手をかけるための時短 プロのフードディレクターが選ぶキッチン家電+調理器具
Pro's Choice Item
- プロが選んだ製品
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道具選びのこだわりをプロに聞く「Pro's Choice」。フードディレクター、林綾子氏の道具選びに通じる点として、3つのポイントがあるという。それが「料理の効率アップ」「デザイン」「用途に合う確かな性能」だ。
目的をていねいに見つめ直す
林氏の道具選びの考えは、約2年半前にリノベーションしたキッチンに集約されていた。冷蔵庫から食材を取り出したら、アイランドキッチンのシンクで洗い、作業スペースで切ったり、味付けしたり、下ごしらえ。そして左のガスコンロやオーブンで加熱して料理が完成……と動線が完璧で効率的。ただ、やみくもに時短を追求しているわけではない。取材をとおして感じたのは、林氏の料理に対する愛だ。
キッチンがすっきり使いやすそうなコツはいくつもあった。まずは、造作した大容量の棚を壁になじむ白にしたこと。ごちゃつきがちなアイテムはすべて、扉の奥に隠せるという。さらに、キッチンの中で存在感を主張しがちな冷蔵庫も、造作棚に収めることでなじんでいるのだ。特に林氏が選んだ三菱電機「置けるスマート大容量 MXシリーズ」は取っ手などの凹凸やボタンがないため、より白い壁面や造作棚との一体感がある。

さらにキッチン背面のカウンターに並んでいる調理家電や調理器具にもこだわりがある。たとえばデザイン性でも人気のバルミューダ製トースター「The Toaster」、ラッセルホブスの「コーヒーグラインダー 7660JP」、aarkeの炭酸水メーカー「カーボネーターII」。いずれも黒やシルバーを中心としたシンプルなデザイン。「機能がよくても、デザインのトーンが合わなければ選ばない」という林氏。キッチンに立つ時間が好きだからこそ、好きなものだけに囲まれていたいという気持ちが伝わってくる。
厳選したものは、とことん使いこなすのもプロならでは。オーブントースターでは頻繁にトーストやバゲットを焼くほか、焼き芋を焼くなど、ちょっとしたオーブン料理はこれで済ませる。炭酸水メーカーで作った炭酸水は飲用のほか、ご飯を炊いたり、顔を洗ったりしているという。手間を省くだけでなく、効率的に1つの製品を使い倒し、料理あるいは生活の質をワンランク上げている点も非常に参考になる。

さて今回、特に「プロならではの選び方」を実感したのが、ガスコンロだ。料理の仕上がりを左右するため、火力が強いものを。フライパンや中身の入った重い鍋をさっと火から逃しておけるよう、全面をカバーする五徳になっているもの……と用途へのこだわりから選んでいくと、多くのプロが愛用するHARMANのビルトインコンロ「プラス・ドゥ DW35F2JTKST」にたどり着くという。
「火力が決め手といわれるチャーハンや野菜いための仕上がりが違う」と林氏。お手入れに多少手間はかかるが、「それを手間に感じないほど、料理の出来(でき)に満足している」という言葉に彼女の料理への愛を感じる。ちなみにこのガスコンロは、火加減調整機能や自動消火タイマーなども搭載されており、プロだけでなく初心者でも絶妙な火加減でおいしい料理が作れる魅力がある。

