-H2S」には押さえておきたい特徴がある。それは価格だ。高性能な裏面照射積層型センサーを搭載するカメラはどうしても高額になる傾向があるが、「X-H2S」は、その中では比較的価格が抑えられている。最新の価格情報は価格.comの製品ページをチェックしてほしいが、裏面照射積層型センサー機としては非常に高いコストパフォーマンスを実現している。
- 「X-H2S」の詳細スペックは以下の特集記事をチェック!
- 富士フイルム 新型ミラーレスカメラ「X-H2S」実力チェック
AF性能
ファームウェアVer.3.00でAFが劇的に進化!
使い勝手を徹底レビュー
「X-H2S」は、2023年1月12日に公開された最新のファームウェア(2023年2月15日時点)Ver.3.00へのアップデートによって、「Xシリーズ」史上最高のAFがさらに進化している。具体的には、「AIによる被写体検出機能の強化」と「動体追従性能の向上」が大きな進化点だ。
進化点AIによる被写体検出機能の強化
「X-H2S」は、動物や鳥、車など多彩な被写体を検出対象として選択できるようになっており、対象の被写体に対してピントを自動的に合わせる「被写体検出AF」を搭載している。この機能はAI技術を用いて開発されているが、富士フイルムは「X-H2S」の発売後もディープラーニングによる学習を継続的に実施しており、ファームウェアVer.3.00には、その最新の学習内容を反映。逆光下での撮影や、被写体が横を向いている状態での撮影、被写体の大きさが小さい状態での撮影などにおいて検出精度が大きく向上している。
さらに、「被写体検出AF」の検出対象として、既存の「人物(顔/瞳)」「動物」「鳥」「車」「バイク」「自転車」「飛行機」「電車」に加えて、「昆虫」と「ドローン」が追加され、計10種類の被写体を検出できるようになった。2023年2月24日時点では、APS-Cミラーレスカメラとして最も多くの種類の被写体を検出できるモデルである(※価格.com調べ)。
進化点動体追従性能の向上
「X-H2S」のファームウェアVer.3.00では、AFのアルゴリズムも改善されている。動体追従性能が向上しており、高速で移動する被写体に対しても、より安定したトラッキングが行えるようになった。
今回、最新のファームウェア(2023年2月15日時点)Ver.3.00にアップデートした「X-H2S」と、従来のファームウェアVer.2.10の「X-H2S」を使い比べて、AFの進化を実際に体感してみた。「被写体検出AF」を使って人物、野鳥、昆虫(蝶)といった動く被写体への合焦速度や追従性をテストしてみたが、その進化はまさに「期待以上」であった。
まず、ファームウェアVer.3.00では、被写体を検出する速度・精度が飛躍的に向上している。従来のファームウェアVer.2.10でも十分な性能だと感じていたが、Ver.3.00はVer.2.10 とは“別物”と言っていいくらい被写体への食い付きがよかった。さらに、被写体が非常に小さい状態でも検出できるうえ、検出後の追従性も驚くほどに高い。以下に掲載するAF動作を記録した動画を見ていただきたいが、まさに「被写体を1度つかんだら離さないAF」に進化を遂げていることが伝わるはずだ。
この動画は、小走りで近づいてくる人物や、自由に動き回る鳥、不規則に飛び回る蝶といった被写体に対して、「X-H2S」の「被写体検出AF」を使って追尾している様子を記録したもの。被写体が小さい状態でもしっかりと検出・追尾できているうえ、逆光下など難しい状況でもピントが背景に抜けることがほとんどなく、高精度に追尾し続けている。これほどの精度なら、カメラまかせのAFでも狙った瞬間をより確実に撮影できるだろう。
「X-H2S」の進化したAFを
作例でチェック!
