スイッチングハブ(ネットワークハブ)の選び方
オフィスや家庭など限られた範囲でのネットワーク環境をLAN(ローカルエリアネットワーク)といいます。私たちは普段、その環境下でインターネット接続を複数の端末で共有したり、ファイルを交換したりしており、そのLANに有線で接続する端末を増やしたい場合に利用する機器がスイッチングハブ(ネットワークハブ)になります。ここでは、スイッチングハブの基礎知識と選び方を解説します。
2022/11/10 更新
目次
スイッチングハブは、有線LANの中継地の役割を果たす周辺機器で、複数の有線接続ポートを備えています。ルーターの接続ポートとLANケーブルで結ぶことにより、スイッチングハブを介してネットワーク接続が可能になるため、多くの機器をネットワークに接続できるようになります。家庭内であれば、ルーターから離れた部屋にある複数台の機器を有線でネットワーク接続するためにスイッチングハブを活用するケースも多いでしょう。有線接続では通信速度の減少や通信の遅延が少ないため、リアルタイムの反応が必要なネットワークゲームを楽しむ人に◎。製品を購入する際には、接続する機器の数と必要なポート数を事前に確認しておきましょう。また、通信速度に関わる転送速度の規格をチェックしておくことも大切です。
スイッチングハブを選ぶ際のポイントは、「接続したい機器の数」と「最大転送速度」です。難しいことがわからない人でもこの2つを押さえておけば問題はありません。
ポート数とはLAN端子の数のこと。つまり、何台の機器を接続できるのかを示しています。現状の必要数に加え、数台分増やしておくと安心でしょう。なお、1ポート分は、スイッチングハブをLANに参加させるためにルーターとつなぐのに使用することになります。
ポート数をチェック
転送速度とは、スイッチングハブと各端末がデータのやり取りをする際の理論上の最大速度で、数字が大きいほど高速でデータ転送が行えます。スイッチングハブ、端末それぞれに転送速度がありますが、スイッチングハブの転送速度には下位互換性があります。そのため、接続する端末の中で最も速い転送速度と同じ速度のスイッチングハブを選んでおけば、転送速度が遅い端末を接続した場合でも使用できます。
転送速度をチェック
速度に関して覚えておきたいスペック「スイッチングファブリック」
スイッチングハブに接続した機器を複数同時に通信させる場合には、「スイッチングファブリック」の数値が重要になります。「スイッチングファブリック」とは、スイッチングハブが1秒間に処理できる通信量の合計のこと。接続した機器を同時に通信させたときの合計通信量に比べて、スイッチングファブリックの値が小さい場合、スイッチングハブで渋滞を起こし、本来の通信速度が発揮されません。たとえば、スイッチングハブに1Gbps対応の端末2台を接続して同時に通信させた場合、1Gbps(最大転送速度)×2台×2(送信・受信)=4Gbpsの通信が同時に行われます。したがって、必要となるスイッチングファブリックの値は、4Gbps以上となります。なお、通信量を計算する際は、使用ポート分だけでなく、今後使用する可能性がある空きポート分も計算にいれ、スイッチングファブリックには余裕を持たせましょう。
スイッチングファブリックをチェック
インテリジェントハブとは、「SNMP」という通信方式に対応し、遠隔でネットワークを管理できるスイッチングハブです。インテリジェントハブは、管理機能のほか、より便利で堅ろうなネットワークを構築するためのさまざまな機能を搭載しています。企業でネットワーク管理を担当している人や、個人でも高機能なネットワーク運営を行っている人は、必要な機能をチェックしましょう。さまざまな機能が存在しますが、ここでは代表的な機能を紹介します。
スイッチングハブのポートや接続機器のMACアドレスを自動で判別して、LANセグメント(グループ)を構築する機能。LANセグメントを分離することで通信帯域を確保したり、アクセスを制限してネットワークセキュリティを高めたりすることが可能です。主に企業内で用いられ、部署ごとにネットワークを分け、利便性やセキュリティを高めるなどの目的で利用されます。
