天体望遠鏡の選び方
「光学形式の違いで何が変わるの?」「チェックしておくべきスペックは?」など、天体望遠鏡選びの際に浮かぶ疑問を解決できるのが選び方ガイドです。天体望遠鏡選びに必要な基礎知識、用語解説はこちらでチェックしましょう!
2023/2/12 更新
目次
天体望遠鏡は光学形式(光の集め方)の違いと、望遠鏡を載せる架台タイプの違いでそれぞれ分類されます。光学形式によって、観測できる天体の鮮明さが変わってくるほか、扱いの難しさも異なります。また、天体望遠鏡は通常架台とセットで販売されていますが、架台の違いも扱いやすさや観測しやすさに影響してきますので、しっかり選ぶ必要があります。目的に応じて、どんなタイプの組み合わせが向いているのかチェックしましょう。
凸レンズによって集光するタイプです。天体望遠鏡の中ではポピュラーで使いやすく、初心者でも気軽に天体観測を楽しめます。光軸調整が不要なので、メンテナンスも簡単です。ただし、安価なモデルに搭載されるレンズではにじみや歪みの原因である色収差が出やすい傾向にあります。高価になりますが、こだわる人は色収差が少ないEDレンズを使用したものを選びましょう。
凹面鏡により集光するタイプです。にじみや歪みに直結する色収差が出にくく、天体をはっきりと観測できます。また、口径が大きく高性能なモデルが多いですが、その性能の高さの割に低価格であることもメリットです。のぞき口が本体の横についており、見ている方向と望遠鏡の向きが異なるため、扱いに少し慣れが必要であるのと、振動などにより光軸がずれやすく、その都度調整が必要なこともあり、中〜上級者向きといえます。
レンズと鏡を組み合わせて集光するタイプで、反射屈折望遠鏡とも呼ばれます。色や球面、像面のあらゆる収差を高いレベルで補正することにより、クリアな天体観測を実現しています。屈折式よりも鏡筒を短くコンパクトにしやすい構造のため持ち運び性にすぐれます。さまざまな方式が考案されており、のぞき込む向きと天体の方向が同じものなら、屈折式と同様に直感的に使えて扱いやすいです。
垂直・水平に可動し、操作も簡単なので初心者に向いています。ただし、星は時間の経過で位置を変えるため、高倍率で目標の星を長時間追い続けるのには不向きな構造です。高価にはなりますが、コンピューターによる目標の自動追尾機能を標準搭載しているものもあります。
垂直・水平の動きではなく、赤緯・赤経と天球の軸に沿って可動するので、天体を追いやすいメリットがあります。モータドライブ搭載で天体を自動追尾する機能付きのものもあり、本格的な天体観測や天体写真の撮影に向いています。ただ、初心者には少し扱いが難しいでしょう。
国内シェア約60%を誇るトップメーカー。手を離した位置で鏡筒が止まる「フリーストップ式」の経緯台を採用したシリーズ「ボルタII」が代表的です。リーズナブルで初心者向けのシリーズが多数ラインアップされているのも特長で、高機能品も低価格で提供しています。
ケンコーは日本のカメラフィルターを扱うメーカー。低価格ながら高性能で人気の「スカイエクスプローラー」シリーズが有名です。また、他社の同サイズ製品と比べて価格がリーズナブルなのも特長。天体と自然観測の両方で使える望遠鏡も人気です。
天体の見え方と倍率の関係 | ||
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月 | 50倍 | 全体がはっきり見える |
100倍 | クレーターの様子まで見える | |
150倍 | より詳しい表面の様子が見える | |
土星 | 50倍 | 全体の姿が小さく見える |
100倍 | 輪や衛星タイタンが見える | |
150倍 | 本体の縞模様が見える | |
星雲 | 50倍 | アンドロメダ銀河、オリオン大星雲などが見える |
倍率は対象をよりはっきり見るための条件の1つで、対物レンズの焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割ることにより求められます。より遠くの天体を観測したい場合は高倍率レンズを取り入れる必要があります。使用する接眼レンズとのバランスもありますが、一般的に対物レンズの焦点距離が大きいものほど高倍率を得やすくなります。
対物レンズの焦点距離で探す
倍率だけ高くてもよく見えるとは限らないので要注意
