ナイスミドルの底力ヤマハ PAS Brace PA26B 2021年モデル

電動自転車 2022/7/7
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ナイスミドルの底力ヤマハ PAS Brace PA26B 2021年モデル

数あるヤマハ「PAS」のラインアップ中、最もスポーティな「PAS Brace PA26B 2021年モデル + 専用充電器」。バリエーション豊富なラインアップの中で、あえてこれをチョイスすることのメリットとは? この製品だからこそのおいしさって?

泥よけはないが、サスはある

ヤマハのPASシリーズといえば、大半の方は「ママの味方、子乗せのアレね!」となるのではないでしょうか。包まれ感のある、いかにも安全そうなチャイルドシートを車体にドーンッと搭載し、さらにはお買い物のための荷物スペースまでをも欲張る超絶ユースフルなシティコミューター。それがPASへのイメージ。子育てママの強い味方です。

しかし目の前にあるヤマハ「PAS Brace PA26B 2021年モデル + 専用充電器(以下PAS Brace)」には、チャイルドシートも買い物カゴもついていません。タイヤを覆う泥よけすら備わっていない。その代わりに……といってはナンですが、太めのフロントサスペンションが前輪の足元をグッと引き締めています。いわゆるクロスバイクらしい外観といえるでしょう。

そんなPAS Braceのウェイトは23kg。軽いか? と問われれば軽くはないですが、めちゃくちゃ重いとは感じません。何か大きなものを載せることを前提にした車体設計ではないのでボディ自体はスリムですし、バッテリー+モーターの駆動系ユニットという重量物の存在を事前にわかってさえいれば「まあ、こんなもんだよね」と腑(ふ)に落ちる重さだと思います。よって乗車前の取りまわしは比較的楽チンなのでした。

普通の自転車と違って、乗る前にまず行うのが電源ONのアクションです。ハンドル左についている見やすくてコンパクトな「液晶5ファンクションメーター」は、スイッチのレスポンスがよかったのが印象的。大半の操作において「長押し」の必要がありません。ほぼすべてが「ポチッ」のワンアクションで済んでしまう。これは走行前でも走行中でもうれしい気遣いだと思います。長押し、かったるいですから。

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選べるパワーモードは3種類

PAS Braceは「アシストオフモード(人力100%)」を含めて、4つの走行モードが選べるのですが、ケチな筆者は当然最も省電力なモード「オートエコモードプラス」からスタート。その「お助け具合」を両脚に感じながら、徐々にアシストをパワフルな設定に変えていくことにしました。

説明書などにはオートエコモードプラスは「かしこく節電し走行距離を伸ばす」とうたわれています。実際に走ってみれば確かにグイグイくるような力強さは感じませんが、さりとてアシストオフモード走行時に感じた「スポーツクラブのトレーニングマシンか?」というような苦しいフィーリングとはまったくの別世界。これでもイケるなと感じさせてくれるスイスイと快適なアシスト具合に、思わずほくそ笑んでしまいました。

「この先、もっと僕に楽させてくれるのね〜」

そしてこの予想はすぐに正解! となるのでした。眼前に早速上り坂が。急ではないですが、ダラダラとロングです。

「そんなに頑張らなくても、走り切れる予感がする」
今日だけはエレクトリックパワーが味方してくれるのですから、いつもよりずっと安心、気も楽です。モードを4つのうち、アシスト力が真ん中に当たる「スマートパワーモード」に切り替えて、さらにペダルを踏み込みます……が、それほど頑張る必要はありませんでした。パワー増し増しで電気が助けてくれるのです。

最初のオートエコモードプラスよりもがぜん力強くアシストしてくれることが体感でもハッキリわかり、23kgの車体と70kgの体重(の筆者)をクイクイと前に押し進めてくれます。勢い込んで最強設定の「強モード」で試すと……ヒョー、楽チン! これは自転車とは別の乗り物かもしれないな……と思った瞬間でした。でもスマートパワーモードと強モードの差はそれほど歴然! という感じではなかったので、バッテリー残量がよりセーブできるスマートパワーモードはかなり優秀といえるでしょう。

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電気モーターと会話する?

