PCケースの選び方
PCケースは、パソコンを構成する各種パーツを収める「PCパーツの家」ともいえる存在です。ここでは、PCケースの種類から選び方のポイント、さらに知っておきたい機能やスペックの確認方法、主なPCケースメーカーまでを紹介。しっかりチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
2022/6/15 更新
PCケースは、パソコンを構成する各種パーツを収める「PCパーツの家」ともいえる存在です。精密機器であるPCパーツを衝撃や振動、ホコリや水などから守る役割のほか、PCケースの内部通気を適切にコントロールすることでPCパーツを効率的に冷却したり、騒音(ノイズ)を低減したりと、性能面でも大きな役割を担っています。また、ゲーミングPCが人気の近年では、RGB LEDライトや発光機能搭載のPCパーツを搭載することでPCケース内を色とりどりにライトアップして楽しむ方も増えています。
PCケースは、おおまかに小型のキューブ・スリム・ミニタワー、中型のミドルタワー、大型のフルタワーの5種類に大別することができます。本体サイズが大きいほど拡張性が高くなりますが、そのぶん重量が重くなったり、広い設置スペースが必要になったりします。各PCケースの本体サイズや拡張性を確認して、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
コロコロとした立方体デザインがかわいいPCケースで、ベアボーン(PCケースに電源とマザーボードがセットされたもの)にも多く採用されています。ミドルレンジクラスのビデオカードを搭載できるモデルも販売されていますが、コンパクトなぶん拡張性や排熱性能は低め。一般的にはネットサーフィンや動画視聴、軽めのゲームなど、比較的ライトな用途のPCに向いているケースです。なお、一部メーカーからはフルタワー型PCケースに匹敵するサイズの巨大キューブ型PCケースも発売されており、こちらなら超ハイエンドPCを組むことも可能です。
デスクの上に置きやすい、軽量・薄型のPCケースです。横幅がタワー型PCケースの半分ほどしかないため専有面積が小さく、デスク上でほかの作業をする際にも邪魔になりにくいのが特徴です。ただし、スリムでコンパクトなぶん内部スペースが狭く、拡張性は低め。ケースによっては、サイズの関係で搭載できないPCパーツがあったり、通常の拡張スロットよりも幅が狭い「ロープロファイル」仕様の拡張カードしか搭載できなかったりする場合もあるので、購入前にしっかりチェックしておきましょう。なお、メーカー製PCでは、ビジネス向けモデルに多く採用されています。
ミドルタワー型PCケースをひと回り小さくしたPCケースで、スリム型PCケースを2つ横に並べたくらいの大きさです。「キューブ型PCケースやスリム型PCケースでは拡張性が物足りないけれど、設置スペースなどの関係でミドルタワー型PCケースは大きすぎる」という方に向いています。ただし、タワー型PCケースとしてはコンパクトなため、大型CPUクーラーやサイズの大きいハイエンドビデオカードを搭載できないことも。自作PCを組んだあとにPCパーツの交換や増設を考えている方は、ミドルタワー型PCケースを選ぶといいでしょう。
「自作PCといえば、このPCケース」といわれるほど、メジャーなサイズのPCケースです。ミニタワー型PCケースよりもひと回り大きい、ほどよいサイズ感と拡張性を両立したバランスのいいPCケースで、ほとんどのマザーボードに対応しています。また、内部スペースも広めなので、ケーブルの配線やPCパーツの交換・増設といったメンテナンス作業も快適です。自作PC初心者はもちろん、自作PCの用途を決めかねている方やPCケースのサイズ選びに迷った方は、ミドルタワー型PCケースを選んでおけば安心です。
フルタワー型は、拡張性の高さが特徴のPCケースです。大型サイズのCPUクーラーやラジエーター式の水冷システムを取り付けられたり、複数枚のグラフィックボードを搭載できたりと、PCの性能をフルに発揮することができます。また、サイドパネルを開けたときのスペースが広いため、PCパーツの取り付けやケーブルの配線など、メンテナンスがしやすいのもポイント。ただし、同じタワー型でもミニタワー型やミドルタワー型と比較すると、どうしてもサイズが大きくなってしまうため、事前に設置スペースを確認しておくといいでしょう。
