顔料10色インク「LUCIA PRO II」を新たに採用 写真画質と画像堅牢性がさらに向上したキヤノン「PRO-G2」誕生!
自宅で手軽に高画質な写真印刷が行えることから、写真愛好家から好評を博しているキヤノンのA3ノビ対応インクジェットプリンター「PRO LINE」シリーズ。「PRO-G2」は、同シリーズの新製品として約4年半ぶりにモデルチェンジを果たした顔料インクモデルだ。搭載インクを一新したことで、写真画質が向上したうえ、耐光性や耐擦過性の強化によって画像堅牢性も高まるなど大きな進化を遂げている。今回は、さまざまな写真を印刷しながら本機の実力を検証した。
製品概要約4年半ぶりにモデルチェンジを果たした、
キヤノン「PRO-G2」
写真のコンテストや展示会に出品する作品づくりを行っている写真愛好家にとって、「写真をどう印刷するか」はとても重要だ。A2以上の大判サイズで出力したい場合や、印刷品質を最優先にする場合はプロラボサービスに依頼するのがよいだろうが、依頼する手間と費用がかかってしまう。「できれば自宅で気軽に高画質な印刷を行いたい」と考えている人も多いことだろう。
そんな人に注目してほしいのが、キヤノンのA3ノビ対応インクジェットプリンター「PRO LINE」シリーズの新製品。同シリーズは、写真のことを知り尽くしているキヤノンだからこその印刷品質の高さが特徴だ。約4年半ぶりの新モデルとして、顔料インクモデルの「PRO-G2」と、染料インクモデル「PRO-S1 Mark II」が2025年3月に発売された。
特に顔料インクモデルの「PRO-G2」は、搭載インクを一新することで、従来モデルから評価の高い豊かな発色性や深みのある黒表現はそのままに、マゼンタの再現性や画像堅牢性が大きく向上している。
染料インクの違いとは?
インクジェットプリンターに使われるインクには、主に「顔料インク」と「染料インク」の2つがあるが、その違いをご存じだろうか?
どちらのインクも、用紙に直接吹き付けることで印刷するのは同じだが、顔料インクは塗料の粒子が溶剤に溶けないので用紙の表面にインクが定着するのが特徴。インクが用紙に染み込まないためにじみにくく、高精細・高階調に色を再現できるほか、黒の表現力にすぐれ、使用できる用紙種が豊富なのもメリットである。
いっぽうの染料インクは、塗料の粒子が溶剤に溶け込むため、用紙にインクが浸透する。鮮やかで透明感のある発色が得られるうえ、用紙表面の質感をそのまま生かせるのが特徴だ。
作品づくりを行ううえでどちらのインクのほうがよいのか迷った場合は、街並みや夜景の精細感、階調表現、黒の重厚感を出したいのなら顔料インク採用モデルを、色彩豊かな花畑や透き通った海などを鮮やかに描き出したいのなら染料インク採用モデルを選ぶのがよいだろう。
印刷品質10色・顔料インク「LUCIA PRO II」採用で
高画質と高耐久を両立
「PRO LINE」シリーズの新製品「PRO-G2」は、前章でも紹介したとおり、搭載するインクを刷新している。業務用途向けの大判プリンターにも採用されている10色・顔料インク「LUCIA PRO II ink」※を新たに採用し、写真画質の向上を果たしているのだ。 ※マットブラックのみ「LUCIA PRO ink」
「LUCIA PRO II ink」は、色材を高密度に配列することで豊かな発色と鮮明さを実現しているうえ、マゼンタインクの色材を高発色のものへと変更することで、マゼンタの色域拡大に成功。濃いピンクや赤紫色などがより鮮やかに再現でき、花畑や夕焼けの風景写真はもちろん、肌の色合いが重要なポートレートなどもより美しく印刷できるようになっている。さらに、光沢紙の表面をコーティングすることで光反射をより均一にする、独自開発の透明インク「クロマオプティマイザー」のインク量の最適化を実施。見る角度や光の当たり方によって本来とは違った色味が付いて見える「ブロンズ現象」のさらなる抑制にも成功している。

