CANON EFマウント用のレンズから、フルサイズカメラにおける標準レンズとなる50mmレンズ5本をテスト。CANON純正レンズはF1.2、F1.4、F1.8と開放F値違いで3本。さらにレンズの描写力に定評のあるシグマ50mm F1.4とカールツァイス50mm F1.4の2本を追加。プロが同じ被写体を限りなく同条件でテストし、並列比較を通じてそれぞれの特徴をチェック。用途に合った1本を見つけ出す。
CANON純正のEF50mm F1.2、EF50mm F1.4、EF50mm F1.8 STMの3レンズと、サードパーティー製のシグマ50mm F1.4、カールツァイス50mm F1.4の2レンズをテストした。すべてライブビューAF(ポートレートは顔認識AF)を使用して撮影を行っているが、カールツァイスはAFがないため、ライブビューを拡大してMFでピント合わせを行っている。ただし、ミラーレスカメラのようにビューファインダーでピントを確認することはできなかった。
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メーカー名 | CANON | CANON | CANON | カールツァイス | シグマ |
製品名 | EF50mm F1.8 STM | EF50mm F1.4 USM | EF50mm F1.2L USM | Planar T* 1.4/50 ZE | 50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用] |
最安価格 | 円 | 円 | 円 | 円 | 円 |
焦点距離 | 50 mm | 50 mm | 50 mm | 50 mm | 50 mm |
開放F値 | F1.8 | F1.4 | F1.2 | F1.4 | F1.4 |
フォーカス | AF/MF | AF/MF | AF/MF | MF | AF/MF |
発売日 | 2015/5/21 | 1993/6 | 2007/1/26 | 2009/2/17 | 2014/4/25 |
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メーカー名 | 製品名 | 最安価格 | 焦点距離 | 開放F値 | フォーカス | 発売日 | ||
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キヤノン | EF50mm F1.8 STM |
円 | 50 mm | F1.8 | AF/MF | 2015/5/21 | 製品ページへ |
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キヤノン | EF50mm F1.4 USM |
円 | 50 mm | F1.4 | AF/MF | 1993/6 | 製品ページへ |
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キヤノン | EF50mm F1.2L USM |
円 | 55 mm | F1.2 | AF/MF | 2007/1/26 | 製品ページへ |
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カールツァイス | Planar T* 1.4/50 ZE |
円 | 50 mm | F1.4 | MF | 2009/2/17 | 製品ページへ |
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カールツァイス | 50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用] |
円 | 50 mm | F1.4 | AF/MF | 2014/4/25 | 製品ページへ |
カールツァイスレンズ以外の4本はライブビュー機能の顔認識AFを使用して撮影を行った。ピント面の解像力とその近辺のボケ味、ピント面から大きく距離の離れた部分のボケ具合をチェックしている。結果としては、EF 50mm F1.8 STMが絶対的なボケ量は小さいが、ピント面の解像力の高さ、周辺部分まで像が流れることなくボケていく描写力の高さで最もパフォーマンスに優れていると感じた。シグマの50mm F1.4とEF50mm F1.2の2本もピント面の解像力は高かったが、こちらはボケがやや流れている印象。
セッティング:絞り優先オート F1.8 1/160秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/160秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.2 1/400秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/400秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/320秒 +0.7補正 ISO100
CANON
EF50mm F1.8 STM
CANON
EF50mm F1.4 USM
CANON
EF50mm F1.2L USM
カールツァイス
Planar T* 1.4/50 ZE
シグマ
50mm F1.4 DG HSM
[キヤノン用]
CANON EF50mm F1.8 STM
開放F値がF1.8とほかのレンズと比べてボケ量は比較的少なめ。ただし、周辺部までボケの形が崩れることなく、非常に素直なボケとなっている。解像力も高く、バランスのとれたレンズといえるだろう。
CANON EF50mm F1.4 USM
解像力は今ひとつだが、ボケは比較的滑らかで自然に見える。全体として柔らかな印象の仕上がりとなった。
