いきなり気持ちよく演奏できるものを作りたかった

――「触る」というアイディアはどこから出てきたんですか?

最初は人に触ったときの抵抗値を使って、自由にメロディーが弾けたら面白いなと。接点からの距離で音階を作るような楽器ですね。その試作もしてみたんですけど。

――電子楽器のテルミンみたいな感じですか?

はい。でも、さっきの話のように、人によって電気を流す量が違うので、動作が安定しないんですね。メロディーらしいメロディーもできないし、コントロールしきれないのが分かったんです。それで思いがけないところ、例えばほっぺを触って音が出るとか、コミュニケーションしながら音遊びができるようなものにまとめていったということです。

――音の出る楽器を作ろうと思ったのは何故ですか?

今まで私がやってきたことを生かせないかなと、ずっと思っていました。私は小さい頃からピアノとかバイオリンをやっていて、母親も家でピアノの先生をしていました。小さいときからピアノを練習しないと、遊びに行かせてもらえない。そういう家でつらかったんです。

――何だか「のだめカンタービレ」のような話ですね。

それでも、ある程度弾けるようになると、気持ちよく弾いているときの爽快さ、無意識に手が動く気持ち良さも分かるようになる。でもそこに到るまでが大変じゃないですか。だから、いきなり気持ちよく演奏できるようなものが作りたいと。音を楽しむという事が、シンプルに表現できるものを作りたかったんです。しかも人に触れることによって、演奏したいことが直に相手に伝わる。それがにんげんがっきの面白さだと思うんです。

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