新搭載の10色・顔料インク「LUCIA PRO II ink」は、「マゼンタ」「グレー」「フォトブラック」「シアン」「レッド」「フォトシアン」「イエロー」「フォトマゼンタ」「マットブラック」※に加えて、透明インク「クロマオプティマイザー」を組み合わせている※マットブラックのみ「LUCIA PRO ink」

今回は、キヤノンの印刷ソフトウェア「Professional Print & Layout Ver.1.6.0」を使用し、用紙サイズはA3、印刷品質:最高、カラーモード:ICCプロファイル、プリンタープロファイル:自動、マッチング方法:知覚的の設定で、さまざまな写真を印刷して品質をチェックした
キヤノン純正の写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]を使用して、「PRO-G2」と従来モデル「PRO-G1」の印刷品質を比べてみた。注目してほしいのは赤系の発色。どちらの写真も非常に美しいが、バオバブの木が並んでいるサバンナの夕日の写真では、「PRO-G2」のほうが夕日はもちろん、紫色の夕焼けがより濃く再現されており、全体に深みが感じられる。また、クラブアップルの花に囲まれた女性の写真では、「PRO-G2」のほうが花や赤い服がより鮮やかに描かれているうえ、肌の色味にもより温かみが感じられ、全体的にきらびやかな印象だ。
「PRO-G2」の実力を確かめるため、より鮮明な画質を実現する写真用紙・光沢プロ[クリスタルグレード]を使って女性のポートレートを印刷してみた。肌や髪のツヤ感や透明感がなめらかに描写されているうえ、マゼンタの色域が拡大したおかげか口紅のピンクも印象的に描かれており、実にツヤやかな1枚に仕上がった。「PRO-G2」は顔料インクモデルではあるが、色鮮やかさや透明感も十二分に再現できるプリンターであることがよくわかる。
写真用紙・光沢プロ[クリスタルグレード]に風景写真とコンゴウインコの写真を印刷してみた。左側の風景写真では青空と海の青いグラデーションを細やかに再現できているうえ、色とりどりの建物も色彩豊かに描かれている。右側のコンゴウインコのカラフルな羽が印象的な写真では、メリハリのある色再現と黒く深みのある影がうまく描き出されており、その対比が美しい。
「ブロンズ現象」の差異を確かめるため、写真用紙・光沢プロ[クリスタルグレード]にハシビロコウの写真を印刷し、光を当てながら撮影してみた。特に、体の影となっている部分に注目してほしいが、「PRO-G2」の写真では光を当てても色味はほとんど変わらないが、「PRO-G1」の写真ではまるで浮かび上がってくるように色味が変化していく。「PRO-G2」のほうがブロンズ現象を抑えられているのがわかっていただけるだろう。
マットブラックインクによって引き締まった黒を実現できるのも「PRO-G2」の特徴だ。今回は、写真用紙・プレミアムマットと光沢プロ・クリスタルグレードにモノクロ写真をカラーモード:モノクロ写真で印刷してみたが、その出来栄えの違いに驚かされた。プレミアムマットでは用紙の白さを生かして雰囲気のある仕上がりとなっているいっぽう、光沢プロ・クリスタルグレードでは深みのある黒によって重厚感のある仕上がり。どちらが好きかは人それぞれだろうが、さまざまな用紙に対応できる「PRO-G2」では、仕上がり具合を見ながら好みの用紙を探し出す楽しみもありそうだ。
印刷した作品を
200年保つから長期の展示や
保存も安心
「PRO-G2」が採用する「LUCIA PRO II ink」は、すぐれた画像堅牢性も備えている。従来の「LUCIA PRO ink」で印刷した作品は60年持つとされており、それでも十分長いが、「LUCIA PRO II ink」は、イエローインクに高耐光顔料インクを採用したことで、発色を損なわずに何と200年もキレイなまま保存できるすぐれた耐光性を実現している。
さらに、「LUCIA PRO II ink」では高結晶性ワックスを各インクに添加することで光沢紙での耐擦過性を強化。写真作品の展示作業においては、たとえば、プリントの余白を切り取るときに使用するカッティング定規などが擦れることで作品にキズがつくことも多く慎重な作業が求められるのだが、耐擦過性が強化された本機で印刷した写真なら、額装や加工、梱包などの作業を安心して行えるというわけだ。
