電源ユニットの選び方
パソコン内のPCパーツに電力を供給する、「パソコンの心臓」ともいえる電源ユニット。電力の供給が不安定になると、高性能なPCパーツも本来の性能を発揮することができません。パソコンに必要となる電源ユニットの容量は、PCパーツの構成や用途によって異なるため、この選び方ガイドで電源ユニット選びに必要な基礎知識や用語をしっかりチェックしましょう。
2023/5/8 更新
電源ユニットは、マザーボードやHDD、DVDドライブといったパソコンを構成する各パーツに電力を供給する役割を持つ、重要なPCパーツです。電力が不足すると、PCパーツ本来の性能を発揮することができなかったり、パソコンの動作が不安定になったりします。ここでは、電源ユニットの規格(サイズ)や必要となる電源容量の目安などを解説。しっかりチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
電源ユニットを選ぶ際は、PCケースによって搭載できる電源ユニットが異なるため、先に対応する電源ユニットの「規格」と「サイズ」を確認しておきましょう。また、ビデオカードの有無で必要となる電源容量が大きく異なるため、ビデオカードを搭載する場合は事前に消費電力を調べておくと必要な電源容量が把握しやすくなります。せっかく購入したのに「サイズが合わなくてPCケースに搭載できない」「電源容量が足りなくてシャットダウンしてしまう」といった事態を避けるためにも、しっかりチェックしておきましょう。
なお、コネクタの数については、電源容量が大きくなる(≒接続できる機器が増える)につれて、コネクタ数も増えるため足りなくなることはあまりありませんが、一応確認しておくといいでしょう。
覚えておきたい! 電源ユニット選びで重要な2つのポイント
電源ユニットは、マザーボードの規格とともに制定された規格で分類されています。現在は、一般的なデスクトップPC向けの「ATX」、ATXの強化版でハイエンドPCやサーバー向けの「EPS」、小型PC向けの「SFX」の3規格が主流です。PCケースによって搭載できる電源ユニットの規格が異なるほか、製品によっては同じ規格でもサイズが異なることもあるため、使用するPCケースに搭載可能な電源ユニットの規格とサイズをしっかりチェックしておきましょう。
フルタワーからミニタワーまで、一般的なデスクトップPCで採用されている電源ユニットの規格です。電源ユニットの中で最も製品数が多い規格のため、価格重視モデルや大容量モデル、静音モデルなど、予算や用途に合わせて、自分好みの製品を選ぶことができます。
マルチCPU/GPUに対応した、ハイエンドPCやサーバー向けの電源ユニット規格です。ATX規格よりも電源容量が強化されているためサイズはATXと同じか、やや奥行きが長く、小さめのPCケースには搭載できないことも。近年は、EPS/ATX両対応の製品が主流です。
スリム型やキューブ型などが採用する電源ユニット規格です。SFX規格には複数のサイズがあるほか、奥行きを拡張して大型ファンを搭載した「SFX-L」規格も存在するため、製品選びには注意が必要です。
電源ユニットは規格だけでなく、サイズもあわせて確認しよう
電源ユニットの基本サイズは規格によって決められていますが、電源容量や搭載するコネクタ数などによって奥行きや高さが異なる製品も存在します。なかでも、SFX規格の電源ユニットは複数のサイズが規定されているため、特に注意が必要です。「きちんと電源ユニットの規格を確認して購入したのに、PCケースに入らない…」という悲劇が起こらないように、規格だけなくPCケースに搭載可能な電源ユニットのサイズもあわせて確認しておきましょう。
電源ユニットの規格とサイズ
規格 | サイズ(幅×高さ×奥行き)mm |
---|---|
ATX | 150×86×140〜180 |
EPS | 150×86×140〜180 |
SFX | SFX(A)100×50×125 SFX(B)100×63.5×125(※) SFX(C)125×63.5×100(※) SFX(D)100×63.5×125 SFX-L 125×63.5×130 |
※SFX(B)とSFX(C)は、電源ユニット下部に空冷ファン用のスペース(高さ17.1mm)があるため、実質的な高さは80.6mmとなります。
電源容量は、電源ユニットが合計で何ワット(W)出力できるかいう数値です。電源容量が足りないと突然シャットダウンしたり、再起動したりと、パソコンの動作が不安定になってしまいます。逆に、電源容量が足りてさえいれば問題は起こらないため、電源ユニットを購入する際は余裕を持って少し大きめの容量のモデルを選ぶといいでしょう。
用途ごとの電源容量の目安
必要となる電源容量は、用途によって異なります。基本的なPC構成(ビデオカード非搭載)の場合に必要な電源容量は200W程度といわれていますが、ビデオカードを搭載したり、たくさんのHDD/SSDを搭載したりする場合は、そのぶん多くの電源容量が必要になります。自分の用途に必要な電源容量をしっかりチェックして、ピッタリな電源ユニットを選びましょう。
ビデオカード非搭載のネットサーフィン・動画視聴用PCであれば電源容量300W程度の電源ユニットでも問題はありませんが、少し余裕を持って電源容量400〜500W程度の電源ユニットを選んでおくと、あとからPCパーツを増設する際に安心です。
PCで3Dゲームを遊ぶ際に必要なビデオカードは、多くの電力が必要です。ミドル〜ハイエンドビデオカードを使用する場合は、500〜800Wの電源ユニットがいいでしょう。また、スマホやタブレットなどを充電する場合も、500W以上は欲しいところです。
ビデオカードを複数枚搭載する場合は、安定した動作を実現するためにも800W以上の電源ユニットを使用しましょう。各パーツの消費電力を確認して、電源容量に余裕(消費電力の1.5〜2倍程度)のある電源ユニットを選ぶといいでしょう。
電源ユニットの容量は、消費電力の2倍がいいって本当?
