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ガス自由化の経緯と今後

更新日: 2016年4月27日 ガス自由化

ガス自由化の経緯と今後

1995年から始まる国内のガス自由化の流れ

電力自由化が大規模工場などの大口需要家から徐々にその範囲が広がっていったように、ガス自由化も同様に、徐々に自由化の範囲を拡大してきました。国内のガス事業は、1995年、1999年、2004年、2007年の4度に渡って大きな制度改革が行われています。1995年の改革では、一般ガス事業者(法律上では一般ガス事業者とされていますが、いわゆる東京ガスや大阪ガスなどの都市ガス会社のことです)が一定地域に独占的にガスを供給してきた体制を見直し、大規模工場などの大口需要家を対象としたガス小売りについて自由化を実施。この改革により、年間契約ガス使用量200万立方メートル以上の大口需要家は、ガス供給者を自由に選ぶことが可能となり、料金やそのほかの条件も需要者側と供給者側の交渉によるものとなりました(この時点での大手10社の都市ガス販売量に占める大口供給販売量の割合は約47%)。1999年は年間契約ガス使用量100万立方メートル(同約52%)、2004年は50万立方メートル(同約56%)、2007年は10万立方メートル(同約63%)と、制度改革のたびにガス自由化の範囲は拡大。電力自由化から1年後の2017年4月1日からは、一般家庭向けの都市ガスについても自由化が始まります。

2017年からは購入先はガス小売事業者に集約

現在、一般家庭向けには200ほどの一般ガス事業者がガス導管(ガス管)を通じて都市ガスを供給しています(ほかにも小規模な需要家にガス管を通じてガスを供給する簡易ガス事業者が1450ほどあります)。徐々に自由化が進んでいる工場などの大口需要家向けには、大口の利用者に限ってガス小売りを行っている大口ガス事業者(23事業者)や、一定規模以上のガス管を所有して大口の利用者に限ってガス小売りを行っているガス導管事業者(15事業者)が参入しています。

これまでは、一般ガス事業者やガス導管事業者は、導管事業(ガス管の維持管理業務を行う事業)も小売事業も一体として行ってきましたが、2017年4月のガス自由化からは、小売事業を行う事業者はガス小売事業者に集約され、一般家庭を含めたすべてのガス利用者は大口や小口といった購入量と関係なく、ガス小売事業者からガスを購入することになります。

また、ガス導管事業者は一般と特定に分かれ、大口向けの高圧から家庭向けの低圧までの導管ネットワーク(ガス管網)を維持・運用してガスの供給を行う事業者は一般ガス導管事業者に、家庭用の低圧は取り扱わず、中圧・高圧の導管ネットワークを維持・運用する場合は特定ガス導管事業者となります。

さらに、現在のガス管網は、都市部を中心に特定のエリアに集中しており、電力のように北海道から九州まで全国規模でつながっているわけではありません。少しでもこうした状況を改善しようと、特定ガス導管事業者はガス管の敷設や料金設定などを自主的な判断で進められるように届出制になっています。また一般ガス導管事業者は、供給地域内でガス管敷設について実質的な地域独占を認める一方で、そのガス管網は幅広い利用者のため一体的に維持・運用されるよう国による認可制となります。

2022年には導管分離も

ガス自由化の目玉と言われるもう1つの大きな改革が、2022年に実施が予定されている「導管分離」です。電力自由化での「発送電分離」に相当するもので、都市ガス会社が維持・運営しているガス管網を管理する部門を別会社にし、すべての都市ガス会社が同じ条件で共用できるようにする制度改革です。電力自由化の際の送電網も同様ですが、ガス市場に参入できるガスを持っていても、ガス管がなければ各家庭へ供給することができません。ガス管網がないエリアは別にして、ガス管網が充実している都心で新たにガス管を敷設する意味はありませんし、二重にガス管を敷設すること自体が禁止されています。そこで、新規参入する事業者は手数料(託送料金)を払って既存のガス管網を利用することになります。ガス管網を維持・運用する事業者が新規参入してくるライバル会社の手数料を意識的に高くするようなことがあっては公正な競争市場とは言えません。電力自由化でも「発送電分離」が完全な自由化を実現する重要ポイントとされているように、ガス自由化でもこうした問題や懸念を解決する重要な施策が、「導管分離」なのです。

自由化後のガスと電気のライバル関係は新たなステージに

電力自由化やガス自由化を行う目的は、それぞれの市場へ新しい事業者の参加を促すことで競争原理を導入し、市場を活性化することです。明治時代から続くライバル関係にあるガスと電気の両者は、すでに双方の市場に参入し、激しい競争を繰り広げています。2000年に設立された株式会社エネットは、NTTファシリティーズ(40%)、東京ガス(30%)、大阪ガス(30%)の3社が共同出資した大手の電力会社ですし、東京電力や関西電力などの電力大手もすでにガス市場で実績を上げています。また、ガス会社は1年早くスタートした電力自由化でいち早く収益源を確保しておきたいという狙いがあり、積極的にガスと電力のセット販売に力を入れています。かたや、電力会社はガス小売自由化後の巻き返しを虎視眈々と狙っています。

それと同時に、ライバル関係にあるガス会社と電力会社が提携している点も見逃せません。たとえば、東京ガスと東北電力が設立したシナジアパワーのように両社が協力して自由化市場へ参入するケースもあれば、大手通信会社などと連携して電力会社とガス会社が結びつくケースも考えられます。さらに、東京電力と東京ガスは、2016年1月から、東京電力のスマートメーターおよびスマートメーターシステムを活用した東京ガスの検針業務の自動化に関する共同実証試験を開始すると発表、両社でシナジー効果を発揮できる分野においては協調関係を継続することも明らかにしています。このように、従来のライバル関係とは異なる形でしのぎを削っています。自由化で生まれたそれぞれの市場への相互参入という新たなステージでは、お互いがこれまでできなかった事業活動へも取り組めますし、天然ガスの共同購入など同じエネルギー企業としてのシナジー効果も期待できます。

デュアル・フュエルによる値下げと新サービスに期待

ガスと電気をセットで販売するデュアル・フュエルは、多くの国で一般的な販売方法として定着しています。これまでは、ガス会社はガス市場のことを、電力会社は電力市場のことだけを考えればよい、という制度上の垣根がありましたが、自由化によってこうした垣根はなくなります。双方の会社にとっても、ガスと電気の請求業務を一元化することでコストの削減が可能になりますし、消費者にとっては、電気とガスをまとめて契約できるだけでなく、料金の値下げも期待できます。国内でも今後はデュアル・フュエルのような販売方法が一般的になっていくでしょうし、ガス市場への新規参入が想定される石油会社とのコラボとも言える、ガス・電気・石油の総合エネルギーパックの登場も大いに期待されるところです。

また、ガス自由化や電力自由化に合わせて新規参入してくる企業は、ガス会社や電力会社、石油会社だけではありません。通信サービスとのセット販売や、ポイント制の導入など今までにないサービスプランも登場してくるでしょう。

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