ライブサウンドの熱気をSONY SRS-XB33
「サイズを超えた重低音」。慣用句といえるほど使われてきた言葉ではある。しかし、SONY「SRS-XB33」の低音はまさにそれ。ボリュームを上げていくと、ベースやキックドラムといったボトムラインの音がステレオで気持ちよく響き渡る。
小型スピーカーの伝統は健在
ゲーム、モバイル、映画に金融。そして新たにEV市場にフォーカスを合わせ、自動車メーカーとしての事業化をも狙いつつあるSONY。ですがその歴史をひも解くと、最初期からオーディオ機器の開発製造を行っています。
1950年には日本初のテープレコーダーをリリースし、1979年には初代WALKMAN「TPS-L2」をデビュー。以後のCD時代、MD時代を世界規模でけん引し、MP3全盛期も存在感を見せつけてきたSONY。また、1968年に設立された「CBS・ソニーレコード株式会社(現株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント)」により洋楽・邦楽を問わずさまざまなアーティストの曲を世間に届けてきました。さらに、スピーカーやヘッドホン、イヤホンの分野においても、一廉(ひとかど)の存在です。
さて、そのような伝統を引き継いでか、小型スピーカーのクオリティはきわめて高いものがあります。ここで紹介するBluetoothスピーカーの「SRS-XB33(以下XB33)」もそう。手のひらサイズとはいきませんが、片手で持てる大きさ・重さで、持ち運びもしやすいスペースファクター。だというのに、リアルな音像を感じ取れるスピーカーに仕上がっています。
早速ですがキーポイントはボディの左右に備わったパッシブラジエーター。重低音再生を重視するBluetoothスピーカーにはおなじみのユニットですが、XB33の場合、ドラムやベース、ピアノの最低音域など低音の音波を部屋全体に広げようとする構造です。
フロントに備わったフルレンジスピーカーの音域も想像以上の広さ。キラキラとした高域までカバーします。また低音も、音のアタックをこのフルレンジスピーカーが鳴らして、リリースをパッシブラジエーターが響かせるから、ティンパニや和太鼓のような、深く大きな胴を持つ打楽器の存在感も引き立ちます。
ちなみにボリュームを上げた状態で音数が増えると、パッシブラジエーターの振動の影響で、中音域の一部がマスクされる傾向があります。しかし、ドライバーそのもののクオリティは高く、スローテンポなチルアウトミュージックを奏でると管楽器も弦楽器もボーカルも、それぞれの個性である伸びやかなサウンドが受け取れます。
どこでも聴きほれられる汎用性
1つ勘違いしてほしくないのは、XB33の音の傾向です。モニタースピーカーのような、微細音までもキリッキリに描くものではありません。ニアフィールドスピーカーとして眼前に置いた際、塊となって飛び込んでくる音に特徴があります。
そのため、音圧と塊感の強いまとまりで突っ込んでくるロックやEDMを流すと、これがいい。ライブハウスやクラブで聴くサウンドに近いものがあります。あえて残響音を持たせることでコンサートホールのサウンド再生を目指したスピーカーが一世風靡(ふうび)した時代がありましたが、思わずその頃を思い出してしまいました。
さらに音が空間に溶けて消えゆく余韻音を上方向と左右に広げる「ライブサウンド」モードにすると、ニアフィールドであってもパワフルなスピーカーと反響音をもたらす壁の存在が強烈になり、よりライブ感が高まってきます。そうですよ、ライブハウスで音の分離なんてまず感じられない。それよりも勢いと響きを一緒にしたマリネやカルパッチョ、炊き込みごはんのようなサウンドこそがリアル。
ギリギリまで塩や味付けを絞って素材の味を引き出すのがモニタースピーカーのサウンドだとしたら、XB33のそれはどんなシチュエーションでも体になじむ良質な完全食品といった雰囲気があります。
正しくセッティングしたスピーカーに向いて座り、背筋を伸ばして聴くような厳かさもいいものですが、場所を選ばずに置いて自由な位置からリスニングが楽しめるXB33もまた良質なスピーカーといえます。防水・防じん、そして防錆(ぼうせい)性能も高いから、バスルーム、キッチンだけではなく、海辺やキャンプ場などアウトドアでも気兼ねなく使えますし、汎用性の高さも魅力です。
長く愛せるスマホスピーカー
音以外のポイントとして、XB33の左右にあるラインライトと、スピーカーユニットに組み込まれたスピーカーライトが、再生する音に合わせて光り輝きます。ラインライトはマルチカラーで、シーンと共に移り変わるイルミネーションも楽しめます。さらに専用スマホアプリ「Fiestable」を用いることで、ラインライトの発光色をコントロールできます。
このアプリではほかにもドラムサウンドやホーン、観客の歓声を混ぜたり、ハウス/EDMのDJが好んで使うアイソレーターなどのエフェクトも入っているのですが、Bluetooth接続なので操作時のレイテンシがあり、気持ちいい演出を行うにはセルフ前ノリしなければならないのがキツイ。でもホームパーティや、親戚が集まったときなどに子どもを遊ばせるためのギミックとしては面白いものがあります。
ちなみにこれらのギミック、使いたくないときはライトを含めてOFFにできます。アッパーな気持ちのときと、チルい気持ちのとき、どっちでも使えるようになっているので、パーティピープルのためだけのBluetoothスピーカーじゃないんですよね。
コンパクトながらパワフルなサウンドを鳴らす「EXTRA BASS」シリーズのミドルレンジモデルで、もちろんワイヤレス。そして高音質コーデックのLDAC対応とBluetoothスピーカーとしての素性もいいXB33。これはスマホでの音楽再生のお供として長く愛せるスピーカーとなります。
文:武者良太 写真:文田信基(fort)





