プリンタの選び方
テレワークが普及し、ふたたび印刷の必要性が高まってきた昨今。数ある製品のなかから、必要な機能をしっかりと備えたプリンタを選びたいところ。ここでは、目的・用途別の選び方を中心に、インクの種類、あると便利な機能など、プリンタの選び方について詳しく解説します。
2023/3/3 更新
写真をきれいに印刷するには、インクの色数と種類が重要です。CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー、黒)の4色インクでも基本的な印刷にはまったく問題ありませんが、特に写真をきれいに印刷したいのであれば、6色以上のインクを搭載したモデルを選ぶとよいでしょう。4色だけでは表現できない濃淡や微妙な色の違いを表現できます。8色や10色インクを搭載したプロユースの機種もラインアップされており、さらに繊細な色表現が可能です。また、写真の印刷にこだわる方は、インクの種類や解像度などのスペックにも注目しましょう。
「大量の文書をできるだけ高速で印刷したい」という人には、レーザープリンタが適しています。インクジェットプリンタが液体のインクを使用して印刷するのに対して、レーザープリンタはトナーと呼ばれる樹脂の粉を熱で溶かし紙に圧着させて印刷します。最近ではレーザーの代わりにLEDを使用するLEDプリンタも登場していますが、こちらもレーザープリンタの一種と考えてよいでしょう。レーザープリンタは文字をくっきりと印刷することに長けており、なにより印刷スピードが速いため、大量の書類もスピーディーにプリントできます。なお、印刷速度を重視する人は、1分間に印刷(A4用紙)できる枚数などのスペックを参考に選んでみてもよいでしょう。
文書などのモノクロドキュメントの印刷が中心で「カラー印刷は不要」という場合は、顔料にブラックインクを採用したインクジェットプリンタか、モノクロレーザープリンタが適しています。解像度を重視するのであれば顔料ブラックインク採用のインクジェットプリンタを、印刷スピードを重視するのであればモノクロレーザープリンタを選ぶとよいでしょう。モノクロレーザープリンタは1枚あたりの印刷コストを抑えられるほか、印刷速度が速い点が特徴。本体サイズが大きく、以前は業務用の印象が強かったレーザープリンタですが、近年はよりコンパクトなタイプが登場し、家庭用としても普及しています。
インクジェットプリンタに限った話ですが、ランニングコスト(インク代)を重視したい場合には、大容量インクタンクを搭載したモデルを選びましょう。インクボトルを本体に挿しインクを直接注入するタイプのほか、従来のようなカートリッジ式インクを大型化したタイプなど、メーカーによって大容量インクタンクの形状はさまざま。なかには、インクタンク1本でモノクロ印刷6,000枚程度の出力が可能な機種もあり、インク切れのストレスやインク交換の手間を解消できます。なお、大容量インクタンク搭載モデルは、単に印刷可能な枚数が増えるだけでなく、1枚あたりの印刷コストも大幅に低減できます。
印刷以外の便利な機能も使いたいなら、複合機(多機能プリンタ)を選びましょう。近年発売されたモデルであれば、ほとんどの機種に標準機能としてコピーとスキャナ機能が搭載されています。注目すべきはFAX機能の有無。普段からFAXを使用するのであれば別途FAX専用機を設置するよりも省スペースで済むため、作業スペースを有効活用できます。また、用紙を節約できる「自動両面印刷」や、CD・DVDの盤面に直接印刷ができる「レーベル印刷」などの便利な機能の有無もチェックしておくとよいでしょう。
小さなノズルからインクを打ち出して印刷するタイプのプリンタ。色の再現性が高く、解像度もすぐれているため、書類と写真両方の印刷に最適です。比較的安価でコンパクトなサイズの製品が多いのが特徴です。なお、インクのタイプは、4色、6色、一体型の3種類が主流。そのほか、プロ・写真愛好家向けの8色、10色インク搭載機種もあります。
トナーと呼ばれる粉を熱で溶かして紙に圧着させるタイプのプリンタです。カラーレーザープリンタのほか、モノクロ印刷にのみ特化したモノクロレーザープリンタもあり、用途に応じて選べます。インクジェットプリンタと比較すると、印刷スピードが速い点が特徴で、書類や伝票、バーコードなどを素早く印刷できます。かつては業務用の機種が中心でしたが、最近は本体サイズをコンパクト化した家庭用モデルのラインアップが増え、広く普及しています。
