炊飯器の選び方
「おいしいお米を炊くには?」「どんな機能に注目すればいいの?」など、炊飯器選びの際に浮かぶ疑問を解決できるのが選び方ガイドです。ここでは、おいしいお米を炊くためのポイントや各メーカーの炊飯機能の特徴、こだわり、注目の機能について詳しく解説します。
2022/6/23 更新
炊飯器でお米を炊く際に、釜の中に温度差ができてしまうと、炊き上がりにバラツキが出てしまいます。おいしいお米を炊くには、釜の中の温度差をなくしつつ、強い火力で釜全体を熱することが重要です。それらを実現するために、各メーカーは炊飯器に主にふたつの工夫を凝らしています。
熱を蓄えつつも全体に効率良く伝えられるように、内釜に鉄やアルミ、炭などの素材を使用。これにより内釜の温度を大きく上げられるため、釜の中に対流が生まれ、ムラのない炊き上がりを実現します。
お米をふっくらと炊くには、強い火力で熱をお米の芯まで伝える必要があります。そのために強力なヒーターで熱源の火力を上げたり、圧力をかけて水の沸点を上昇させたりと、各社さまざまな工夫を凝らしています。
毎日、おいしいごはんが食べられるように、各メーカーはさまざまな技術を駆使して日本の洗練された炊飯技術の再現をめざしています。ここでは、炊飯機能や釜の構造など、メーカー独自の特徴について紹介します。
炊飯器を主力商品として展開するメーカー。商品ラインアップは多岐にわたり、ファミリー向けのものからひとり暮らし用まで、幅広いニーズに対応しています。それぞれの好みの炊き上がりにあわせた細かい設定ができるのも特徴です。
象印がおいしいごはんを炊くための鍵と位置づけたのは、かまどの炎のゆらぎです。「炎舞炊き」では、炊飯器底のヒーターを3か所に分けることで、加熱する部分を集中させ、炎のゆらぎを再現しています。大きな温度差により複雑な対流が発生し、釜の中をお米が激しく舞うことで、ムラのないふっくらとした炊き上がりを実現しています。
「豪炎かまど釜」は、アルミとステンレスの層に鉄が組み込まれており、高い蓄熱性、発熱効率、熱伝導を備えています。内側にはごはんの甘さのもと「還元糖」とうまみ成分「ブドウ糖」を引き出す、プラスプラチナコートをコーティング。釜のふちが厚く熱を逃がしにくいため、「炎舞炊き」の火力の強さを存分に生かすことができます。
パナソニックは、おいしいごはんが炊き上がるまでの工程を5つに分け、それぞれに独自の機能を備えています。強い圧力を生かした「ふっくらとした炊き上がり」が特徴です。
異なる位置から交互に大火力で加熱することによる対流と、加圧と減圧を繰り返すことによる対流。このふたつの炊き技を使う「Wおどり炊き」は、釜の中で激しくお米が舞いつつ、火力と圧力の両方をかけることで一粒ひと粒にまで熱が行き渡り、ふっくらとしたもちもちのごはんに仕上がります。
熱伝導の高いアルミ素材を使用した内釜は、発熱性、蓄熱性、断熱性と、おいしくお米を炊くために欠かせない性能を備えています。ダイヤモンドフッ素によるコーディングが細かい泡を発生させ、より多くのお米に熱を伝えるほか、釜底には多数のくぼみをもうけることで、対流を活性化させる工夫が施されています。
多機能高級モデルから、手に取りやすいシンプルなモデルまで、豊富なラインアップが揃っています。タイガー魔法瓶といえば、厳選した土から作られた土鍋を内釜に使用した高火力な炊飯が特徴です。
土鍋を使うことで、高火力に耐えうる内釜を実現。圧倒的な火力ですみずみのお米まで熱を伝えると同時に、圧力に変化を加えて炊き上げ時にもちもちと弾力のあるごはんに仕上げます。また、高火力が細かな泡を生み、米をしっかりと包み込むことでデンプンを閉じ込め、うまさを引き出します。
「ご泡火炊き」ができるのも、内釜に本土鍋を使用しているためです。高温に耐えられるため、火力に頼った炊飯ができるようになります。土鍋が持つ遠赤外線効果も、火力を高める要因の1つです。また、成形段階で「炭化ケイ素」を配合することで、従来に比べて熱伝導は2.5倍にアップしています。
