変わらない翼Lenovo ThinkPad T490s
大型画面だけど軽量かつスマート。ビジネスノートPCに求められる最重要ポイントを、高いレベルでクリアしているモデルが「ThinkPad T490s」だ。移動中の新幹線のなかで、出張時のホテルの一室で、ビジネスワークをスムースにこなす、心強い"相棒"を試した。
黒ボディーとセンターの"赤"こそが伝統
1992年。いかにもオフィスに収まるためのツールとして、グレーやダークグレーのボディーばかりだったノートPCの世界に、マットブラックのボディーを持つ1台のモデルが登場する。その名はThinkPad。IBMが作り出したビジネスのためのノートPCである。
超小型で1kgの軽さを実現したThinkPad 220(1993)、パネルを開くとキーボードも左右に広がるThinkPad 701c(1995)、当時世界一の薄さを追求したThinkPad 560(1997)、長時間のバッテリー駆動を可能としたThinkPad 240(1999)など、常にユーザーファーストなモデルとなったThinkPad。タフさにおいてもきわめて信頼性が高く、質実剛健な作りを続けてきた。同時に、バスの車内でメールを打つ、コロッケ店の店頭で操作するといったように、場所を選ばずに使えるメリットを強く打ち出すTV CMで、"大人の翼"=ビジネスマンの可能性を広げるノートPCはThinkPadというメッセージを送ってきた。
90'sから20年以上がたち、平成が終わり、時は令和。変わらないことが難しいデジタルアイテムのなかでもThinkPadのボディーは漆黒なまま。Lenovo時代の最新モデルも、初代モデルから続くデザインを受け継いでいる。エクステリアだけではない。キーボード内に赤いトラックポイントを備えるというユーザーインターフェイスも継承している。

黒いボディーとセンターの"赤"は、ThinkPadが培ってきた歴史であり、伝統。マウスポインタを動かし、キーボードで文字を打つという基本的なユーザーインターフェイスが変わらないことで、最新モデルを手にしても従来のモデルと同じようにすぐ使いこなせるのだ。
長文も軽やか。気持ちのよい打鍵感
マットブラックなThinkPad T490sのエクステリアから漂ってくる「はたらくノートPC」感。一つひとつの機能が理でもって組み合わされた結果の機能美。この実直なまでのボディーを愛せるビジネスマンは多いだろう。
華美なボディーを持つノートPCが悪い、というわけではない。しかし、ビジネスワークの世界においては、装飾を排除したノートPCのほうが魅力的。ガンガンに使い倒してもまず壊れないだろうという安心感が、高い集中力で仕事と向き合える条件となるのだ。
そんなThinkPad T490sを手で持つと、指先から確固とした頼もしさが伝わってくる。ゆがみもたわみもない剛性の塊。デザインだけではなく、質実剛健なボディーの作り込みからもThinkPadのトラディショナルなDNAを受け継いでいるモデルなのだとわかる。
程よい重みがあり、しっかりとした打鍵感のあるキーに触れた瞬間、これは気持ちのいいキーボードだぜ・・・・・・と思わずにはいられない。ノートPCにしては余裕のあるカーソルキーと、カーソルキーそばにあるページアップ/ダウンキーにも、翼たる所以を感じる。テキストファイルやスプレッドシート、PDFファイルなどの閲覧時に、キーボードだけで快適にブラウズできるのだから。

サイドパネルにはUSB Type-Cも通常のUSBもHDMIも無線LANもmicroSDカードリーダーも備わっている。モデル構成によってはSIMカードも使える。ボディー内にあまたの機能をぎっしりと詰め込むというのもThinkPad流。とことんまで薄さを追求するのではなく、多用はせずともビジネスワーク時に必要になりやすいポートをしっかりとそろえているところも、ThinkPad T490sの誠実さといえるだろう。

伝統を継承する次世代の翼
トータルサイズはA4よりもやや大きめ。だが、外観からは大きいという印象は受けない。一日の終わりにThinkPad T490sのパネルを閉じるとやけにコンパクトだな、と思えてくるのだから。むしろ、このサイズで14インチの大画面を搭載したところに喝采を送りたい。

ThinkPad T490sは堅牢性が高く、ソフトケースで保護しなくてもいいのではないか、とすら考えてしまうだろう。歴代のThinkPadに共通して抱いてきた印象だが、多少のキズやスレも仕事を頑張ったからこその勲章とも思えてくる。だからこそ、14インチ級でもモバイルしたくなる。オフィスから連れ出して、場所を選ばずにワークしたくもなる。
手持ちのPCバッグ、PCリュックに入れてみたところ、A4ノートPCに合わせて作られたものであればジャストフィットする。むしろバッグ内で動かなくなり、12〜13インチのリアルA4ノートよりも相性がいいとすら感じる。

多くのビジネスマンが憧れた大人の翼時代から20数年、その伝統を受け継ぎながらもユーザビリティーを向上させたThinkPad T490s。高い業務推進力がベストなサイズに落とし込まれた"次世代の翼"は、名ノートPCと呼ぶのにふさわしい1台といえるだろう。
文:武者良太 写真:大木慎太郎(fort)