食べるからこそ福きたるアイリスオーヤマ 銘柄炊き RC-PD50
アイリスオーヤマ「銘柄炊き RC-PD50」は、40銘柄に対応する炊飯モード、さらに健康サポートと多機能ながら驚きのコスパを実現。炊き分けメニューの多さに喜び、糖質オフしてまた喜ぶ、いろんな数字と感情が上下するジェットコースター家電だ。
銘柄炊きのメリットは味だけじゃない
普段出不精な私でも、スーパーのチラシで「お米の特売日」と見るや条件反射で腰を上げる。そのくらい、毎日食べるお米の値段は重要だ。ただ、いつも食べている銘柄の米が安くないとテンションはやや下がる。こだわってるわけじゃなく、我が家の古い炊飯器では米を変えると、吸水時間や水分量も多少変えないと炊きあがりに影響して面倒くさいからだ。
……と書くと、我が家の飯炊き大臣(旦那さん)から「お前がいうな!」と叱られそうだけど、繊細な微調整が苦手な私だってやればできるさ! 銘柄炊き機能があればね。
最近はどのメーカーの炊飯器にも複数銘柄の炊き分け機能が定着した。しかし、まだ高価格帯の機種への搭載が多い。
そんな中、アイリスオーヤマ「銘柄炊き RC-PD50(以下PD50)」は実売1万円台(2022年4月時点)と、炊き分け機能を搭載する圧力IH炊飯器の分類では思わず2度見したくなる(いや、した)低価格だ。「ゼロ1つ忘れてないよね?」「お安い分、味はどうなんだ?」とちょっと心配になるくらいだ。
しかし、こればかりは食べてみなくては始まらない。さまざまな疑問と心配を抱えながら、いろんなブランド米のミニパックを買いあさり、PD50での楽しい実験生活に突入した。

PD50の炊き分けモードは、本体の操作パネルに、著名な6銘柄(コシヒカリ、あきたこまち、つや姫、ゆめぴりか、ひとめぼれ、ヒノヒカリ)の名前で表示されている。なお、ここにない銘柄も、これら6モードのいずれかに割り当てられており、説明書の分類表をもとに選択する方式。つまりこの6モードで40種類に対応できるということ。
さて、まずは主銘柄のうち4つを連日炊き分けてみると、確かに香りや旨味はほのかに違うが、全体的にそんな顕著な違いは感じない。むしろどれも均一にツヤピカでふっくらで、当たり前だけど「失敗がない」。そして、どれもおいしい。
そうか、違わないことが実は地味にすごいのか。それぞれ違う銘柄なのに、何も考えず同じ量のお米とお水をセットして、失敗せずにおいしく炊けるということこそ、そのお米の力を引き出したといえるんじゃないだろうか。
これでもう特売日の銘柄に一喜一憂せずに堂々買える!それ以外でも、旅先の直売所や通販で目にするおいしそうな御当地米を積極的に試したくなってきた。つまり食べるのも買うのも楽しくなるってことですよ。
料理の数だけご飯のこだわりがある
PD50では銘柄炊きのほかに「おこのみ炊き」を搭載。これにより白米や無洗米の炊きあがりの固さや食感を9通りから選べるほか、おむすび、冷凍や丼、カレーなど6つの用途に適した炊き分けもできる。
「2日目のカレーがうまい理論」のように、最初から変化を見越しておいしく炊く逆転の発想が面白い。お弁当や夜食用など、炊きたてじゃなくてもおいしく食べたいのが、この愛すべき面倒くさい日本人なんだよなぁ。
また、実際使ってみると必ずしもこの炊飯メニューにすべてに従う必要がないことにも気付く。料理名などでわかりやすく分類してあっても、基本は火力・圧力・水分調整の組み合わせだ。
というわけで、カレーには「かため×もっちり」(おこのみ炊き)が合ってたな。お弁当は早炊きモードで炊いたのが冷めてもおいしかったよ。冷凍モードのご飯を解凍したらお茶漬けで食べやすかった。などのように、料理に合わせたモードをきっちり守るより、自分たちの好みと意外なモードとのマッチングの発見がまた楽しかった。

昔から語り継がれるかまど炊きの極意がある。「はじめチョロチョロ中パッパ ブツブツいうころ火を引いて ひと握りのわら燃やし 赤子泣くともふた取るな」
どれだけの火加減でパッパして、そのひと握りのわらの数が何本か、細かいこだわりの積み重ねでご飯の味に繊細なバリエーションが生まれる。高級炊飯器と低価格炊飯器の違いは、そんなこだわりをどれだけ突き詰めるかの違いなのだろう。そして選ぶユーザー側は、おいしさへの飽くなき欲求と使い勝手や価格とのバランスをどこで取るか。
PD50は、高級機のように季節・銘柄問わない完璧な自動補正力や、かまど炊きの高級旅館のおひつご飯を再現する能力まではないかもしれない。だが、米の種類や好みのモードを見つけ育てることで、「大好きな味」に導くことは十分できる。
1万円台でこれだけ楽しめるなら、1人暮らしや新婚家庭への祝いにも気軽にあげたくなる絶妙なコストパフォーマンスだ。
食べる幸せは生きる幸せ
話はさかのぼって去年の秋。すっかりリモートワーク体型で緊張感ゼロな私が、知人の結婚式に向けた緊急ダイエット(糖質制限)で夕食のご飯を抜いたことがあった。加えてYouTubeを見ながらの浮き輪肉撲滅筋トレを試みるも体力は限界寸前、この戦いに白旗を上げそう(ご飯を食べそう)な危機もあった。
げに恐ろしき崖っぷち女子のみえと根性で、最終目標のドレスに着弾できたものの、連日のご飯抜きはやはり身も心もエネルギー不足に陥り、戦のあとの反動たるや……(以下略)。
その涙の記憶から、私が今回PD50で一番試してみたかったのは、糖質が約10%カットされる「低糖質モード」や、食物繊維と同じような働きをする難消化でんぷんを増やす「食物繊維米モード」だった。
実際に低糖質モードで炊いたご飯は少し柔らかめで、あまり保温や冷凍には向かない印象だが、少量食べきりならまったく問題なし。糖質オフと引き替えにご飯らしい旨味が損なわれることもなかった。また、食物繊維米モードだが、こちらは3時間前後かけてゆっくり炊くので、思いつきより予約炊飯で計画的に使う必要がある印象。

いずれにせよガチモードで切実な栄養管理が必要なら、アイリスオーヤマには糖質を最大20%までカットできる「ヘルシーサポート炊飯器 RC-IJH50」という選択もある。だが、 普段のご飯を食べつつ、時に気軽にヘルシー生活も楽しみたいゆるふわ勢には、PD50のように、多彩なモードの中にさりげなくヘルシー系メニューが存在してくれる機種がとてもありがたい。
元気な自分、なりたい自分を目指して食事をコントロールするとき、「食べる」「食べない」の2択なら絶対私は「食べる」コントロールがいい。食べることは、単なる生命維持の手段だけでなく心の栄養であり、同時に幸せ気分が味わえるのだから。
まさに「食べる門には福きたる」だ。
あとは、気を抜くとご飯が進みすぎて、カット分相殺どころか即超過の失態を招きかねない激弱精神の鍛練。それこそが、私の永遠の課題なのだが、またそれは別の話。
文:のぽりん 写真:文田 信基(fort)