シャープ愛が続くワケSHARP AQUOS 4T-C50BN1
液晶テレビといえばシャープ、シャープの液晶テレビといえばAQUOS。連想ゲームのようにスラスラと名前が浮かぶほど日本人になじみ深いブランドだ。2019年に発売された「4T-C50BN1」に触れながら、シャープのAQUOSがここまで愛される理由を考えてみた。
今なお人気健在の国民的メーカー
液晶テレビのトップブランドは? と問われると、2020年の今現在でもシャープの液晶テレビ AQUOSが浮かぶ。1973年に”液晶”という表示デバイスを液晶電卓として世界で初めて実用化したメーカーであり、2001年に世界初の液晶カラーテレビAQUOSの第一号機を発売。2004年には三重県亀山市の亀山工場をブランド化した「世界の亀山ブランド」を掲げて、薄型テレビメーカーとして地位を確立。まさに、液晶テレビの申し子だ。

そのブランド人気は販売台数にも現れていて、BCNランキングによれば日本国内の2019年の液晶テレビの販売台数ではNo.1。経営的には苦戦した時期もあり2016年以降は台湾企業・鴻海精密工業という外資の傘下にあるが、それでも日本人のシャープ愛にとどまる気配はない。
それはもう、「世界の亀山」が日本国民にDNAレベルで刷り込まれているのか、はたまた熱烈な支持を受ける理由が何処かにあるのか。2019年に発売されたAQUOS 4T-C50BN1のインプレッションの話が編集部のT氏から舞い込んできたので、実機に触れながら、その愛される理由を考えてみよう。
最高級でなくてもちゃんと頑張ってる
では、シャープの液晶テレビAQUOSの魅力ってなんだろう。
AQUOS 4T-C50BN1に触れてみると、確かに多方面に頑張りを感じる。
たとえば、画質だ。家でダラダラ過ごすとき、ニュースの時間と、なんだかんだで最も長く見る地デジでチェックしてみると、少しノイジーで万人が褒める高画質ではない。だけど、輪郭はパキっとクッキリ。解像度がフルHD未満の地デジを4Kパネルに映すと一般的に輪郭がぼやけがちだけど、4T-C50BN1は4Kパネルを生かすためのチューニングをうまく施している。
それに、シャープは日本の住宅のことをよくわかってらっしゃる。春の日差しが差し込む部屋で昼下がりにワイドショーを見ても、画面に自分が映り込まないマットな映り。これはオリジナル技術「N-Blackパネル」のお陰だ。

4T-C50BN1に触れてみた発見が、高音質だ。内蔵スピーカーのサウンドがとてもよい。ワイドショーを見ても出演者の声を聞き取りやすく、声色までリアル。YouTubeで音楽PVを流しても、音の厚みと臨場感がバッチリ。シャープのAQUOSは音がいいって、あまりに知られてなさすぎてもったいない。音質を理由に選ばれてもいいくらい。
こうしてみると、画質はせいぜい中くらいだが、映り込みのなさでカバー。音質は素直に褒めるべき出来の良さ。トータルではプラスだけど、絶賛するほどの機種ではなさそう。4T-C50BN1は中くらいのグレードであって、最高級じゃない。もっといい機種が欲しければ、8Kテレビの「CX1ライン」をお買い上げください、ってことだろうけど。でも、頑張りは伝わってくるんだよね。
目の付けどころが、Originalでしょ。
シャープのAQUOSって、実は先進的なブランドだ。
4T-C50BN1は2019年モデルだけど、先代モデルでは2018年12月の新4K衛星放送の開始に先駆けて4Kチューナーを搭載した先駆者。日本オリジナルの4K放送に賭けた気合いが違っていたのだ。
今流行りのネットの映像配信に、4T-C50BN1はAndroid TV搭載という最も進んだ形で対応している。シャープのAQUOSっていうと、なんとなく保守的なイメージを抱いてしまう人もいるかもしれないけど、意外や意外、バリバリにネット志向の機種だったりもする。

独自の機能もある。4T-C50BN1には、スタンドに首振り機能が付いていて、最大30度まで画面の向きを動かせる。ちょっとナナメから見たいときにヒョイっと首を振って自分のほうを向けることができるという、今やちょっと珍しい機能だ。
この発想は、ほぼシャープのAQUOSにしかない。調べてみると15年以上前から首振り機能を搭載した機種があるから、ユーザーにとっては生活習慣の一部だ。買い替えのときに奥様に文句を言われる心配がないので、それが理由で選ばれちゃったりする。「目の付けどころが、シャープでしょ。」って2009年までのシャープの企業スローガンだけど、本当に目の付けどころが違っていたのだ。

4T-C50BN1が今、最も推している機能は「ココロビジョン」。リモコンの専用のボタンを押すと音声と音楽、美しい景色の映像とともに、人気のTV番組や、視聴履歴に基づいた、見逃しそうな番組、音楽、ゲームなどを紹介してくれる。声であいさつされてオススメの紹介を受けるから、ちょっと自分の生活に踏み込んでくるような親しみやすさを感じる。これは、他社にないかも。
「目の付けどころが、シャープでしょ。」……じゃなかった。今のシャープの企業スローガンは「Be Original.」。それって、こういうところなのかな。
誇るべきキャラクター性こそが魅力
シャープ AQUOSの大人気の理由は、テレビCMに登場していた大女優・吉永小百合の影響と捉える向きもある。日本の映像美=シャープの液晶AQUOS、という刷り込みがずっと続いているという解釈だ。ただし、吉永小百合は2015年にシャープのCMを降板していて、その次のCMキャラクターはきゃりーぱみゅぱみゅが起用された。日本の独自カルチャーの代表格という方向性かな。
そして現在はテレビCMのタレントはナシで、「エイトマン」という懐かしい漫画のキャラで宣伝している。8Kテレビも手掛けているからエイトという訳だ。
でも、個人的には、テレビのCMにはタレントがわかりやすいと思う。他社を見てみると、最高画質で勝負するSONYは美を極めるブランドだからCMキャラクターは北川景子。パナソニックはフレッシュでエンタメなイメージを打ち出していて、綾瀬はるかがCMキャラクターだ。

そこで今回の検証を踏まえてシャープ AQUOSのCMキャラクターを勝手に決めるなら……タレントの大泉洋なんてどうだろう? 俳優で、ドラマや映画でも活躍する多方面の才能があって、親しみやすくて、お茶の間をにぎわせてくれる。そして、老若男女から愛されている。それって、誇るべきことなんじゃないかな。
文:折原一也 写真:文田信基(fort)