ヒーター・ストーブの選び方
家電の冬支度といえば、暖房器具。中でも部屋を効率的に暖めるためのヒーター・ストーブは、冬を快適に過ごせるかどうかを左右する重要なものです。種類や機能、シチュエーションに応じた選び方のポイントなど、ヒーター・ストーブ選びに必要な基礎知識を詳しく解説します。
2023/9/13 更新
目次
ヒーター・ストーブは、暖め方の違いによって大きく2種類に分けられます。ファンヒーターや石油ストーブなどのように、温風を送ることで部屋の空気を対流させて暖めるタイプを「対流式」暖房といいます。 一方で、オイルヒーター、電気ストーブなどのように、熱源から発する赤外線による輻射熱を利用して周囲を暖めるタイプを「輻射式」といいます。暖房を効率よく行うには、対流式と輻射式の暖房機器を組み合わせて使用する方法が最適。まずは、各タイプのおおまかな特長を理解し、自分の環境に適した製品を選びましょう。
ひとくちにヒーター・ストーブといっても種類はさまざまです。暖房器具によって「暖かくなるまでの時間」や「暖められる範囲」が異なるため、まずは製品の種類(タイプ)と特長を理解しましょう。
各タイプの特長一覧
タイプ | 速暖性 | 暖房力 | 経済性 | 安心度 | 交換・手間 |
---|---|---|---|---|---|
ガスファンヒーター | ガス栓必要 | ||||
石油ファンヒーター | 給油必要 | ||||
石油ストーブ | 給油必要 | ||||
ガスストーブ | ガス栓必要 | ||||
セラミックファンヒーター | |||||
加湿セラミックファンヒーター | |||||
オイルヒーター | |||||
オイルレスヒーター | |||||
パネルヒーター | |||||
ハロゲンヒーター | ランプ交換必要 | ||||
シーズヒーター | |||||
電気ストーブ |
※速暖性とは、いかに速く暖まり始めるかを表しています。
※暖房力とは、部屋の隅々まで暖まるかどうかを表しています。
※なお、特長一覧は各タイプの目安であり、製品によってはこのとおりではありません。
【適した場所】リビング、広い部屋
ガスを燃焼させ、その熱を送風ファンで温風として送り出す製品です。部屋全体を素早く暖めることができます。都市ガスを使うものとLPガスを使うものがあり、専用のガス栓が必要です。
【適した場所】リビング、広い部屋、屋外
灯油の燃焼により暖めた空気で、部屋を暖かくする暖房器具です。部屋の隅に置いて輻射熱で暖める「反射式」と、部屋の中央に置いて空気を循環させて暖める「対流式」の2種類があります。
【適した場所】キッチン、トイレ、洗面所、脱衣所
セラミックス製のヒーター部を電気で発熱させ、ファンで温風を送り出す製品です。スイッチを押すだけの簡単操作で、狭い場所や足元などを素早く暖めることができます。
【適した場所】寝室、子供部屋
本体内部のオイルを暖めて放熱することで、部屋全体をじんわりと暖める製品です。温風が出ないため運転音が静かで、ホコリを舞い上げる心配が少ないのでアレルギー対策にも有効です。
【適した場所】キッチン、トイレ、洗面所、脱衣所、机の下など
その名のとおり、パネル状で薄型の暖房器具です。こたつと同じように、電熱線で発生させた輻射熱を利用して空間を暖めます。床置きタイプのほか、壁掛けタイプもあります。
使用する場所によって、適したヒーター・ストーブは異なります。「部屋全体を暖めたい」「足元の冷えを解消したい」「湿度を保ちつつ暖めたい」など、シチュエーションに合わせて最適な製品を選びましょう。
リビングのメイン暖房は、部屋を素早く隅々まで暖めることができるタイプが適しています。各製品には、目安となる畳数が記載されているため、使用する部屋の広さに合ったモデルを選びましょう。
暖房力が高く、すぐに暖まる「石油ファンヒーター」や「ガスファンヒーター」、暖かさがじんわりと広がる「石油ストーブ」「ガスストーブ」が適しています。ただし、集合住宅では、灯油を使用した暖房器具の使用が禁止されている場合もあるのでご注意を。
子供部屋の暖房で、第一に考えたいのは安全性。誤って触ってもやけどをしないことが最低条件です。また、臭いやホコリ、ハウスダストが気にならないなど、空気をきれいに保てるタイプを選びましょう。
表面が熱くなりにくく、かつ空気が汚れにくい「オイルヒーター」や「オイルレスヒーター」「パネルヒーター」が適しています。また、空気清浄機能を搭載したファンヒーターもよいでしょう。そのほか、本体が倒れたときに自動で電源がオフになる機能や、子供による誤使用を防ぐためのチャイルドロック機能が備わっていれば、なお安心です。
