AVアンプの選び方
テレビやレコーダー・スピーカーなどのAV機器をつなぎ、映像や音声の入出力、音量や音色の調整などを担うAVアンプ。接続するスピーカーの台数をチャンネル数といい、5.1チャンネルであれば5本のスピーカーと1台のサブウーハーが必要になります。ここではAVアンプの基礎知識や、Dolby Digital、DTSなどのサラウンド規格について詳しく解説します。
2022/6/21 更新
目次
自宅で映画館のような迫力ある音響効果(サラウンド)が楽しめるホームシアター。この核として活躍するのが AVアンプです。すべての機器をつなぎ、映像や音声信号の入出力、音量や音色の調整など多彩な役割を担います。テレビに映る映画や地上デジタル放送の音声を、複数のスピーカーから迫力あるサウンドにして送り出すためには、AVアンプが欠かせません。
AVアンプは、室内に配置された5.1chや7.1chなどのスピーカーを通して、迫力満点のサラウンドを届けてくれます。ブルーレイディスク(BD)やDVD、地上デジタル放送、ゲームなどを映画館のような音響効果で楽しめます。
前後左右の音声をリアルに再現してくれる、代表的なサラウンド規格には「Dolby Digital」や「DTSデジタルサラウンド」があります。この規格のおかげで、複数のスピーカーに対応した音声を圧縮して収録でき、AVアンプ内蔵のデコーダーであれば圧縮データを元に戻して、臨場感のある音声として再現できます。
映像と音楽の両方を楽しめるのがAVアンプの特長です。音楽だけでなく映画やゲームなどの映像も楽しみたいなら、音響機器と映像機器を1台に接続できるAVアンプが最適。ただし、純粋に音楽だけを楽しみたいのであれば、音源再生に特化したプリメインアンプも検討してみましょう。
米国ドルビーラボラトリーズ社による音声のデジタル圧縮・再生の方式で、映画やブルーレイ、ゲーム機器など多くのジャンルで採用されています。規格は5.1チャンネルのDolby Digitalから最新のDolby Atmos(ドルビーアトモス)まであります。
規格 | 速度 |
---|---|
Dolby Digital | 基本となる5.1チャンネルシステム |
DOLBY DIGITAL EX | 5.1チャンネルに、真うしろの方向にサラウンドバックチャンネルを追加した6.1チャンネルシステム |
DOLBY DIGITAL Plus | 最大7.1チャンネルサラウンドに対応。Dolby Digital Plus搭載のPCやモバイル機器もあります |
DOLBY TrueHD | ブルーレイなどに採用される高音質の音声規格で、最大で192kHz/24bitの音声を収録でき、7.1チャンネルサラウンドに対応 |
Dolby Atmos | 従来の5.1や7.1チャンネルに天井部分のスピーカー2台(4台)を加えた、5.1.2(5.1.4)や7.1.2(7.1.4)チャンネルの最新フォーマット |
対応フォーマットで選ぶ
米国DTS社による音声のデジタル圧縮・再生の方式で、ドルビー同様、映画、DVD、ブルーレイ、ゲーム機器などで採用されています。基本となる5.1チャンネルのDTSデジタルサラウンドから最新のDTS:Xまで多数あります。
規格 | 速度 |
---|---|
DTSデジタルサラウンド | 基本となる5.1チャンネルシステム |
DTS-ES | 5.1チャンネルに、真うしろの方向にサラウンドバックチャンネルを追加した6.1チャンネルシステム |
DTS-HD High Resolution Audio | ブルーレイなどに採用されている音声規格(96kHz/24bit)で、7.1チャンネルサラウンドに対応 |
DTS-HD Master Audio | ブルーレイなどに採用されている高音質の音声規格。2チャンネルでは最大で192kHz/24bitの音声収録も可能 |
DTS:X | Dolby Atmosと競合するDTS社の最新フォーマット。チャンネル数にこだわらないフレキシブルなスピーカーレイアウトに対応していることが特長 |
対応フォーマットで選ぶ
音声デジタル化方式の1つで、音の細かなニュアンスも忠実に再現することを目指して開発されました。音をアナログからデジタルに変換するときに、CDのPCM方式とは違う、1bitのデータでそのまま音源を記録する1bitレコーディング形式を採用。変換が少ないため、原音に近いサウンドが再生可能になりました。
ハイレゾとは高解像度のことで、CDの最大6.5倍の情報量を持つ、高品質な音楽データをさします。音の奥行きや繊細さにすぐれたハイレゾを楽しむためには、AVアンプのみでなく、プレーヤーとイヤホン・ヘッドホンなどが、ハイレゾに対応していることが必要です。