LEDプリンタとはレーザープリンタのレーザー発生部を発光ダイオード (LED) に置き換えたタイプです。機能的にはレーザープリンタと同様で、写真よりも書類印刷に向いており、「印刷速度が速い」「大量印刷が可能」「トナーの交換回数が少なくて済む」などのメリットがあります。レーザー発光部をLEDに置き換えることにより、レーザープリンタに比べ小型化できる点が特徴ですが、インクジェットプリンタと比較すると、本体サイズはやや大きめになっています。
大判インクジェットプリンタ
大判インクジェットプリンタは家庭用インクジェットプリンタを大型化したもの。基本構造は変わりませんが、B0などの大きなサイズを印刷できます。基本的にロール紙に印刷するので長尺サイズの印刷物を作成することが可能です。用途はポスター、POP、CAD、ディスプレイ、グッズ、アパレルなど多岐に亘ります。
ドットインパクトプリンタ
細いピンにインクを付着し、たたきつけることで印刷するタイプのプリンタです。複写用紙(カーボン紙)を使う伝票などの重ね印刷はこの方式でしかできないため、現在は事務用途で使用されることがほとんどです。製品選びの際には、「複写可能枚数」「印字スピード」「駆動音」「印字桁数」「バーコード印字対応」などの項目をチェックしましょう。
フォトプリンタ
インクジェットプリンタは、インクの色数や種類によってさまざまなタイプがあります。その種類によって、得意な印刷対象が異なります。「写真をきれいに印刷したいのか」「コストを重視したいのか」など、プリンタを購入する目的を考え、用途に適した機能を備えた製品を選びましょう。
プリンタのインクは、顔料インクと染料インクの2種類に大別できます。顔料インクは用紙の表面にとどまるタイプで、色の階調性にすぐれているといわれています。「黒」をくっきりと印刷できるため、書類の印刷に◎。染料インクは用紙に染みこむタイプで、発色がよく、特に光沢紙にプリントした場合にすぐれていることから、家庭用写真のプリントに向きます。なお、黒が鮮明な顔料インクと色再現性の高い染料インクを採用した「染料+顔料インク」を搭載したプリンタは、文字も写真もバランスよくきれいに印刷可能。年賀状やプレゼン資料など、写真と文字の両方の美しさを求める人に最適です。
インクの種類でプリンタを選ぶ
プリンタのインク形状には、いくつかの種類があります。すべての色が1つのカートリッジに収められているタイプが「一体型」、黒やシアンなどの各色のカートリッジが別々になっているタイプが「独立型」、レーザープリンタで用いられるインクが「トナー」です。インクの形状は、プリンタ選びの優先度としては低めですが、購入前に各タイプの特徴を理解しておくとよいでしょう。
すべての色が1つのカートリッジに収納されているため、非常にコンパクトです。しかし、1色が切れるとプリントができないのが欠点。1色に入っているインクの量も少ないため、1枚あたりの印刷コストは高くなります。コンパクトサイズのフォトプリンタに多く採用されているタイプです。
一般的なインクジェットプリンタは、ほぼすべてが独立タイプのインクを採用しています。1色のインクが切れた際に、その色だけを交換すればよいため、ランニングコストを節約することができます。大容量インクタンク搭載モデルであれば、インク交換の手間が少なくて済み、印刷コストも大幅に低減できます。
カラーレーザーやモノクロレーザーのプリンタで採用されているタイプです。トナーの単価は安くはありませんが、一度の交換で2,000∼3,000枚程度の用紙をプリントすることができます。なお、メーカー純正品のほか、互換品、リサイクル品などもあり、価格が異なります。
家庭用プリンタの大半は、対応可能な用紙サイズが最大でA4までとなっています。A2やA3サイズなど、A4よりも大きい用紙への印刷を必要とする場合は、購入前に希望の用紙サイズに対応しているモデルかどうかを確認しましょう。
最大用紙サイズで選ぶ
書類などをスキャンし、画像データとして取り込むことができます。スキャンしたデータをPDFに変換することができるものもあります。なお、ADF機能(自動原稿送り機能)を搭載したモデルなら、大量の原稿でも自動的に1枚ずつ読み込んでくれるため、プリンタにつきっきりになる必要がありません。表裏の両面を同時にスキャンできるタイプもあります。
CANONのプリンタは、顔料インクを使用することで細かい文字がつぶれず、きれいに印刷できるため、文書の印刷が得意だといわれています。また、写真には染料インクを使用し、繊細なプリントが可能。文書も写真もバランスよく印刷できるの機種が豊富にラインアップされています。独立型インクや大容量インクタンクなど、インクの種類が豊富で、取扱店が多く購入しやすい点も魅力。代表的なPIXUS(ピクサス)シリーズは、多彩な機能を搭載した6色ハイブリッドのハイスペックモデルから、ランニングコストの低いエントリーモデルまで、幅広いラインアップが揃っています。
