カメラを購入する際に気になる価格とスペックの関係、自分のレベルに応じた選び方、そして実際の写真を見本にして設定による写りの違い、被写体ごとのレンズの選び方も解説します。
2022/05/11 更新
初心者のうちはデジタル一眼カメラの価格による違いはわかりづらいでしょう。しかし、安いカメラと高いカメラでは「写りのきれいさ」と「失敗しにくさ」の2点で大きな違いがあり、たとえば画素数だけ見て同じ画質や性能のカメラと勘違いしないようにすることが重要です。ここではその具体的な違いを解説していきます。
上は撮像素子と呼ばれる光を変換するためのセンサーのサイズの比率を表したものです。例えばエントリー機が採用するAPS-Cサイズのセンサーは、フルサイズセンサーよりもずいぶん小さいことがわかると思います。センサーは大きいほど「高画素にして細部を描写」したり、「同じ画素数でもノイズを抑えてきれいに撮りやすい」のですが、その分カメラも大きく重くなり値段も上がります。
センサーが大きいと価格も高く、また重い
APS-C | センサーサイズ | フルサイズ |
---|---|---|
![]() |
製品外観 | ![]() |
EOS Kiss M2 | 機種名 | EOS R |
本体のみ:約351g | 重量 | 本体のみ:約580g |
円 | 価格 | 円 |
APS-Cとより大きなフルサイズで比較をすると、被写体が同じ大きさになるように撮った場合、フルサイズのほうがより大きくぼかすことができます。また、同じ画素数で比べてもフルサイズが画質面で有利になります。
エントリー機と比べると、一見ややこしい中・上級機ですが、各種の設定がいちいちメニューを開かなくても専用ボタンから変えられるため、一度配置を覚えてしまえば非常に楽で、かつ複数の項目を短時間で変更できるのです。
円
専用ボタンは右側にまとまっています
円
左側にもダイヤルが追加されました。また、中・上位機が搭載するサブ電子ダイヤルなら露出の調整が簡単です
たとえば、露出のコントロールを瞬時に行いたい場合にサブ電子ダイヤルが活躍します。
次の例を見てください。左はやや明るすぎて空が白くなってしまいました。そんなときは露出をアンダー(暗め)にすることで、右のようなきれいな青空が撮れます。このように、中・上級機が装備するサブ電子ダイヤルは露出を瞬時に変更できるのです。
簡単操作で露出を変えて空を青くきれいに
高いカメラの魅力の1つは、連写性能とAF(=オートフォーカス)性能が高いことです。前の項目にも出てきたキヤノンの機種を例としてみてみましょう。キヤノンのAPS-C 一眼レフエントリー機EOS Kiss X10は、1秒間に5コマの撮影が可能で、フォーカスを合わせられるAFポイントは9点です。それに対し、同じAPS-C 一眼レフでより高額なEOS 90Dは1秒間に10コマ撮影が可能で、AFポイントは45点です。つまり、高いカメラなら、連写も速く、より多くのポイントで被写体を追えるため、撮影で失敗しにくいという利点があります。
ここからはカメラの基本的なスペックについて知識を深めましょう。レンズを買う際に重要な焦点距離や撮影時に重要なF値、シャッター速度の基礎などを知ることで写真の撮り方にもカメラ選びにも役立つはずです。
焦点距離はレンズを使いこなすうえで重要なスペックで、焦点距離が変化すると画角=写る範囲が変化します。焦点距離が小さいほど広い範囲を写すことができ、焦点距離が大きいほど被写体を大きく撮影できます。
焦点距離は、レンズの名称から確認できます。ただし、焦点距離はフルサイズを基準に記載されているので、センサーの小さなAPS-Cセンサーやフォーサーズセンサー機で使う場合は、換算して考える必要があります。たとえば、キヤノンのAPS-C機の場合、レンズの焦点距離を約1.6倍で換算する必要があるため、フルサイズで焦点距離50mmのレンズでも80mm相当になることに注意しましょう。
キヤノンのレンズ「EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STM」を例に見てみましょう。型版の記載中の、2番に当たる「15-45mm」がこのレンズの焦点距離です。EF-MレンズはAPS-C用なので、実際にはこの数値を約1.6倍した24-72mmが焦点距離となります。