ネットワーク上のサービスを安定して使えるようにするために、優先するデータの順番や通信速度を調整する機能です。主に通話や動画サービスといった、通信速度の低下によって大きな影響を受ける業務に用いられています。
スイッチングハブを複数組み合わせたLANを構築すると、LANケーブルを経由して同じデータがぐるぐると回る「ループ」と呼ばれるエラーが発生することがあります。「ループ検知」機能が搭載されていると、どのポートから発信されたデータがループしているのか、ひと目で把握することができます。
ブロードキャスト・ストーム(ループなどによってデータが増幅し、ほかの通信ができなくなること)が発生した際、原因となるポートの通信をストップする機能。原因のポートを封鎖することで、ほかのポートやネットワーク全体が麻痺してしまうのを避けることができます。耐障害性が求められるネットワークを構築するなら、ブロードキャスト制御対応モデルを選びましょう。
ネットワークに接続されている機器に対して、IPアドレスを振り分ける機能を持つ機器のことです。DHCPサーバー機能を持つスイッチングハブは高価なモデルが多く、家庭で利用するのなら同じ機能を持つ有線ブロードバンドルーターや、ハブ内蔵の無線LANルーターを用いるのが一般的です。
ネットワーク上を流れるデータを、宛先の端末に対して最適に送り届けるための機能です。高機能なインテリジェントハブに内蔵され、家庭内用途では、DHCPサーバーと同様、ルーターが用いられるのが一般的です。
インターネットブラウザを利用して、スイッチングハブの設定ができる機能です。複雑な設定をすることもあるインテリジェントハブにおいては、必須機能のひとつです。
3〜24ポートのラインアップが中心で、環境や家計にやさしい「おまかせ節電」機能対応モデルや、背面マグネットがついたモデルなど、便利なスイッチングハブを提供しています。
大規模企業向けスイッチングハブで培った技術で、信頼性の高い製品を提供するネットワーク機器専業メーカー。Ethernetポートにメタルコネクタを採用し、ハードウェア品質を2倍以上に向上させたモデルなどが人気です。
1996年に設立された中国のメーカーで、世界170か国以上でネットワーク製品を展開しています。スイッチングハブのカテゴリでは、コンセントに差し込んで機器とつなぐだけという「プラグ&プレイ」に対応した「TP-Link LiteWave」シリーズが人気です。
大阪に本社を置く、コンピュータ周辺機器メーカー。個人向けの製品から、高機能な法人向けの製品まで、幅広いラインアップのスイッチングハブを展開しています。コンパクトながら高耐久・高性能な省エネモデルの「EHC-G08MN2-HJW」が人気です。
ケースには、金属製(スチールやメタルなどメーカーによって表記が異なる)とプラスチック製の2種類があります。前者は耐久性や排熱性にすぐれ、後者は比較的価格が安いメリットがあります。
素材から選ぶ
スイッチングハブからLAN端子を経由して接続端末へ電力を供給できる機能です。PoE受電に対応している機器なら電源に接続しなくても利用可能になります。配線をすっきりできるだけでなく、コンセントがない場所での電源確保にも役立ちます。対応機器にはネットワークカメラなどがあります。
スイッチングハブは基本的に常時稼働しているものなので、寝室やリビングに設置するのなら、音の静かな製品を選びたいもの。目安となるのが、排熱を促すファンを搭載していないファンレスモデルかどうか。製品のWebページやカタログで、動作音の大きさもチェックしましょう。
スイッチングハブの電源にはACアダプター(電源コードの途中などにある、黒や灰色で箱形の部分)が必要ですが、これをスイッチングハブ本体に内蔵したモデルが存在します。電源が、コンセントへ差し込むプラグ部とケーブルのみになり、配線が込み入りがちな環境で非常に役立ちます。
現在はスイッチングハブがほとんどです。
スイッチングハブには、大別して「スイッチングハブ」と「リピータハブ」の2種類があります。「スイッチングハブ」とはMACアドレスをもとに、特定の宛先にのみデータを接続する機器で、後者は接続しているすべての機器にデータを送信する機器です。スイッチングハブのほうが効率のよいため、現在はスイッチングハブといえば、ほぼすべてがスイッチングハブになります。
