お正月。忙しい日常の中で、つい忘れがちになってしまう日本の文化の中でも、
特に大切なイベントのひとつです。
家族でおせちを囲み、初詣に出かけ、親戚へ挨拶にまわる…でも、ちょっと待って。
あなたは「おせち」のことをどれくらい知っていますか?
お正月を代表する風習「おせち」について、和文化研究家の三浦康子さんにお話を伺いました。
- おせちをいただく時に一番気をつけることは?
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「祝い箸」を使うことで、
年神様と一緒に食事をします。おせちをいただく時に一番重要なのは、「祝い箸」を使うことです。
「祝い箸」とは、両側を細く削ったお箸のこと。一方は人間が、もう一方は年神様が使うと考えられています。年神様と一緒に食事をすることがおせち料理の目的ですから、ここは押さえておきたいですね。
また、おせちをお重に詰めるのは、「めでたさが重なる」「福を重ねる」という意味を持つため。用意できない場合は大皿でもOKですが、お重があるとより素敵ですね。
なお、いただく順は、お屠蘇→祝い肴(三種肴)→おせち→お雑煮が基本です。
- お正月の食事はいろいろあるけど、どこまでが「おせち」?
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お屠蘇(とそ)・お雑煮・お重の料理。
実は一番大事なのはお雑煮!年末には年越しそば、新年にはお雑煮やお重料理、7日になれば七草粥…。お正月には実にたくさんのお料理をいただきますが、「おせち」に定義されるのは「お屠蘇」「お雑煮」「お重料理」の3つです。
そして…実は意外にも、もっとも重要な意味を持つのはお重料理ではなくお雑煮なのです! 本来、お雑煮は鏡餅をいただくための料理で、鏡餅には年神様の魂が宿ると言われ、それをお雑煮にしていただくことで、魂を心身に取り込めるとされています。今でこそ、鏡餅は1月11日の鏡開きまでずっと飾っておきますが、昔は新年三が日に毎日取り替えて、下ろしたお餅をお雑煮にしていただいていたんですよ。
- お屠蘇(とそ)の味が苦手…。飲まなくても良い?
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飲むまねごとだけでもOK
屠蘇散(とそさん)と呼ばれる漢方薬を、お酒かみりんに浸していただくお屠蘇。
独特の風味があるので、苦手な方もいらっしゃいますよね。また、ドライバーの方やお子様は飲むことができません。
そんな時は、ちょっと口をつけて飲むまねをするだけでもOKです。お屠蘇には「邪気をはらい、魂を蘇らせる」という意味があり、不老長寿を願うものなので、その思いを感じながらいただきたいですね。
ちなみにお屠蘇は、まず一家で一番若い人が飲み、同じ杯を年齢順に進めていって、最後に年長者が飲むのが本来の形です。若い人が持つ生命力を年長者へ分け与え、一家全員の長寿を願うのです。
- どうしても忙しくて、やっぱりおせちを作るのは大変…。
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通販でもOK。お祝いの思いがこめられた
食材が入っているかチェックを最近は、おせちを通販で取り寄せる方も増えました。
でも、それは決していけないことではありません。おせちの目的は「お祝いの食事を神様と一緒にいただくこと」ですから、それが実現できれば良いのです。
おせちを取り寄せる時に注意してほしいのが、その内容。先に紹介したように、おせちの食材にはそれぞれ「思い」が込められています。
「思い」の込もった食材がたくさん入ったおせちを選んでください。足りないものは他で買い足しても良いですね。
お祝いの意味がきちんと込められていれば、中華でも洋風でもOK。プロが作った豪華なおせちは、家庭で作るおせちとはまた違う楽しさがありますよ。

今回お話をうかがったのは…
三浦康子さん(和文化研究家、ライフコーディネーター)
暮らしを彩る日本文化の情報発信に幅広くたずさわり、テレビ、ラジオ、雑誌、Webなどで活躍中。総合情報サイト・All About「暮らしの歳時記」ガイド、キッズgoo「こども歳時記」ナビゲーター、お正月ニッポンプロジェクト「お正月大学」教授もつとめており、連載多数。著書『粋なおとなの花鳥風月』(中経出版)、監修書『イラストでわかるおうち歳時記』(朝日新聞出版)などがある。