フルサイズ以外で使うときの換算焦点距離
メーカー | 換算焦点距離 |
---|---|
ニコン / ソニー / 富士フイルム | 1.5倍 |
ペンタックス | 1.56倍 |
キヤノン | 1.6倍 |
オリンパス / パナソニック | 2倍 |
焦点距離ごとの写りの違い
F値とはレンズの明るさを表す数値です。レンズに記載されているF値は最も小さくできる値のことです。撮影時はF値が小さければ小さいほどぼけやすくなります。一方F値が大きくなるとピントの合う範囲が広くなり、ぼけにくくなります。
F値ごとの写り
ISO感度を上げるとノイズが増す
ISO感度とは、センサーが光を捉える能力を表した数値のことです。ISO感度の数値が小さいと光を捉える能力が低く、数値が大きいと光を捉える能力が高くなります。数字が高いほど、シャッター速度を速くできるため、手ブレを防ぐことができます。ただし、数値が上がりすぎるとノイズが増幅し画質が落ちるというデメリットがあります。
デジタル一眼カメラの操作の基本は露出(写真の明るさ)です。露出を決めるのは「F値」「シャッター速度」「ISO感度」ですが、今のカメラはたとえば自分はF値のみを操作し、ほかの項目はカメラ任せで一定の露出となるような機能を搭載しています。つまり露出の基本とこの機能さえ理解すれば、ただシャッターを押すよりもはるかにさまざま表現ができるのです。ここではまず露出の基本的な考え方、そして現行のカメラを例に「F値」などの各項目に関わる露出関連機能の使い方を解説します。
露出を決める3つの要素は相互に関わります。F値を明るい方向に設定した場合、写真を同じ明るさにするのであればシャッター速度を遅くして暗くしたり、ISO感度を下げて暗く設定します。露出の3要素すべてを自分で設定すると操作は多くなりますが、今のカメラは調節したい1つの要素(F値やシャッター速度)をユーザーが設定して残りの設定はカメラが自動的で行うモードを搭載しています。
カメラの設定と露出(光の量)の関係
いずれかの値を変更すると明るさが変わります。たとえばISO感度を大きく(明るく)した場合、ほかが不変であれば写真は明るくなります。
上はISO感度だけを上げた例です。ほかの数値が変わっていないので写真が明るくなりました。
露出の基礎がわかったら、実際のどの部分で設定するかをキヤノンのカメラ「Eos Kiss M」を例に見てみましょう。
ISO感度
1600と書いてある部分。この数字が大きいほどシャッター速度を速められブレづらくなりますが、画質は落ちます。
シャッター速度
この値を小さくすると一瞬を止めて撮れるので、動く被写体を撮るときはココをチェック。
絞り・F値
この値を小さくすると、背景を大きくぼかせるので、被写体を強調したいときに便利です。
露出補正
この値を大きくすれば写真を明るく、小さくすれば写真を暗くできます。
ISO感度を大きくすると、シャッター速度を速くできてブレづらくなる。初心者は6400くらいまで上げてもOK
初心者の場合、ISO感度の設定は基本「ISOオート」がおすすめです。そうしておけば光が足りない場合、カメラが自動的にISO感度を上げてくれます。上げすぎるとノイズが増えて写りが悪くなりますが、初心者の場合、まず手ブレを防ぎたいのでISO6400くらいまでは問題ありません。
EOS Kiss MでISOを変更するには背面液晶のISOとある箇所をタップ。その後で「ISO6400」と表示されている数値をダイヤルなどで変更します。
夜景をISO100とISO6400で手持ちで撮って比較
ISO6400になると多少ザラつきが感じられますが、さほどブレずに撮れています。ISO100ではシャッター速度が遅くなるため、完全にブレてしまっています。
数字を小さく(=高速に)することでブレづらくなる。子供を撮るなら1/500くらいでもOK