ではパワーの源である電気モーターの存在(とお助け具合)を感じるためにはどんな方法があるのでしょうか?答えはサウンド。最大のインフォメーションはPAS Braceの駆動パートから発せられる「ウィーーーン」というモーター音にあります。

そしてこのサウンドがとても愉快なことを、まず皆さんにお伝えしたい!まるで呼吸を合わせるかのようにシンクロしてくるモーターの作動音が、まるでエンジンのように「私はココで頑張っています!」と主張してくる。何とも、かわいいのです。

このボリュームの大小によって、モーターからのアシスト具合を両耳からダイレクトに感じることができます。加えて走行中にペダルの回転を止めた、スーッという空走時。その瞬間にフッと生まれる静寂(間?)もまたイイ感じなのです。まるで自転車とコール&レスポンスでトークしているよう。

自分のペダリングと実際のスピードのバランスを意識しながら走ることはとても楽しく、さらにはそこに「バッテリー残量」や「アシストモード」などの要素も絡んできます。これはちょっとした頭脳戦? これがいわゆるエコランでは? そんな走りのプレジャーがPAS Braceライディングの主成分なのかもしれません。

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探せ! スイートな快適走行ゾーン

もう少し具体的な話をしましょう。PAS Braceに限らず日本の電動アシスト自転車が「アシスト」してくれるのは24km/hまでと法律で決められています。そのスピードレンジの中で最も快適と感じる「スイートゾーン」を探すのは、自転車のキャラを含めオーナーさんの経験則によるところが大きいと思います。

そこで個人的な感想、と言い訳してから実際のフィーリングを以下に!

まず「気持ちいいな、快適だな」と感じたのは17〜19km/hくらいでした。0km/hスタートからの「スピードを乗せる」フィーリングもなかなかファンですが、加速で得たスピードをキープしつつアシストを効率的に引き出しながら走らせることがランニングのペース維持、もっといえばランナーズハイみたいでかなり愉快なのです。ロードバイクなどのスポーツサイクルの速度域に比べれば「タラタラ」したスピードかもしれませんが、これでいい、これがいいと思える「スイスイ」を味わえます。

チョイスするギアは普段の走行で5〜7速という感じでしょうか。4〜6速でもイイ感じです。この間をシチュエーションに合わせながら変速することで、アシストの最もおいしいところをつまめる気がしました。もちろん急坂では3速以下に落とします。しかし少々チェンジをサボってもPAS Braceは、それなりに走ってくれる。そのあたりにも懐の深さみたいなものを感じることができます。

そんな懐の深さ、やさしさみたいなものの理由を考えると、PAS Braceに内蔵されている8段変速とともに、進化を極(きわ)めたアシスト制御機構「S.P.E.C.8(スペックエイト)」の存在に行き当たります。これが優秀、アタマがいい。

S.P.E.C.8は、車速センサーが感知したスピードとペダルを踏む力から走行状態を推測し、それぞれのシフト位置ごとに最適なアシストパワーで快適な「走り」を提供するシステムです。0km/hスタートでパワーが必要な状況から、一定速度でのクルージングまで、あらゆるシーンでジャストなアシスト力を実現することでスムーズな走りを可能にしてくれます。

このお助け具合こそPAS Braceに搭載されたS.P.E.C.8の本領なのでしょう。急な坂+高めのギア、というちょっとイジワルな状況をあえて作ってみたところで「ハイハイ、了解!」という感じでパワフルにクリアしてくれちゃう。どこまで行ってもS.P.E.C.8はキレたりせず、終始やさしいままなのです。うーん、ヤマハの高い技術をひしひしと感じます。

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陰の立役者、フロントサスペンション

PAS Braceらしさの1つにフロントサスペンションが挙げられます。この装備のおかげで凸凹した悪路へのアプローチが苦になりませんし、手や腕、上半身への負担も減らしてくれます。もちろんマウンテンバイクではないので山奥に深く分け入って……とまではいきませんが、それでもサスなし自転車よりははるかにイージーに段差をクリアしてくれます(激しい段差を越えたときに聞こえてくるガシャンという音は少し気になりました。どこから鳴っているのかはわかりませんでしたが)。

26インチ×1.50HEというセミスリックタイヤも、乗り心地とスピードのバランスを考えたベストチョイスだと思います。この快適さをキープするためにも空気圧の管理はしっかり行いたいですね。

