定番志向の袋麺市場で新ブランド確立を狙う「マルちゃん正麺」
「マルちゃん」ブランドで親しまれている東洋水産は、カップ麺では「赤いきつね」「緑のたぬき」などの人気定番商品があるものの、袋麺では市場の停滞の影響もあり、伸び悩んでいた。「カップ麺が進化する一方で袋麺は改廃が少なく、消費者のニーズの変化に十分な対応ができていなかった。そのため今、業界全体が価格訴求による体力勝負に陥っているという危機感があった」(同社)。
なんとかして即席袋麺で鮮度感、新登場感のある全国ブランドの新商品を作りたいと開発したのが、生の麺の味わいを持つ新ブランド「マルちゃん正麺」だ。ネーミングは「自分たちが考える“正しい麺”“理想のラーメンの完成形”という意味を込め、王道感のある『正麺』に決定。パッケージもゴールドを基調としたプレミアム感のあるデザインにした」(同社)という。
即席袋麺という性質上、麺を生麺に近づけるのには限界があると考えられてきた。そこで、「もし家庭で生の味わいを持つ麺が再現できれば、他社との差別化が可能になる」(同社)と発想を転換。また、一般的に即席袋麺は昼食に食べられることが多いのに対し、生麺の場合は夕食で食べられる頻度が高いという。そのなかで、「昼食だけでなくさまざまなシーンに対応できる麺が即席袋麺の市場を拡大するために必要だと考えた」(同社)。
開発に5年をかけ完成した「マルちゃん正麺」がめざしたのは、乾燥麺でありながらできたての生麺のようななめらかでコシのある食感。麺はゆでたときに簡単にほぐれるよう、乾燥させる前の段階で一度ほぐしている。発売前の試食では、92.5%が「生麺らしさを感じた」、94.1%が「新しい食感」と答えたという。さらに、麺の食べやすさを意識し、麺一本の長さが袋麺で平均的な65cmより短く、生麺と同じ約30cmになっている。スープのフレーバーを最大限に生かす麺の太さにしているため、スープの種類によって麺のゆで時間が異なるのも特徴だ。
同社の即席麺事業開始50周年となる2011年の11月7日から全国発売。東洋水産では初年度100億円(小売価格ベース)の販売目標で臨み、「即席袋麺の定番商品にしたい」方針だ。