高級炊飯器の礎を築いた「本炭釜」をはじめ、「蒸気レス」や「超音波吸水機能」など、高い技術で業界をリードしています。「本炭釜」は現在も主力商品の1つで、高い火力でお米をていねいに炊き上げます。
強火を保ち沸騰し続けて対流が持続することで、かまどで作ったごはんの味を再現しています。8つのヒーターが釜の中のお米全体に熱を伝えつつ、高い火力を実現しています。また、熱と水分を外に逃さないように密封しているので、うまさを釜の中に閉じ込め、蓋を開けたときの香りも際立ちます。
本炭釜は1つひとつが職人の手作りです。激しい熱対流を起こす釜底の構造、連続沸騰を可能にする羽釜形状、どちらも手作りゆえの技術です。炭はそれ自体が発熱するため、より効果的な発熱力を持つだけでなく、遠赤外線効果による輻射熱も大火力を支えています。
蒸気があまり出ないため置き場所を選ばないモデルや洗米時に楽な軽い内釜を備えたモデルなど、ちょっとした気遣いで使いやすさに定評のある、日立の炊飯器。鉄釜にもこだわっており、圧力と蒸らしでふっくらとした炊き上がりを実現します。
最高1.3気圧の圧力を生かして、107度からの蒸らしを実現し、一粒ひと粒が立った食感を味わえます。また、スチームとヒーターで内部の温度をコントロールすることで、お米を少なめで炊いても味を落とさずに炊くことができます。どのような条件でも「外硬内軟」な仕上がりとなっています。
鉄とアルミを重ね合わせた構造で、高い火力と軽さを実現。高火力でおいしく炊けるだけでなく、最初にお米を洗うときの負担も軽減できます。軽さを実現するために、本体側に蓄熱力を持たせているのも大きな特徴の1つです。凸底の形が沸騰を連続させるので、均一な仕上がりとなります。
東芝は、お米のうまみを引き出す独自の真空技術が最大の特徴です。そのほか、備長炭釜から銅コート釜、真空圧力タイプから小容量タイプまで、さまざまな選択肢の中から好みのタイプを選ぶことができます。
釜の中を真空にすることで、圧力差により素早くお米の中心まで水が浸透。「お米を浸す」時間を大幅に短縮できます。水もたっぷりと吸収するため、炊く際にお米の芯まで熱が通りやすくなります。保温時も真空にした状態になるので、お米の酸化を防ぎ、おいしさを持続させることができます。
真空状態から一気に圧力をかけることで、お米の一粒ひと粒まで加熱します。それを4つの層からなる内釜が支えることで熱効率を上げ、さらに火力が増します。また、熱対流を生むために、釜底に60度の角度がつけられており、均一でふっくらとした仕上がりのお米に炊き上がります。
蒸気の力でお米にやさしい炊飯
シンプルで飽きの来ないデザインで多くの支持を集めるバルミューダ。「The Gohan」は、IHの火力や圧力ではなく、蒸気の力で炊飯します。あえて100度未満で炊くことで、お米のうまみを引き出す温度帯を活用します。おいしさを損ねてしまうという理由から、保温機能は省かれているので注意してください。
ホーロー鍋と専用ヒーターで繊細な火加減を調節
「手料理と生きよう」をコンセプトに、素材にこだわり、職人の手作業によって造られているのが、愛知ドビーが手掛ける「バーミキュラ」。「ライスポット」は、ホーロー素材の炊飯鍋を専用のポットヒーターで加熱する方式により、微妙な火加減をコントロールでき、冷めても甘さが感じられる仕上がりを実現しています。
米それぞれのおいしさを最大限に引き出す銘柄炊き
1万円を切る低価格帯の炊飯器をはじめ、コスパの高い製品を幅広く展開するアイリスオーヤマ。米の銘柄ごとに異なる粒の大きさや水分値に合わせ、火力や加熱時間を最適化する「銘柄炊き」機能を搭載したモデルが主力です。中でも、大火力で一気に加熱することで、一粒ひと粒の米をふっくらと炊き上げる「銘柄炊き RC-ME50」が人気です。
土鍋の構造や機能をそのまま電気化した炊飯器
