開放型という選択肢JVC HA-A8T

イヤホン・ヘッドホン 2021/9/8
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開放型という選択肢JVC HA-A8T

JVC「HA-A8T」。たぶんコイツは歩きやすいカジュアルシューズのようなもの。ノイズキャンセリングも高音質化のプロセッサーなどもないが、軽くて低価格という、日常使いにおいて重要視される要素がすべて揃ったハイコスパなワイヤレスイヤホンなのだから。

開放型ワイヤレスというアプローチ

80年代に世界を巻き込むブームとなったカセットテーププレーヤー時代から、イヤホンは長らく開放型(オープンエアー型)と呼ばれる耳の穴手前の軟骨部分にひっかけるタイプのモデルが中心でした。現在のような耳栓スタイルのカナル型は、90年代からプロミュージシャンが使うモニター用として登場しましたが、あくまでも業務用でコンシューマーの世界ではほとんど知られていなかったSSR的存在。

しかし2000年代に入ってから「モニター用ってことは、プロがステージやレコーディングで聴いているのと同じクオリティーの音が聴けるんだよね!」とプロユースのモデルに興味を持つユーザーが急増し、売れまくり、さまざまなメーカーが同タイプの製品を出していき、いつしかカナル型がイヤホンのど真ん中となりました。

開放型とカナル型の大きな違いは音漏れの多寡です。開放型は音漏れしやすく周囲にシャカシャカとした音をばらまきやすい。しかし耳の穴をふさいでしまうカナル型は音漏れが少なく、また外部の音も入りにくいといった特徴があり、電車やバス、飛行機などでの移動時に使うには最適。だからスマホでのリスニングが天下を取った今の時代にピッタリなんです。

でもね、開放型にもいいところ、あるんです。それは長時間つけ続けていても疲れにくいという快適性能。耳の穴が密閉状態じゃないから、押し上げられているような圧迫感も閉塞感もありません。

周囲の音が入ってきて、再生音の一部をマスキング&キャンセリングしてしまう傾向はあるものの、耳コピして楽譜起こしするとかニュアンスを完璧に聞き取りたいといった気持ちでなければ、ラウンジチェアに腰掛けているような、ソールの分厚いシューズで散歩しているような安楽さがあって気持ちいい。リラックスして音楽を楽しむのに、適したイヤホンのスタイルといえちゃう。

前置きが長くなりましたが、そんな開放型の要素を取り入れた完全ワイヤレスイヤホンJVC「HA-A8T」が、出たというじゃないですか。どんな仕上がりなんだろう。気になってきた。

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主張しすぎないバランス感

箱からHA-A8Tを取り出し、スマホとペアリング。耳に装着してから、Amazon Musicの曲を鳴らしてみましょう。……ふうむ。なるほど。正直に書くなら、決してハイクオリティな音というわけではありません。ただ、すっごく頑張っているという印象が強い音です。

開放型はその構造上、低域がスカッとしがち。いい意味では爽やかだけど、違った意味ではベースのボリュームが足りないともいえちゃう。耳の穴を密閉状態にしていないから、鼓膜に圧をかけるのが難しいんですよね。仕方ないっちゃ仕方ない。でもHA-A8Tはドゥンドゥンとした低音を伝えようと10mm径の大型ダイナミックドライバーの振動板が勢いよく動いてる。結果として開放型だというのに、カナル型の一般的なイヤホンクラスの低音が感じ取れます。ブースト感もあるけど、うん、頑張ってる。

高域はパリッとしながらふわっともしている。HA-A8Tの鳴らした音がダイレクトに鼓膜まで届くようにと試行錯誤しながら装着してみると、ドンシャリな傾向が強いことがわかるんだけど、普通に耳にひっかけて聴くと、低域同様に高域も拡散しながらシャープな部分と耳の各部で反射した弾力ある部分が両方入ってきます。もともと伸びは今一歩で頭打ち感があるだけに、シャリ感が薄まっていい聴き心地になってくる。

音の定位感も、広めなのがいいですね。カナル型は楽器やボーカルが集結しているステージのど真ん中にいるような音場で、精密感はあれど、おしくらまんじゅうをしているような狭さという印象もあり。そのカナル型に対して開放型のHA-A8Tの定位は横方向に広く、音に囲まれているけどやや遠い位置に楽器があるようなラウンジっぽい鳴り方がするんですよね。

