アクションカメラ・ウェアラブルカメラの選び方
アクションカメラ・ウェアラブルカメラ(以下、アクションカメラ)は、自転車やバイクのヘルメット、サーフボードなどに装着して臨場感あふれる映像を撮影できるアイテムです。高倍率のズームレンズで、大きなモニターを見ながら動画を撮る従来のビデオカメラ(ハンディカメラ)とは真逆のコンセプトが人気を集めています。ここでは、アクションカメラの選び方のポイントや主要メーカーの特徴について解説します。
2024/12/10 更新
目次
アクションカメラとは、サーフィンやスキー、登山、自転車などのアクティブシーンで競技者目線の迫力ある動画を撮るために開発されたカメラで、身に付けて使うのでウェアラブルカメラともいいます。広角レンズを搭載することで、視野の広いライブ感のある映像を撮影できる点が魅力。防水耐衝撃性に優れており、過酷なシーンにも対応します。
カメラが小型軽量なため、自転車のハンドルやフレーム、ヘルメット、サーフボードなどに装着してハンズフリーで撮影が可能。そのための付属品、あるいは別売りアクセサリーも多数ラインアップされています。手に持つのではなく、どこかに装着して使用するため、撮影の自由度が非常に高いです。その自由度を損なわないためにも、行動のじゃまにならない本体の小ささが重要になります。
アクションカメラ最大の魅力は、防水・耐衝撃性に優れた本体のタフネスさ。カメラ本体に防水・耐衝撃性を備えたものと、付属のハウジングと呼ばれる密閉容器に入れることでそれらを得る2タイプに分かれます。どちらも、サーフボードに付けて迫力ある映像を撮ったり、ヘルメットに付けて登山の様子を記録したり、ダイビングで水中の様子を撮影したりと、さまざまなアクティブシーンで活躍します。
広角レンズを採用したアクションカメラは、広範囲を撮影することで視野全体を記録できるだけでなく、遠近感が強く出せるため、より迫力のある映像を撮れます。「ズーム機能がない」といった機構の単純さもあいまって、ここ数年で画質が向上。フルHDや4K動画に加えて、スローモーションやタイムラプスなど撮影機能の幅も広がっています。近年は、テレビ番組で演者の表情を撮影する際に使用される機会も増えています。
ハンディカメラとの大きな違いは「レンズとモニター」です。ハンディカメラはモニターを見ながら撮りたいものにズームして撮影するため、運動会などに向いています。一方のアクションカメラは、カメラを装着して構図を決めるとき以外はモニターを見ないのでズームレンズがなく、小型化と防水重視のためマイクに高い性能を求めていません。その代わり、広い範囲を一度に撮れる広角レンズを搭載しており、視界全体が収められます。小型で軽いうえに両手が自由になるので、身に付けていることを意識せず撮影できます。自分の体験を映像で残すカメラというイメージで捉えましょう。
解像度 | 総画素数 |
---|---|
フルHD(フルハイビジョン) | 1920×1080 |
4K | 3840×2160 |
基本画質や暗所での画質はイメージセンサーの大きさで決まるといっても過言ではありません。サイズが大きいほど高性能になります。一般にコンパクトデジタルカメラサイズの1/2.3型か、それより小さめのセンサーが使われます。ただし、センサーサイズが非公開の製品もありますので、目安として考えましょう。
撮像素子のサイズで選ぶ
写る範囲を「画角」といいます。一般的なハンディカメラは広角側で70〜80度なのに対し、アクションカメラは100度以上と広い範囲を写せます。なお、手ブレ補正をオンにすると画角が少し狭くなります。
暗い場所で撮影する場合には「最低被写体照度」をチェックしましょう。これは明るさの単位「ルクス」で表され、数字が小さくなるほど、より暗い環境で撮影できます。一般的なアクションカメラの最低被写体照度は「6ルクス」程度なので、これよりも数値が小さい製品を選びましょう。夜間は光が足りないため、通常の撮影ではノイズが増えて画質が大きく劣化してしまいます。それを補うため、1秒あたりの撮影コマ数を落として1コマあたりの画質を上げる手法があります。「ナイトモード」などの夜間撮影機能はこれを利用していることが多いです。その場合、1ルクス程度の暗い場所でも撮れますが、フレームレートが落ちるため動きがカクカクすることがあります。
アクションカメラは一度撮影を始めると、アクティビティや競技をやめるまで撮り続けるのが基本なので、バッテリーの持ちが重要です。1回のフル充電でどくらいの時間撮影できるかをチェックしましょう。長時間の撮影をするのであれば、予備バッテリーを準備しておくと安心です。また、USBを使ってモバイルバッテリーから充電できる製品を選ぶのもよいでしょう。
