米粉で袋麺の革新を狙う「お米でもちもち ラーメン新麺組」
「スーパーカップ」など大型カップ麺のイメージが強いエースコックだが、もうひとつの看板商品が1963年に発売された袋麺のロングセラー「ワンタンメン」。しかし2010年の段階で即席袋麺は「ワンタンメン」のみ。過去に幾度か即席袋麺を発売したことがあるが、定着には至らなかった。そのためずっと「即席袋麺を革新するような新商品を開発したい」と考え、さまざまな試行錯誤を繰り返していたという。
同社の調査では、即席袋麺のユーザーはスープの味には満足度が高いものの、麺については満足度がかならずしも高くないことがわかった。また近年のつけ麺の流行などから、麺のコシを重視する人が増えているが、従来の即席袋麺ではその志向があまり反映されていないということも明らかになったという。コシを強くするために粉の配合を変えたり製法を変えたりと研究を重ねる段階で着目したのが、米粉と小麦粉をミックスした麺だった。
ただ試作段階で問題点として浮かび上がったのは、小麦粉と米粉の粒子の大きさの違いだった。米粉は粒子が大きくギザギザしているのでそのままでは小麦粉と混ざりにくく、歯ざわりやツルツル感が損なわれてしまう。そこで、新潟県が行っている「にいがた発『R10プロジェクト』(食料自給率向上のため、小麦粉の10%分を米粉に置き換える運動)」の趣旨に賛同し、新潟県から協力を得た。コシヒカリを知り尽くした新潟県の加工技術と同社独自の練りこみ技術を持ち寄ったことで、米粉を練りこんだ即席袋麺「お米でもちもち ラーメン新麺組」が完成した。
商品名の「新麺組」は、麺の新食感の「新」、新潟産コシヒカリの「新」、米粉で食料需給率をアップさせるという新しい社会的価値の「新」、3つの意味をこめて名づけたという。2010年9月に新潟県で発売した際には1カ月で50万食、年間100万食を目標に掲げたが、発売後10日で50万食を達成。2カ月で年間目標の売り上げを達成した。
「新潟県内では経済ニュースでも多くとりあげられ、新潟県知事がPRに協力してくれたため、テレビCMなどの広告ではなく一般情報として発信された。食料自給率アップに貢献し、日本を応援できる袋麺であることに意義を感じて購入してくださった方も多いのでは」(同社)。購入者アンケートでは、「コシヒカリを使った麺であること」を評価する人が最も多く(79.6%)、次いで多かったのが「モチモチした食感の麺であること」(68.7%)だったという。
2011年2月から関東甲信越でも発売を開始し、同年9月19日からはさらに東海・北陸・関西と販売エリアを拡大。このまま売り上げを伸ばし、全国発売にこぎつけたい考えだ。
(文/桑原 恵美子)