自作PC初心者には、PCケースではなく「ベアボーン」という選択も
「自作PCを組んでみたいけど、初めてなので不安」「小型PCを組んでみたいけど、PCパーツの設置や配線が難しそう」という方は、「ベアボーン」を検討してみてはいかがでしょうか。
「ベアボーン」とは、PCケース・電源・マザーボードがあらかじめ組み立てられた状態で販売されている半完成状態のパソコン組み立てキットのこと。CPUやSSD、メモリーなどの一部PCパーツを取り付けるだけで自作PCが完成します。
このように気軽に自作PCが組み立てられる「ベアボーン」ですが、キューブ型やスリム型などの小型サイズの製品が多いため拡張性や搭載できるPCパーツに制限がある、電源容量が控えめなので搭載するPCパーツの消費電力を考慮する必要があるといった注意点も。とはいえ、一般的な用途であれば性能は十分なので、ネットサーフィンや動画視聴用の自作PCを組んでみたい初心者の方や、手軽にコンパクトな自作PCを組んでみたい方は、ぜひ「ベアボーン」もあわせてチェックしてみましょう。
PCケースを選ぶ際は、先に使いたいマザーボードや、搭載したいPCパーツのサイズを確認しておくと選びやすくなります。せっかく購入したのに、「マザーボードが対応していなくて搭載できない」「グラフィックボードのサイズが大きすぎてPCケースに入らない」といった事態を避けるためにも、しっかりチェックしておきましょう。
マザーボードは、大きさとレイアウトによって規格(フォームファクタ)が決められており、最も標準的な「ATX」、ATXを小型化した「MicroATX」、小型PC向けの「Mini-ITX」の3種類が主流です。サイズが大きいほど拡張性が豊富で、ATXを大型化した「Extended ATX」という大型マザーボードも存在します。なお、ATX、MicroATX、Mini-ITXは、取り付けネジ位置が共通化されているので、たとえばATX対応PCケースなら、MicroATXマザーボードもMini-ITXマザーボードも搭載することが可能です。
キューブ・ミニタワーケース | ミドルタワーケース | フルタワーケース | |
---|---|---|---|
Mini-ITXマザーボード | 搭載可能 | 搭載可能 | 搭載可能 |
MicroATXマザーボード | 一部モデルを除き搭載可能 | 搭載可能 | 搭載可能 |
ATXマザーボード | 搭載不可能 | 搭載可能 | 搭載可能 |
Extended ATXマザーボード | 搭載不可能 | 対応製品は少ない | 一部モデルを除き搭載可能 |
搭載可能なマザーボードの「フォームファクタ」で製品を探す
PCケースを選ぶ際、対応フォームファクタとともにチェックしたいのが、「ドライブベイ」と「拡張スロット」の数です。「ドライブベイ」はHDDやSSD、光学ドライブなどを設置する場所、「拡張スロット」がグラフィックボードやキャプチャカードといった拡張カードを設置する場所です。「ドライブベイ」や「拡張スロット」の数が多いほど搭載できるパーツが増えますが、それにともなってPCケースのサイズも大きくなります。パソコンの用途や今後の利用シーンからPCパーツの増設予定を考え、まずは必要な数をチェックするといいでしょう。
外部ドライブベイ(3.5インチベイ)の数で製品を探す
外部ドライブベイ(5.25インチベイ)の数で製品を探す
内部ドライブベイ(2.5インチシャドウベイ)の数で製品を探す
内部ドライブベイ(3.5インチシャドウベイ)の数で製品を探す
拡張スロットの数で製品を探す
グラフィックボードやCPUクーラー、電源ユニットなど一部のPCパーツは、性能によってサイズが大きく異なります。とくに、サイズが大きくなりがちなハイエンドグラフィックボードや、冷却性能の高い大型CPUクーラーなどを搭載した自作PCを組みたい場合は、PCケースに搭載できるか事前に確認しておきましょう。
