「360 Spatial Sound Mapping」対応ソニーの新サウンドバー シングルバーで映画館のような感動サウンド体験

2024年6月、ソニーから発売されたサウンドバー「BRAVIA Theatre Bar 9(HT-A9000)」「BRAVIA Theatre Bar 8(HT-A8000)」は、シングルバーのモデルでありながら単体でソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」に対応。さらに、内蔵スピーカーユニットの数を増加させながら、ボディはコンパクトになるなど、大きなブラッシュアップが図られたモデルだ。ここでは、本機のプレミアムなサウンドに浸りながら、進化のポイントを詳しくレビューしていこう。

ソニー独自の体験シングルバーで立体音響技術
「360 Spatial Sound Mapping」に対応

HDMIケーブルを1本つなぐだけの手軽さで、テレビの音声に迫力をもたらしてくれるサウンドバーは、今やホームシアターシステムの主流だ。それだけに、市場にはさまざまな製品が並ぶが、近ごろは手軽さだけでなく、サウンドクオリティにもこだわったモデルが次々と発売され、市場をにぎわせている。

そんなサウンドバー市場において、特に注目したいモデルが発売された。それが、ソニー独自の音響技術をシングルバーにギュッと濃縮し、音質・機能性・設置性を大幅にアップさせた「HT-A9000」「HT-A8000」だ。

プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

ソニーのフラッグシップサウンドバー「HT-A7000」の後継モデルとして「HT-A9000」(写真手前)が、プレミアムサウンドバー「HT-A5000」の後継モデルとして「HT-A8000」(写真奥)が登場。両モデルともに、設置性にすぐれたシングルバータイプとなる

両モデルにおける最大の見どころは、ソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」が、シングルバーで実現できるようになったことだ。

「360 Spatial Sound Mapping」は、スピーカーから発せられた音の波面を合成するソニー独自の「モノポールシンセシス技術」と、同社が培ってきた「音場最適化技術」を応用することで、理想的な位置にファントムスピーカー(仮想音源)を生成し、広大な音響空間を作り出す立体音響技術。従来のサウンドバーで、この音響技術を活用するには別途リアスピーカーを追加する必要があったが、ユーザーからの強い要望を受け、今回シングルバーで実現できるように進化した。

プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

自宅でより手軽に本格的なサラウンド感を味わえるよう、ソニーの先端テクノロジーを結集して生み出された立体音響技術が「360 Spatial Sound Mapping」だ。「モノポールシンセシス技術」と「音場最適化技術」によって理想的な位置にファントムスピーカーが生成されるので、ユーザーが細かい設定を行わなくてもまるで部屋の外にまで広がるような広大なサラウンドを体験できる

インプレッション
「360 Spatial Sound Mapping」による
広大な音響空間をチェック

プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

早速「HT-A9000」を使用して、その音響空間を体感していこう。今回のレビューは、4K液晶テレビ ブラビア X95Lシリーズの65V型モデルと組み合わせて実施した。

「Dolby Atmos®」で収録された、戦闘機が飛び交うアクション映画を再生してみたが、まず驚いたのがスケール感だ。一般的なサウンドバーはテレビの画面下部に設置することになるため、どうしても画面の下側から音が聴こえがちだが、「HT-A9000」ではファントムスピーカーが高い位置に生成されるおかげだろう、人物のセリフはテレビ画面の中心から聴こえ、戦闘機が飛び回る音はテレビ画面から飛び出し、部屋中を旋回するかのように聴こえる。低域もサブウーハーが内蔵されていないとは思えないほど力強く、爆発音もズンと腹に響いた

また、本体の両側面にサイドスピーカーを搭載したことで、サラウンド感の向上も感じられた。サウンドバー単体では再現の難しい、耳の後ろから聴こえてくるようなサウンドも感じられ、戦闘機の飛行シーンでは、まるでコックピットに座っているかのような感覚になった。同様に、「HT-A8000」も試聴してみたが、内蔵スピーカーの数が減る分の違いはあるが、定位感やサウンドクオリティは抜群。拍手を送りたくなるような出来映えだ。

プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

「HT-A9000」はスイートスポットが広いのも特徴。テレビ正面に設置したソファの真ん中だけでなく、斜めからでもほぼ同等のサウンドが楽しめる。家族みんなで本機ならではの高音質サウンドを味わえるのだ

リアスピーカーとサブウーハーを加えた
フルセットなら、さらに迫力満点

オプション追加で迫力アップ
プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

「360 Spatial Sound Mapping」はシングルバー単体でもそのよさを十分に楽しめるが、オプションのリアスピーカーとサブウーハーを追加することで、その実力をさらに存分に体感できるようになる。