電源ユニットは、50%の負荷がかかった際に最も変換効率が高くなるように設計されています。また、「電源容量に余裕があると電源ユニット本体が長持ちする」、「今後PCパーツを増設したときの余力が必要」といった理由から、消費電力の2倍の電源容量がいいといわれています。
ただ、用途によって必要な電源容量の余裕は異なり、ネットサーフィンや動画鑑賞といった用途の場合は消費電力の1.2〜1.4倍、ビデオカードを搭載する場合は消費電力の1.5倍、ビデオカードを複数枚搭載する場合は1.5〜2倍(ハイエンドビデオカードは消費電力が大きいため、現実的には1.2〜1.5倍程度)の電源容量があると安心です。
ここでは、電源ユニットを選ぶ際に知っておきたいコネクタの種類や仕様について個別に解説。しっかりチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
電源ユニットのコネクタは、SATAコネクタならHDD/SSDや光学ドライブ、PCI Expressコネクタならビデオカードの補助電源用ポートといったように、種類ごとに接続先や用途が決まっています。電源ユニットを選ぶ際は、搭載するPCパーツの消費電力とともに、必要なコネクタ数もあわせてチェックするといいでしょう。
電源ユニットのコネクタと主な用途
コネクタ名 | ピン数 | 主な用途 |
---|---|---|
メインコネクタ | 20+4ピン、24ピン | マザーボードへの給電 |
CPUコネクタ | 4+4ピン、8ピン | CPUへの給電 |
PCI Expressコネクタ | 6ピン、6+2ピン | 主にビデオカードの補助電源として使用 |
SATAコネクタ | 15ピン | 主にSATAデバイス(DVD、HDD、SSDなど)への給電 |
ペリフェラルコネクタ | 4ピン | IDE規格のHDDや光学ドライブへの給電 |
FDDコネクタ | 34ピン | FDDや内蔵型カードリーダーへの給電 |
マザーボードに電源を供給するためのコネクタで、「ATXメインコネクタ」とも呼ばれます。以前は20ピンコネクタが採用されていましたが、消費電力の増加にともなって2006年頃から採用されはじめた「ATXバージョン2.2」より、24ピンコネクタへと拡張されています。一部の電源ユニットは、20ピンコネクタの旧式マザーボードにも対応できるように「20ピン+4ピン」構成のコネクタを搭載していますが、ほぼ使用されることはありません。
メインコネクタの形状で製品を選ぶ
CPUに電源を供給するためのコネクタで、4ピンコネクタの「ATX12V」と、8ピンコネクタの「EPS12V」の2種類があります。以前は4ピンコネクタが使用されていましたが、現在は「ATX12V」と「EPS12V」の両方に対応できる「4ピン+4ピン」構成のコネクタが主流になっています。なお、複数のCPUやビデオカードを搭載するハイエンドマザーボード向けに、複数のCPU用コネクタを搭載した製品も販売されています。
CPU用コネクタ(4+4ピン)の数で製品を選ぶ
CPU用コネクタ(8ピン)の数で製品を選ぶ
CPU用コネクタ(4ピン)の数で製品を選ぶ
消費電力の高いミドル〜ハイエンドビデオカード用の補助電源コネクタです。コネクタ形状は、75Wの電源供給ができる「6ピン」と、150Wの電源供給ができる「8ピン」の2種類で、「6ピン+2ピン」コネクタを搭載した製品も販売されています。
PCI Expressコネクタ(6+2ピン)の数で製品を選ぶ
PCI Expressコネクタ(6ピン)の数で製品を選ぶ
現在主流のSATA規格のHDD/SSD・光学ドライブ用のコネクタです。RAID環境の構築や、たくさんのHDD/SSDを搭載したい場合は、SATAコネクタの数が多い(電源容量の多い)電源を選ぶといいでしょう。
SATAコネクタの数で製品を選ぶ
SATA規格の登場前に主流だったIDE規格のHDDや光学ドライブ用のコネクタです。2023年現在は、あまり使用されていません。
ペリフェラルコネクタの数で製品を選ぶ
フロッピーディスクドライブや内蔵タイプのカードリーダー用のコネクタです。こちらも現在はあまり使用されていません。
FDDコネクタの数で製品を選ぶ