撮影時間で選ぶ
動きながら撮るときは、手ブレ補正性能が重要になります。手ブレ補正には電子式手ブレ補正、光学式手ブレ補正があります。多くの機種は電子式ですが、中には強力な光学式手ブレ補正を持つ機種もあります。ブレを極力抑えたい本格的な撮影では「スタビライザー」という装置を使うこともあります。
アクションカメラは小型でボタンも少なく操作性が高いとはいえませんが、タッチパネルが搭載されていれば快適に細かな設定も行えます。設定を細かく変えながら撮影を楽しみたいなら、ぜひとも欲しい機能です。タッチパネルがない機種から探すなら、スマートフォンやタブレット端末などとWi-Fi連携できるモデルを選ぶと便利です。
文字通り、周囲360度の景色を撮影することができる機能です。水平方向のみ360度写せるタイプと、水平方向に加え、上下方向も写せるタイプがあります。上手に活用すればユニークな写真を撮影することができます。
圧倒的なシェアを誇るアクションカメラのパイオニアメーカー。優れた耐久・防水性に加え、手ブレ補正機能などを備えた「HERO」シリーズを展開し、マウントなど専用のアクセサリーも豊富です。シリーズ最新モデルの「HERO13 BLACK CHDHX-131-FW」は、HyperSmoothブレ補正を備えたの最上位機種。5.3KビデオとHDRで細部まで色鮮やかに撮影できます。
ポケットサイズの「DJI POCKET」シリーズが人気のメーカー。3軸手ブレ補正機能を搭載したモデルや、「ストーリーモード」で動画と音楽のテンプレートを使い短編動画を作成できるモデル、F2.0の絞りを搭載し写真をスナップできるモデルなど、バリエーション豊かなラインアップも魅力です。
カメラ本体にマイクが内蔵されており、別途マイクを装着することなく音を録ることができます。ただし、外部マイクを使用した際と比べると、音質は落ちる傾向にあります。なお、価格.comに価格登録されている大半の製品が内蔵マイクを搭載しています。
カメラに向かって話しかける音声で、カメラ本体をハンズフリーでコントロールできる機能です。手がふさがっている際の撮影で活躍します。「撮影開始」「写真を1枚撮影」「タイムラプスモードをON」など、モデルによって操作できることが異なります。
アクションカメラの多くは、モニターの小ささをスマートフォンやタブレット端末で補います。スマートフォンとWi-Fiで接続し、専用のアプリを使って撮影設定や撮影映像の確認を行うのが一般的です。その意味ではWi-Fi機能とスマートフォン(または、タブレット端末)は必須といえます。スマートフォンは撮影時のワイヤレスモニターとしても使えるので便利。製品によってはBluetooth経由でリモート操作できるタイプもあります。
カメラのインターフェイスはHDMIとUSBの2つが基本です。HDMIは1本のケーブルで、映像と音声をデジタル信号でやり取りできる端子で、モニターにつないで撮影時のプレビュー用や再生に使えます。USBはパソコンへのデータ転送と充電に使います。現在、USB端子の中では「USB Type-C」が主流です。
本体が軽いほど、その存在を意識せず競技に集中でき、風の抵抗も少なくて済みます。カメラ本体が防水耐衝撃仕様になっているとその分重くなるため、ハウジングが必要な機種と比べるときは、ハウジングの重さも含めた「撮影時重量」で比べましょう。
本体重量で選ぶ
一部のモデルでは内蔵メモリーを搭載しています。長時間の動画を撮るには不十分ですが、いざというときの静止画撮影などに役立ちます。映像の記録にはSDカードより小さいmicroSDカードを使用するのが一般的。カードが非常に小さく頻繁な抜き差しはしづらいため、大容量のものを用意しましょう。
内蔵メモリー容量で選ぶ
レンズを動かすのが光学式、画像処理で行うのが電子式です。
光学式手ブレ補正は手ブレとは逆方向にレンズ(あるいはイメージセンサー)を動かすことで、ブレのない映像を録画する方法。電子式は実際に撮影した画像を直前の画像と比べて、ずれがあればその分画像をずらして重ねていくことでブレのない映像を作ります。ただ、画像をずらす余地を残さないといけないのでその分記録できる範囲(画角)が狭くなります。
焦点距離が短いほど画角は広くなります。
画角は、角度で表記される場合と焦点距離で表される場合とがあり、商品によって異なります。両者の関係を計算するのは非常に難しいのですが、一般的なデジタルカメラでは35mmフィルム換算で14mmが114度の画角となり、焦点距離が短いほど広角になります。ただし魚眼レンズという周辺が多少ゆがんでも広い範囲を映せるレンズだと、15mmで180度の画角を得られます。アクションカメラのレンズは魚眼レンズに近いため、15mmで180度を目安にするとよいでしょう。
