

2006年10月に開始された、携帯電話の電話番号持ち越し制度「携帯ナンバーポータビリティ(MNP)」だが、開始後3か月経った時点で、一体どれくらいのユーザーがMNPを利用して携帯キャリアを乗り換えたのか、またその意向状況や満足度について聞いてみた。MNPの利用状況に関しては、およそ1割のユーザーが利用してキャリアを乗り換えたと答えている。MNP開始前の予想では、最大でも10%程度だろう、と言われていただけに、価格.comのユーザーは比較的高い確率でMNPを利用していると見られる。
キャリアの移動状況については、大方の予想通り、ドコモが減らし、auの1人勝ちに近い状況が見えてくる。 ただし、ソフトバンクも意外と検討しているという印象だ。
それぞれのキャリアの乗り換えに対する理由だが、auに関しては「通話品質」や「エリアの広さ」といった「通話環境」が意外と重要視されており、機能的には他社に先行したGPS機能と、「着うた」に代表される音楽配信機能も人気の理由になっているようだ。ソフトバンクは、料金プランの安さを上げる声が多く、特にキャリア内での無料メールサービスは大きなインパクトを与えたようだ。
一方、ドコモは携帯端末、利用料金のいずれもが高いと思われており、端末自体の機能やデザイン性、メール機能などへの関心は高いものの、他キャリアにユーザーを奪われる原因となっていることがわかる。
全体的に見ると、3G携帯に見られるさまざまな派手な機能よりは、電話としての基本性能、メール・インターネットを含む利用料金といった点が、MNPを利用したキャリア変更の大きな引き金となっている様子がうかがえる。
Q1. あなたが現在契約している携帯電話会社をお選びください。(携帯電話を複数所持されている方は、1番利用している携帯電話会社についてお答えください)
社団法人電気通信事業者協会の発表(2007年1月末現在)によれば、NTTドコモ52%、au・ツーカー27%、ソフトバンク16%、ウィルコム4%という割合になっているが、それに比べると、ドコモの割合が低く、au、ソフトバンクは高めの数字となっているのが特徴的。 一般的なシェアに比べた場合の価格.comユーザーの特性を表している。
参考:http://www.tca.or.jp/japan/database/daisu/yymm/0701matu.html
【図1. 現在契約している携帯電話会社】
Q2. 携帯電話のナンバーポータビリティを利用して、携帯電話会社を移行しましたか?
MNPを利用して、携帯キャリアを移行したユーザーは全体の10%程度。
MNP開始前のさまざまな調査では、「乗り換える」と思われていたのは、多くても全ユーザーの1割程度という見方だったが、その最大値に近い値となっている。全体のユーザーからすると、価格.comのユーザーは比較的多くMNPを積極的に利用したという結果になっているのが興味深い。
【図2. 携帯電話のナンバーポータビリティを利用して、
携帯電話会社を移行しましたか?】
Q3. Q2で、「移行した」のいずれかを選択された方にお聞きします。
転出元と転入先をお選びください。
MNPを利用して携帯キャリアを乗り換えたパターンでもっとも多かったのが、「ドコモからau」への移行、次いで「ドコモからソフトバンク」「ソフトバンクからau」となっており、MNP開始直前の予想通り、auのほぼ一人勝ち状態となっていることがわかる。ただし、当初は苦戦するのではないかと思われていたソフトバンクも、他キャリアから転入したユーザーが比較的多く、トータルで見るとプラスに転じていることがわかる。
【図3. ナンバーポータビリティー利用者の転出元と転出先】
Q4. Q2で、「移行した」のいずれかを選択された方にお聞きします。
移行する際に重要視した点をお選びください。
携帯キャリアを移行する際に重要視したポイントを聞いてみた。
全体的には、「機能」「デザイン」「価格」「通話環境」のそれぞれの項目が、キャリアを問わず重要視されている結果となっている。逆に「インターネットへの接続速度」などは、それほど重視されていないことがわかった。
さらに細かく「大変重要」と答えた項目を、キャリア別に見てみると、一番人気となったauに乗り換えたユーザーは、他キャリアに比べて「通話環境」を重要視する傾向があり、「メール機能」や「端末デザイン」については、思ったほど重要視していない。au端末は、デザイン性に優れているという評判もあるが、意外と「つながりやすい」「通話品質がいい」という部分で、auを選択したユーザーが多いようだ。また、ドコモへ乗り換えたユーザーは、「友人・家族などと同じ携帯電話会社であること」「ショップのサポート」「メール機能」「端末のデザイン」といった項目を重視しており、逆に「端末の価格」は重要視していないことが見えてくる。ドコモへ乗り換えたユーザーは、主に同キャリア同士でのメール機能を重要視しているようだ。ソフトバンクに乗り換えたユーザーは、他キャリアに比べて特に突出したポイントはないものの、「通話環境」や「ショップのサポート」についてはそれほど重要視していないことがわかる。この設問では聞いていないが、Q6の設問と合わせて考えると、ソフトバンクに移行したユーザーは主に「料金プラン」を最重要と考えていたことが浮かんでくる結果となっている。
【図4-1.移行する際に重要視した点(MNP利用者全体)】
【図4-2.移行する際に重要視した点(au移行者)】
【図4-3. 移行する際に重要視した点(ドコモ移行者)】
【図4-4. 移行する際に重要視した点(ソフトバンク移行者)】
