次世代の快適性を徹底検証 いち早く「AMD Ryzen AI 9」を搭載したAI PC「ASUS Vivobook S 16 M5606WA」速攻レビュー

さまざまなアプリに高度なAI機能が実装されつつある今、パソコンにはよりパワフルな処理性能が求められている。そんな今こそ注目してほしいのが、ASUSの16型AIノート「ASUS Vivobook S 16 M5606WA」(M5606WA-AI9321W)だ。AI処理を担当するNPUを搭載した新世代CPU「AMD Ryzen AI 9 HX 370」を搭載しており、AI処理はもちろん、高負荷な処理までお手のもの。しかも、高品位な3.2K有機ELディスプレイを備えるので、動画や写真の編集なども行いやすい。今回は、そんな次世代の快適性を実現した本機を速攻チェックしていく。

処理性能「AMD Ryzen AI 9 HX 370」が実現する、次世代パフォーマンスが明らかに

アプリが高機能化し、扱うデータ量が増大した昨今、パソコンには高性能が求められている。そしてAI技術が広く一般にも普及していく今後は、これまで以上に高い処理性能が求められていくことになるだろう。

そんなAI時代に向けて今、脚光を浴びているのが“AI PC”だ。“AI PC”とは、AI処理を担当するNPU(Neural Processing Unit)を備えたパソコンのこと。基本的な処理を行うCPUがパワフルなだけにとどまらず、今後さまざまなアプリに実装されるであろう、高度なAI機能もサクサクと快適に動作させられるのだ。

そんな“AI PC”において2024年7月、注目すべき1台が登場した。それが、今回紹介するASUSの16型AIノート「ASUS Vivobook S 16 M5606WA」(M5606WA-AI9321W)だ。

ASUS Vivobook S 16

AI時代向けて新世代CPU「AMD Ryzen AI 9 HX 370」を搭載した「ASUS Vivobook S 16 M5606WA」。16型の大画面ディスプレイを備えながらも、厚さ約13.9mm(最薄部)、重さ約1.5kgという薄型・軽量ボディを実現し、そのたたずまいはシャープでスマートだ

パソコンに少し詳しい人なら、本機が「ASUS Vivobook」シリーズであると聞いて、エントリーモデルなのでは? と思ったに違いない。確かに、「ASUS Vivobook」シリーズにはそうしたモデルもあるが、本機はそんなイメージを180度覆すハイスペックモデルとなっている。

なかでも、注目したいのは、2024年7月に登場したばかりの新世代CPU「AMD Ryzen AI 9 HX 370」(最大5.1GHz)をいち早く搭載した点だろう。このCPUは、4つの高性能なCPUコアと8つの高効率なCPUコアを組み合わせ、ハイパフォーマンスを発揮するうえ、内蔵するNPUによって最大50TOPSのAI処理性能を実現している。そのAI処理性能はAI対応CPUのなかでもトップクラスにある。

しかも、冷却性能に定評のある冷却システム「ASUS IceCool サーマルテクノロジー」を採用するので、CPUを強力に冷やし、そのポテンシャルを存分に引き出せるのだ。なお、メモリーには32GBのLPDDR5Xを、ストレージには1TBのPCIe 4.0 x4接続SSDを搭載。CPU以外の基本スペックも総じて高い。

ASUS Vivobook S 16

「AMD Ryzen AI 9 HX 370」は、最大50TOPSという高いAI処理性能を発揮するNPUを搭載するうえ、新しいRDNA 3.5アーキテクチャーを採用したGPU「AMD Radeon 890M」を内蔵。AI処理性能に加え、グラフィック処理性能の面でも隙がない

ASUS Vivobook S 16

底面カバーを開けると、中央奥のCPU付近から2本の大きな銅製ヒートパイプが伸びていることが確認できた。それを左右に見える2つの冷却ファンで冷やし、背面の大型排気口から熱を排出する

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ベンチマークプログラムでパフォーマンスを検証

では、本機のパフォーマンスを定番ベンチマークプログラムで確かめていこう。詳しいスコアは以下を参照してほしいが、期待どおり、ノートPCでは滅多にお目にかかれないようなハイスコアが記録された。ここまで突き抜けたスコアなら、ヘビーな3Dゲームをプレイするような用途でなければ、まず不満を感じることはないだろう。