CANON EF50mm F1.2L USM
F1.2と開放F値が明るいこともありボケは最も大きいが、ボケた部分の像はかなり流れて崩れている。ピント面の解像力は高いが、ボケに関しては今ひとつという印象。
カールツァイス Planar T* 1.4/50 ZE
ボケの形はよく、周辺部でもしっかりと形を残したボケ味となっている。開放F1.4で正確にピントを合わせるには一眼レフカメラでは厳しすぎると感じた。ピントの合っている部分もシャープというよりは少し柔らかな描写だといえる。
シグマ 50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用]
画面中心付近のボケはナチュラルだが、周辺部ではかなり像が流れ形の崩れたボケとなっている。ピント面の解像力は高いだけに、周辺部の描写が残念。
セッティング:絞り優先オート F1.8 1/160秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/160秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.2 1/400秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/400秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/320秒 +0.7補正 ISO100
CANON
EF50mm F1.8 STM
CANON
EF50mm F1.4 USM
CANON
EF50mm F1.2L USM
カールツァイス
Planar T* 1.4/50 ZE
シグマ
50mm F1.4 DG HSM
[キヤノン用]
CANON EF50mm F1.8 STM
開放F値がF1.8とほかよりもやや暗めのレンズだが、その分、開放絞りからきっちりと解像しており実用的なレンズといえる。髪の毛など細部の描写も非常に細密に再現されている。
CANON EF50mm F1.4 USM
開放F1.4でのピント面は少し甘め。このレンズ単体で見ればそれほど解像力不足を感じることはないが、ほかのレンズと比べると解像力は低めといわざるを得ないだろう。
CANON EF50mm F1.2L USM
ピントの薄い開放F1.2での撮影だが、ピント面は非常にシャープ。髪の毛1本1本がきっちりと描写されており、開放絞りから解像力が高いレンズといえる。
カールツァイス Planar T* 1.4/50 ZE
MFレンズのため、液晶モニターのライブビュー機能でピントを合わせたが、EOS 5D Mark IVの液晶では完全にピントを合わせきることは不可能だった。ピントの合っている服の部分を見ると、どちらかといえばピント面も柔らかな描写だといえる。
シグマ 50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用]
開放F1.4からきわめてシャープでキレのよさが感じられる。F1.4の描写ながら、EF50mm F1.8と同レベルの解像力があるのはすばらしい。
セッティング:絞り優先オート F1.8 1/160秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/160秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.2 1/400秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/400秒 +0.7補正 ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/320秒 +0.7補正 ISO100
CANON
EF50mm F1.8 STM
CANON
EF50mm F1.4 USM
CANON
EF50mm F1.2L USM
カールツァイス
Planar T* 1.4/50 ZE
シグマ
50mm F1.4 DG HSM
[キヤノン用]
CANON EF50mm F1.8 STM
F1.8の開放絞りでのボケ量はそれほど大きくないが、ボケの形状は非常にナチュラル。画面中央付近だけでなく周辺部でもボケの形が大きく崩れることはない。
CANON EF50mm F1.4 USM
解像力がそれほど高くないこともあって、ピント面からのボケもナチュラルで柔らかく見える。周辺部のボケは像が崩れる傾向にあり、あまり美しいボケとはいえない。
CANON EF50mm F1.2L USM
F1.2という明るい開放F値を持つレンズだけにボケの絶対量は大きい。ただしボケ部分の輪郭部にわずかな色づきが見られるのも気になった。中央付近のボケはいいが、周辺部分では大きく形が崩れ流れるようなボケとなっている。
カールツァイス Planar T* 1.4/50 ZE
ピント面が柔らかな描写なのもあり、そこからわずかに外れた部分のボケも自然で美しい。中央付近だけでなく周辺部分でもボケの形は美しい。F1.4の開放絞りでこのボケは非常に優秀といえるだろう。
シグマ 50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用]
ピント面からのボケ始めはナチュラルだが、大きくボケるところでは中央部でも少しざわついた感じのボケとなる。さらに周辺部ではボケが流れるように形が崩れて見えるのが気になるところだ。
無限遠に近いピント位置にある被写体を撮影し、遠景の描写力をチェック。ピントは中央部に合わせている。中央部の解像力を見るほか、周辺部の流れやにじみなどをチェックした。中央部、周辺部ともに優れていたのはシグマ50mm F1.4。また、EF50mm F1.8も非常に優れた描写だと感じる。