空中と水中では光の屈折率が異なるからです。
空中(つまり地上)に対して、水中では屈折率に約1.33倍の違いがあるため、水中では写る範囲が狭くなってしまいます。たとえば、空中では180度撮れるカメラも水中では135度くらいになります。
水中ではワイヤレス通信は使えません。
水中では電波が急激に弱くなるため、空気中でWi-Fiを使ってリモート撮影していても、カメラを水中に入れたとたんに接続が切れてしまいます。カメラだけを水中に入れて、地上からスマートフォンでモニターしながら撮る、という使い方は残念ながらできません。
オートフォーカスはついていないものが主流です。
カメラは広角になればなるほどピントの合う範囲が広くなるため、アクションカメラほどの超広角レンズを使えば、数十cmから無限遠まで全体にピントが合うからです。これをパンフォーカスといいます。よってピンボケの心配はしなくても大丈夫です。
ウェアラブル
身に付けるという意味で、衣服や頭部に装着して使うカメラをウェアラブルカメラ、腕時計や眼鏡型の端末をウェアラブル端末といいます。パナソニックは、自社のアクションカメラ製品をウェアラブルカメラと呼んでいます。
画角と焦点距離
画角と焦点距離は、いずれも撮影範囲の広さの指標となります。画角は撮影範囲を角度で示したもの。数字が大きいほど広い範囲が写ります。映像範囲の対角線で表現され、画角180度の場合、斜め方向は180度全体が写りますが、上下左右はもう少し狭くなるイメージです(上下左右すべて180度写ったら、円形の画像になってしまいます)。焦点距離はイメージセンサーとレンズの光学的な中心(焦点)との距離のことで、短ければ短いほど広い範囲が写ります。
スタビライザー
カメラスタビライザーといい、カメラが揺れないよう安定を保つ装置です。これにカメラを装着して撮影すると、持つ手が揺れたり傾いたりしても、スタビライザーがカメラを水平に保つため、揺れのない映像を撮ることができます。手ブレ補正よりも補正できる範囲が広いため、本格的な撮影で使われます。
耐衝撃性能
各メーカーが独自で性能を示しています。一般的に「何メートルの高さまでなら落としても大丈夫」という書き方で示されます。
タイムラプス動画
タイムラプスとは時間の経過を意味する言葉で、タイムラプス撮影は微速度撮影ともいいます。ハイスピードの逆で、わざとゆっくり撮影することです。たとえば、長時間かけて1秒に1コマずつ撮影し、それを30fpsで再生すると30倍の速度になります。時間の経過を早送りで見られるわけです。長時間の定点撮影で状況を記録する用途などに便利です。
ハイスピード動画
通常より速い速度で動画を撮影する技法です。それを通常の速度で再生すると、きれいなスローモーションになるため「スローモーション動画」とも呼ばれます。たとえば120fpsで撮影したものを30fpsで再生するとスピードは1/4になります。
ハウジング
正式には水中ハウジングといいます。透明な密閉容器で、カメラをそこへ入れることで、防水・耐圧性能が上がります。水中では深く潜るほど圧力がかかるため、防水のカメラでもハウジングに入れることでより深く潜ることができます。
フレームレート(fps)
動画はパラパラ漫画のように連続した静止画を組み合わせて動いているように見せています。その1枚1枚をフレームといい1秒間に何枚の画像を表示するかをフレームレートといいます。fpsはその単位で「frame per seconds」の略。「フレーム/秒」という意味です。動画は30fpsが基本ですが、より動きを滑らかに見せるには60fpsが望ましいとされています。
マウント
カメラ用マウントは、カメラをさまざまな場所に固定するための部品を指します。たとえばバイクにカメラを付けるためのマウントは「バイク用カメラマウント」といいます。
4K動画
4KのKはキロ(つまり、1000)のことです。横幅が約4000ピクセルのサイズを持つ動画のことです。フルHDは横幅が1920ピクセルで2000に近いので2Kと呼ぶこともあります。
IP6X(防じん性能)
IPは防じん性能を示す保護等級で、「IP0X」から「IP6X」までの全7等級に分かれています。「IP6X」は、ホコリなど粉じんが内部に侵入しないという等級になります。
IPX8(防水性能)
IPXは、水に対する耐性を示すための規格です。製品外部からの水の侵入に対する防水等級は、「IPX0」から「IPX8」まで9段階あり、IPXに続く数字が大きいほど防水性能が高いことを示しています。「IPX8」は潜水状態での使用でも影響がないことを意味しています。