“具”も同時発売したちゃんぽんが好調な「サッポロ一番」

「即席袋麺は成熟した市場。定番ブランドの味への愛着が強い人が多く、新商品が受け入れられにくい傾向があった」(サンヨー食品)。そんななか、ロングセラーブランド「サッポロ一番」を発売するサンヨー食品は、“選ぶ楽しさ”も提供したいと考え、2008年の「サッポロ一番 みそラーメン」発売40周年という節目に定番以外のニーズを探った。

すると、最も要望が多かったメニューが「担々麺」と「ちゃんぽん」。そこでまず2010年に「サッポロ一番 担々麺」を発売したところ、年間20億円の売り上げを記録するヒット商品となった。「担々麺はメニューとしては認知されていても、専門店で食べるイメージが強かった。なじみ深いブランドである『サッポロ一番』から発売されたことで、家庭でも受け入れられやすく、歓迎されたのでは」(同社)。

さらに、2011年9月5日には新メニュー「サッポロ一番 ちゃんぽん」を発売した。「ちゃんぽんは冷凍食品や専門チェーン店で家庭に浸透し、人気が高まっていた。野菜がたっぷりとれるので、野菜との相性の良さを大事にしてきた『サッポロ一番』にうってつけのメニューだった」(同社)。

しかしちゃんぽんには、ストレートでのどごしがよく、モチモチした食感の太麺が不可欠。今までの袋麺と全く違う形のため、麺製造にかかわるすべての工程を見直さなければならなかった。例えば一般的なフライ麺は均一なウェーブを付けて狭いバスケットに麺を押し込むことで、油で揚げたときに均一に水分が抜ける仕組みになっている。しかし太いストレート麺だと油で揚げたときに乾燥が均一にならず、部分的に水分が残ってしまう。このほかにも山積する課題を解決するために、サンヨー食品では関西工場に新しいラインを設置して研究を重ね、多くの特許を含む新技術によるストレート太麺を開発した。またスープの味の指標として定めたのは本場である九州の味だが、「最終的に『サッポロ一番』独自のちゃんぽんの味が完成した」(同社)という。

発売後は、初出荷から5日間で当初予想していた1カ月分の出荷量を達成。一時的にシェアトップの「サッポロ一番みそラーメン」「サッポロ一番塩らーめん」に迫る勢いになったほど。出荷ベースでは2010年にヒットした「サッポロ一番 担々麺」の2〜3倍に達し、工場はフル稼働しているが、現在は品薄状態だという。

2年続けての新商品のヒットにサンヨー食品は、「お客も新しい味の提案を求めていたということに気づかされた」という。また即席袋麺人気が再燃している要因については、「不景気が長引き、世の中に『買い物を楽しみたい』という気分が戻ってきている。働く主婦が増え、食事を全て手作りすることを負担に感じる人が多いことも、袋麺のよさが再認識されている理由では」という。

サッポロ一番 ちゃんぽん」(106g、希望小売価格105円)。ちゃんぽん独特のモチモチとしたストレート麺が特徴。肉、魚介、野菜のうまみを引き出したスープにごま油をプラスし、胡椒がアクセントになっている
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サッポロ一番 ちゃんぽんの具」(9g、105円)。ちゃんぽんはほかのラーメンと違って具が不可欠なため、1人前・9種類の乾燥具材パックも同時発売した。内容はエビ、イカ、豚肉、カマボコ、キャベツ、ニンジン、キクラゲ、モヤシ、コーン。乾燥具材なので、パッケージの写真はあくまでイメージと考えたほうがよい
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