グラフィックボードの対応サイズで製品を探す
CPUクーラーの対応サイズで製品を探す
電源ユニットの対応サイズで製品を探す
ここでは、PCケース選びの際に知っておくと役立つ機能やスペックについて個別に解説。ぜひチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
PCケースの前面には、USBポートをはじめ、さまざまな端子が用意されています。PCケース背面に比べてアクセスしやすいため、周辺機器の着脱を手軽に行うことができます。
USB Type-Aポートの数で製品を探す
USB Type-Cポートの数で製品を探す
「ロープロファイル」とは、通常の拡張スロットよりも幅が狭い拡張カードの規格で、スリム型やキューブ型PCケースなど、通常サイズの拡張カードが搭載できない小型PCケースに採用されています。
「サイドパネル」はPCケース側面のパネルで、PCケース内部にアクセスするために外せるようになっています。近年のゲーミングPC人気を受けてLEDを搭載したマザーボードやファンが登場。これらを組み込んでPC内部のイルミネーションやライトアップを楽しめるよう、「サイドパネル」の材質に透明なアクリルや強化ガラスを採用したPCケースが増えてきています。なお、最近はアクリルより透過性が高く、静電気が発生しづらい強化ガラスを採用した製品が人気を集めています。そのほか、重厚感のあるスチールタイプもあります。
サイドパネルの材質で製品を探す
CPUクーラーやPCケース内に取り付けた冷却ファンの回転数を制御する機能です。最近のマザーボードにはファンコントロール機能が搭載されており、CPUクーラーのファンの回転数を自動で制御してくれますが、「ファンコントローラー」を使用すればPCケース内のファンをまとめて制御することができます。たとえば、普段は低回転で「静音モード」、暑い日やオーバークロック時には高回転で「高冷却モード」にするなど、利用シーンに応じた使い分けが可能です。
ファンコントローラーの有無で製品を探す
PCケースのカラーといえば、以前はブラック系やシルバー系が中心でしたが、自作PCが普及するにつれてレッド系やブルー系など、さまざまなバリエーションが登場してきました。最近では、自室のインテリアに合わせやすいブラウン系やゴージャスなゴールド系、個性的なグリーン系などもラインアップされています。
本体カラーで製品を探す
PCケースに搭載する電源ユニットは、一般的なATX規格の製品を採用していることがほとんどですが、小型PCケースの場合、SFXやNLXといった特殊な規格、あるいはノートPCのようなACアダプタを採用している場合もあります。そのような場合、電源ユニットを標準搭載していることも多いので、付属電源の有無を確認しておくといいでしょう。
付属電源の有無で製品を探す
付属電源の容量で製品を探す
PCケースの素材は、スチールとアルミが主流です。スチールは安価で丈夫ですが重く、アルミは軽量ですが変形しやすく高価といった特徴があります。ただ、どちらも外板が薄いと剛性が低くなり、PCケース全体にゆがみが発生してしまいます。ゆがみは振動音の原因となるため、必ずしも軽量=高性能とは限りません。
PCケースのサイズが大きくなると、内部スペースも広くなり、冷却ファンの数を増やせたり、設置位置を自由に調整できたりするため、冷却性がアップします。内部スペースの狭い小型PCケースの場合、どうしても熱がたまりやすいので、ケース内のエアフロー(空気の流れ)がスムーズかどうかをチェックしておくといいでしょう。
冷却性が高いケースほどファンの回転数を抑えられるため、静音性も高くなります。また、風量の多い大型ファンを低速で稼働させることで、冷却性と静音性をより高めることも可能です。
高品質で静音性の高いPCケースや電源ユニットで有名な、アメリカ・フリーモントのPCケース・周辺機器メーカーです。PCケースは、密閉性を高くして静音性を高めたモデルや、フロントや側面をメッシュにして高い通気性を実現したモデル、高品質な自社電源ユニットを搭載したモデルなど、幅広い製品がラインアップされています。