自転車に乗る方ならわかってくれると思いますが、一見平たんに見えるアスファルトでも実際にはかなりラフに凸凹していることがあります。また、車道と歩道は多くの場合、面一(つらいち)ではありません。

でもフロントサスのおかげでそれをいちいち気にかけなくていいのは本当に楽です。フロントサスを装着するデメリット(重量増やレスポンスの悪さなど)は確かにありますが、パワフルな電動パワーを得たPAS Braceはそれらをほとんどカバーしてくれます。

フロントに備わる機械式のディスクブレーキも好感触、ナチュラルなフィーリングにあふれています。制動パフォーマンスが外的な要因(雨やホコリ)で左右されることが少ないディスクブレーキなので、自転車に備わる制動装置としては最も優位な部類といっていいでしょう。音もなくスピードを落としていく様子には頼もしさしかありません。

搭載されているバッテリーの性能についてもお話ししましょう。PAS Braceに標準で積まれている「15.4Ahバッテリー」は、PASシリーズの中でも最大容量(2022年5月17日時点)です。

30分で20%までチャージすることができ、約4時間でフル充電となります。1充電あたりの走行可能距離はモード別に、91km(オートエコモードプラス)、68km(スマートパワーモード)、62km(強モード)。もちろん使い方によって距離はアップダウンしますが、いわゆる理論値ではなく実走行に基づくリアリティのある数字だということが試乗で確認できました。うれしいことに、なかなか減りません(笑)。「残りアシスト走行可能距離」の表示も安心感絶大です。

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もう少しだけ、遠くへ

以前から気になっていた小道(こみち)の、ちょっと先……。
悪路が災いして踏み込めなかった河川敷のフラットダートエリア……。
勾配がキツすぎて最初からあきらめていた近所の小高い丘……。
遠すぎてチョイスから外していたランチスポット……。

それほど多い時間ではなかったですが、PAS Braceで走り回った数日間、筆者は普段見ることのできない風景をたくさん見ることができたし、日頃のモヤモヤもスッキリ解消できちゃいました。そして思い至ります。「もう少しだけ、遠くへ、奥へ」の気持ちにフタをしなくていいPAS Braceは、フツーの自転車と原付バイクの中間的な乗り物なのかもしれない、と。

自転車は体力なりの行動半径リミットがあるし、バイクはバイクで交通法規ゆえの走行制限が多い。しかしそれらの制約をヒョイと跳び越えてしまえるPAS Braceは最高のプレジャービークルなのでした。そんなナイスかつミドルな立ち位置のPAS Braceを、筆者はあえてこう呼びたい。「ナイスミドルな電チャリ!」と。

街中を颯爽(さっそう)と走る子乗せタイプが「数的」に電動アシスト自転車のメインストリームだとすれば、今回乗ることができたPAS Braceはきっと傍流です。一般ユーザーにとってはたぶん、「こんなモデルもあったのね」的モデルかもしれません。

しかし初代が発売された2008年から指折り数えて14年。陰の定番モデルとしての進化をマジメに続けてきたことで、実にキモチのいい乗り物にPAS Braceは仕上がっていました。プライスの155,991円(価格はすべて2022年7月1日時点)が高く感じる? いやいや、今や50ccの原付きバイクだってものによっては20万円前後することもあり、同じヤマハのeバイク「YPJ」シリーズにいたっては約27〜43万円台。我らがPAS Braceのリーズナブルさについては……いうまでもないでしょう。バッテリーだって15.4Ahと超ラージサイズですし!

体力、脚力、コストパフォーマンスのバランスを考慮しつつ、自転車で走る行為そのものにワクワクしたい!そんなアナタにPAS Braceはきっとベストな選択肢になるはずです。あれこれ、こんなに気持ちよくしてくれるナイスミドルなスポーツモデル。アナタの「もう一歩先へ」のモチベーションを電気パワーで力強くバックアップしてくれることでしょう。 価格.com

文:宮崎正行 写真:文田信基(fort)

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ヤマハ PAS Brace PA26B 2021年モデル + 専用充電器

タイヤサイズ: 26×1.50HE
補助走行距離: パワーモード 62 km / オートモード 68 km / エコモード 91 km
充電時間: 4 時間
重量: 23 kg
サドル高: 815mm〜965mm
全長: 1780 mm
全幅: 575 mm
カラーバリエーション: グロスブルー / ホワイトオレ / マットブラック

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