三脚・一脚の選び方
カメラを固定して撮影するのに必要な三脚や一脚。手ブレを抑えた、きれいな写真を撮るためにぜひ持っておきたいカメラ用品の1つです。ここでは、三脚や一脚を使うメリットをはじめ、積載重量や雲台のタイプなど、選び方のポイントを詳しく解説します。
2022/6/23 更新
目次
三脚・一脚はカメラを固定するための“脚”です。地面に設置して安定させて撮影することで、夜景や花火のような光の軌跡をきれいに撮りたいときや、構図を固定して風景や鳥が飛び立つ瞬間などの一瞬を捉えたいとき、大勢で記念写真を撮りたいときなどに威力を発揮します。
手持ちで夜景や暗い室内を撮る際、手ブレを抑えるにはシャッタースピードを速める必要がありますが、明るさが不足して暗い写真になってしまいます。これにはISO感度を上げることで対応できますが、ノイズも目立ちやすくなるのが欠点です。三脚を使えば手ブレを防げるので、ISO感度を上げすぎることなく撮影できて便利です。暗い中での撮影には欠かせないアイテムです。
野鳥や風景を撮影するときは望遠レンズを使うことが多いものです。カメラとあわせて2kg前後の重さを手で支え構図をキープしながら、シャッターチャンスを待つのは肉体的にも厳しくなります。三脚を使えば、撮りたい位置を決めてあとは狙う瞬間をじっと待てばOKです。
1〜2人なら手持ちの自撮りでも十分対応できますが、家族みんなで撮るなら三脚を使うと便利。カメラを三脚に固定してセルフタイマーの活用や、スマートフォン対応カメラならスマホでシャッターを押せば、カメラから離れて家族や仲間といっしょに写った写真が撮れます。
一脚は三脚と異なり脚が1本だけなので自立しませんが、カメラの重さを支えて手ブレを抑えてくれます。スポーツの試合など被写体を常に追いながら撮るときは、撮りたい方向をすぐ変えられる一脚が便利です。また、軽量な一脚なら山や岩場などを歩きながら撮るときも邪魔になりくいほか、足場が不安定な場所でもカメラを支えて、しっかり構えて撮ることができます。スポーツ写真やネイチャー写真を撮る人は確認してみましょう。
スマホでの動画配信に便利なセルフィー(自撮り棒)タイプ
最近はスマホでの動画視聴や動画配信の際に便利なセルフィータイプの三脚も増えています。スマホを固定することで、動画の撮影はもちろん、大人数での集合写真の撮影も手ブレの心配なく簡単に行えます。スマホ用途に限らず、デジカメなどを固定できる製品もあるので、購入前に使用したい機器(スマホやデジカメなど)に対応しているかをチェックしましょう。
雲台(うんだい)は、三脚・一脚に装着したカメラの向きや傾きを調節して構図を決めるためのパーツです。三脚・一脚は、雲台が付属するものと別途購入するものとに分かれています。また、雲台はハンドルで上下と左右の2方向に向きを変えられる「2WAY雲台」と、上下と左右、水平の3方向に向きを変えられる「3WAY雲台」、ハンドルなしでいろいろな角度に変えられる「自由雲台」など3種類があります。
上下と左右の向きを変えられる
1本のハンドルで上下と左右の角度を調整できる雲台です。ハンドルが1本なのでかさばりませんが、傾きの微調整は苦手。セッティングの際に水平の位置をしっかりとる必要があります。
上下と左右、水平の向きを変えられる
ハンドルが2本ついており、縦のハンドルで上下と左右の向きを、横のハンドルで水平の傾きを調節するタイプです。水平の微調整がしやすいのが特長です。2WAYと比べて持ち運びの際にかさばりますが、構図をしっかり固めたい人にお薦めです。
水平位置の確認に役立つ
カメラを水平に保つのに役立つのが水準器。これを見ながら水平に固定しておけば、写真の傾きを防げます。水準器は脚部についているタイプと、雲台に付いているタイプに分かれます。
重いカメラも動き滑らか
可動部分にオイルやグリスを封入してあるので、カメラをゆっくり、滑らかに動かせます。超望遠レンズで野鳥を撮るときも、これがあるとカメラを微調整しやすくなります。ビデオカメラ専用のビデオ雲台にも使われる機構のため、ビデオ撮影も行いたい場合は必須です。
カメラを容易に脱着できるプレート
クイックシュー搭載製品は、専用のシュープレート(台座)をあらかじめカメラの底にネジ留めしておくことで、三脚・一脚への着脱を容易にできます。クイックシューがない三脚はカメラを雲台に据え付けるたびにはネジで留めますが、クイックシュータイプなら固定レバーを締めたり緩めたりするだけで着脱できます。なお、シュープレートを使用しないときは、雲台に装着したままになります。
撮りたいシーンにあった三脚・一脚を選ぶことも重要なポイントです。チェックしたいのは、脚を一番伸ばしたときの高さである「最高全高」と、脚の開脚角度を広げた状態の高さである「最低全高」。これら2つの高さについてご紹介します。