伊賀焼窯元「長谷園」が製造する炊飯土鍋「かまどさん」の構造や機能をそのまま電気化した土鍋電気炊飯器が、シロカ(siroca)の手掛ける「かまどさん電気」です。肉厚に成型された土鍋により、熱伝導がゆるやかになり、熱しにくく、冷めにくいのが特徴。伊賀の土と釉薬による遠赤外線効果により、米の表面に伝わった強い熱がゆるやかに内部に届き、ふっくらとした炊き上がりになります。
炊飯器をタイプ(加熱方法)で分けると、IH炊飯器、圧力IH炊飯器、マイコン炊飯器、ガス炊飯器の4種類。それぞれに特長がありますが、現在の主流は、電磁調理器としておなじみの、電気の力で金属(内釜)を発熱させるIHタイプの炊飯器です。それぞれの加熱方法から自分の好みに合ったタイプを選びましょう。
コイルによる電磁力の働きで金属製の内釜自体を発熱させるのがIH炊飯器。底部だけでなく側面や内蓋にもコイルを内蔵し、内釜全体を強力に加熱できる高級タイプもあります。
圧力鍋のように内釜を密閉することで圧力を上げて、100度以上の高温で炊飯できます。お米の芯まで熱が通るのでうまみを引き出すことができ、ふっくらしたごはんに仕上がります。
炊飯器の底部にあるヒーターの熱で炊飯をします。各社から発売されており、ラインアップは豊富です。数千円から購入できる製品もあり、安さを重視するユーザーに人気があります。
LPガス用と都市ガス用があります。火力の強い直火を使うガス炊飯は、最もおいしいといわれる「かまど炊き」に近いといわれ、あえてガス炊飯器を選ぶ人もいます。
炊飯器選びで重要なポイントが「どの程度の量のお米を炊けるか」ということです。夫婦2人なら3合でも間に合いますし、両親や子供がいるなら5.5合、大家族なら10合(1升)といった具合です。家族の人数や普段食べる量などを考えて選びましょう。
炊飯器の内ふたを取り外して丸洗いできる機能です。内ふたの汚れをそのまま放置しておくと細菌が繁殖したり、カビの原因になったりするため、内釜を洗うときは内ふたも一緒に洗いましょう。
100度以上の高温のスチームを内釜全体に行き渡らせて炊飯します。うまみや甘み、香ばしさを引き出すといわれているほか、つやと粘り気のあるごはんを炊き上げることができます。
熱を放射して物を温める遠赤外線を多く放射する土鍋や炭などでできた内釜は、炊飯時にお米の一粒ひと粒をしっかりと加熱。米の芯まで熱を伝えます。その結果、ふっくら、おいしいごはんに仕上がります。
炊き上がりの際に発生する蒸気を抑制する機能です。蒸気がまったく出ないわけではありませんが、蒸気ありのタイプと比較するとやけどをするリスクを軽減できます。
炊き上がりの際に炊飯器から蒸気が出ないタイプです。そのため、高温の蒸気に触れてやけどをする恐れがありません。また、蒸気を出すタイプと比べて結露の心配がないため、置き場所を自由に選ぶことができます。
無洗米に対応した炊飯器です。中には予熱を長めに取り、お米の吸水を促進させ、通常よりも時間をかけてゆるやかに炊き上げる無洗米コースを搭載したモデルもあります。※詳細は、メーカーや機種によって異なります。
こねたパン生地を炊飯器内で発酵させ、パンを焼き上げる機能です。タイマー機能とあわせて使えば、朝食に焼きたてパンを食べることもできます。
IH炊飯器で24時間、マイコン式炊飯器で12時間が目安です。
炊飯器の中に長時間保存すると、硬くなったり黄色く変色したりとせっかくのごはんも味が落ちてきます。すぐに食べないのなら、なるべく早めにラップに包んで、冷蔵あるいは冷凍保存しましょう。なお、少量のごはんを炊飯器で保存する場合は、ごはんを中央に寄せて内釜に触れる面積を少なくした状態にするのがよいそうです。なお、釜の内部にスチームを発生させたり、内部を真空にしたりすることで、さらに長い時間(40時間)保温できる炊飯器もあります。
そのまま使用しても差し支えありません。