使い勝手最新版「Professional Print & Layout Ver.1.6.0」が
わかりやすく使いやすい
「PRO-G2」は、パソコン用印刷ソフトウェアの最新版「Professional Print & Layout Ver.1.6.0」に対応していることも注目ポイントだ。ユーザーインターフェイスがわかりやすく、直感的に操作できる本ソフトは、「Digital Photo Professional」や「Adobe Photoshop」などのプロユースのソフトウェアと連携して印刷できるほか、余白や位置などのきめ細かいレイアウト調整も行え、簡単かつ効率的に写真を印刷できる。モノクロ印刷やパターン印刷に加え、明るさやコントラスト、カラーバランスの調整など、イメージどおりに仕上げるための機能も充実しており、専門知識が少なくても作品のクオリティを追い込めるのはうれしい限りだ。
また、「PRO-G2」での印刷は「使い方が難しいのでは?」と考える人もいるだろうが、大型の3.0型カラー液晶パネルを使った平易な操作性を採用しているので安心してほしい。パネル上で操作方法をフルカラーアニメーションで教えてくれたり、エラーの解決方法をQRコードで掲示してくれたりするので、機械操作が苦手な人でもスムーズに扱えるはずだ。
写真の印刷設定や加工編集などが行える、パソコン用の印刷ソフトウェア「Professional Print & Layout Ver.1.6.0」。画像の明るさやコントラストなどを少しずつ変化させたサムネイルが印刷できる「パターン印刷」にも対応しており、出力されたサムネイルを確認しながら設定を調整すれば、むだな印刷を減らして作品づくりのコストを抑えられる
8色染料インク搭載の「PRO-S1 Mark II」
ここまで顔料インクモデルの「PRO-G2」を紹介してきたが、Wi-Fi機能が改善された、染料インクモデルの新製品「PRO-S1 Mark II」も同時期に発売されている。
「PRO-S1 Mark II」は、高発色性・高光沢性を持ち合わせた「8色染料インク」によって、透明感のある鮮やかさと、深みのある暗部の階調が再現できるのが特徴。海や空の抜けるような青さや燃えるような紅葉、華やかな風景写真などを、特に光沢紙ならではのクリアな発色にこだわって印刷したい場合は、本機を選択するのもよいだろう。染料インクモデルらしく、印刷スピードはA3ノビフチありのカラーが約1分30秒(キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド使用時)と高速で、効率的なプリントワークが行える点も本機の大きなメリットだ。
まとめ自宅で納得のいくクオリティを追求できる
高画質プリンター
写真のコンテストや展覧会に出すための作品は、自分が納得のいく仕上がりになるまで妥協することなく何枚でも印刷をしたいものだろう。しかし、プロラボサービスやネットプリントに依頼すると、狙ったようなクオリティが得られないこともあるし、たくさんの作品を展示する場合はコストも掛かってしまう。
その点、今回紹介してきたキヤノンの「PRO-G2」なら、自宅で仕上がりを徹底的に追求できる。また、より大きなサイズをプロラボサービスに依頼する場合でも、自分で仕上げた作品プリントを色見本として渡すことで、納得のいく仕上がりを得られやすくなる。しかも、10色の顔料インク「LUCIA PRO II ink」が新たに採用されたことで、美しい発色性や奥行き感のある黒に加え、赤方向の表現力が高まり、作品に深みをもたらしてくれる。耐光性と耐擦過性が高まったことで安心して展示や額装などが行えるし、最新版「Professional Print & Layout Ver.1.6.0」は直感的に操作できるので、誰でも簡単にクオリティを追い込んだ印刷が行える。
「PRO-G2」は、写真の作品づくりを行っている人に注目してほしい高画質プリンターだ。納得のいくまでクオリティを追求できる本機で、プリントライフを楽しんでみてほしい。