Q5. Q2で、「移行した」のいずれかを選択された方にお聞きします。
インターネットコンテンツに関して、移行する際に重要視した点をお選びください。
携帯電話のインターネット機能に関しての重要性では、全体的に注目されていたのが「GPS機能」だ。この点では、他キャリアに先んじてGPS機能を搭載していたauへの乗り換えユーザーで特に顕著な結果となった。
次いで人気が高かったのが、「着うた」などの「音楽配信機能」である。こちらも先行メリットの大きいauへの乗り換えユーザーで顕著な動きとなった。
ドコモへの移行ユーザーで比較的人気が高かったのは「デコメール」機能であるが、ドコモ端末が得意とする「ゲーム」についてはどのキャリアでもさほど重要視されていないという結果となった。
なお、ソフトバンクに移行したユーザーについてはいずれの項目もそれほど重要視はされていなかった。インターネット機能よりも、料金プランで乗り換えを選択したユーザーが多いという現れであろう。
【図5.インターネットコンテンツに関して、移行する際に重要視した点】
Q6. Q2で、「移行した」のいずれかを選択された方にお聞きします。
利用料金に関して、移行する際に重要視した点をお選びください。
携帯キャリアを乗り換える際に、利用料金に関してどれくらいの重要性を感じているかを聞いてみた。
全体的には、通話料金をもっとも重視しており、次いでパケット料金、メール料金の順になっている。いずれの場合もほぼ9割以上のユーザーがキャリアを乗り換える際の重要な指標と考えていることがわかる。
ただし、携帯キャリアによって若干その内容は異なっており、ソフトバンクへの移行ユーザーが、通話料金とメール料金の双方を重要視していることが顕著にわかる結果となっている。特に、通話料金への期待度ではダントツの結果だ。逆にドコモへの移行ユーザーは、通話料金の面ではあまり期待をしていないことが浮かび上がってくる。auについては平均的な結果となった。
【図6.利用料金に関して、移行する際に重要視した点】
Q7. 移行する際に重要視した点であてはまる理由がなかった方は、以下に理由をご記入ください。
フリーアンサーの結果をまとめてみると、ドコモについては、デメリットとしてそもそもの料金の高さ(特にFOMA)を上げる声が多く、逆に海外対応や、端末自体の魅力を感じているという意見が多かった。
auに関しては、電波の入りやすさや通話エリアの広さを上げる声が多く、意外に電話としての性能で選ばれている。
ソフトバンクについては、料金の安さがポイントとなっていることが裏付けられる結果となっている。
Q8. Q2で、「移行した」のいずれかを選択された方にお聞きします。
移行後の各項目の満足度をお選びください。
携帯キャリア移行後の満足度について聞いてみた。
全体的に満足度が高いのがau。どの項目もまんべんなく満足度が高いが、特にGPS、着うたに代表される「携帯端末の機能」と「通話環境」についての満足度が高い結果となった。「端末の価格」についての満足度も他キャリアに比べひときわ高く、「ショップのサポート」でもドコモと同等の高い評価だ。
ドコモに関しては、「ショップのサポート」でもっとも満足度が高く、「端末のデザイン」でも比較的満足度が高い。ただし、「端末の価格」は、やはり高いと思うユーザーが多いようだ。
ソフトバンクは、同キャリア同士での「無料メール」に代表される「メール機能」の満足度が高いが、「通話環境」に関しては、他キャリアより大きく満足度を下げる結果となっている。また、「ショップのサポート」についても、満足度が低い結果となっている。MNP開始時の端末トラブルなども影響しているものと思われる。
【図8-1.移行後の満足度(MNP利用者全体)】
【図8-2.移行後の満足度(au移行者)】
【図8-3.移行後の満足度(ドコモ移行者)】
【図8-4.移行後の満足度(ソフトバンク移行者)】
Q9. Q2で、「移行した」のいずれかを選択された方にお聞きします。
インターネットコンテンツに関して、移行後の各項目の満足度をお選びください。
携帯キャリア移行後のインターネット機能満足度について聞いてみた。
結果としては、Q5の「インターネット機能の重要度」とほぼ同じ結果が出ており、auではGPS機能と音楽配信機能での満足度が高く、ドコモではデコメール機能の満足度が比較的高かった。一方、ゲーム機能に関しては、ソフトバンク、ドコモが80%程度満足しているのに対し、auは73%程度と低めの結果になっている。
【図9-1.音楽配信(着うた)に関しての満足度】
【図9-2.ゲームに関しての満足度】
【図9-3.デコメールに関しての満足度】
【図9-4.GPS機能に関しての満足度】
Q10. Q2で、「移行した」のいずれかを選択された方にお聞きします。
利用料金に関して、移行後の各項目の満足度をお選びください。
利用料金に関しての満足度を聞いた。
この点では、圧倒的にソフトバンクの満足度がどの項目も高く、特にキャリア内無料のメール機能は、9割近いユーザ−が満足と答えている。auはどの項目でも平均的で、ドコモはどの項目も評価が低かった。特にパケット通信料に関する満足度は低く、FOMA端末でのデータ通信にかかる費用への不満が多いことを物語っている。
【図10-1.通話料金に関しての満足度】
【図10-2.パケット通信料に関しての満足度】
【図10-3.メール無料に関しての満足度】
Q11. Q2で、「利用していない」を選択された方にお聞きします。
今後携帯電話会社を変える予定はありますか?