愛用する鍋は、主にストウブの「ピコ ココット ラウンド」。3つ所有しており、長いもので12年使っているという。魅力は「煮込み料理が圧倒的においしく作れる」ところ。「出かける前におでんを加熱して火を消し、新聞紙でくるんで保温しておけば、夜には味が染みている」といい、ここからも道具を上手に駆使すれば、手間をかけずにごちそうが作れることを教わった。
改めて道具選びの基準について尋ねると「自分は何をやっていると楽しいか、何を面倒に感じるか、日々を振り返り常に棚卸ししている」と林氏。素材にこだわり、手をかけておいしい料理を作りたいからこそ、省力化できるところ、あるいは自分が面倒と感じる作業こそ、便利な道具でさっと済ませたいという。つまり上手な道具選びとは、自分の気持ちや暮らしをていねいに見つめ直すことから始まるということだろう。
Pro's Choice Item
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冷蔵庫・冷凍庫三菱電機:置けるスマート大容量 MXシリーズ MR-MX50F-W
POINT
- 取っ手がないクリーンな外観
- 軽く触れるだけで扉がオープン
- 真ん中に野菜室
野菜を使うことが多いことから、野菜室はかがまずに取り出せる真ん中がマスト。造作棚になじむすっきりしたデザインで、冷蔵室は軽くタッチすると自動でオープンするので、両手に物を持っていたり、手が汚れたりしていても触らずに開けられ、作業もスムーズだ。食材を-7℃で半冷凍させる「瞬冷凍」はまとめ買いに重宝している。
※林氏の使用しているモデルは廃番のため、こちらは後継機種で容量・特徴の近いものとなります。タイプ:冷凍冷蔵庫 定格内容積:517L ドア数:6ドア ドアの開き方:フレンチドア(観音開き) 自動製氷:○
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オーブントースターバルミューダ:The Toaster K05A-BK
POINT
- インテリアになじむデザイン
- どんなパンでもおいしくトースト
- 焼き芋も30分でホクホクに
バルミューダを選んだ理由は、ずばり「デザインが気に入ったから」。もちろんパンの焼き上がりのおいしさには大満足で、ほぼ毎日使っているという。食パンモードはもちろん、バゲットを使うことが多いことから、「フランスパンモード」も多用。オーブンのように予熱が不要なことから、焼き芋を始め簡単なオーブン料理で使用することも多い。
※林氏の使用しているモデルは廃番のため、こちらは後継機種となります。タイプ:オーブン
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コーヒーグラインダーラッセルホブス:コーヒーグラインダー 7660JP
POINT
- インテリアになじむトーン
- 一度にたくさんひける大容量
- コーヒー豆だけでなく、何でも粉末状にできる
ほぼ毎日コーヒーを飲むことから、「手動より効率よくひける」「コーヒーメーカーよりコンパクト」という理由でセレクト。キッチンカウンターに置いてある同ブランドの塩コショウ電動ミルともマッチしている。コーヒー豆のほか、「クローブやシナモン、カレーのスパイスを粉末にする」と、フードディレクターらしい使い方を教えてくれた。
※コーヒー豆以外の使用は保証対象外となります。あらかじめご了承ください。調理家電種類:電動コーヒーミル 消費電力:150W 幅x高さx奥行:125x215x125mm
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ビルトインコンロHARMAN(ハーマン):プラス・ドゥ DW35F2JTKST
POINT
- 家庭用では最上位級の火力
- 五徳が全体にあるので鍋を逃しやすい
- ステンレスとアイアンの武骨なデザイン
ステンレスと鋳物を使った武骨なデザインと家庭用コンロでは最大の高火力を備えていることから、ほぼ一択だったという。全面が五徳に覆われているので、重い鍋やフライパンでも、簡単に火から外せて便利。附属の「ダッチオーブン」もほったらかしで料理が作れ、パンもおいしく焼けるという。
設置タイプ : ビルトイン コンロ口数:3口
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炭酸水メーカーaarke:カーボネーターII
POINT
- 炭酸の強さを調整できる
- プラスチックゴミを減らせる
- インテリアになじむデザイン
普段から炭酸水を使うことが多く、以前はペットボトルを購入していたが、使用量が多いことからaarkeの炭酸水メーカー「カーボネーターII」に切り替えた。数ある炭酸メーカーからこれを選んだ理由はもちろんデザイン。また、プラスチックゴミ問題を意識しているため、ペットボトルやフィルムといったゴミを減らせる点もポイント。
調理家電種類:ソーダサーバー 幅x高さx奥行:153x414x258mm
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鋳物ホーロー鍋ストウブ:ピコ ココット ラウンド 22cm
POINT
- 無水料理からパン焼きまでできる万能選手
- 孫まで受け継ぐことができる耐久性
- 素人でも煮込み料理がおいしくできる
耐久性が高く、ガンガン使ってもびくともしない。それでいて、肉や野菜を入れ、白ワインと塩コショウで味付けして煮込むだけで、簡単にごちそうが作れるため、もはや手放せない。フタの取っ手となる魚型の「アニマルノブ」は公式のカスタマイズツール。熱くなりにくく、また、握りやすくなるので気に入っているとのこと。
タイプ: ココット , 両手鍋 シリーズ: ピコ・ココット ラウンド 素材・コーティング: ホーロー製 その他: IH対応
文:田中真紀子 写真:文田信基(fort)