寝室には、部屋全体を暖めることができ、乾燥やホコリが気にならない輻射式の製品が適しています。静音性の高い製品を選ぶとなおよいでしょう。
特に、温風が出ない「オイルヒーター」や「オイルレスヒーター」、「パネルヒーター」が適しています。また、温風が出るものの、湿度をコントロールして乾燥を防いでくれる「加湿セラミックファンヒーター」も快適。睡眠を妨げず快適な空間を保つためには、タイマーのオン・オフ機能搭載モデルを選び、有効に活用しましょう。
狭い場所には、コンパクトで速暖性にすぐれた製品が適しています。特に洗面所や脱衣所は、ヒートショック(急激な温度の変化で体がダメージを受けること)を防ぐためにも暖かい環境を作ることが大切です。
遠赤外線で周囲を暖める「遠赤外線ヒーター」や「ハロゲンヒーター」「シーズヒーター」のほか、壁掛けタイプもある「パネルヒーター」、温風で素早く暖める「セラミックファンヒーター」が適しています。また、人の動きを感知し、すぐに暖めてくれる「人感センサー付き」の製品だとより快適です。
ヒーター・ストーブで使用する燃料には、灯油、ガス、電気があります。それぞれのメリット・デメリットを理解して、最適な製品を選びましょう。
灯油は、石油ファンヒーター、石油ストーブで利用されます。部屋全体を暖める性能に長けており、速暖性が高い製品が多いことが特長。灯油の保管や補給が必要ですが、運用コストが安く、最近ではタンクの大容量化が進み、給油の頻度も以前よりは少なくて済みます。ただし、給油時に燃料タンクのキャップを締め忘れたり、不注意で灯油をこぼしたりすると、引火する危険性があります。
部屋全体を素早く暖めることができ、空気が乾燥しにくいという特長があります。ただし、オール電化の住宅、ガスホースが届かない場所では使用できません。また、ガスの種類に適した暖房器具やホース、プラグを使用しなかったり、ペットがガスコードをかじったりして傷がつくと、異常燃焼やガス漏れなどの危険性があるので注意しましょう。そのほか、カセットガス式のポータブルタイプもあります。
ヒーター・ストーブには「暖める」以外にもさまざまな機能が搭載されています。ここでは、「快適」「安全」をキーワードに、「暖める」以外の付加機能について解説します。
空気の乾燥を防ぐための加湿機能で、給水タンクが装備されています。セラミックファンヒーターのほか、ファンヒーター、遠赤外線ヒーターなどに搭載されています。
点火・消火時に発生する灯油などのイヤな臭いを抑える機能です。主に、石油ファンヒーターや石油ストーブ、石油暖房と電気暖房の両機能を持つハイブリッドヒーターに搭載されています。
転倒時や地震の揺れを感知したときに自動停止する機能で、さまざまなタイプのヒーターに搭載されています。燃焼方式の器具では、揺れを感知すると消火を行う自動消火装置を備えた製品もあります。
子供が誤ってスイッチを押しても作動しないように、操作部をロックする機能です。子供部屋に設置予定のヒーター・ストーブには、この機能が搭載されているとより安心できます。
運転を開始してから一定の時間が経過したり、一定の温度に達したりすると自動停止する機能です。ファンヒーターや赤外線ヒーターなどに搭載されています。
設定した時間に合わせて自動的に電源をオン・オフする機能。オンまたはオフのみ対応する製品もあります。就寝・起床時や、帰宅に合わせて部屋を暖めたいときなどに便利。節電にもつながります。
昭和21年に新潟県三条市で創業し、日本で初めて加圧式石油ストーブを発売した暖房メーカー。低消費電力・秒速点火・低燃費を誇る石油ファンヒーターをはじめ、石油ストーブ、オイルレスヒーター、遠赤外線ヒーターなど、多様な暖房器具を製造販売しています。
ジェームズ・ダイソンというデザインエンジニアによって創業されたイギリスの家電メーカー。サイクロン掃除機、空調家電、ヘアドライヤーなど、多彩な商品展開が魅力です。1台で空気清浄機・温風・送風の3役を備えた空気清浄機能付きファンヒーターが人気です。
新潟県新潟市に本社を置く暖房・空調機器メーカーで、1964年の創業時から国内自社工場で一貫して生産を行っています。着火スピードが速く、臭いが少ない点が人気の石油ファンヒーターは、国内トップシェアを誇ります。セラミックファンヒーターもラインアップされています。
愛知県名古屋市に本社を置くガス製品の最大手メーカー。ガス給湯器で国内シェアトップを誇ります。ガスファンヒーターは、空気清浄機やプラズマクラスターイオン発生機能などを装備したモデルをラインアップ。「不完全燃焼防止装置」などの機能も多数搭載しています。
