薄型テレビ界のレクサス Panasonic VIERA TH-55GZ2000
本格的に普及が始まりつつある4K有機ELテレビのうち、特に注目されているのがパナソニックの「VIERA GZ2000」だ。独自設計・組み立てのディスプレイで圧倒的と評されるほどの高画質を実現しているというが、その実力はいかほどか?
パナ=ファミリーカー? でもこれは……!
薄型テレビ選びでパナソニックのVIERAを買ったと聞いたら、最初に「ああ、無難なところにいったなあ」と思ってしまう。
古くは松下電器および松下電工、ナショナルを経てパナソニック。かの有名な松下幸之助が1918年に興した、戦前から続く大御所の総合家電メーカーだ。テレビでもカラー放送時代からの定番メーカーで、音質、そして機能性まで世の中のスタンダード。ラインアップも豊富で安い液晶から有機ELまでソツがない。車で例えるならトヨタ車だ。トヨタを買うと言っておけば、家族全員が安心してくれる。ブランドの歴史と信頼のなせるワザだ。
でも、なまじほかの人よりAV家電に詳しい僕に「パナソニックのテレビを買った」だなんて語られると、ツッコミもしたくなる。「うちの車は世界のトヨタなんだぜ」って自慢されたら、「アクア? アルファード? もしかして、新しいRAV4?」くらいは聞かないと気が済まないでしょ。
2019年のVIERAのラインアップは、現在のスタンダードである4K液晶テレビがGX500/GX755/GX855、ちょっと高級な有機ELテレビがGZ1000/GZ1800/GZ2000と、全部で6シリーズもある。
「うちのテレビ、パナソニックのVIERAを買ったんだ」
と聞かされたら、最初の反応は冒頭に書いたとおり「ああ、無難なところにいったなあ」だ。でも、パナソニックのVIERAならどの機種でも外れの心配はないから、「へー、なんて機種?」って、もう一歩踏み込む。
「有機EL VIERAのGZ2000ってヤツ」
って答えが返ってきたら内心「どひゃあーーーーーーーーー」だ。何でそんなエライ機種買っちゃったのかとツッコミたい。それはパナソニックVIERAの1機種だけど、トヨタどころじゃない。薄型テレビ界のレクサスだよ、と。
高画質に本気を出し過ぎちゃった
パナソニックの4K有機EL VIERAのGZ2000が、なぜ薄型テレビ界のレクサスなのか。それを解説するために、少しだけ有機ELテレビの秘密を教えよう。
今、大手テレビメーカーの各社から4K有機ELテレビが発売されているが、そのサイズは55型と65型が主流で、一部77型や88型もある程度。このサイズ種類の少なさは偶然ではない。大型有機ELパネルのサプライヤが全世界で1社しかないので、パネルも基本的に同じものであることが公然の秘密となっている。
もちろんそれは悪いことばかりじゃない。その有機ELパネルの素性がいいのだから、有機ELテレビならどれを買ってもハズレなし。画面の黒はキリっと締まって映画もスポーツもキレイ。ナナメから見ても色変化がないので、おしゃれなアイランドキッチンからワイドショーを見る奥様も大満足だ。
でも、パナソニックのGZ2000は、ほかのすべてのメーカー製とは違う特別仕様。同じパネルのはずなのに、ディスプレイの性能がプレミアムなのだ。
その秘密が「自社設計・組立のDynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」。通常は完成品で納入される有機ELパネルをあえて部品単位で購入し、自社設計の独自構造で、自社の工場でわざわざ組み上げている。かつてはプラズマディスプレイの自社開発・製造も手掛けていたパナソニックだから製造管理もお手のものだ。
家電量販店にズラリと並んでいる4K有機ELテレビを見ればその違いは一目瞭然。GZ2000だけがひときわ明るく輝いて見えるのは、「自社設計・組立のDynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」の実力だ。数値上の最大輝度スペックは他社と変わらないが、熱管理を工夫することで平均的な画面の明るさを引き上げている。