EPSONのプリンタは写真印刷が得意だといわれています。特に、写真を印刷したときの発色のよさと鮮やかさが特徴。こだわりの写真を高画質に印刷する「写真高画質プリンタ」、文書と写真を気軽に印刷する「ホームプリンタ」のほか、コピー・FAX・スキャナなどを搭載した複合機にも注力しています。代表的なColorio(カラリオ)シリーズは、低印刷コストの「エコタンク」搭載モデルをほじめ、多彩な機能を搭載した幅広いラインアップで展開されています。
ブラザーのプリンタは、用紙補充、インク交換、SDカードの差し込みなどをすべて前面で行える「フロントオペレーションシステム」を採用している点が特徴。A4用紙の連続スキャンや、複数の名刺や領収書などを一度のスキャンで別々のデータとして保存できるなど、仕事の効率アップに役立つ機能が豊富です。
日本国内のシェアでは、CANON、EPSON、ブラザーに次ぐメーカーですが、世界シェアはNO.1。他メーカーに比べ、価格が安いのが特徴です。写真印刷はあまりせず、文書等のモノクロ印刷がメイン用途の人に適した機種が揃っています。
リコーは事務機器、光学機器、カメラなどを製造する国内メーカーで、古くからオフィスユースのコピー機、複合機に力を入れています。ハイエンド複合機になると1分間に80枚のフルカラー・モノクロ印刷に対応する機種もあり、高速印刷が可能です。
印刷用紙を自動で裏返して、表裏両面に印刷できる機能です。A4やB5サイズだけでなく、ハガキサイズで利用できるものもあります。
写真などを印刷する際に、紙のフチに余白ができないように用紙いっぱいに印刷する機能です。
CDやDVD、ブルーレイディスクの表面に、タイトルや写真を印刷してレーベルを作成する機能です。
無線LAN(Wi-Fi)や有線LANを利用して印刷する機能です。複数のパソコンやスマホでプリンタを簡単に共有できます。
メモリーカードやUSBフラッシュメモリー、デジタルカメラやスマホなどから直接印刷する機能です。パソコンを接続する必要がないため、手軽にプリントできます。
用紙をセットする方法として、前面にセットするもの(前面給紙)と背面にセットするもの(背面給紙)があり、両方に対応する2ウエイ給紙タイプもあります。プリンタの正面にスペースが確保できない人や省スペース化を求める人は、背面給紙タイプか、2WAY給紙タイプを選ぶとよいでしょう。
印刷速度は、1分間に何枚の書類を印刷できるかを示しています。「カラー印刷速度/分」と「モノクロ印刷速度/分」は、ISO(国際標準化機構)が定めた測定方式「ipm」に基づき、1分間にA4用紙を印刷できる枚数を表しています。特に印刷速度を重視する人や大量の文書などを印刷する人は、この数値を参考に選んでもよいでしょう。
カラー印刷速度で選ぶ
モノクロ印刷速度で選ぶ
画像解像度の目安
画像解像度の目安 | 使用用途 |
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350〜400dpi | チラシ、パンフレット、カタログ等、一般的な印刷物 |
画像の解像度とは、画像の精細さを表す数値です。単位はdpi(dot per inch)で表現され、1インチ(2.54cm)にどれくらいずらして点(dot)を打てるのかを示しています。プリンタの解像度は「横×縦」の形で表記されています。プリンタが印刷を行う際にインクの出る先端部分を「プリントヘッド」といいますが、この「プリントヘッドがどれくらいの密度でドットを並べられるのか」を表したのが「横」の数値。一方、「縦」の数値は、プリントヘッドの密度を表しています。プリントヘッドにはインクを噴射させるために小さな穴が並んでおり、「この穴がどれくらいの間隔で並んでいるか」を表したものが「縦」の数値です。解像度は数値が大きいほど、画素の密度が高くなり高精細になります。反対に、解像度が低いと、目の粗い画像になります。精細な画像の描写にはある程度の解像度が必要ですが、現行のプリンタは十分な解像度を備えているので、それほど気にする必要はありません。
解像度で選ぶ
スマホの普及により、プリンタのワイヤレス機能も進化を遂げています。アプリを利用することでスマホやタブレット端末から手軽に印刷できるモデルや、スマートスピーカーに対応したモデルも登場。各通信機能をチェックし、自分に必要な機能を見極めましょう。
Wi-Fi機器同士を直接接続できる規格。無線LANルーターやアクセスポイントがない環境でも、プリンタとWi-Fi対応機器でワイヤレス通信が行えます。ただし、一度に接続できるのは1台までで、複数の機器と同時使用はできません。