イタリアの家電メーカーで、オイルヒーター、オイルレスヒーターを製造しています。操作パネルは、ダイヤル式のクリックノブや、ディスプレイと一体化したものなど、使いやすさを重視。「やけど防止」のために、オイルヒーターの表面温度は60度から80度に設計されています。
宮城県に本社を置く大手生活用品メーカー。企画・製造・販売までを一貫して自社で管理しており、コストパフォーマンスを重視したい方に◎。実用性の高い製品が多く、セラミックファンヒーターは、大半が大風量モデルで人感センサーが搭載されています。
90余年の歴史を誇る、イギリス発祥の暖房機器ブランド「アラジン」を展開するメーカー。石油ストーブのアイコン的存在ともいえる「ブルーフレーム」シリーズや、遠赤グラファイトヒーター「CAH/AEH」シリーズ、ポータブルガスストーブ「SAG」シリーズなどをラインアップしています。
家電やインテリアをはじめ、日々の生活で役立つ製品を企画・販売するメーカー。速暖性にすぐれた大風量の加湿セラミックヒーターや、オイルヒーター、遠赤外線ヒーターなど、使う場所に合わせて選べる多彩な製品を展開しています。コストパフォーマンスの良さも魅力です。
ヒーター・ストーブのスタイルは、据え置いて使用するもののほかに、壁に設置する壁掛けタイプや天井に埋め込むタイプがあります。各スタイルの特長を押さえて、設置場所や使用用途に適した製品を選びましょう
床置きタイプは、床などに置いて使用する、最も一般的なスタイルです。広いリビングルームにも対応する大型のストーブやヒーターはもちろん、持ち運びも容易なコンパクトな製品まで、幅広い製品がラインアップされています。
壁に設置するスタイルです。床のスペースを取らないため、ヒーターやストーブなどの置き場所が確保しにくい作業場や事務所などに最適。脱衣所や洗面所など、狭いスペースに設置できるコンパクトな製品も展開されています。
人の動きを感知するセンサーで、人が近づくと自動で電源がオンとなり、いなくなると自動でオフする機能。人の動きが一定時間感知されないと、自動的に停止するものもあります。省エネになるうえ、ヒーターを切り忘れて火災などの事故を起こす危険性が軽減できます。
自動で適度な室温にコントロールする機能です。設定温度に達すると、自動でパワーをセーブします。
自動で適度な湿度にコントロールする機能です。部屋の乾燥が気になる人などに適しています。
スマホによる遠隔操作で、ヒーターやストーブにアクセスできる機能。外出先から操作できるため、帰宅前に部屋を暖めておいたり、消し忘れた際に停止したりすることができます。GPSと連動した自動操作や、音声操作に対応した製品もあります。
好みの設定温度に合わせてパワーをコントロールする機能。エコモードのほか、エコ運転や省エネ運転モードと呼ばれる場合もあります。省エネ効果があり、電気料金などの節約につながります。
オイルヒーターのオイルは燃料ではありません。
密閉されたヒーターの中をオイルが循環しているだけなので、オイルを補充したり交換したりする必要はありません。
石油ストーブの芯は「空焚き」をすることで、内部にたまった不純物を排出できます。
製品マニュアルに従って、タンクの灯油を使い切った後も燃焼させ続けます。このとき臭いが出るので、換気を徹底してください。
表面が熱くなりにくいオイルヒーターやパネルヒーターが人気です。
ファンヒーターなどでも、チャイルドロック機能を搭載している製品も多数あります。そのほか、転倒時自動消火機能などが搭載されている製品を選ぶとよいでしょう。
乾電池式の石油ストーブや、カセットガス式のガスストーブであれば、コンセントがなくても動作します。
コンセントがない倉庫やベランダなどで使用できるほか、停電などの非常時にも役立ちます。
灯油やガスを燃料とする暖房器具を使用する際は、必ず換気をしてください。
一酸化炭素中毒防止のための換気の基準は、1時間に1〜2回(各1〜2分)です。
ストーブやファンヒーターの横とうしろは、少なくとも15cm以上空けてください。
ストーブやヒーターを設置する際には、取り扱い説明書などに記載されている設置ルールを厳守しましょう。なお、カーテンや衣類、布団など燃えやすいものの近くでは使用しないことも鉄則です。
遠赤外線
目に見えない赤外線の中でも、波長が長いものを遠赤外線と呼びます。遠赤外線は光と同じ速さで進み、物質に当たると分子を振動させて温度を上昇させます。
耐震自動消火装置
地震を感知したり、本体に衝撃が加わったりしたときに、自動的に消火する機能です。万一のときに火災などを防ぐうえで重要です。