電源ユニットは、コンセントから流れる交流(AC)電流を、パソコンで使える直流(DC)電流に変換するパーツです。しかし、入力したすべての電流が変換されるわけではなく一部は熱となり、ロス(損失)が生じます。その際、どれだけロスなく電気を変換できるかをあらわしたものを「電源変換効率」といい、この値が高いほど高性能な電源ユニットとなります。「80PLUS」は、この「電源変換効率」が80%以上であることを示す認証で、「80PLUS」の中でも設定された基準値ごとにTITANIUM>PLATINUM>GOLD>SILVER>BRONZE>STANDARDの6グレードに選別されています。
「80PLUS」認証のグレード別「電源変換効率」
グレード | 変換効率 | ||
---|---|---|---|
電源負荷率20% | 電源負荷率50% | 電源負荷率100% | |
TITANIUM | 92% | 94% | 90% |
PLATINUM | 90% | 92% | 89% |
GOLD | 87% | 90% | 87% |
SILVER | 85% | 88% | 85% |
BRONZE | 82% | 85% | 82% |
STANDARD | 80% | 80% | 80% |
80PLUS認証のグレードで製品を探す
ETA認証は、サイバネティクス研究所(Cybenetics Lab)が開発した電源ユニットの性能を判断する効率測定プログラムです。「Cybenetics ETA認証」と表記される場合もあります。ETA認証には、ブロンズからダイヤモンドまで6つのグレードが設けられ、「80PLUS認証」よりも厳格な基準で認証されます。なお、ETA認証では、「熱変換率」のほかに「力率(PF)」「5VSB変換効率」「待機電力」という3つの基準が設けられています。
6段階のETA認証
グレード | 変換効率 | 力率(PF) | 5VSB変換効率 | 待機電力 |
---|---|---|---|---|
DIAMOND | 93%以上 | 0.985以上 | 79%以上 | 0.10W未満 |
TITANIUM | 91%以上93%未満 | 0.980以上 | 77%以上 | 0.13W未満 |
PLATINUM | 89%以上91%未満 | 0.975以上 | 76%以上 | 0.16W未満 |
GOLD | 87%以上89%未満 | 0.970以上 | 75%以上 | 0.19W未満 |
SILVER | 85%以上87%未満 | 0.960以上 | 73%以上 | 0.22W未満 |
BRONZE | 82%以上85%未満 | 0.950以上 | 71%以上 | 0.25W未満 |
ETA認証のグレードで製品を探す
LAMBDA(ラムダ)認証は、サイバネティクス研究所(Cybenetics Lab)が開発した電源ユニットの静音認証プログラムです。極めて高度で、厳しいテスト手順で電源ユニットの「静音性」を検証し、基準ごとに独自の格付けを行っています。なお、LAMBDA認証は、騒音レベル15dBA以下の「A++」〜騒音レベル40dBA〜45dBAの「STANDARD」までの7段階で格付けされています。
7段階のLAMBDA認証
グレード | 騒音レベル | 感じる音の目安 | 具体例 |
---|---|---|---|
A++ | 〜15dBA | 無音 | 蝶の羽ばたき |
A+ | 15dBA〜20dBA | ほぼ無音 | 雪の降る音 |
A | 20dBA〜25dBA | きわめて静か | 木の葉の触れあう音 |
A- | 25dBA〜30dBA | きわめて静か | 置き時計の秒針 |
STANDARD++ | 30dBA〜35dBA | 静か | 深夜の郊外 |
STANDARD+ | 35dBA〜40dBA | 静か | 図書館内 |
STANDARD | 40dBA〜45dBA | 普通 | 閑静な住宅街の昼 |
LAMBDA認証のグレードで製品を探す
ケーブルが着脱可能な仕様のことです。たくさんあるケーブルの中から、必要なケーブルだけを選んで接続することができるため、配線がスッキリし、ケース内のエアフロー(空気の流れ)もスムーズになるという利点があります。
