お正月。忙しい日常の中で、つい忘れがちになってしまう日本の文化の中でも、
特に大切なイベントのひとつです。
家族でおせちを囲み、初詣に出かけ、親戚へ挨拶にまわる…でも、ちょっと待って。
あなたは「おせち」のことをどれくらい知っていますか?
お正月を代表する風習「おせち」について、和文化研究家の三浦康子さんにお話を伺いました。

「おせち」の語源は、「節供(せちく)料理」といいます。
もともとはお正月だけでなく、桃の節句(3月3日)、端午の節句(5月5日)など、節目の行事ごとに神様へお供えする料理のことでした。
それが長い年月を経て、一年でもっとも重要な「正月の節供料理」を指すようになり、“おせち”と略され、定着していったのです。
おせちには、旬の食材やその土地の特産物、縁起物などがふんだんに盛り込まれます。
それらの持つ力を心身に取り込み、新年の幸せをさずかりましょう。

おせちにまつわる風習には、どれも大切な意味が込められています。
単なる決まりごととしてではなく、そこに込められた「思い」を感じながら実践していきたいですね。
例えば、「お正月には台所の神様もゆっくり休んでほしいから」おせちは大晦日までに完成させます。
また、箸も普段使用しているものではなく、「片側を神様が使い、共に食事ができるように」両側が細く削られた祝い箸を使っていただきましょう。
おせち料理には、ひとつの大きな目的があります。
それは「年神様をお迎えして、みんなで一緒に食事をすることで、新年の幸せを授かる」ということ。年神様とは新年の神様で、正月行事は、年神様を迎えるための行事なのです。
その気持ちさえきちんとこもっていれば、すみずみまで形式に囚われなくても大丈夫ですよ。

今回お話をうかがったのは…
三浦康子さん(和文化研究家、ライフコーディネーター)
暮らしを彩る日本文化の情報発信に幅広くたずさわり、テレビ、ラジオ、雑誌、Webなどで活躍中。総合情報サイト・All About「暮らしの歳時記」ガイド、キッズgoo「こども歳時記」ナビゲーター、お正月ニッポンプロジェクト「お正月大学」教授もつとめており、連載多数。著書『粋なおとなの花鳥風月』(中経出版)、監修書『イラストでわかるおうち歳時記』(朝日新聞出版)などがある。