そして中域ですよ、ボーカルの帯域。自然な鳴りをしているところに驚きます。厚みと柔らかさのある低域と、空間の広がりを感じさせる高域の中間に、確固とした存在感を放っているのです。原石を原石のまま聴かせるそのチカラ。音の一体感が求められるロックとの相性バッチリ。同時に自己主張が控えめで、BGMとしての利用にも適したバランスを持っています。

今までこういった聴かせ方をする開放型イヤホンってそうそうなかった気がする。しかもHA-A8Tは完全ワイヤレス。ケーブルの煩わしさがなく、充電ケースからサッと取り出したらすぐに音楽が聴けるようになるお手軽な利便性はゼネラルな音質とマッチして、毎日の通勤・通学やお散歩に使いたいと思わせてくれます。

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完全ワイヤレスの弱点を補う価格

完全ワイヤレスイヤホンについて1つ、残念なお知らせをしなければなりません。バッテリーで駆動するプロダクトの常として、使えば使うほどバッテリーが消耗して蓄電容量が減る「サイクル劣化」現象が起きます。つまり満充電時の動作時間が次第に短くなっていくのです。ほかにも満充電、あるいは充電切れ状態で放置することで劣化する「保存劣化」現象も起きますし、クルマのダッシュボードの上に置いておくなどして、高温状態のまま放置することでも劣化します。

スマートフォンであればバッテリー交換サービスが受けられる機種が多いのですが、完全ワイヤレスイヤホンでこのサービスが受けられるのはごく一部の機種のみ。しかも交換価格は5,000〜1万円と意外と高価でびっくりする。1つの気に入ったプロダクトを長く使い続けたいと考えても、これでは厳しいと思えてくるでしょう。

その点HA-A8Tは5,000円以下で購入できるショップが多いハイコスパ機です。他社商品のバッテリー交換費用と同じ、もしくはより安い価格で新品が購入できます。また開放型のメリットとしてイヤーピースを交換しなくても済むため、ランニングコストも電気代以外はかかりません。そう考えると、定期的に買い替えて使っていくのに最適な価格帯だと思いませんか?

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体と気持ちにやさしいイヤホン

ノイズキャンセリング、ありません。音質補正機能、ありません。ハイテクな完全ワイヤレスイヤホンと比べると、プリミティブな作りだなと思えてくるのがHA-A8Tです。しかし音楽を聴くという目的においては必要十分な性能を持つのも事実。むしろ5,000円以下の価格でアレもコレもと機能を載せてきたほうが不安になる。肝心の音を鳴らす部分のコストダウンが著しいんじゃないかって。

小鳥がさえずる公園で聴くポップス、波の音がサラウンドで入ってくる海辺で聴くサマーソング、しとしとと降る雨の音が混じったバラード。周囲の環境音と溶け合う音楽を聴く体験もまたオツなもの。さらに、きわめて個人的なことを記してしまうと、筆者は耳に汗をかきやすいほう。だから長時間カナル型を使い続けていると湿りやすかったのですが、HA-A8Tはそんな心配いらずで、ずっと快適につけ続けることができました。

またZoomなどのビデオミーティングにも使いやすかった。マイクの位置がいいのでしょうか、自分の声を捉えるチカラにたけていたのです。一緒に参加しているメンバーの声もはっきりと聞き取れるし、ビジネスユースにもピッタリじゃないかな。

音漏れによる迷惑をかける場所でなければ、むしろ開放型の特性を生かしたリスニングを楽しみたくもなるHA-A8T。改めて記しますが、ズバ抜けた音響性能を持っているイヤホンではありません。しかしイヤホン選びで重視するべき評価軸は何だろうと考えたとき、どこにでも持っていって自由に音楽が楽しめるハイコスパモデルが欲しいとイメージしたならば、コイツはかなりの魅力を放つ1台となりますよ。価格.com

文:武者良太 写真:文田信基(fort)

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JVC HA-A8T

本体質量: イヤホン約5g×2 充電ケース約39g
通信方式: Bluetooth 標準規格 Ver.5.0
電池持続時間: イヤホン約6時間 充電ケース約9時間
充電時間: イヤホン約2時間 充電ケース約2.5時間
耐汗耐水性能: イヤホン本体のみ JIS保護等級4級(IPX4)相当
主な特長: 耳にフィットする新形状と圧迫感の少ない開放型(オープンイヤータイプ)、ワンボタンによる簡単操作、オートオン/オフ&オートコネクト機能
カラー: ブラック / レッド / ホワイト

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