そこで、ワイヤレスリアスピーカー「SA-RS5」とワイヤレスサブウーハー「SA-SW5」を組み合わせてみたが、これがすごい! 上記のアクション映画を再度視聴してみたのだが、リアスピーカーが加わったことで、真後ろの頭上まで音が回り込み、戦闘機の旋回シーンの立体感が大幅にアップ。サブウーハーによる低域強化も相まって、戦闘シーンを大いに盛り上げてくれた。映画好きには、リアスピーカーとサブウーハーの導入もぜひ検討してほしいところだ。

ワイヤレスリアスピーカー「SA-RS5」(2本1組)はバッテリー内蔵で、ケーブルレスで利用できて便利。高精度な音場補正によって、左右のリアスピーカーの高さや視聴位置からの距離が異なっても問題ないため、設置の自由度が驚くほど高い。180mmドライバーとパッシブラジエーターを備えたワイヤレスサブウーハー「SA-SW5」(300W)は、コンパクトながら力強い低域を響かせてくれた

サウンドクオリティスピーカー構成の見直しと、
進化した音場最適化技術で音質が大幅アップ

「360 Spatial Sound Mapping」への対応により、サウンドのスケール感がグンとアップしていた「HT-A9000」「HT-A8000」だが、音質アップの理由はこれだけにとどまらない。両モデルともに、従来モデルからスピーカーの構成が大幅に見直されているのだ。

たとえば、「HT-A9000」のスピーカーユニット数は従来の11基から13基へ、「HT-A8000」は従来の9基から11基へと増加。センタースピーカーとフロントスピーカーについては、ツイーターとウーハーを組み合わせた2Way構成としたことで帯域が広くなり、解像感や厚みが増している。さらに、両モデルともに左右側面にサイドスピーカーを新設。水平方向のサラウンド感が強化され、より自然な音の広がりが味わえるように進化している。

「BRAVIA Theatre Bar 9(HT-A9000)」のスピーカー構成
プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

前面にセンター用のツイーター1基とウーハー2基、フロント用のツイーター2基とウーハー2基、ビームツイーターを2基、天面にイネーブルドスピーカーを2基、側面にサイドスピーカー2基の合計13スピーカーを搭載。これらを合計出力585W(45W×13)の強力なフルデジタルアンプ「S-Master HX」で独立駆動させている。なお、サブウーハーは搭載していないものの、新開発の大型45×90mmウーハーを計4基、パッシブラジエーターを左右に計4基内蔵し、低域の量感は十分に担保されている

「BRAVIA Theatre Bar 8(HT-A8000)」のスピーカー構成
プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

前面にセンター用のツイーター1基とウーハー2基、フロント用のツイーター2基とウーハー2基、天面にイネーブルドスピーカーを2基、側面にサイドスピーカー2基の合計11スピーカーを搭載。パッシブラジエーターは搭載しないものの、それぞれのスピーカーを合計出力495W(45W×11)のフルデジタルアンプ「S-Master HX」でパワフルに駆動させ、厚みのあるサウンドを響かせる

スピーカー構成における大きなポイントは、センタースピーカーと左右のフロントスピーカーを、ツイーター+ウーハーの2Wayに変更したこと。特にセンタースピーカー用のツイーターは新開発の大型22mm径で、音声のクリアさ向上に貢献している。また、両側面にサイドスピーカーを新搭載し、水平方向のサラウンド感も高まっている。なお、フロントのウーハー、サイドスピーカー、イネーブルドスピーカーは高音質と力強い音圧を実現する「X-Balanced Speaker Unit」だ ※図版は「HT-A9000」のものです

音場最適化技術も進化

音場最適化技術が大幅に進化している点も見逃せない。従来モデルのように、サウンドバー内蔵のマイクを活用して部屋の環境に合わせて音場を最適化するだけでなく、両モデルともに、スマートフォンを活用して視聴位置に合わせた最適化機能を追加。その方法も、新スマートフォンアプリ「BRAVIA Connect」の指示に従って操作していくだけと簡単だ。

このほか、ネット動画などの2chコンテンツも立体的なサウンドにしてくれるアップミックス機能がリアルタイム分析による立体化やAI解析による音声抽出に対応し、パワーアップしているほか、圧縮音源や配信音楽をハイレゾ相当までアップスケーリングする「DSEE Ultimate」も搭載。YouTube動画や音楽配信サービスなどのコンテンツをハイクオリティに楽しめる。

プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

「HT-A9000」「HT-A8000」では、音場最適化技術も進化している。スマートフォンのマイクを活用し、視聴位置を測定。設置位置だけでなく、視聴位置に応じた高精度な音場生成が可能になった

スマートフォンアプリ「BRAVIA Connect」
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従来の「Home Entertainment Connect」からリニューアルされた新スマートフォンアプリ「BRAVIA Connect」に対応。セットアップ手順を画像付きでわかりやすく説明してくれるうえ、音場最適化の実行から、音量などの操作、詳細なサラウンド設定まで、アプリ上で簡単に行える ※画像は開発中のものです