スナップ撮影
X-H2S、XF56mmF1.2 R WR、600mm(35mm判換算85mm相当)、F1.2、1/3200秒、ISO160、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト 撮影写真(4160×6240)
人物の顔/瞳検出をオンにして、最速40コマ/秒のブラックアウトフリー高速連写で撮影した作例。自由にポージングする人物の動きを追いかけるようにして撮影しているが、逆光下の難しいシーンながら、人物がカメラのほうを向いた瞬間の表情を、左目に正確にピントを合わせて記録することができた。振り向いている途中は、左目が前髪に少し隠れてしまっているため、一瞬、右目に反応しているが、すぐに左目にフォーカスを合わせ直しているのがポイント。ごくわずかな瞬間で、ここまでAFがレスポンスよく反応するのは驚異的だ。なお、左目と右目のどちらにピントを合わせたいのか決まっている場合は、あらかじめどちらの目を優先させるか設定しておくことができる。
絞り開放のF1.2で、この精度は非常に優秀だ。「X-H2S」は高速連写中でも高速・高精度にAFが動作し、より確実に人物の顔・瞳にピントを合わせ続けてくれるので、ストリートでラフに人物をスナップ撮影する場合でも使いやすいカメラだと感じた。
X-H2S、XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR、502mm(35mm判換算753mm相当)、F7.1、1/6400秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、FUJIFILM X RAW StudioでRAW現像 撮影写真(6240×4160)
この作例は、検出対象を「鳥」に設定した「被写体検出AF」と、最速40コマ/秒のブラックアウトフリー高速連写の組み合わせで撮影したもの。鳥が羽ばたいた瞬間の動きに対して、正確にピントを合わせて撮ることができた。なお、この作例では、シャッターボタンを押す前の動きを記録できるプリ撮影を利用した。プリ撮影は、シャッターボタン半押し中に40枚、全押し後に110枚の計150枚の記録が可能。シャッターボタンを全押しする約1秒前までさかのぼって記録できるので、この作例のように、いつ動き出すのか予測しにくい被写体を撮るときに非常に便利だ。
X-H2S、XF16-80mmF4 R OIS WR、80mm(35mm判換算122mm相当)、F4、1/3200秒、ISO1000、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード 撮影写真(6240×4160)
蝶は動きが予測しづらく、特に飛翔の瞬間を撮影するのは非常に難しい。だが、「昆虫」の被写体検出と、最速40コマ/秒のブラックアウトフリー高速連写が可能な「X-H2S」では、なんなく撮ることができた。少し後ろに下がりながら飛び立っている蝶に対して、しっかりとピントが追従しているのがすごい。裏面照射積層型センサーの高速読み出しによって、かなり高速に羽を動かす蝶の動きを歪みなく記録できているのもポイントだ。なお、この作例でも、シャッターボタンを押す前の動きを記録できるプリ撮影を利用している。
動画撮影
長時間の4K/60p記録など、
充実した動画撮影機能にも注目
「X-H2S」の魅力として押さえておきたいのは、静止画撮影だけでなく、動画撮影も充実しているということ。本格的な静止画撮影と動画撮影の両方に対応できる、ハイブリッドな使い方が可能なミラーレスカメラなのだ。
「X-H2S」の動画撮影機能の充実ぶりは、基本的なスペックを見るだけでもよくわかる。4K4:2:2 10bitでの6.2K(6240×4160、3:2比率)/30p記録や4K/120p記録といった本格的な映像制作に求められるスペックをカバーしているうえ、新しい放熱構造の採用によって4K/60pで最長240分※3という長時間録画が可能。さらに、14+ストップの広いダイナミックレンジで記録する「F-Log2」や、ProRes 422/ProRes 422 HQ/ProRes 422 LTのApple ProResコーデックにも対応。APS-Cミラーレスカメラとして最高性能と言っても過言ではないほど、充実した動画撮影機能を実現している。
※3 25℃環境でのコールドスタート時。自動電源OFF温度設定「高」、ビットレート100Mbps設定時。縦位置バッテリーグリップ「VG-XH」装着、電池3個使用時。ただし、記録時間はバッテリー残量とメモリーカードの種類・容量に依存します。また、本体温度が上昇した場合、自動で撮影が停止する場合があります。