ルーターが整理した情報をスイッチングハブが届けます。
ルーターはインターネット通信や、ネットワークに接続した端末同士の情報の交通整理を行う装置です。そのため、ネットワークを構築するには、ルーターが必須です。一方、スイッチングハブは、そうした整理機能は持たず、ネットワークに機器を接続する出入り口の役割を果たします。ルーターにも複数の端末を接続できるようLAN端子が設けられていることがありますが、それは正確にいうのならば、ハブの役割も担っている、スイッチングハブのルーターなのです。
単体では利用することはできません。
スイッチングハブは、ネットワークを構築する中継点であるため、単独でWi-Fi機能は搭載していません。しかし、スイッチングハブに無線LANアクセスポイントを接続すれば、そこからWi-Fiネットワークを構築することはできます。
買い増し、または買い替えの必要があります。
機器の数が増え、スイッチングハブのポートの数が足りなくなったら、スイッチングハブを買い増し、スイッチングハブ同士を接続して、全体のポートの数を増やしましょう。あるいは、よりポート数の多いスイッチングハブを購入し、置き換えるのもよいでしょう。ただし、いずれも手間や費用がかかるので、あらかじめポート数に余裕のあるスイッチングハブを選んでおくのがおすすめです。
壁面などへの設置も検討しましょう。
スイッチングハブの中には、マグネットを搭載するなど、壁面に貼り付けられるタイプもあります。設置スペースの確保が難しい場合には、そうしたタイプの製品を選ぶとよいでしょう。
有線LANの規格のことです。
オフィスや家庭で利用される一般的な有線LANは、「イーサネット」という技術規格が用いられています。イーサネットはさらにいくつかの規格に分かれ、現在の主流は「10BASE-T」、「100BASE-TX」、「1000BASE-T」の3種類。「IEEE802.3〜」は、それらのもとになる規格で、「IEEE802.3ab」=「1000BASE-T」、「IEEE802.3u」=「100BASE-TX」、「IEEE802.3」=「10BASE-T」です。各規格の最大の違いは通信速度で、順に1Gbps、100Mbps、10Mbpsでの通信が可能です。
介するスイッチングハブや機器自体の転送速度によります。
接続機器からルーターまで複数のスイッチングハブを介するネットワーク構造の場合、その機器の通信速度は最も遅いスイッチングハブの転送速度に(機器自体が一番遅ければその転送速度に)合わせられます。なお、ケーブルも転送速度と関係があり、どんなケーブルでも通信自体は可能ですが、Gigabit通信(1000BASE-T)を行う際は、「カテゴリ5e」(CAT5E、エンハンスト・カテゴリ5)以上の使用が推奨されています。
最大転送速度はそれぞれの端末が持つ規格に応じたものが適用されます。
たとえば、仮に転送速度1000Mbpsのスイッチングハブに100Mbpsの端末Aと、1000Mbpsの端末Bを接続した場合の理論上の最大転送速度は、端末A:100Mbps、端末B:1000Mbpsとなります。
bps
bit per secondの略で、転送速度を表す単位。1秒間あたりに何ビットの通信ができるのかを示すために用いられます。
Gigabit Ethernet
パソコンやゲーム機などの端末が搭載するLANポートの規格です。
IPアドレス
ネットワーク上に接続された端末に割り当てられる番号で、現実世界に例えるなら、住所の役割を果たします。
Jumbo Frame
ネットワーク通信では、送受信するデータをフレームと呼ばれる単位に分割しています。「Jumbo Frame」は、フレームあたりの通信サイズを大きくし、高速化を図る技術です。
LANポート
LAN端子を接続するための端子のことです。
MACアドレス
LANポートや無線LAN子機など、ネットワーク機器に振り当てられる固有の文字列です。原則として、同一の機器は存在しません。
SNMP
Simple Network Management Protocolの略で、スイッチングハブやルーター、パソコンなどネットワーク上の機器を監視する仕組みです。
© Kakaku.com, Inc. All Rights Reserved. 無断転載禁止