高倍率であるほどよく見えると思いがちですが、倍率だけ高くて対物レンズ有効径が小さい天体望遠鏡の場合には、視野が暗くなったり星のディテールがぼやけてしまったりすることがあります。対象をはっきり観測するなら、倍率と対物レンズ有効径のバランスを意識しましょう。対物レンズ有効径の約2.5倍で求められる数値が「適正倍率」といわれ、この倍率以内で観測するのがよいとされています。高倍率を求めるなら、倍率に応じた対物レンズ有効径を備えたモデルを選ぶようにしましょう。
倍率の項でも取り上げましたが、天体をはっきり観測するためには、明るさも重要なポイントです。その明るさの指標は対物レンズの焦点距離を対物レンズ有効径で割った口径比で示されます。この口径比が小さいほど明るくなるので、暗い天体をはっきり見たい場合は対物レンズの焦点距離と対物レンズ有効径をチェックしましょう。
対物レンズ有効径で探す
明るさに関わるその他の指標もチェック
別名限界等級とも呼ばれます。天体の明るさは「等級」で表し、値が大きいほど暗いことを示します。極限等級とは、この等級に沿ってどのくらいまでの暗さの星を観測できるかを示す指標です。なお、極限等級は対物レンズの有効径に依存しており、大きければ大きいほど暗い星を観測することができます。
極限等級で探す
肉眼と比較し、どのくらいの光を集めることができるかを表す要素で、数値が大きくなるほど暗い星が見えやすくなります。人の瞳孔が最大に開くときその直径は7mmですが、集光力はレンズの有効径の2乗を瞳径の2乗(7×7)で割ることで求められます。たとえば有効径が100mmのレンズの場合、(100×100)÷(7×7)=約204となり、集光力は約204倍となります。
集光力で探す
どれくらい細かく見分けることができるかを示す指標です。角度(秒)で表示され、数値が小さいほど細部まで観測することができます。この性能が高いと、近接して見える星の観測をする際に便利です。
分解能で探す
天体望遠鏡のスペックでいう「長さ」とは、「鏡筒(メインの筒状の部分)の長さ」を指します。また、「外径」とは、「鏡筒の外径」を指します。このほか、持ち運んで使用する機会が多い場合は、長さや外径だけでなく重量もチェックしておきましょう。
長さをチェック
外径をチェック
重量をチェック
スマートフォンで撮影できる機能も近年人気です。標準搭載されているものはまだまだ少なく、ほとんどの製品がオプションとなっています。
見たい星を自動で捉えてくれる機能のこと。手動導入で行う必要がある「肉眼で天体の位置を確認する」「鏡筒の向きを変える」といった手間がなくなり、便利です。
フリーストップ式とは、天体望遠鏡の向きを手で簡単に変えられるタイプのことを指します。「手で望遠鏡を持ち、向きを変えて手を離すとそこで天体望遠鏡の向きがストップする」ため、フリーストップ式と呼ばれます。直感的な操作が可能な点が魅力。子どもが使うのにも向いています。
デジタルカメラなどのカメラを使った、写真撮影に対応した天体望遠鏡です。撮影する際は別売りのカメラアダプターが必要になることが多いです。
ファインダーとは、サブの小型望遠鏡のことを指します。メインレンズで目標の天体を捉えるための補助に利用します。本体口径が30〜50mm、倍率が5〜7倍ほどのものがスタンダードで、暗い天体を探し当てるときは、できるだけ口径が大きいものを選ぶ必要があります。
鏡筒の形式によってはメーカーに調整を依頼する必要があります。
反射式やカタディオプトリック式で振動により光軸がずれた場合、正確に天体を観測できなくなります。このとき光軸のズレを調整する必要がありますが、反射式であれば主鏡と副鏡についている光軸調整用のネジを自分で回すことで修正できるものもあります。しかし、カタディオプトリック式の場合は、自分で修正することが不可能ですので、メーカーに調整依頼をすることになります。
アイピース
天体望遠鏡の接眼部分に取り付けるレンズのことで、交換することにより倍率を変更することができます。対象の天体を高倍率でも見たい場合や、複数の天体に対応したい場合などには、複数の倍率のアイピースを持っておくと便利です。
正立プリズム
天体望遠鏡を通した像は上下逆さまの倒立になります。これが見にくいという人や、地上の対象を観測する人は、正立プリズムというアクセサリーを天体望遠鏡本体に取り付けることで、逆さまでない正立の像を映し出せるので便利です。