6.2K/30p記録や4K/120p記録などに対応。特に注目したいのは、4K/120p記録によるハイスピード動画(スローモーション映像)を撮影できること。高速読み出しに対応する裏面照射積層型センサーを搭載するからこそ実現できた機能だ
今回、ファームウェアVer.3.00にアップデートした「X-H2S」を使って、実際に動画撮影を行ってみたが、撮影しやすいと感じる点がいくつもあった。
まず、感心させられたのがAFだ。動画撮影でも静止画撮影と同様に「被写体検出AF」の利用が可能なうえ、ファームウェアVer.3.00でAFが進化し、より確実に被写体にピントを合わせられるようになったのが大きい。さらに、ボディ内手ブレ補正も高性能で、電子手ブレ補正と組み合わせることによって、手持ち撮影でも手ブレを大幅に抑えて撮ることができるのも、使いやすいと感じた点だ。
また、裏面照射積層型センサーの採用によって、動画撮影時のセンサー読み出し速度が1/180秒(4K/60p選択時)まで高速化し、高性能なシネマカメラと変わらないレベルでローリングシャッター歪みを抑えられるのも見逃せない。素早く動く被写体を撮る場合だけでなく、カメラを動かしながら撮る場合でも、より自然な映像表現を記録できる。
そして忘れてはいけないのが、動画撮影でも、富士フイルム独自の仕上がり設定「フィルムシミュレーション」を使用できることである。「フィルムシミュレーション」の設定を変えるだけで、ほかでは得られないような、印象的な色合いの映像作品に仕上げられるのだ。撮って出しで多彩な色再現を楽しめる点が、富士フイルム「Xシリーズ」のカメラならではの魅力と言えよう。

風景から人物まで、自然な色合いで幅広い被写体に対応するオールマイティーな「PROVIA/スタンダード」、豊かな階調表現と鮮やかな彩度を両立した「ASTIA/ソフト」、映画用撮影フィルムから着想を得ており、特に動画撮影に適している「ETERNA/シネマ」、1970年代の「アメリカンニューカラー」を想起させるような色再現が特徴の「ノスタルジックネガ」といった、計19モードの「フィルムシミュレーション」に対応している

「X-H2S」といくつかの交換レンズを組み合わせて撮影・編集した4K動画。6.2K/30p記録や4K/120p記録も活用している※4。すべてのカットを手持ちで撮影しているが、全体的に手ブレがよく抑えられていることが伝わるはずだ。また、カットごとに「フィルムシミュレーション」を変更して撮影しているが、どのカットも印象的な色やトーンに仕上がっている
※4 6.2K/30pで記録した映像はズームイン/ズームアウト編集に活用。
まとめ
静止画と動画の両方で多彩な楽しみ方ができる
オールマイティーモデル
今回、静止画撮影と動画撮影の両方で「X-H2S」をじっくりと使用してみて、使えば使うほどによさがわかるカメラだということを強く実感した。独自の仕上がり設定「フィルムシミュレーション」など富士フイルムだからこその機能性はそのままに、幅広い撮影スタイルに対応できる、充実したスペックを持つのが魅力だ。
この充実したスペックを生み出しているのが、高速読み出しに対応する裏面照射積層型センサー「X-Trans CMOS 5 HS」である。この高性能センサーによって、静止画撮影では、最速40コマ/秒のブラックアウトフリー高速連写と、ファームウェアVer.3.00で劇的な進化を遂げた高性能AFを実現している。この超高速連写と高性能AFの組み合わせにより、撮影者にまったくストレスを感じさせないカメラとなっている。鳥や昆虫など素早く動く被写体を撮る場合に威力を発揮するのはもちろんのこと、ポートレートやスナップの手持ち撮影でも非常に使いやすい。
さらに、動画撮影では、4K/120p記録を含めて本格的な4K動画を制作するためのスペックを搭載しているのが魅力。画面や被写体の歪みを抑えた自然な映像表現を記録できるもの裏面照射積層型センサー搭載のメリットとして押さえておきたい点だ。
このように、「X-H2S」は、静止画撮影と動画撮影で多彩な楽しみ方ができるカメラに仕上がっている。小型・軽量で持ち運びやすいので、動体撮影用としてだけでなく、普段使いのカメラとしても使いやすい。静止画撮影でも動画撮影でも被写体やシーンを選ばずに活用できる、万能なミラーレスカメラを探しているのなら、選択肢に入れておいて損はないはずだ。
なお、購入前に実機を試してみたいという人は、カメラ・交換レンズのレンタル専門店「エイペックスレンタルズ」が用意する、富士フイルム製品のレンタル情報ページをチェックしてみてほしい。富士フイルムとのコラボレーションによって「X-H2S」をはじめ、最新モデルを含む40種類以上の機材をレンタルできるようになっている。