電源ユニットに採用されるコンデンサー(電気を蓄え、電圧を安定させる部品)には、高温環境での使用における上限の温度が85度の「85度電解コンデンサー」と、105度の「105度電解コンデンサー」があります。「105度電解コンデンサー」のほうが高温における耐久性が高く、85度コンデンサーに比べて4倍の寿命があるとされています。耐久性を求める場合は、105度電解コンデンサー採用モデルを選ぶといいでしょう。
「保護回路」とは、電源ユニットに異常が発生したときに電源ユニット本体やほかのPCパーツを保護する回路のことです。保護回路には、「OPP」(過負荷保護回路)、「OVP」(過電圧保護回路)、「UVP」(低電圧保護回路)などがあります。
マニアックな仕様のPCパーツを取り扱う国内メーカーです。ユーザーサポートを簡素化することで価格を抑えているのが特徴で、その名のとおり”玄人”向けといえます。なかでも手頃な価格ながら「80PLUS Bronze」認証取得&配線しやすいフラットケーブルを採用した電源ユニット「KRPW-BK」シリーズは、2018年の発売から多くのユーザーに支持されているロングセラーモデルです。
アメリカ・フリーモントのPCパーツ・周辺機器メーカーで、電源ユニットやPCケース、メモリーなどを取り扱っています。同社の電源ユニットは、自動回転数制御対応ファンとファンレスモードを搭載することで高い静音性を実現した「RMシリーズ」や、ケース内のライトアップが楽しめるアドレサブルRGBファンを搭載した「CXF RGB」など、幅広いモデルをラインアップしています。
PC周辺機器で知られる台湾の人気メーカーです。近年は、発光機能が特徴的なキーボードやゲーミングマウス、ヘッドセットなどが人気を集めています。電源ユニットは、容量1550Wの80PLUS Titaniumモデルや、アドレサブルRGBファンを搭載したゲーミングPC向けの80PLUS Goldモデルなどをラインアップ。最長10年間の新品交換保証が付帯している点も魅力です。
PCケースから冷却パーツ、電源ユニットにゲーミングデバイスまで、幅広く手がける台湾の総合PCパーツメーカーです。静音ファン&フラットケーブル採用の80PLUS Bronzeモデル「MWE Bronze V2」シリーズから、シングル/マルチレーン切り替え対応&プラグインタイプの80PLUS Platinumモデル「V Platinum」シリーズまで、幅広い製品を展開しています。
世界初のATX電源ユニットを発売した実績を持つ、台湾の老舗電源ユニットメーカーです。現在でも80PLUS認証を取得した電源ユニットの製造数は世界一で、80PLUS Platinumモデルの「HYDRO PTM PRO」シリーズや、80PLUS Goldモデルの「HYDRO G PRO」シリーズ、SFX規格の80PLUS Goldモデル「DAGGER PRO」シリーズをラインアップしています。
電源容量が十分なら、分岐ケーブルでコネクタを増設しましょう。
内蔵HDD/SSDやファンなどを増設してコネクタが足りなくなった場合、電源容量が十分なら分岐ケーブルでコネクタを増やすのも手です。ただし、電源容量が不足するとパソコンが起動しなかったり、動作が不安定になったりするので注意しましょう。
使用できますが、家庭用コンセントに接続する場合は1500Wまでしか出力できません。
電源ユニットの中には、電源容量が1500W以上の製品も販売されています。しかし、家庭用コンセントの出力は、1口あたり1500W(100V/15A)が上限となっているため、電源容量が1500W以上あっても1500Wまでしか出力することができません。なお、オフィスなどに採用されている業務向けの200Vコンセントなら1500W以上の出力が可能です。
105度電解コンデンサー
電源ユニットに採用されるコンデンサー(電気を蓄え、電圧を安定させる部品)には、高温環境での使用における上限の温度が85度の「85度電解コンデンサー」と、105度の「105度電解コンデンサー」があります。「105度電解コンデンサー」のほうが高温における耐久性が高く、85度コンデンサーに比べて4倍の寿命があるとされています。耐久性を求める場合は、105度電解コンデンサー採用モデルを選ぶといいでしょう。
保護回路
「保護回路」とは、電源ユニットに異常が発生したときに電源ユニット本体やほかのPCパーツを保護する回路のことです。保護回路には、「OPP」(過負荷保護回路)、「OVP」(過電圧保護回路)、「UVP」(低電圧保護回路)などがあります。