セッティング:絞り優先オート F1.8 1/3200秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/6400秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.2 1/8000秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/8000秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/6400秒 露出補正なし ISO100
CANON
EF50mm F1.8 STM
CANON
EF50mm F1.4 USM
CANON
EF50mm F1.2L USM
カールツァイス
Planar T* 1.4/50 ZE
シグマ
50mm F1.4 DG HSM
[キヤノン用]
CANON EF50mm F1.8 STM
開放F値がF1.8と無理のない設計をしているため、遠景細部はかなりシャープで、解像力は高い。中央部の文字がきっちりと写っているのは見事だ。
CANON EF50mm F1.4 USM
中央部の細部は少しがにじんだような描写となっている。開放絞りの描写としては必要十分な解像力とはいえるが、ほかのレンズと比較すると甘めの解像力だといえる。
CANON EF50mm F1.2L USM
遠景中央部の細部は若干の甘さは見られるが、F1.2の大口径レンズとしては十分な解像力だと感じる。
カールツァイス Planar T* 1.4/50 ZE
中央部の文字は甘め。解像力が低いわけではないが、細部の輪郭がにじんだようで、シャープさに欠ける印象
シグマ 50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用]
F1.4の開放絞りにもかかわらず、EF 50mm F1.8を上回る解像力を実現している。中央部の文字も5本中、最もはっきりと再現されているのには驚かされる。
セッティング:絞り優先オート F1.8 1/3200秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/6400秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.2 1/8000秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/8000秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/6400秒 露出補正なし ISO100
CANON
EF50mm F1.8 STM
CANON
EF50mm F1.4 USM
CANON
EF50mm F1.2L USM
カールツァイス
Planar T* 1.4/50 ZE
シグマ
50mm F1.4 DG HSM
[キヤノン用]
CANON EF50mm F1.8 STM
わずかに甘めの描写となる。とはいえ、純正レンズ3本の中では最も良好で、比較的解像力は高めといえる。
CANON EF50mm F1.4 USM
全体的に甘めの描写で、細部を見るとにじんだような描写。にじみは大きく、輪郭部には色収差が見られる。
CANON EF50mm F1.2L USM
決して解像力は高くはなく、わずかににじんだような描写となっている。ただし、全体の解像力はF1.2としては十分なレベルだと感じる。
カールツァイス Planar T* 1.4/50 ZE
解像力は低めで、全体に柔らかな印象となっている。細部はにじんだような描写が目立つ。絞り開放に関しては、遠景の撮影にはあまり向かないのではと感じる。
シグマ 50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用]
ほかのレンズに比べると明らかにシャープで解像力の高さが感じられる。
画面左下の歩道部分にピントを合わせ、街あかりと街灯をぼかして撮影している。どのレンズも中央部より周辺部のほうがボケの形は崩れるが、その中でもシグマ50mm F1.4のボケの形は優秀であった。また、ボケ量は絞り値に依存するため、EF50mm F1.2のボケの大きさが際立っている。
セッティング:絞り優先オート F1.8 1/3秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/13秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.2 1/10秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/8秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/6秒 露出補正なし ISO100
CANON
EF50mm F1.8 STM
CANON
EF50mm F1.4 USM
CANON
EF50mm F1.2L USM
カールツァイス
Planar T* 1.4/50 ZE
シグマ
50mm F1.4 DG HSM
[キヤノン用]
CANON EF50mm F1.8 STM
開放F値がF1.8だけにボケ量は小さく、点光源夜景写真としては少し物足りない印象となる。コントラストは高く、ハイライトからシャドーまでしっかり再現されている。画面周辺のボケはややうるさい印象。
CANON EF50mm F1.4 USM
中央部付近のボケの形はよいが、全体としてややコントラストが低い仕上がりとなっている。画面左下の歩道にピントを合わせているが、そこからのボケ始めはやや2線ボケの傾向がある。
