これはスマホの未来形では?Google Pixel Buds
各社を代表するモデルがしのぎを削る完全ワイヤレスイヤホン市場。そこに満を持して登場したのがGoogleの「Pixel Buds」です。ところがこの製品、使ってみると従来の製品たちとは異なった方向を向いている様子。そこの部分を詳しく語っていきます。
Pixel Budsは何を目指す
イヤホンの進化の過程は音楽をより手軽でストレスフリー、かつ高音質にしていくものでした。そして近年、Apple「AirPods」が完全ワイヤレスイヤホンというジャンルを確立。その結果生まれたのが、完全ワイヤレスイヤホンの中で、国内外のオーディオブランドが高音質を競い合う状況です。
そんな完全ワイヤレスイヤホン市場に、Pixel BudsというGoogleブランドの製品が参入。
そのPixel Budsとはどんな製品かというと、これがスペック上は何ら特別感はありません。高音質をウリにしている訳ではないし、ANC(アクティブノイズキャンセリング)対応でもないし……じゃあ何なの? と思っちゃいますよね。僕もそう思っていました。実際に使ってみるまでは。
ところが編集部のF氏からスマホのGoogle Pixel 4aと一緒に届いたPixel Budsを開封して使い込んでみると……これは目指すところが違う完全ワイヤレスイヤホンなんです。
「OK Google」のために誕生
Pixel Budsは片方のユニットが約5.3gのシンプルな外見。装着した際に見えるパネル部がまん丸で、イヤホン全体が耳のくぼみに収まります。存在感を主張しない形を突き詰めた、といったところでしょうか。
面白いのがスマホとの接続。Android 6.0以降に実装されているGoogle独自のワンタッチBluetoothペアリング機能「Google Fast Pair」が使えます。そのため、スマホの設定画面の見やすい場所にPixel Budsが現れてタップして接続、それでPixel Budsアプリに誘導されます。簡単です。
さて、「OK Google」と呼びかけて始まる「Google アシスタント」、皆さん活用していますか? スマートスピーカーの「Google Home」から始まった音声操作ですが、今はAndroidスマホに組み込まれていて、ホームボタンを長押しで呼び出せます。でも、僕はあまり活用した記憶はありません。スマホのホームボタンを長押しするくらいなら、画面をタップやフリックで操作しちゃいますよね。
Pixel Budsを使って変わること、それはGoogle アシスタントの音声操作の身近さです。装着しているとマイクが常にオンになっているので、「OK Google」とつぶやくだけで、いきなり音声操作が可能です。つまりスマホのボタン長押しを飛ばせる、というところがポイント。
「OK Google」だなんて声に出して呼べない日本人にもうれしい機能として、Pixel Budsではイヤホンを長押しすると、すぐにGoogle アシスタントに話しかけられます。イヤホンのボタンを押してスマホ側の反応を待って話しかける、ではなくて、Pixel Budsのボタンを押したら即アシスタントに直結。そのレスポンス差は2秒程度ですが……いざ使ってみると、この差は本当にメチャメチャ重要です。
実際、Pixel Budsなら、スマホに触れずにGoogle アシスタントを呼び出せて、最速でニュースも天気予報もチェックできるんです。それに面白いアイデアとしてPixel Budsを「Google 翻訳」アプリと連携させると、Pixel Budsとスマホ本体スピーカーを利用して、外国語会話もできちゃいます。
スマホのインターフェイスを変える
Pixel Budsを使っていて特に便利に感じるのはナビです。新宿駅の南口付近で「東京駅までの行き方教えて」と声をかけると、「現在地から東京駅に行くには……」と音声で返してくれるし、そこで「ナビして」と返せば音声ガイドに。あとは「Googleマップ」が搭載しているナビに飛んで「100m先を右に曲がります」と音声ガイドを開始。交差点に着けば「右に曲がります」と声で指示されて、もうスマホに監視されてるレベルでナビを始めます。
ナビは「Google マップ」の一部なので体験済みの人も多いかもしれませんが、ナビの最中に「近くにレストランない?」と声で問い合わせもできるところがPixel Budsのポイント。ナビの情報を元に歩きながら手でスマホを操作したら歩きスマホなので、それは推奨できませんよね。じゃあ、歩きながら安全にスマホ操作できる手段といったら……音声です。
音声操作ってスポーツ中の選曲とも抜群に相性がよくて、ランニング中でもアバウトに「○○を流して」とアーティスト名を呼ぶと、スマホに触れずに選曲できるところがもう最高に便利。音楽サービスは「Spotify」「YouTube Music」「Pandora」「Deezer」で、契約サービスがなくてもSpotifyのフリープランで音楽を聴ける手はずのよさです。
Pixel Budsを体験して考えてしまうのは、情報にアクセスするための最短手段。スマホがポケットに入っているときなど、画面に触れられない状況ってありますよね。そんなスマホがスマホであるが故の限界を突破する手段として、GoogleはPixel Budsを通してスマホ操作するインターフェイスの拡張を構想しているかのように見えます。
手が届く少し先の未来
ここまで読んで、「ふーん、Pixel Budsって未来的なデバイスなんだ。でも僕は興味ないな」と思ってしまった方、ちょっと待ってください。実はPixel Budsはイヤホンとしても只者(ただもの)ではありません。
まず、Pixel Budsアプリを通じた「装着検知」機能は、ユーザーの装着や取り外しをPixel Budsが検知し、再生中の楽曲を一時停止するなど快適な利用をアシスト。そして周囲の騒音を解析して音量を大きく調整する「アダプティブ サウンド」というお役立ち機能も。
イヤホン本体による操作も、タップだけじゃなくフリックも活用していて、スマホのよさも上手に取り入れています。
そしてなぜか、というと失礼なのですがPixel Budsは予想外に音質も優秀です。スペック上のBluetoothのオーディオコーデックはSBC/AACのみと一般的な水準ですが、実際のサウンドは帯域バランスがフラットできわめて音の純度が高くて、歌声もクリアで情熱的に届きます。2万円クラスの完全ワイヤレスイヤホンと考えても、普通に音のいい機種として評価できてしまうんですよ。
何をするにもスマホが手放せない現代に登場したPixel Budsは、イヤホンというよりスマホを拡張して音声でGoogle アシスタントをより手軽に操るためのガジェット。もちろんイヤホンとしてのハードウェアも存分に作り込まれているけど、それくらいはGoogleにとって朝飯前なのかもしれません。これ、ひょっとしたら機能のほとんどを音声操作するようなスマホの未来形かもしれないから、Androidスマホユーザーの方は、Pixel Budsで少し未来の生活に触れてみてはいかがでしょう。
文:折原一也 写真:文田信基(fort)