シャッター速度を速くすればするほど被写体の動きは止まります。設定は簡単で数値が小さくなるように設定しましょう。動く被写体を撮影する際に目安となるシャッター速度は1/500秒が基本です。シャッター速度を変更するには「シャッター速度優先オート」に設定し、その後でダイヤルを回して任意のシャッター速度になるように調整しましょう。
絞りを変更するにはカメラのモードを「シャッター速度優先オート(S/Tvなど)」にし、上の画面で「1/1000」と表示されている数値を変更しましょう。
シャッター速度を変えて撮って比較
細かく動きがちな小型犬を撮影しました。1/8ではブレてしまっていますが、1/500ではしっかりと撮れています。
数字を小さく(=絞る)すると背景を大きくぼかせ、逆に8くらいにすると細部まで精細に写せる
絞り値を変更すると光の通る量を変更でき、さらにピントの合う範囲が変化します。被写体の前後をぼかしたい場合は絞り値を可能なかぎり小さく設定し、被写体に広くピントを合わせたい場合はF値を大きくします。
絞りを変更するにはカメラのモードを「絞り優先オート(A/Avなど)」に設定し、上の画面で「F11」と表示されている数値を変更しましょう。
F1.8だと大きくぼかせる
絞り値が小さいほうが被写界深度が浅くなり被写体の背景を大きくぼかすことができました。背景をぼかすことでメインの看板を強調できます。F3.5では背景が少しクッキリしてきました。
F8だと細部まで写る
F値を5.6から8に上げると、カメラの右側や床の模様までしっかりと写るようになります。上げすぎても画質が落ちるのでF8あたりが1つの目安になります。
F値を小さくする簡単な方法は単焦点レンズ
F値を小さくするには、レンズの名称の「F3.5」などの記載ができるだけ小さいものを使いましょう。焦点距離の変わらない単焦点レンズであれば価格も手頃です。
写真の明暗を簡単に調整できるのが露出補正。明るくするなら+(プラス)、暗くするなら-(マイナス)に
P、Av、Tvモードなどで撮影するとイメージよりも暗くなったり明るくなったりすることがあります。その場合は「露出補正」を使いイメージどおりになるように明るさを補正しましょう。
明るさは写真の印象を大きく変えます。作例は露出補正0のものと±1したものです。-1は全体が暗すぎ、+1は明るすぎて空が白くなってしまっています。
随所にシーリングを施して内部に水滴や埃が入らない設計になっています。防塵・防滴タイプのレンズと組み合わせると雨中での撮影もできます。各社とも上位モデルで採用しています。
撮影時に手の微妙なブレによる振動を防ぐための機構です。レンズ内手ブレ補正と、ボディ内手ブレ補正の2種類があり、併用するメーカーもあります。カメラのボディが手ブレ補正機能を持たない場合、レンズ内補正搭載のレンズでないと補正が効かないので注意しましょう。
レンズ交換時にイメージセンサー表面などについた細かな埃が写真に写り込むのを防ぐために、イメージセンサーなどを微妙に揺らして埃を落とすのがゴミ取り機構。電源オンオフ時などに自動的に働きます。
コンデジやスマホのようにイメージセンサーが捉えた画像をモニターに映しながら撮ること。ミラーレスはすべてライブビュー、EVFでの撮影もライブビュー。一眼レフも背面モニターでの撮影はライブビューとなります。
背面モニターが180度回転し、カメラを自分に向けながらでも映像を確認しやすく、自分撮りをしやすくした機能を指します。機種によっては自分撮り時に自動的にセルフタイマーが働く、美肌機能が働くなどの工夫も施されています。エントリーモデルの多くに搭載されます。
カメラにフラッシュ(ストロボともいいます)が内蔵されていること。これに対しカメラ上部に装着するフラッシュは外付けフラッシュといいます。暗所や逆光時に便利です。
シャッターボタンを押している間、ずっとシャッターが開いている機能を利用した撮影です。数秒以上の長時間撮影時、特に花火撮影や星空などシャッターを閉じるタイミングを自分で決めたいときなどに使います。
デジカメとプリンターを直接つないで印刷するための規格がPictBridgeで、パソコンを介さなくてもプリントできます。USBで接続するタイプやWi-Fiを使ってプリントするタイプなどがあります。
一定間隔で連続撮影した静止画を素材に作った動画です。長時間の事象の変化を短時間で表現できるのが特徴です。
