生活の質を上げる音SONY WH-1000XM4
名機と名高い「WH-1000XM3」の後継機、それがこのSONY「WH-1000XM4」。同社のワイヤレスヘッドホンとして名実ともにフラッグシップで、価格も最上位なら、機能や音質面も最上位。妥協のないワイヤレスヘッドホンを探しているなら、真っ先に試してほしい製品だ。
帰ってきたノイズキャンセリング番長
前モデル「WH-1000XM3(以下1000XM3)」のアクティブノイズキャンセリングは、当時最強レベルの性能でした。しかし、さすがに2018年10月発売のモデルでは、最新のヘッドホンに後れを取り始めているのも事実。その状況で、新たに登場したのが「業界最強クラス」をうたう「WH-1000XM4(以下1000XM4)」。SONYのフラッグシップ=最強ノイズキャンセリング機の座を取り戻すにふさわしい性能です。つまり、すごい効きます、消します。
そもそもノイズキャンセリング(以下NC)は、エアコンの駆動音や乗り物の走行音といった低音に対してはきわめて有効ですが、人の話し声のような中高域の消音は苦手としています。しかし、1000XM4はこの中高域のキャンセル性能が大幅に向上。ガヤガヤしたカフェで試したところその威力を強く実感できました。
さらに、カスタムボタンを長押しするだけでNCを最適化してくれる「NCオプティマイザー」のおかげで、お店や電車、自宅など、場所が変わってもすぐにその場にふさわしいNC効果が得られます。これはNC番長の1000XM4だからこそ実現できたものかと。

さて、高性能なNCが、より深い静寂を生み出すということは、そう、より音楽に集中できるということ。1000XM4の音質は伸びやかでクリアな高音と、深みのある低音が心地いい。イコライザーで好きに調整できるのもうれしいですね。
また、本体の3.5mm端子を使えば有線ヘッドホンとしても使えるので、高品位な音をさまざまな機器で楽しめるのが地味にうれしい。せっかくいいヘッドホンなので、PCやDAPにつないでいろんな音楽を楽しみましょう。
長時間使っても疲れないフィット感
そして、最強レベルのNCを支えているのが、極上のフィット感です。イヤホンとヘッドホンの大きな違いの1つは装着感にあると思ってまして、装着感が違えば音楽の感じ方も違ってきます。簡単に説明すると着けたときに気持ちいいかどうかは超重要。
1000XM4のイヤーパッドは柔らかな低反撥(はんぱつ)ウレタンを採用した立体縫製仕様で、とにっかく着け心地がいい。すんごいいい。約3時間着けっぱなしでも、耳にストレスを感じることがありませんでした(夏場は汗が気になるかも)。
フカフカしてるから耳周りの空間に余裕があり、これが音場の広さや臨場感に貢献している印象。電源を入れたときの音声ガイダンスにすら臨場感を感じるほど、音場が豊かです。

また、昨今はテレワーク需要などで自宅でもヘッドホンを使うニーズが増えています。その点においても長時間装着しても疲れないということはメリットです。実際に1000XM4を装着してテレワークをしてみましたが、外のクルマの音や家人の生活音が聞こえずとても快適でした。
いわゆるフラッグシップモデルなので音質や機能面がフォーカスされがちですが、むしろフラッグシップゆえの妥協なきフィット感こそ、1000XM4を選ぶ理由になると僕は思います。クルマでもソファでも、座り心地がいいと「あ、好き……」となるのと同じように、耳にスッと装着した瞬間から心地よさを感じられるはずです。イヤーパッドは耳を預けるシートみたいなものですから。
イヤーパッドの交換対応希望
フィット感をはじめ、業界最高峰のNC、本体のみで約30時間のロングバッテリー、操作しやすいタッチエリアなど、フラッグシップらしくあらゆる機能が高評価。五角形のステータス表示でいえばオールマックスな感じです。弱点らしい弱点はなし。
それでも、あえて重箱のスミレベルを挙げるなら、収納性が今ひとつか。純正ケースは平たく収納するスタイルなんですが、折りたたむ方向を間違えると壊してしまいそうで……。僕は丸めて収納したい派なので、別のヘッドホンケースが欲しいかも。

あと、コーデックは「SBC・AAC・LDAC」のみ対応。「aptX」があればもっとよかったかも。
また、現状ではイヤーパッドの交換修理ができず、ユーザー自身での取り外しもできません。前モデルの1000XM3は純正もしくは非純正のイヤーパッドを自力交換できましたが、今回のモデルはどうなるか。イヤーパッドは推せる要素なだけに、これからの公式の対応に期待したいところ。
今、最強のワイヤレスヘッドホン
最強と称するに抵抗がない、あらゆる点で高水準なワイヤレスヘッドホンです。だもんでどうしても褒めちぎっちゃうんですけど、こればっかりは仕方ない。ほんとにいいものなんだもの。価格帯的にも最上位グレードのモデルですし、やはり値段相応のすばらしい体験が待っています。
また、2021年4月末には、限定カラー「サイレントホワイト」が発表されました。フラットな本体シルエットにハマるドシンプルな純潔っぷりで、ここまで真っ白なヘッドホンは割と珍しい気がします。汚れすらも愛してゆこうぜ。

装着して気持ちいい、聴いて気持ちいい、多方面において極楽なヘッドホン。簡単に結論を述べると「WH-1000XM4」があると暮らしの質が上がるってことです。五感の1つ(聴覚)を、確実に幸せにできるんですから。
文:ヤマダユウス型 写真:佐藤竜太