アコースティックセンターシンク機能
プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

付属の専用ケーブルでつなぐことで、ソニーのテレビ「ブラビア」の内蔵スピーカーをセンタースピーカーとして活用する「アコースティックセンターシンク」機能も備える。テレビの映像とサウンドバーの音のつながり・定位感が向上し、画音一致の視聴体験が高まる。サウンドバーだけでなく、テレビまで開発しているソニーだからこそ実現できた機能だ

アップミックス機能
プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

付属リモコンもしくは「BRAVIA Connect」のサウンドフィールドボタンをオンにするだけで、2chコンテンツを立体的にしてくれるアップミックス機能。実際にYouTube上のライブコンテンツを再生してみたが、音が体を包み込むように変化した。拍手や歓声などが頭上から降ってくるように感じられるので、ライブ映像やスポーツ番組で積極的に活用したい

高められた設置性設置性抜群のコンパクトボディ。
映像に没入しやすい新デザインも◎

映像に没入するためには、テレビ周囲のノイズはできるだけ減らしたいもの。その点「HT-A9000」「HT-A8000」は両モデルともに内蔵スピーカーユニット数が増加したが、ボディはコンパクトに収まっている。「HT-A9000」は高さと奥行きが抑えられ、従来モデル比で体積が約36%低減。テレビ画面と干渉しにくくなったうえ、奥行きの短いテレビラックにもより設置しやすくなった。「HT-A8000」については、横幅と奥行きが小さくなり、体積は約30%ダウン。昨今の売れ筋である55V型クラスのテレビの前に設置しやすいサイズ感となっている。

65V型モデルのブラビア XRJ-65X95Lの前に設置してみたが、「HT-A9000」は幅1300mmとテレビスタンドの間にぴったりと収まるサイズ感、「HT-A8000」は幅1100mmとテレビスタンドに対してかなり余裕がある。「HT-A9000」は65V型以上、「HT-A8000」は55V型〜65V型のテレビにマッチしそうだ

「HT-A9000」のサイズは、従来モデル「HT-A7000」(赤枠)と比べて高さが約16mm、奥行きが約29mmダウンした約1300(幅)×64(高さ)×113(奥行)。「HT-A8000」は、従来モデル「HT-A5000」(同)と比べて幅が約110mm、高さが約3mm、奥行きが約16mm小さくなった約1100(幅)×64(高さ)×113(奥行)だ。プレミアムクラスのサウンドバーは大型化の傾向にあるが、本機においてはどちらも奥行きがグッとコンパクトになり、設置性がむしろ向上している

テレビの視聴を妨げない、シンプルで美しいデザイン

デザイン面の進化も見逃せない。「HT-A7000」は天面にガラス素材を採用することで質感が高かったが、テレビの映像が反射してしまうという側面もあった。そこで「HT-A9000」「HT-A8000」では、撥水加工の施された高耐久ファブリック素材で天面や前面をカバー。シンプルで美しいデザインで上手に存在感を低減させている。周囲のインテリアとも調和しやすいうえ、テレビの映像がボディに映り込んだり、パンチングメタルのようにスピーカーユニットが透けて見えたりしないので、画面により集中しやすい。

ファブリック素材で覆うことで、画面に集中しやすいデザイン。スピーカー奥側のベゼルには、「HT-A9000」はアルミニウムを、「HT-A8000」はプラスチックを採用するという違いがある

プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

スピーカーを覆うファブリック素材は撥水加工が施され、水や汚れに強く、付着したホコリを拭き取りやすい

プレミアムサウンドバー ソニー「HT-A9000」ソニー「HT-A8000」

操作性にすぐれたスマートフォンアプリ「BRAVIA Connect」に対応したこともあり、付属リモコンはよりシンプルになった。日常的によく使うボタンが大きく配置され、迷わず使える

まとめリビングルームを映画館へ変える、
最高峰のサウンドバー

大画面の映像を“いい音で楽しみたい”という欲求。それを手軽に満たせるサウンドバーに注目が集まるのは自然なことだ。

今回レビューした「HT-A9000」と「HT-A8000」は、そんなサウンドバー市場において最高峰のサウンドを追求したモデルと言えるだろう。ソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」にシングルバーで対応したうえ、全体のスピーカー構成を見直し、内蔵スピーカーユニット数を増加させたことで、従来モデル以上にクリアでスケール感のあるサラウンドサウンドを実現。それでいて、ボディは小さくなり、設置性が向上しているというのだから驚くほかない。

悩ましいのはどちらのモデルを選ぶかだが、ソニーの音響技術を結集したフラッグシップモデル「HT-A9000」は65V型以上のテレビに、高音質をコンパクトなボディに詰め込んだプレミアムモデル「HT-A8000」は55V型〜65V型のテレビに組み合わせたい。もちろん、どちらを導入しても、自宅のリビングルームを映画館に変えてくれる、迫力のエンタメ体験が味わえることに違いはない。

シングルバーで映画館のような
感動サウンド体験
この記事は2024年5月31日の情報を基にしております。