三脚・一脚の脚を一番伸ばしたときの高さが最高全高です。この状態でカメラを置いたときに、自分の目線の高さに近ければ近いほど楽な姿勢で撮影できます。身長170cmの人なら最高全高150cm程度が最適な高さとなります。野鳥や風景など望遠での撮影や、運動会などの撮影は目線の高さが一番撮りやすくなります。
最高全高をチェック
三脚・一脚の脚を一番短くした状態が一番低い高さと思われがちですが、多くの三脚はもっと低くできます。脚の開脚角度を広げることで、カメラをより低く構えられるのです。地面に寝ている猫や花などローアングルのシーンを撮るときはその高さに三脚をセットする必要があるので、開脚機構により脚をどこまで広げられるかが重要になります。
最低全高をチェック
日本を代表する三脚ブランドで、1955年創業の老舗です。いち早くカーボン三脚を取り入れるなど新しい製品を続々投入しています。独自構造で5段の高い伸縮率と軽さを実現した「ウルトラ」シリーズがヒット。Bluetoothリモコンとスマートフォンホルダーが付属したモデルも人気です。
イタリアの老舗三脚ブランドで世界最大手です。比較的がっしりした本格派三脚がメインでしたが、最近は携帯性を重視したトラベル三脚(用語集参照)「BeFree」や、ミニ三脚(用語集参照)「Pixi」で日本での人気も上がっています。カラーラインアップが豊富なのも特徴です。
ベルボンと並ぶ日本の老舗三脚ブランドで1948年に最初の三脚を作っています。幅広いラインアップを用意し、比較的ハイエンド系が得意です。ベーシックな伝統的デザインの三脚がメインの製品。クラス最高の高さ1,720mmを実現したモデルも人気です
三脚・一脚選びは、機能性だけでなく、持ち運びやすさなども大事なポイントです。ここでは三脚・一脚自体の重さや、脚を縮めたときの長さ(縮長)、1本の脚を構成するパイプの数(段数)について解説します。
三脚・一脚の重さは1〜3kgが中心です。素材別に見ると、カーボンファイバー製はアルミニウム製より軽くなりますが、その分価格が高くなります。
素材で選ぶ
本体重量で選ぶ
脚をもっとも縮めたときの長さを指します。持ち歩きやすいのは300〜400mm台で、カメラバッグに装着したり、旅行用バッグに入れたりすることもできます。
縮長をチェック
それぞれ一長一短があります。
伸ばした脚を固定する方法は、レバーで締め込んで固定するレバー式と、脚の節目にあるナットを回転させて固定するナット式の2種類があります。レバー式は操作は簡単ですが、使っていくうちに締める力が弱くなることがあります。一方、ナット式はナットを回すという手間がかかりますが、レバー式のように締める力が弱まることがないので安心です
移動が少なければ金属素材を、持ち運びが多いならカーボン素材を選びましょう。
もっとも普及しているのは金属素材のもので、小型から大型までさまざまなタイプの製品が揃っています。カーボン素材のものは、金属製のものと比べると価格は高くなりますが、軽量で強度も強く安定感があります。スタジオでの撮影など、移動や持ち運びが少ないなら金属素材タイプ、徒歩での持ち歩きが多いのであればカーボン素材タイプを選ぶとよいでしょう。
石突(いしづき)
三脚・一脚の脚の先端部を指します。先がとがった金属製(スパイク)と柔らかいゴム製の2種類あります。屋外では先がとがった金属製を、室内や芝の上では床や芝を傷めないようゴム製を使うようにしましょう。
エレベーター
センターポールともいいます。三脚・一脚の真ん中にあり、雲台を取りつけるポールを指します。上下に動かして高さを調節しますが、一番上まで伸ばすと安定性が落ちてしまいます。高さの調整は3本の脚で行い、エレベーターは最後に微調整するものとして使いましょう。
ギア雲台
3WAY雲台の一種で、ハンドルではなくレバーを回転して角度を調節するタイプです。内部にギアが入っており、アングルの微調整を行いやすいため、細かなセッティングが必要なときに便利です。
トラベル三脚
旅行用に設計された三脚の総称です。一般的な三脚に比べて縮長が短く、脚を180度回転させて縮めることで、全体をより短くできるなどの特長があります。携帯しやすいものが人気です。
ナットロック式
三脚の脚の長さを調整する方式の1つです。脚の周りについているナットを回して緩めたり締めたりします。構造がシンプルで壊れにくい半面、締めるのに力が必要だったり、回すのに少し手間がかかったりします。
ミニ三脚
テーブルの上に置いて使うサイズなのでテーブル三脚ともいいます。高さが10〜30cmほどしかない小さな三脚ですが、バッグの片隅に入るので1つ持っておくと便利です。
レバーロック式
三脚の脚の長さを調整する方式の1つ。レバーを起こすと緩められ、倒すと締まります。操作は簡単ですが、レバーが緩んだときに微調整が必要になります。