MNPを利用しなかったユーザーに、今後MNPを利用して携帯キャリアを変えたいかどうかを聞いてみた。
今のところ、「移行する予定がない」と答えたユーザーが実に7割近くにも上っており、「移行を考えているユーザー」の3割を大きく上回る結果となった。キャリア別では、auの利用者が特に多く「移行する予定がない」と答えており、現在のサービス満足度を物語っている。逆にソフトバンクの利用者は、4割近いユーザーが「移行を検討している」と答えており、キャリア間での差が出た形となった。
【図11.今後携帯電話会社を変える予定はありますか?(MNP非利用者)】
Q12. Q2で、「利用していない」を選択された方にお聞きします。
利用しない理由をお選びください。【複数選択可】
MNPを利用しない理由としてもっとも多かったのは、「現在の割引プランが使えなくなるから」というものだった。長期間にわたって携帯キャリアと契約しているユーザーほどそのキャリアから離れづらいことを裏付けている。
また、「メールアドレスが変わってしまうから」という理由を挙げたユーザーも多く、携帯電話でのメール利用度・メール依存度の高さを物語っている。
キャリア別に見ると、auを利用しているユーザーは、現状のサービスに対する満足度が相対的に高く、「魅力的な移行先がない」「今の料金プランに満足」という回答が、他のキャリアに比べて多かった。また、ドコモのユーザーは、長期割引などの「割引プランが使えなくなってしまう」「メールアドレスが変わってしまうから」という回答が多くなっている。ソフトバンクは、いずれの項目も回答数自体が低めで、乗り換えへの障壁はそれほど高くないように思える。
【図12.MNPを利用しない理由(移行先キャリア別)】
Q13. Q12で、あてはまる理由がなかった方は、ナンバーポータビリティーを利用しない理由を以下にご記入ください。
MNPを利用しない理由をフリーアンサーで答えてもらった。
全般的には、「結局いくら得になるのかわかりづらい」「移行に伴う料金が高い」といった、料金面での不透明性や不満が理由で、移行を行わないというユーザーが多かった。また、「よいサービスや機種が出るまで様子見」という声も多かった。
キャリア別に見てみると、ドコモの利用者は、「割引がなくなってしまう」「家族や会社、仕事でドコモを使っているユーザーが多い」「ドコモは安心できる」といった回答が多かったのが印象的。auは、おおよそ現状のプランに満足しているユーザーが多く、ソフトバンクは、乗り換えるだけのメリットを感じないというユーザーが多かった。
Q14. ナンバーポータビリティに対して何かご意見の点がある方は、以下にご記入ください。
最後にMNPに対する意見をフリーアンサーでうかがった。
もっとも多かったのは「移行手数料が高い」というもの。「ある程度は仕方ない」と考えているユーザーも多いが、手数料、料金割引解除などのデメリットを考えると、MNPを利用した移行のメリットがあまり感じられないという意見が多かった。
また、メールアドレスが変わってしまうのが難点と答えたユーザーも多く、携帯電話番号だけのポータビリティでは意味がないと感じているユーザーも多いようだ。
もちろん、このMNPの導入自体は概ね歓迎されており、今後の各社の料金プランや、魅力的なサービスの登場などによっては、MNPを利用してみてもよいというユーザーもかなり多く見られた。
- ◎アンケート期間:
- 2007年1月16日〜2007年2月4日
- ◎アンケート回答者数:
- 2,818人
- ◎男女比率:
- 男87%:女13%