画面の明るさは、4K放送やUltraHD Blu-rayにHDR(ハイダイナミックレンジ)の技術が導入されて以来、常に映像の美しさの基準として求められてきた。最近は、”4K放送は画面が暗い”だなんて声もあるくらい。そんな渦中でも、4K液晶テレビよりも、ほかの有機ELテレビよりも明るく見えるGZ2000の画質は、素直に一番キレイだ。
映画や4K放送だけじゃない。地デジで『ガッテン!』を見ていても実感する。画面全体の輝きで伝わる、照明をたいて撮影するテレビスタジオの臨場感。スポーツ中継のスタジアムの雰囲気も抜群。照明に照らされた芝生のきめや濃淡に、観客席の暗さ。画面のどこがいいと言うより、会場の雰囲気を感じる。
それに画面が明るければ、日中リビングに日が差していても画面が白く浮かないところもいい。高価な機種を買うことの、嫁への言い訳にもなる。
音響の技術にはテレビ背面に上向きの「イネーブルドスピーカー」を搭載。本来の筋で語るなら、劇場映画で採用の進む「Dolby Atmos」が実現する天井からの立体音響表現を家庭で再現するためのスピーカー構成。しかし、このイネーブルドスピーカーにはもうひとつ重要な効果がある。上部のイネーブルドスピーカーと下部のセンタースピーカーで音像定位を操作できるため、地デジのニュース番組でアナウンサーの声が画面の中心あたりから聞こえるのだ。今まで大型の薄型テレビでは、映像と音とが分離しがちで違和感があったことを考えると、直感的にスゴイこと。55/65型テレビは、それだけ画面がデカイという話なのだけど。
「アレコレ」したい。これが家族だ
ところで、VIERA GZ2000はトヨタどころじゃなくレクサスだ、と書いた。その理由はテレビ全体のうち高級な有機ELテレビのなかでも、さらに高画質で抜けているから。でも、「GZ2000はフェラーリや、ポルシェとか、ランボルギーニじゃないのか?」と問われると、やはりノーだ。それは、画質だけに割り切っていないところが日本メーカーっぽいからだろう。
つまりGZ2000は機能もてんこ盛りなのだ。キーワードは「アレコレ」。その名前のとおりの機能があって、リモコンにボタンもある。
今どき、薄型テレビで見たいのは、地デジや4K放送の番組だけじゃない。YouTubeも見たい、動画配信サービスのオリジナルドラマも見たい……でも探すのが面倒。テレビのリモコンで文字入力なんて面倒だし、もうスマホで検索するほうが手っ取り早いじゃん、と思ってしまう。
でもGZ2000は「アレコレ」ボタンを押せば、地デジ放送や、Netflix、dTV、U-NEXT、AbemaTVなどのコンテンツからピックアップされた番組が、コンテンツ毎に段になって並ぶのでとっても探しやすい。不要なコンテンツは消せるので段が多くなりすぎる心配もいらない。
そして、「アレコレ」が真価を発揮するのは、「紅白司会の綾瀬はるかさんをひと目見たい!」というアバウトなリクエストをしたいとき。キーワードに”綾瀬はるか”って入れれば、放送番組も、予約番組も、未視聴の録画済み番組も全部洗い出してくれる。YouTubeも対象だから、意外と過去のイベント映像もアーカイブされていて、掘り出し物に出会えたり。
キーワードの文字を打ち込むとか面倒くさ……と思っていたら、画面上のキーボードにマイクのマークが。そう、GZ2000は日本語音声認識だから、音声認識で解決。タレント名や番組名の認識精度もたいてい一発だ。
使い込んでみると、むしろ「アレコレ」の検索画面を開く必要すらなくて、リモコンにもあるマイクボタンをポチーッと押せば、音声検索に一発で飛べて、ノーストレス。”Heyなんとか”とか、”OKなんとか”みたいな世界が、もう薄型テレビにもなかば来ているのだ。
GZ2000は高画質の面で特別にいい物ができてるんだから、そこに特化したスポーツカーにしちゃっても十分成立するのに、しっかり使い勝手まで作り込んである。そこがパナソニックのトヨタっぽいところ。やはりGZ2000は薄型テレビ界のレクサス。家族もゴルフバッグも載せられちゃうような、万能さを備えた高級車なのだ。
文:折原一也 写真:大木慎太郎(fort)