CINEBENCH R23
CINEBENCH R23

CPUの処理性能を計測する「CINEBENCH R23」では、マルチコアで18291、シングルコアで2015をマーク。シングルコアのスコアが2000を超えるようなノートPCは、これまでほとんど見たことがない

PCMark 10
PCMark 10

総合的な処理性能を計測する「PCMark 10」の総合スコアは、高性能デスクトップPC並みの8074。基本性能を示す「Essentials」や、ビジネス性能を示す「Productivity」はもちろん、クリエイティブ性能を示す「Digital Content Creation」も大台の10000を超えており、総合力の高さがうかがえる

3DMark Time Spy
3DMark Time Spy

ゲーミング性能を計測する「3DMark」の「Time Spy」テストでは3898をマーク。カジュアルなディスクリートGPUを搭載したノートPCに匹敵するハイスコアで、高精細な3Dゲームを楽しむことも十分に可能だ

ここでひとつ注意したいのは、これら定番ベンチマークテストでは、AI処理を担うNPUの性能はほぼ計測されていないこと。つまり、NPUを搭載した「ASUS Vivobook S 16 M5606WA」のポテンシャルは、ここで示したよりもさらに高いのだ。今回のレビューでは、「Windows 11」に搭載された各種のAI機能をローカル環境で試すことはできなかったが、最大50TOPSというAI処理性能は、前述のようにレビュー時点でトップクラスにある。本格的に到来するAI時代に向けて準備は万端だ。

ASUS Vivobook S 16

「Windows 11」のタスクマネージャーから、NPUの動作を確認できる。今回その実力を試せなかったが、AI処理をNPUが受け持ち、そのほかの処理をCPUが受け持つ分業体制により、これまでにないハイパフォーマンスやバッテリー持ちのよさが実現されるのだ

表現力クリエイティブ作業にも適した、高品位な3.2K有機ELディスプレイを搭載

これほどの処理性能があれば、ビジネスシーンはもとより、クリエイティブ作業やエンターテインメント鑑賞などでも存分に活用できる。そんなニーズに対応すべく、「ASUS Vivobook S 16 M5606WA」は、ビジュアルやオーディオ面の表現力も磨き上げられている。

この点においてまず注目したいのは、16型有機ELディスプレイ「ASUS Lumina OLED」の搭載だ。スタンダードノートの多くが採用する15.6型のディスプレイよりもひと回り大きいサイズで見やすく、迫力があるうえ、解像度は3.2K(3200×2000)と相当に高い。高画質コンテンツも細部までリアルに表現できる。

そして、色域はデジタルシネマ規格の「DCI-P3」を100%カバーするうえ、ダイナミックレンジはHDR規格の「DisplayHDR 600」に対応。写真や動画は正確な色味で編集できるうえ、動画配信サービスで提供されている高画質な映像コンテンツもクリエイターの意図どおりに堪能できる

ASUS Vivobook S 16

水郷の夜景を撮影した写真を表示したところ、明暗のコントラスト表現に長けた「ASUS Lumina OLED」の強みが際立った。表示も高精細で、瓦の1枚1枚、漆喰壁の繊細な表情までクリアに再現されていた

また、ディスプレイは動的性能にもすぐれており、リフレッシュレートは倍速表示の120Hzを実現。応答速度は、有機ELであることも手伝って0.2msと速い。これなら、動きの速い映像の視聴やゲームプレイなどでもストレスを感じないだろう。

ASUS Vivobook S 16

レーシングゲームをプレイしてみたところ、高リフレッシュレートのおかげで高速走行中の風景の移り変わりも滑らか。操作遅延も感じられず、キーと直結しているかのようにクルマをコントロールでき、とっさのハンドリングも行いやすかった

ASUS Vivobook S 16 ASUS Vivobook S 16

本体底面の前部左右には、名門オーディオブランド、Harman Kardonがプロデュースする高品位スピーカーを搭載。戦士が活躍するアクション映画を鑑賞したところ、バトル中の剣げき音が縦横無尽に飛びまわり、ノートPC離れしたサウンドの臨場感に酔いしれた