CANON EF50mm F1.2L USM
F1.2の大口径レンズだけあって、ボケ量が大きく点光源夜景としての印象はいい。周辺減光も大きく、印象的な夜景に仕上がっている。ただし、画面隅の点光源ボケの形は大きく崩れている。
カールツァイス Planar T* 1.4/50 ZE
EF50mm F1.4と同じ傾向のボケで印象は非常に近い。ただし、ピント面に関しては少し甘く、シャープさには欠ける印象。シャドーの締まりもよくコントラストは良好だといえるだろう。
シグマ 50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用]
ボケの形が美しく、点光源夜景としての完成度は高い。街灯の光を拾っているためか、画面上部は少しハレーションっぽくなっており、ほかのレンズと比較するとコントラストは低めだと感じる。
セッティング:絞り優先オート F1.8 1/3秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/13秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.2 1/10秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/8秒 露出補正なし ISO100
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/6秒 露出補正なし ISO100
CANON
EF50mm F1.8 STM
CANON
EF50mm F1.4 USM
CANON
EF50mm F1.2L USM
カールツァイス
Planar T* 1.4/50 ZE
シグマ
50mm F1.4 DG HSM
[キヤノン用]
CANON EF50mm F1.8 STM
中央部のボケはほぼまん丸といっていいが、周辺部にいくに従いレモン型に近いボケに変形していく。 50mm F1.4ほどではないが、ボケの輪郭部には色づきが見られる。
CANON EF50mm F1.4 USM
中央付近の点光源はほぼ円形といっていいレベル。丸ボケの輪郭部に色づきが見られるのは気になるところ。周辺部はラグビーボール型に変形したボケとなるが、F1.4の開放としては合格点といっていいだろう。
CANON EF50mm F1.2L USM
開放がF1.2だけあって点光源のボケ量は非常に大きい。中央部のボケは円形に近いが、下部だけがわずかに欠けた形となっている。周辺部にいくにつれてラグビーボール型のボケになっていくが、変形の度合いは比較的軽度だ。
カールツァイス Planar T* 1.4/50 ZE
中央部は丸に近いが少しいびつな形。周辺部にいくに従いボケの形は崩れていくが、その際、左右非対称でいびつな形なのが気になった。輪郭部の色づきも見られるが、こちらも左右の片側に大きく発生している。
シグマ 50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用]
EF50mm F1.2と同程度のボケの大きさ。中央部のボケは完全な円形といえるほど美しい形となっている。周辺部はわずかに円形が崩れるが、ほかのレンズとは比較にならないほど円形に近いボケだといえる。
今回、ここまでで紹介した以外にもさまざまな検証を行っている。下のリンク先ではそれらの検証の結果を提示。このページの内容と合わせて確認することでより詳細なレンズの特徴を理解でき、最高の1本に近づける。
撮影機材紹介
CANON
EOS 5D Mark IV ボディ
最安価格円
一眼レフカメラのミドルクラスとなるEOS 5D MarkIVを仕様。光学ファインダーがメインの一眼レフカメラだが、AFの正確性を重視するためライブビューモードによる像面位相差AFを使用している。マニュアルフォーカス撮影となるカールツァイス50mmに関してはライブビューを拡大表示して目視でピント合わせを行った。
EOS 5D Mark IV今回テストレンズの焦点距離はすべて50mm。基本的にはどれも同じ距離感で写せる。このため、選び分けとしては開放F値の違いで選ぶか、解像力・描写力の違いで選ぶかだろう。サードパーティー製レンズ2本は純正に比べるとやや大きくて重たいのが気になるところではある。
CANON
EF50mm F1.8 STM
最安価格円
発売日2015/5/21
低価格な単焦点レンズとして大人気だった「EF50mm F1.8 II」をおよそ25年ぶりにリニューアルして2015年に発売したレンズ。AFモーターにステッピングモーター(STM)を採用し、より静かなAFを可能としている。レンズ構成は5群7枚で絞り羽は7枚。長さ39.3mmで重さも160gと非常にコンパクトなのが魅力だ。
[ 作例 ]
セッティング:絞り優先オート F5.6 1/2500秒 -1露出 ISO100
どちらかといえばコントラストも高くシャープな写りのレンズなので、F4.0程度に絞って撮るもの面白い。逆光の写真も比較的コントラストを保った仕上がりになってくれるので光と影を写すと思い通りのコントラストを描いてくれる。
総論:価格に見合わぬ性能の高さ。携帯性も高いので絞ってスナップを撮ると楽しい
開放F値はF1.8とやや暗めだが、コンパクトな鏡筒、手頃な価格が魅力。外観デザインを含め、廉価版レンズのように見えるが、解像力の高さ、ボケの素直さはほかのレンズと比較してもトップレベルの実力といえる。周辺部の描写はわずかに甘く、ボケのうるささも見られるが、中央部の描写は価格以上の性能だといえる。周辺まできっちりと写したいときは、F4程度まで絞るとグッと全域までシャープになってくれる。
CANON
EF50mm F1.4 USM