内釜にはごはんがこびりつかないように、通常、フッ素コーティングなどの処理が施されています。使い方によっては、コーティング素材(フッ素)がはがれることがありますが、口にしても人体には吸収されずそのまま排出されます。はがれたところはごはんがこびりつきやすくなりますが、機能面や衛生面での問題はありません。
海外での使用を前提としたモデルをお求めください。
海外の方々に大人気の日本製炊飯器。国内用に販売されている炊飯器を海外に持って行き、現地で変圧器を利用したとしても、マイコンが誤作動したり故障したりする恐れがあります。海外で使う場合は、海外での使用を前提にしたモデルを選びましょう。
圧力が高いほど粘りのあるもっちりとしたごはんに仕上げることができます。
IHによる加熱方法はともに同じですが、圧力IHでは内釜に圧力を加えることにより沸点を変えることができます。たとえば1気圧での沸点は100度ですが、1.2気圧で105度、1.3気圧で107度と高くなり、米の芯までしっかりと熱が通りやすくなります。一般に、圧力が高いほど粘りのあるもっちりとしたごはんに、圧力が低いと粒感のあるシャッキリとした食感に仕上がる傾向にあります。
IHだと内釜自体が熱くなるのでおいしく炊き上がります。
IHとマイコン炊飯器は、動作自体はどちらもマイコンで制御していますが、違いは加熱方式にあります。内釜自体が発熱するIHに対し、マイコン炊飯器は釜底のヒーターで加熱する仕組みです。そのため、IH方式のほうがムラなく均一に加熱でき、保温時の黄ばみも抑えられるという特長があります。
消費電力を抑えるか、抑えないかの違いです。
エコモード
消費電力を抑えることを目的としたモードです。標準よりも少ない消費電力で加熱するため、火力が少し弱まり、炊き上がりが少し硬めになる傾向があります。
早炊きコース
時間を短縮して炊飯することを目的としたコース。炊飯時の消費電力は標準の場合と同じですが、炊飯時間が短縮されるのでそのぶん標準コースよりも消費電力量を抑えることができます。
内釜取っ手付
内釜に取っ手があるタイプの炊飯器です。炊きたての熱い内釜を持ち運ぶことができるほか、内釜を洗う際に押さえて固定できるので便利です。
玄米コース
玄米は炊飯前に長時間水に浸し吸水させる必要があります。玄米モードでは、40度程度の水で吸水させるなどの工夫を施し、吸水も考慮したうえで炊飯します。ただし、それでも炊飯時間は白米より1.5〜3倍ほどかかります。
スチーム保温
定期的に発生させるスチームと断熱構造によって、ごはんの乾燥を抑えて長時間保温できる機能です。なお、内釜内部を真空にして長時間保温を可能にしている製品もあります。
スマホ連携
近年ならではの特長ともいえるのがスマホとの連携。スマホに専用アプリをダウンロードし炊飯器と連携すれば、スマホで検索・閲覧して気に入った料理のレシピやその炊飯方法を、炊飯器に設定できます。
炊き分け
最近の炊飯器には、米の種類(白米、無洗米、玄米、米の銘柄別など)や食感別(もちもち、しっかりなど)、食べ方別(おかゆ、カレー用、おすし用、おこわなど)といった豊富な炊き分けメニューが搭載されています。
特殊コーティング
内釜の表面にはごはんのこびりつきを防ぐためにフッ素コーティングが施されています。しかし、フッ素コーティングすると熱伝導率が下がり、またはがれやすいというデメリットもあります。そこで、さらに耐久性の高いコーティングや熱伝導率の高い素材を加えた、カーボンフッ素コーティングやダイヤモンドコーティングといった特殊コーティングを施した製品も登場しています。
マルチ調理・バラエティー調理
炊飯器の特長は一定温度で長時間調理ができるところ。メーカーによって呼び名は異なりますが、炊飯以外の多彩な料理が可能です。米のうまみを究極まで引き出す最上位機種ではこうした機能は非搭載の傾向にありますが、圧力IH炊飯器では煮込みや蒸しなどの本格料理が可能なものも登場しています。