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写真や動画をメディア管理に役立つ、コンテンツ管理アプリ「StoryCube」

本機は“AI PC”らしく、独自のAIアプリも搭載している。そのひとつが、「ASUS AI Apps」にラインアップされたコンテンツ管理アプリ「StoryCube」だ。AIが写真や動画の内容を認識して、人物やシーンごとに自動整理。パソコン上に保存した写真や動画はもちろん、クラウド上にある写真や動画も取り込んで、効率的にアクセスできる。多くの写真や動画を、手間をかけずに自動で整理してくれるのがありがたい。

ASUS Vivobook S 16

使い勝手キーボードからAI Webカメラまで、高機能で使いやすい装備を満載

「ASUS Vivobook S 16 M5606WA」は、パソコンとしての基本的な使い勝手もいい。16型という大型モデルだけあって、キーボードには数値入力がしやすいテンキーを備えるうえ、マイクロソフトが提供するAIチャットボット「Microsoft Copilot」に素早くアクセスできるCopilotキーも新規に搭載されている。

また、「シングルゾーンRGBバックライト」をオンにすれば、暗い場所でのキー操作もやりやすかった。なお、バックライトのカラーを好みの色に変更できるのは、一般的なノートPCではあまりない見られない本機ならではの特徴だろう。

ASUS Vivobook S 16 ASUS Vivobook S 16

キーボードは、約19.05mmというゆとりのあるキーピッチが確保されているうえ、外周のキーまで崩れが少ない。方向キーの左に見られるのが、新規に設けられたCopilotキーだ

ASUS Vivobook S 16 ASUS Vivobook S 16

本機が搭載するバックライトは、発光カラーを好みの色に変更可能。複数の色を順次ゆるやかに変化させていく設定も可能だ

従来モデル比で約40%大きくなったタッチパッドは、多彩なジェスチャー操作に対応。上辺で指を左右にスライドさせれば動画の早送り/巻き戻し、左辺で上下にスライドさせれば画面の輝度調節、右辺で上下にスライドさせれば音量調節が行える。こうした時短操作を積み重ねることで、生産性が大きく向上していく

AI Webカメラの顔認証でより便利に使える

本機が搭載するAI Webカメラ「ASUS AiSenseカメラ」(207万画素)は、「Windows Hello」の顔認証に対応するうえ、離席時にパソコンを自動でロックしたり、着席時に自動でロックを解除したりといった高度な機能が利用できる。また、カメラを物理的に覆うプライバシーシールドが付属しているので、Webカメラを使用していないときはこれを閉じておけば、予期しないカメラ映像の流出を防ぐことが可能だ。

ASUS Vivobook S 16

Webカメラに顔を向ければ、Windowsにサインインしたり、ロックを解除したりできるので、素早くパソコンが使える。パスワード入力を盗み見られることもないので、セキュリティ面での安心感も高い

ASUS Vivobook S 16

Web会議時は、周囲の雑音をカットする「ASUS AIノイズキャンセリング機能」も利用可能。Web会議時に近くで人が会話していても、AIがノイズとして極力カットしてくれるので安心感がある

ASUS Vivobook S 16

外部インターフェイスは、左側面にHDMI出力ポート、USB3.2 Gen1 Type-Cポート(映像出力/給電対応)、USB4 Type-Cポート(映像出力/給電対応)、microSDメモリーカードリーダー、マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャックを装備。右側面には、USB3.2 Gen1 Type-Aポート×2を搭載する。合計4基のUSBポートが利用できるうえ、フルサイズのHDMI出力ポートを備えるなど、在宅ワーク環境の作り込みなどにも適している

まとめAI時代に向けた先進のパフォーマンスが、これまでにない快適性をもたらす

以上、「ASUS Vivobook S 16 M5606WA」をチェックしてきた。残念ながら今回、AI利用における本機の性能は試せなかったが、新世代CPU「AMD Ryzen AI 9 HX 370」の搭載によるハイパフォーマンスの片鱗をうかがい知ることができた。「ASUS Vivobook」シリーズと言えば、エントリーモデルと思っている人もいるかもしれないが、本機においてそのような印象はみじんもない。むしろ、スリムなボディでありながら、高性能デスクトップPC並みのパフォーマンスを発揮することに驚いた。