AACとは音声の圧縮形式の1つで、MP3よりも、圧縮の効率がよく高音質です。日本では地上デジタル放送やBSデジタル放送で採用されており、これらを5.1チャンネルで楽しむには、AAC対応のAVアンプが必要になります。
映像制作会社のルーカスフィルム社が提唱する品質基準。制作者が意図した映像や音が映画館で再現されているかのチェックを目的とした規格ですが、家庭用には「Home THX」という規格があり、認定を受けているAVアンプもあります。
入門用から高級機までほとんどすべての機種が、最新フォーマットのDolby AtmosとDTS:Xに対応し、強力電源と確かな回路構成に支えられたパワーアンプは、4Ωスピーカーもドライブします。日本語対応GUIや、スピーカーターミナルを横一列に配置しスピーカーケーブルをつなぎやすくするなど、使いやすさにもこだわっています。
「ナチュラルサウンド」をコンセプトに音作りを追求するヤマハは、入門用からDolby AtmosやDTS:X対応で最大11.2ch出力のハイグレード機までラインアップ。HDR/4K映像伝送やBluetoothに対応したモデルや、音楽配信サービス「Amazon Music」、「Deezer HiFi」に対応したモデルが人気です。
1953年にアメリカで設立されたプレミアム・オーディオ/ビジュアル製品のメーカー。あらゆるソースを高音質で楽しめる8K対応ミドルクラスのモデルや、スリムデザインながらも、実用最大出力100W、全チャンネル同一構成の7chフルディスクリート・パワーアンプを搭載したモデルをラインアップしています。
AVアンプは、さまざまなAV機器で構築される自宅のホームシアター全体をコントロールし、室内に最適なリスニング環境を整えます。ここでは、AVアンプの主な機能をご紹介します。
AMやFMなどのラジオ放送が受信できるチューナーです。AVアンプのなかにはこうしたチューナー機能を内蔵した機種もあります。既存のAM放送をFM帯域で同時放送する「FM補完放送」対応するものもあります。
AVアンプが、近距離無線規格・Bluetooth対応であれば、スマートフォンやタブレット、PCなどとワイヤレスで接続できます。スマートフォンなどに入っている音楽が自宅のホームシアターで楽しめます。
無線LAN規格の1つです。Wi-Fi対応機器ならメーカーに関係なく家庭内のネットワークに接続でき、パソコンやスマートフォン、タブレットなどに収録されている音楽も楽しめます。
家庭内にある複数の機器をLANを通じて接続できるようにするガイドライン。DLNA対応機器は、異なるメーカーでも接続可能で、書斎にあるPCやCDプレーヤーの曲をリビングのAVアンプで再生といったこともできます。
iPhone、iPadなどで再生しているコンテンツを家庭内のネットワークを経由してほかの機器でストリーミング再生する機能です。対応機器であれば、iPhone、iPadなどに収録された音楽をホームシアターでも楽しめます。
4K伝送対応であれば、最新の4Kテレビやブルーレイレコーダーなどに採用されている「HDCP2.2」および「4K/60p(YCbCr 4:2:0)映像信号」を伝送できる、HDMI2.0以上の規格の入出力端子を備えています。
各スピーカーを設置後に、最適な視聴ができるようAVアンプが自動的に出力音をチューニングしてくれる機能です。付属のマイクを使ってスピーカーの有無やサイズ、距離、音量などのデータを測定し調整してくれます。
USBは、さまざまな周辺機器を接続するための端子です。USB端子を通じて、パソコンなどに保存されたデジタル音源をAVアンプで読み込み、音楽を再生できます。
ARCは「Audio Return Channel」の略です。従来のHDMIケーブルでは音声は光ケーブルなどを使い別途接続する必要がありましたが、ARC対応I端子であれば、HDMIケーブルだけで接続可能。現在はほとんどがARC対応です。
eARCは「Enhanced Audio Return Channel」の略です。「ARCの拡張版」という意味の示すとおり、最新の音声フォーマットを従来の「ARC」と同じようにテレビ側からオーディオ機器側へHDMI接続で伝送可能。より高品位な音声データの伝送を実現しています。
High Dynamic Rangeの略で、映像に記録できる明るさ情報(輝度)のレンジを拡大する技術。陰影までリアリティ豊かに再現、「Ultra HDブルーレイ」や、4Kビデオ・オン・デマンドの高輝度HDR映像を満喫できます。