液晶モニターを左右方向に開くことができるうえ、さらに上下方向に角度を自由に変えられるものです。高い・低い位置にカメラを構えたときに構図が確認しやすく、自分撮りにも便利です。
可動式背面モニターの一種で、モニターが上下に傾く機構を指します。上にだけ動くもの、上にも下にも動くもの、180度動いて自分撮りに対応するものなどがあります。構造はシンプルで便利ですが、縦位置でのローアングル撮影には未対応です。
1回のシャッターでRAWデータとJPEGデータの両方を記録するモード。拡張子が異なる同じ名前のファイルが2つ作られます。すぐに使えるJPEGとじっくり現像できるRAWを一度に記録できるので便利です。
フルHDよりさらに高解像度な動画です。横幅が約4000ピクセル(3840ピクセル)なので4Kといいます。1コマあたり800万画素相当で静止画としても使えるレベルです。従来のフルHDは横幅が1920ピクセルあり、2000ピクセルに近いので2K動画と呼ぶこともあります。
上空に浮かぶGPS衛星の電波を使って現在地を測位する機能を指します。GPSを搭載していると写真の撮影位置情報が緯度経度で記録されます。しかし、最近ではスマホのGPSを使って撮影位置を記録することが可能になっているので、GPS機能内蔵モデルは減りつつあります。
ペットや動物を撮影するのであれば望遠レンズを選択しましょう。望遠レンズは遠くの被写体を大きく撮影できるのでおすすめです。特にペットや子供の場合、近くで撮影するとカメラに気を取られてしまって撮影しづらいので、望遠を使って遠くから撮影しましょう。その際、焦点距離が200mm以上のレンズを選ぶといいでしょう。
学校イベントなら一脚も便利
望遠レンズは狭い画角内を撮影するためブレやすく長時間被写体を追い続けるのは大変です。長時間撮影する際やブレを極力抑えたい場合は三脚や一脚を使うといいでしょう。
おとなしくしている子供やペットは単焦点レンズで撮影してみましょう。明るい単焦点レンズを使えば、室内でも十分なシャッター速度を稼げ、背景をぼかせます。室内では35mm版換算で35mmから50mm相当の画角のレンズで、かつ開放F値F2.0未満が便利です。予算は4万円程度見ておけば十分なはずです。
小さな被写体を大きく撮影したい場合はマクロレンズを使いましょう。一般的なレンズよりも被写体に近寄って小さな被写体を大きく撮影できます。35mm版換算で60mmから90mm相当のマクロレンズが便利です。
広角レンズとは焦点距離が標準レンズの50mmよりも短いレンズことです。標準レンズよりも広い範囲を写真に収める事ができます。また、広角レンズの中でも24mm相当よりも数字が小さいレンズを超広角レンズと呼びます。超広角レンズでは自然風景や建築物をダイナミックに撮影できます。ワンランク上の世界を表現したい人は試してみましょう。
三脚を使うと手ブレのない美しい写真を撮影できます。三脚は基本的にシャッター速度の遅いシーンで使います。ISO感度は低めに設定して長秒露光などをして夜景撮影してみましょう。三脚を使うときは手ブレ補正の誤作動を防止するために手ブレ補正をオフにして撮影しましょう。
ブレなどは典型的失敗ですが、最終的には思った表現ができているか否かです。
写真の成否は撮影者本人が決めます。作例ではタクシーをぶらして動感を表現したかったので成功ですが、動いているタクシーを止めて撮りたいと思っていたら失敗になります。
できなくはないですが、本格的にやるなら防水コンデジを買いましょう。
防塵防滴のカメラはミドルクラスから上に多くありますが、あまり雨ざらしにしたりするのはよくありません。ほとんどが「防塵防滴に配慮」で完全防水というわけではないので、雨の日に多く使うのであれば防水コンデジを買うかカメラ用のレインカバーをつけましょう。
焦点距離18-400mmのような高倍率ズームがおすすめ。コンデジのようにズームできます。
交換レンズには「万能ズーム」などと呼ばれるものもあります。万能なので画質は単焦点レンズなどと比べると少し劣ってしまいますが、1本で広角から望遠までカバーできるため旅行などには最高です。