しかも、搭載するディスプレイは16型3.2K有機ELとハイスペックで、映し出す映像が美しく、プロのクリエイターであっても納得できるレベル。また、キーボードやタッチパッドも使いやすく、「Windows 11」のAI機能にワンタッチでアクセスできるCopilotキーを搭載するなど、将来的なAI利用のことも考慮された作りとなっていた。

誰もがパソコンでAIを活用する時代はもうすぐそこ。来るべき時代を本気で先取りしたい人に、本機はぜひ手にしてほしい1台である。

ASUS Vivobook S 16 M5606WA
ASUS Vivobook S 16 M5606WA
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主なスペック

型番 M5606WA-AI9321W
OS Windows 11 Home 64bit
CPU AMD Ryzen AI 9 HX 370(最大5.1GHz)
グラフィック AMD Radeon 890M
メモリー 32GB LPDDR5X
ストレージ 1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続)
光学ドライブ なし
ディスプレイ 16型3.2K(3200×2000)有機ELディスプレイ(120Hz駆動)
無線通信 無線LAN(IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax)、Bluetooth v5.3
外部インターフェイス USB3.2 Gen1 Type-Cポート(映像出力/給電対応)、USB4 Type-Cポート(映像出力/給電対応)、USB3.2 Gen1 Type-Aポート×2、HDMI出力ポート、microSDメモリーカードリーダー、マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャック
サイズ 約353.6(幅)×246.9(奥行)×13.9〜15.9(厚さ)mm
重量 約1.5kg
カラー ニュートラルブラック
Officeソフト なし
コンパクトな14型“AI PC”「ASUS Vivobook S 14 M5406WA」の主なスペック
型番
M5406WA-AI9321W
M5406WA-AI9321W
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M5406WA-AI9245W
M5406WA-AI9245W
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OS Windows 11 Home 64bit
CPU AMD Ryzen AI 9 HX 370(最大5.1GHz) AMD Ryzen AI 9 365(最大5GHz)
グラフィック AMD Radeon 890M AMD Radeon 880M
メモリー 32GB LPDDR5X 24GB LPDDR5X
ストレージ 1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続) 512GB SSD(PCIe 4.0 x4接続)
光学ドライブ なし
ディスプレイ 14型QWXGA+(2880×1800)有機ELディスプレイ(120Hz駆動)
無線通信 無線LAN(IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax)、Bluetooth v5.3
外部インターフェイス USB3.2 Gen1 Type-Cポート(映像出力/給電対応)、USB4 Type-Cポート(映像出力/給電対応)、USB3.2 Gen1 Type-Aポート×2、HDMI出力ポート、microSDメモリーカードリーダー、マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャック
サイズ 約310.5(幅)×221.9(奥行)×13.9〜15.9(厚さ)mm
重量 約1.3kg
カラー ニュートラルブラック
Officeソフト なし
Snapdragon X Elite載の15.6型「Copilot+ PC」「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」の主なスペック
型番
S5507QA-HA321W
S5507QA-HA321W
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S5507QA-HA161W
S5507QA-HA161W
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OS Windows 11 Home 64bit
CPU Snapdragon X Elite X1E-78-100 プロセッサー(最大3.4GHz)
グラフィック Qualcomm Adreno GPU
メモリー 32GB LPDDR5X 16GB LPDDR5X
ストレージ 1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続)
光学ドライブ なし
ディスプレイ 15.6型3K(2880×1620)有機ELディスプレイ(120Hz駆動)
無線通信 無線LAN(IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax/be)、Bluetooth v5.3
外部インターフェイス USB4 Type-Cポート(映像出力/給電対応)×2、USB3.2 Gen1 Type-Aポート×2、HDMI出力ポート、microSDメモリーカードリーダー、マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャック
サイズ 約352.6(幅)×226.9(奥行)×14.7〜15.9(厚さ)mm
重量 約1.42kg
カラー クールシルバー
Officeソフト なし
この記事は2024年8月23日の情報を基にしております。