PCケースから冷却パーツ、電源ユニットまで、幅広く手がける台湾の総合PCパーツメーカー。PCケースは、ケースサイズごとにエアフロー(通気性)を重視したモデルや静音性を重視したモデルがラインアップされており、用途に合わせて選択できます。また、近年はキーボードやマウスなどの入力デバイスも販売しています。
アメリカ・フリーモントのPCパーツ・周辺機器メーカー。近年はPCゲーム市場向けのPCケースやキーボード・マウスを販売しています。PCケースは、シンプルなデザインものから、付属のファンコントローラーとソフトウェアでライティングを制御できるアクリルパネルとRGBファンを組み合わせたものまで幅広い製品がラインアップされています。
スウェーデンのPCケース・周辺機器メーカーです。すべての製品の設計や検査はスウェーデン本社で行われており、「Less is more」(より少なく語ることは、より多く語ることである)をモットーに、北欧デザインの象徴であるシンプルでエレガントなデザインを採用。品質や機能性などを損なうことなく、斬新なデザインの製品を提供しています。
サーバー向けシャーシや自作PC向けパーツなど、幅広い製品の開発・製造を行っている台湾の老舗メーカーです。ベーシックで質実剛健なPCケースを展開するいっぽう、デザイン重視のハイエンドPCケースも販売しています。また、いち早く強化ガラスを取り入れたPCケースを発売しており、「魅せるPC」を作りたい人にピッタリなPCケースメーカーです。
PCケース以外にも、冷却ファンや電源なども製造・販売しているアメリカ・ロサンゼルスのメーカーです。ケースはおしゃれでスマートなデザインの製品をラインアップ。ケースに付けられるアクセサリーも豊富で、ファンコントローラーやUSBハブなども販売しています。個性的なデザインのパソコンが欲しい方は、ぜひチェックしてみましょう。
「正圧設計」にこだわったPCケースと、高品質な電源ユニットが有名な台湾のメーカーです。「正圧設計」とは、PCケース内に取り込む空気を排気する空気よりも多くする(吸気過多)ことでエアフローのバランスを整えるというもので、グラフィックボードの冷却効果を高めたり、PCケース内のホコリが減少したりといったメリットがあります。
ケースの外からは見えず、内側からしかアクセスできないベイのことです。
そのため、外側からアクセスする必要のある光学ドライブやカードリーダーは搭載できず、ひんぱんに取り外す必要のないHDDやSSDを搭載するためのベイとなっています。
どちらにもメリットとデメリットがあります。予算や目的にあわせて選びましょう。
初めての自作PCで電源ユニット選びに迷う方や、コストを抑えたい場合は電源ユニット搭載ケースがよいでしょう。いっぽう自作PCの経験があり、すでに電源ユニットを持っている方や、好みの電源を使いたいときには、非搭載ケースがおすすめです。なお非搭載ケースを選択する場合は、電源ユニットの容量はもちろんですが、ケースに装着できる電源の規格とサイズも事前に確認しておきましょう。
剛性や塗装の状態などを、実機で確認するのがベストです。
新製品であっても安価なケースの中には、外板が薄い製品も見受けられます。外板が薄いと剛性が下がり、HDDや冷却ファンの振動でPCケースが共振してブーンとうなるような音がすることも。そのほか、サイドパネルがスムーズに開閉できるか、塗装にムラがないかなどをチェックするといいでしょう。
煙突構造
底面に吸気部を、天板に排気部を設け、煙突のように下から上へのエアフローで冷却する構造。煙突効果に基づいた強い上昇気流を利用したエアフローを構築できますが、天板の排気部から内部音が漏れるなど、静音性では不利といえます。
チャンバー構造
専用カバーを設置することで、PCケース内部を上下にエリア分けするという仕組み。熱源を分離することによって、両エリアの相互熱干渉を最小限に抑え、それぞれのエリアを効率的に冷却できるといわれています。
倒立設計
マザーボードを従来とは逆向きに設置するという内部設計。ケース内のエアフロー(空気の流れ)を重視したもので、HDD、CPU、メモリーの冷却効果が高いといわれています。