ソフトやドライバーのインストールが不要で、Appleの「iPhone」「iPad」などiOS搭載端末から写真やeメール、WebページなどをWi-Fi経由でプリントできる機能です。
ワイヤレスでデータ通信するための規格で、主にスマホで採用されています。NFC対応プリンタでは、スマホをかざすだけで接続設定が可能です。
スマホやタブレット端末からスムーズにプリントできる機能を備えたモデルです。アプリを利用してプリンタ本体のコピーやスキャン設定をスマホから行えるものや、プリンタ内の情報をスマホで確認できるものがあります。
スマートスピーカーに向かって「〇〇をプリントして」と音声で伝えるだけで、いろいろなコンテンツのプリントが可能です。プリンタの電源オン/オフなどの操作やプリンタの状態を確認できる機種もあります。
クラウドを介してパソコンやスマホとプリンタを結ぶサービスで、クラウドに接続しているプリンタから印刷できる機能です。
書類などを複写する機能。現行機種の大半のモデルに搭載されています。
書類などをスキャンし、画像データとして取り込むことができます。スキャンしたデータをPDFに変換することができるものや、大量の原稿をまとめて一度にスキャンできるものがあります。
FAX通信で書類などを送信できます。なかには、パソコンからFAX通信を行うPC FAXに対応するものや、受信したFAXデータを画面で確認し、必要なものだけプリントする機能などもあります。
セットした原稿を自動で読み込む機能です。複数枚をスキャンする場合に、その都度、原稿を変える手間が省けます。
プリンタに液晶モニタを搭載したモデルです。操作メニューを選択したり、プリントしたい写真を選んだりできます。パソコンを使うことなく写真をトリミングできるものや、9.0型液晶モニタを搭載しハガキを原寸大で表示できるものもあります。
タッチ操作に対応した液晶モニタ(タッチパネル)を搭載したモデルです。スマホと同じように直感的に操作できます。
「自動電源オン」は、本体の電源ボタンに触れずにスマホやパソコンでプリントの指示をすることにより、Wi-Fi経由で電源がオンになる機能です。「自動電源オフ」はあらかじめ設定した時間を経過すると電源がOFFになる機能です。そのほか、主電源のオンオフをタイマーで設定できるタイプもあります。なお、自動電源オン・オフどちらか一方に対応したモデルと両方に対応したモデルがあります。
スマホやPC、タブレット端末などからケーブルを用いずにネットワークに接続できる機能で、同じネットワーク上にあるプリンタから印刷が可能です。
PCからLANケーブルを介してネットワークに接続する機能で、同じネットワーク上にあるプリンタから印刷が可能です。
デジタル機器用の近距離無線通信規格です。スマホやタブレット端末等で撮影した写真をワイヤレスプリントする際に利用します。
もっとも広く普及しているインターフェイスです。USBケーブルでPCとプリンタを接続して印刷することができます。
USBの規格の一種で、理論値の最大転送速度は480Mbpsです。USB3.0と比べると転送速度は遅くなります。
理論値の最大転送速度が5Gbpsで、USB2.0と比べ転送速度が速いため、PCからプリンタにデータをより速く送ることができます。
プリンタメーカーではない、他企業から発売されたインクです。
カートリッジで販売されているタイプと、インクだけを詰め替えるタイプがあります。価格は安いのですが、プリンタメーカーの純正品ではないため、故障の可能性が高まったり、以後のサポートを受けられなかったりするリスクがあることを理解しておきましょう。
プリンタ1枚あたりの印刷コストと印刷速度を確認しましょう。
カラー・モノクロそれぞれで、1枚あたりにかかるインク代などの印刷コストを確認しましょう。印刷速度にこだわるのであれば、1枚あたりの印刷速度もチェック。大量に印刷する機会が多い場合は給紙も手間になるので、最大給紙枚数もチェックしておくとよいでしょう。
給紙枚数
用紙トレイや手差しトレイにどれくらいの枚数を収納できるかを示します。
ウォームアップタイム
プリンタや複合機の電源を入れてから、印刷が可能になるまでの時間のこと。ウォームアップタイムが短いほど、早く印刷を開始することができます。通常、プリンタの電源はOFFになっていることが多いため、ウォームアップタイムが長い場合には、想像している以上にストレスを感じることもあります。
ファーストコピータイム
プリンタのスタートボタンを押してから、最初の用紙が排出されるまでの時間のことです。ウォームアップタイムが早くても、スタートボタンを押してから用紙が出てくるまでに時間がかかることがあるので、しっかりとチェックしておきましょう。