ストリーミングとは、インターネット上のメディア(音楽や映像など)を再生する技術のことです。ストリーミングサービスを利用して音楽や動画を楽しむ場合には、それぞれの製品がどのストリーミングサービスに対応しているかを確認しておきましょう。
接続された複数のAV機器をしっかりとコントロールし、快適なホームシアター環境を生み出すのがAVアンプの重要な役割。そのため、さまざまなタイプの入出力端子に対応している必要があります。
CDプレーヤーなどの音声をデジタル信号で伝送するための端子で、ケーブルに光ファイバーを使っています。接続部分(コネクタ)の形状には、角型と丸型の2種類があります。
ビデオデッキなどのアナログの映像信号を伝送するための端子です。映像用には黄色のケーブルを1本使います。音声用の赤・白2本のケーブルと合わせて3本が一体になったものもあります。
コアキシャルとも呼ばれる端子で、音声をデジタル信号で伝送する端子です。なかには光デジタルよりも音がよいとする方もいます。アナログの音声端子と同じ形状のRCA端子(ピンジャック)を用いています。
レコードやカセットデッキなどのアナログ音声を取り扱う入力・出力端子で、RCA端子やピンジャックともいわれます。なおPHONOと書かれている入力端子は、レコードプレーヤー用の端子です。
高音質をうたうDTSを評価する人が多いのは事実です。
数値が高いほうが本来の音源に近いといわれる量子化ビット数がDTS24bit、Dolby Digital16bitと異なることが最大の理由です(標準的な5.1チャンネルサラウンドシステムの場合)。ただし、あくまでスペック上の話なので、実際にどこまでその差を認識できるかは、ホームシアターのグレードや個人の感性による部分が大きいと思われます。
メーカーによって定義は異なります。
実は万国共通の規格はなく、メーカーが一定の条件のもとで測定して数値を提示しているのが現状です。一般的に、定格出力はそのアンプが連続して出力できるパワーのことを、最大出力とは定格出力を超えて瞬間的に出力できるパワーのことをいいます。
選んだアンプのグレードや自宅のホームシアター環境によって異なるので一概にいえません。
同じグレード(価格)のアンプを選んだ場合、音の再生に特化したピュアオーディオ用のアンプのほうが、多機能なAVアンプよりも高音質と考えるのが一般的ですが、アンプの違いをはっきりと認識するのは、よほど高性能なスピーカーでなければ難しいと思います。AVアンプの魅力は、1台のアンプでさまざまなAV機器をコントロールし複数のスピーカーを同時に鳴らせることです。もちろん、コントロール機能だけをAVアンプにゆだね、スピーカーはピュアオーディオ用の高級アンプで再生するというシステムを構築することもできますが、コスト面やスペース面でかなり大掛かりなものになりますし、必ずしもAVアンプ1台で再生するよりも満足いく結果になるとは限りません。
イネーブルドスピーカー
最新フォーマットのDolby Atmosでは、従来の5.1や7.1チャンネルに天井部分のスピーカー2本(4本)を加えた、5.1.2(5.1.4)や7.1.2(7.1.4)チャンネルのスピーカー配置となります。自分で天井にスピーカーを設置するのは難しいので(専門業者に依頼することをおすすめします)、天井スピーカーと同様の効果を発揮するDolby Atmos対応スピーカーを設置することもできます。イネーブルドスピーカーもその1つで、フロントやリアスピーカーの上に設置するだけでその効果を発揮できます。
ディスクリート回路
多数の電子部品を集積したIC(集積回路)ではなく、電子部品単体を個別に組み合わせて作られた回路のことをいいます。コストはアップしますが、ディスクリート回路では、個々の部品や回路について吟味できるため、音質を追求するコアなユーザーに人気があります。
DSP機能
AVアンプでは、音響環境を補正して、臨場感や音場感を向上させ、音により迫力を与える機能のことをいいます。
HDCP2.2
HDCPはHDMIなどで映像伝送するときに用いられる著作権保護規格で、その最新バージョンがHDCP2.2です。AVアンプが4Kテレビに対応するには、最新の4Kテレビやレコーダーなどに採用されているHDCP2.2および4K/60p(YCbCr 4:2:0)映像信号を伝送できる、HDMI2.0以上の規格の入出力端子が必要になります。
NAS
NASとは、ネットワークを通じてアクセスできる外部記憶装置(ストレージ)のこと。動画や音楽などのデータの保存先として利用されます。ネットワーク対応アンプでは、ネットワークに接続したNASに収録したコンテンツをホームシアターシステムで再生できます。