最安価格円
発売日1993/6
1993年発売とかなり設計の古い標準レンズ。F1.4の開放F値ながら重さは290gと軽く、フィルター径も58mmと比較的コンパクトだ。レンズ構成は6群7枚で絞りは8枚絞り。AF機構には超音波モーターを採用するなど、スペック的には十分だが、最新の現代レンズと比べると逆光性能や解像力などに見劣りしてしまう部分もある。
[ 作例 ]
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/2000秒 -1露出 ISO100
ピントは合っていてもどこか柔らかな印象に仕上がるこのレンズ。水面の写真では、ピント面からのボケ始めが比較的急に変化する印象がこのレンズの面白いところだ。
総論:手軽な価格でF1.4のボケを手に入れたい人にいい
設計の古さからか、全体的に描写は甘めで、像がにじんだように見えるのが特徴。F2.8まで絞ると中央部、周辺部ともに解像力は増し、メリハリのある仕上がりとなる。ボケ味は悪くはないが、周辺部はやや流れたようなボケになることがありうるさく感じることも。描写性能よりも手頃な大きさでF1.4の明るいレンズが使えるというところが一番のメリットだといえよう。
CANON
EF50mm F1.2L USM
最安価格円
発売日2007/1/26
2007年1月発売の大口径標準レンズ。全長は65.5mmと短めだが、最大径は85.8mmとかなり太い。レンズ構成は6群8枚とシンプルなもので、後玉に非球面レンズ1枚を採用する。防じん防滴機構やフルタイムマニュアルフォーカスに対応するなど現行レンズとしてのスペックを十分に満たしたものとなっている。大口径レンズらしく前玉のレンズガラスは迫力があり、見た目にもかっこいい。
[ 作例 ]
セッティング:絞り優先オート F1.2 1/60秒 +0.3露出 ISO100
50mmレンズでここまでボケてくれるとスナップ写真がとても楽しくなってくる。公園の水飲み場ですら何か特別な場所に見えてくるから不思議。F1.2という開放F値ならではだ。
総論:とにかく大きくぼかしたいならこのレンズ
開放F1.2での遠景の解像力はあまり高くはないが、F2.0まで絞ると十分にシャープに写る。近景では開放からシャープだが、周辺部は像が流れ、にじんだような描写になりやすい。逆光性能はあまり高くなく、ゴーストやコントラストの低下などが見られる。逆光のゴーストはF2.0まで絞ると発生しなくなる。F1.2という大口径ならではの大きなボケを楽しみたいレンズだ。
カールツァイス
Planar T* 1.4/50 ZE
最安価格円
発売日2009/2/17
標準レンズの代名詞ともいえるPlanar T* 1.4/50 ZE。金属外装を使用し、マニュアルフォーカスレンズとしての高級感のあるデザインが魅力。レンズ構成は6群7枚で絞り羽は9枚。重さは380gだが、長さは48mm、フィルター径は58mmとコンパクトで取り回しはいい。
[ 作例 ]
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/250秒 露出補正なし ISO400
マニュアルフォーカスレンズのためファインダーをのぞきながらフォーカスリングを回すのが楽しい。ちなみに作例はライブビューではなくファインダーをのぞいて行っている。ピント面も芯がはっきりとしない感じで、にじんだような柔らかな描写となっているのが特徴的だ。
総論:柔らかな描写を生かしたポートレートなどに便利
逆光性能の高さが光ったレンズ。解像力に関しては比較的低めでどのシーンでも甘い感じの写りとなる。ピント面でもにじんだような描写となるため、柔らかくやさしい描写を求める人にはいいだろう。開放絞りでのにじみもF2.0まで絞ると消え、シャープさも増してくる。絞り値を選ぶことで柔らかとかっちりを撮り分けられるため、上級者向けのレンズといえるだろう。周辺光量落ちは比較的少なめだ。
シグマ
50mm F1.4 DG HSM [キヤノン用]
最安価格円
発売日2014/4/25
50mmの標準レンズとしては非常に大柄なレンズ。長さは99.9mmで重さも815gとほかのレンズを圧倒するボディが特徴。シグマの最高性能ブランドである「Artライン」レンズだけに、レンズ構成は8群13枚で絞り羽は9枚円形絞り、特殊低分散ガラス3枚と非球面レンズ1枚を使用するなど、妥協のない設計が魅力だ。
[ 作例 ]
セッティング:絞り優先オート F1.4 1/13秒 -0.3露出 ISO400
ピントを合わせた場所はシャープでそこから滑らかにボケていく。このため奥行きのあるスナップを撮ったときにより立体感が感じられる仕上がりとなってくれる。F1.4からきっちりと解像してくれるので、夜間の撮影でも積極的に開放絞りを使って手持ち撮影が楽しめる。
総論:サイズは大きいが、シャープでキレのいい描写とボケを生かしたスナップに便利
どのシーンでも解像力は高く、テストしたレンズの中では最も開放からシャープに撮れるレンズといえる。逆光性能も高く、夜景点光源のボケも最もナチュラルなボケ味といえる。周辺減光も少なく、わい曲収差もない。F1.4の開放絞りから思い切り使える高性能レンズで、ボケを生かしたスナップなどに向く。唯一、気になったのが周辺部のボケが少しざわついてうるさく見えることがあった点だ。
検証・監修
塙真一 Shinichi Hanawa
東京都出身。
人物をメインの被写体とするフリーランスのフォトグラファー。
カメラ誌に写真や記事を寄稿するほか、役者、タレント、政治家などの撮影も行う。
また、海外での肖像写真撮影、街風景のスナップ、夜の街を撮る「夜スナ!」をライフワークとする。
写真展の開催も多数。
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